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第12話『続々に集まってくる新キャラ(覚えなくていい)』

 もう少しで日付が変わりそうな深い時間。数名の男女が人気のいない港に集まっていた。


「全くもう……ひどい目にあった……」


 先程激イキさせた女性、ベディヴィエール卿は少しだけ頬を赤く染めながらオレに話しかける。


「その節は本当に申し訳ないと思っています……」


「というか、その……ああいう変な感じになるの、魔法ってやつなの……?」


「いや、その……ううん……て、手の内は明かせません、はっはっは」


「なにそれ、ひどい……」


 ここに来るまでに軽く話をしたが、ベディヴィエール卿は魔凛が言う所の一般参加枠と呼ばれる円卓騎士だった。

 つまり『魔法使い』だの『双極円卓大魔法陣』だの、それらを全く知らないただの市井の人間だという事。オレと麻子ちゃんとベディヴィエール卿は魔法という概念そのものがよく分っていないのだ。

 ちなみにさっきのクソデカ狼は、ベディヴィエール卿が持つ固有の能力らしい。何でも狼を使役して一緒に戦う事ができるとの事だ……いいなぁ。


「もふもふかわいいです~」


 麻子ちゃんはゴルちゃん(正式名称ゴルゴラン)に埋もれてもふもふを楽しんでいた。


「でしょ~? ゴルちゃんの毛並み最高でしょ?」


 ベディヴィエール卿は本当にそこらへんにいる普通の女の人、といった感じ。魔凛や激イキさせた謎の男二人は正直すげー変な奴だったから、普通と言うだけですごく有難い。


「……ベディヴィエール卿はこの状況に対してもう受け入れてる感じですか?」


 オレはこそっとベディヴィエール卿に話しかける。


「……はい?」


「あ、すみません貴方に話しかけたつもりなんですけど」


「……はっ! そうか、私がベディヴィエールか! いやー、慣れないな」


 マジで普通だなこの人。


「受け入れる……ううん、状況に流されているだけかもしれない……」


「オレもです」


「でも、魔凛とかいう人の事を全部信じると仮定するなら、このまま何もせずにいると、ひょっとしたらヤバい奴の願いが叶えられる……って話なのよね?」


「そう聞いています」


「そう聞いちゃったら、ねぇ。ヤバい奴に世界征服されちゃう可能性だってある訳で」


「…………本当にそんな事が可能かどうかは疑問が残りますけど」


「たしかにそれはそう、けれど現に私は念じるだけでゴルちゃんを召喚できちゃってる訳で。それに加えて円卓騎士って円卓騎士意外には一切の危害を加える事が出来ない……んだよね?」


「はい」


「……ま、私もやろうと思えば、今からこの国の総理大臣を、ゴルちゃんに命じるだけで拉致監禁する事は簡単にできるのよ、やんないけど」


「確かに……」


 オレもチートを使えば、多分それぐらいの事はできるだろう。やんないけど。


「だから無視できない。多分だけど、無視したら後悔する事になる。全部夢オチが一番ベストだけど、知らん顔で無視できる段階は過ぎちゃった」


「ベディヴィエール卿、ひょっとしていい人です?」


「あはは……そのハンドルネームみたいなのやめてくれる?」


「そうですね、えっと、お名前は?」


「辺出美ひろべでびひろこっていうの」


 べでび……ベディヴィエール……

 麻子……アーサー……

 鳥巣……トリスタン…… 


「……魔凛……あいつなにも考えてねぇな……いや、考えてるからこそ……?」


「ん? どうかした?」


 なんでもないです。とオレは答えて、オレの本名も伝えておいた。


「ゴルちゃん、お手~」


「ばう」


「ちんちん」


「ばう~」


「きゃっきゃ! かわいいです! 飼いたいです! きゃっきゃ!」


 麻子ちゃんはゴルちゃんと打ち解けてメチャ楽しそうにしていた。ゴルちゃんはマジで軽トラのサイズ感なので、オレは怖くて遠巻きに眺めるだけであった。


「あんな若い子がこんな時間に、こんな所に……良くないわよね」


「まぁ、そうですね」


 今更感はあるけれど、あまりよろしくはないな。


「……やだやだ、さっさと終わらせましょ。中年や年寄りが大変な目にあるのはどうだっていいけれど、中学生がこんなくだらない戦いに巻き込まれるべきじゃない。中坊は部活でもしてりゃいいのよ」


「……全くです」


 全くの同意見。ベディヴィエール卿は底抜けにいい人そうで、信頼できそうだった。

 オレはベディヴィエール卿との会話を終え、再度少しだけ警戒しながら周囲を見渡す。麻子ちゃん、オレ、ベディヴィエール卿、それに加えて一人の男性と、一人の女性がいた。

 男性は……なんと漆黒の甲冑を着ている。男性は『……ガラハッド』と一言だけ言って、手の甲の紋章をこちらに見せ、それきり港のコンテナにもたれかかっていた。

 あの甲冑でここまできたのかな。恥ずかしくないのかな。


「遅いわね……あと一人はまだなの?」


 紫のロングスカートを翻し、オレと同い年ぐらいの女性はイラついた声色でそう言った。不健康そうな目のクマと半眼みたいな目つきが特徴的だった。

 あと、乳がでかかった。垂れ気味である。


「ししょー? あんまり胸を見るのは失礼ですよ?」


「み、見てないやい!」


「そこ! さっきから気の抜けた私語ばかりよね、静かにしてなさい!」


「すみません、モードレッド卿」


「まったく……」


 そう、彼女はモードレッド卿。普通の魔法使いで(矛盾)オレ達一般参加枠とは違い、今回の双極円卓大魔法陣については一通り理解しているようだった。

 ……ちなみに、紋章確認時の太腿の太陽の紋章がえっちでした。むっちりしてて。


「魔法も何も知らない奴が、こっちの陣営に三人とか……魔凛、絶対に適当に決めたわよね……!?」


「なんかすみません……」


「謝らなくていい! ただ、戦闘になったら足を引っ張らない事……いいわね?」


 ヤな奴だ! 典型的な!

 オレはすぐにモードレッド卿をヤな奴にカテゴライズする。


「ししょー、たくさん味方がいて心強いですね」


「新キャラいっぱいで覚えられん……」


 急に三キャラも増やすな。覚えられる訳ないだろ、始めたてのソシャゲーの初回一〇〇連ガチャみたいな事になってんたよ、オレは。

 あれって別に思い入れも無いし、どのキャラが強いかさっぱり分からんから、あんまり有難みが無いんだよな。

 五人で特に会話もせず、もう一人の味方を待っていると……

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