シャルロッテ視点 新しい一歩
第344話 神殿での生活の頃のシャルロッテのお話です。
ヴィルフリートとローゼマインの婚約に対してシャルロッテは……。
予想していた通りです。今年の春を寿ぐ宴は、お兄様とお姉様の婚約が発表されて大騒ぎに終わりました。中心人物であるお姉様が早々に神殿へ行ってしまったせいか、更に騒ぎは大きくなっています。お兄様は面会依頼が集中して大変なようですが、次期領主の候補ではなくなったわたくしの周囲は静かなものです。
そんな騒ぎの中、わたくしはお母様からお茶会にお招きを受けました。本館にあるお母様の自室は、洗礼式まで過ごしていた子供部屋のすぐ近くです。わたくしは少し懐かしい気分になりながら廊下を歩きました。わたくしが洗礼式を終えていなくなってから、メルヒオールが以前より甘えん坊になったと側仕え達は口を揃えて言っています。元気にしているでしょうか。冬は子供部屋の運営に忙しく、本館へ立ち入る事が滅多になかったので寂しがっているでしょう。
「ねぇ、ヴァネッサ。お母様とのお茶会が終わったら、メルヒオールに会えるかしら?」
「……急なことですから、本日は無理でしょう。後日の訪問を依頼しておきます」
筆頭側仕えのヴァネッサにそう言われました。以前は自分が生活していた子供部屋に入ることにも許可が必要になるのですから、領主一族というのは面倒な立場です。側近達の幼い頃の生活を聞くと、そう思わずにはいられません。わたくしは子供部屋の扉を懐かしく見つめながら通り過ぎ、お母様のお部屋に入りました。
「ようこそ、シャルロッテ。こうして二人でお話をするのは久し振りですね。……今日は隠し部屋でお話をしましょうか」
今日はわたくしが感情を乱すような話題が上がるに違いありません。今から緊張しつつ、わたくしはお母様に招待のお礼を述べて隠し部屋に入ります。お母様の隠し部屋に入ったのは、いつ以来でしょうか。席に着けば、側仕え達がお茶の準備をしてくれます。領主会議に向けて料理人達が新しいお菓子に挑戦しているのでしょうか。食べたことがないお菓子が目に付きました。
「領主会議に向けて、ジルヴェスター様がローゼマインから新しいレシピを買ったのです」
「……本当に、お姉様は次から次へと……。よく思い付きますね」
普通は専属料理人が新しいレシピを造り出し、主が自分の物として周知するのですが、お姉様の場合は違います。お姉様が自分の料理人に作ってほしいレシピを教えると聞いています。
「お母様、最近のメルヒオールはどのように過ごしていますか? 先程お部屋の前を通って懐かしくなったので、近いうちに訪問しようと思っています」
「ヴィルフリートやシャルロッテが顔を見せればメルヒオールは喜ぶでしょう。早く洗礼式をしたいと最近はそればかりですもの。どのような家具をお部屋に入れるのか、側仕え達と考えていますよ」
「まぁ。メルヒオールの洗礼式は来年でしょう? 気が早いこと」
気が早いとは言っても、職人の選定は始まっているでしょう。わたくしは自分の洗礼式前の準備を思い出します。
「冬の間は子供部屋の運営が忙しくて訪問が少なくなるでしょう? シャルロッテが北の離れに移ってから、とても寂しいのだと思いますよ」
「わたくしも早くメルヒオールに北の離れへ来てほしいと思っています」
最近のメルヒオールの話を聞いて和やかな雰囲気になったところで、お茶の支度は終わり、お母様は側仕え達を退室させました。隠し部屋の中にいるのは、二人だけです。お母様はニコリと微笑みました。
「シャルロッテはヴィルフリートやローゼマインから貴族院の話を聞いていて?」
「えぇ。お姉様は専ら図書館のお話ばかりでした。大きなシュミルの魔術具があって、その衣装を作ることになったのでしょう? わたくしの側近達も参加することを楽しみにしています」
どれだけ蔵書があるのか、司書がソランジュ先生でとても尊敬していらっしゃるとか、シュバルツとヴァイスがどれだけ有能なのか……。お姉様のお話は側仕えによって軌道修正されても、最終的に図書館へ行き着きます。途中からは側仕え達も軌道修正を諦めたようでした。金色の瞳を輝かせて熱弁を振るうお姉様は、普段よりずっと愛らしく、年相応のお姿に見えます。
「ヴィルフリートは何と言っていたかしら?」
「お姉様に振り回されて大変だったという苦労話と、優秀者に選ばれたという自慢話、それから、ゲヴィンネンのお話がほとんどですね。ゲヴィンネンでドレヴァンヒェルのオルトヴィーン様に一度勝ったことが殊の外嬉しかったようで、何度もそのお話をしていらっしゃいました」
「……それについて、貴族院へ行っていた貴女の側近見習い達はどのような反応をしたのです?」
お母様が探るようにそう尋ねました。お二人の貴族院生活についてお母様に届いている報告の裏が取りたいのでしょう。側近ぐるみで嘘を吐かれると、離れている親にはなかなか真実が伝わりにくいものです。
「お兄様のお言葉は少々大袈裟なようですけれど、一年生全員に初日合格を強要するお姉様を宥めなければならなかったり、女性ばかりのお茶会に何度も出席したり、宝盗りディッターの再戦を申し込まれたり……お兄様が奮闘していたことは間違いないようですよ」
「そうですか」
お母様が安堵したように息を吐きました。お母様のところに届いている報告とそれほど大きな乖離はなかったのでしょう。お母様はとてもお兄様の貴族院生活を心配していたようです。
「ただ、ダンケルフェルガー相手にディッターで勝利したり、いくつもの流行を発信したり、王族や上位領地と個人的な交流を得たり、紋章付きの課題をこなす他領の学生が多かったりと、お姉様の方が様々な面で影響は大きいようですね。大半の期間、お姉様は貴族院にいなかったのに、常に噂に名前が上がっていて存在感はあったそうです」
「ジルヴェスター様から届けられる情報は、ローゼマインに振り回されているヴィルフリートの報告ばかりでしたから、ヴィルフリート自身の言動はよくわからなかったのです」
お母様がそう言った後、お茶を飲み、じっとわたくしを見つめます。こちらの様子を探っている藍色の目で、これから本題が始まることに気付きました。わたくしは少し身構えながらカップを置き、お母様をじっと見返します。
「今日は、わたくし、シャルロッテにヴィルフリート達の婚約のことを謝りたいと思ったのです」
「お母様……」
「エーレンフェストの都合で振り回した上に、シャルロッテから次期領主への道を奪ってしまったことを本当に申し訳なく思っています」
おばあ様が育てるお兄様に対抗する形で、わたくしは次期領主になるように育てられてきました。おばあ様の失脚、白の塔の一件、お姉様の二年間の眠りなど、状況の変化によって次期領主の教育が止まったり再開されたりを繰り返していました。けれど、今回の婚約発表によって、わたくしは次期領主の争いから強制的に排除され、全て白紙に戻りました。
お母様から謝罪の言葉が出たことで、二人の婚約話を聞いてからずっとわたくしの胸の中に巣くっていたモヤモヤとした不快な感情が波立ち、暴れ始めます。
「シャルロッテ」
お母様が立ち上がって、わたくしの隣にやってくると、そっと肩の上に手を置きました。その温もりを感じた瞬間、自分の手の甲にポタリと熱い滴が落ちてきました。きつく握った自分の手が小刻みに震えているのがわかります。
「……おばあ様の教育不足が目立っていたというのにお披露目に間に合ったことといい、白の塔の一件で汚点が付いたにもかかわらず、今回の婚約で次期領主の座が戻ったことといい、お兄様には常に救いの道が準備されるのですもの。神様はよほどお兄様を好いていらっしゃるのでしょうね」
わたくしはずっと努力してきました。お兄様がおばあ様に可愛がられて気儘に遊んでいる時も、おばあ様が失脚したことでお母様がお兄様を次期領主にした方が良いと言い出した時も、白の塔の一件でお兄様に汚点がついた時も、お姉様が眠りについた二年間も……。けれど、わたくしの努力が報われる時は、やって来ませんでした。
「……あまりにも理不尽ですわ」
不快な感情をそのまま口に出すのは、優雅で美しい振る舞いではありません。けれど、それを叱ることなく、お母様は「ごめんなさいね」とわたくしの頭や背をゆっくりと撫でてくださいます。
わたくしは涙を拭いて呼吸を整えました。頭を撫でているお母様の手を取って、「もう大丈夫です」と微笑みます。
「理不尽で悔しいという感情はまだ少し胸の内に残っていますけれど、今のような機会がなければ、わたくしはこのようなことは口にしなかったのですよ」
「えぇ、そうでしょうとも。側近達は何も言わない貴女をとても心配していましたよ。すぐにでも話を聞いてあげてほしいと言われたのです」
今は婚約発表で貴族達が大騒ぎしている上に、領主会議の準備で忙しい時期です。そんな中でお母様がわざわざお茶に招いてくださったのは、側近達の尽力があったからだったようです。
……お母様も、側近達も大変ですのに……。
次期領主の候補ではなくなったにもかかわらず、側近達は今まで通り細やかに気を遣って仕えてくれています。わたくしは彼等に相応しい主でいなければなりません。
「わたくし、二人の婚約がエーレンフェストにとって最善であることは理解しているのです。ただ、お姉様が次期領主になるのであれば、わたくしは実力で完全に負けたと思えるので、不満など全く覚えなかったのですけれど……」
お姉様とは洗礼式を機に姉妹となりましたが、養女として取り込むことも当然だと皆が認める実績と魔力の持ち主です。自分が競争相手になれるとは到底思えません。わたくしにとってお姉様は命の恩人で、尊敬の対象です。
「もちろん、お姉様の性別、健康、お血筋を考えれば、次期領主になることは難しく、第一夫人であるお母様のお顔を立てれば、他に組み合わせがないことはわかっています」
お姉様と結婚するには、メルヒオールでは幼すぎますし、わたくしは性別で無理です。
「お姉様が婚約に納得していらっしゃるようなので、反対はしません。……お兄様が婚約によって次期領主の座を得たことを不満には思っていますけれど」
「シャルロッテ……」
「それに、洗礼式前に道が閉ざされたメルヒオールの方がよほど不憫ですもの」
お兄様とお姉様の婚約によって、わたくしやメルヒオールが次期領主になる道は完全に閉ざされました。貴族の慣習やら思惑など、個人の努力だけではどうにもならないことが多く、本当に腹立たしいものです。
「最初から次期領主になる道がなければ、特に意識はしないものですよ。ですから、特に次期領主としての意識を持たずに育つメルヒオールより、わたくしはシャルロッテの方が心配なのです」
お母様がじっとわたくしを見下ろしてそう言いました。お母様が物心ついた時にはフレーベルタークの次期領主は決まっていて、特に次期領主を意識せずに育ったそうです。
「メルヒオールが悔しい思いをしないならば、良いのです。不満は口にしましたけれど、わたくし自身は納得しているのですから」
わたくしはゆっくりと息を吐き出しました。お母様に甘えて不満を口に出したことで、心が軽くなったような気がします。メルヒオールが、わたくしと同じような理不尽と無力感に悔しい思いをすることがないとわかって、ホッとする心の余裕ができました。
「……シャルロッテの言う通りです。ローゼマインが事業を進め、流行を広げていく今、ローゼマインと結婚できるわたくしの子は、ヴィルフリートしかいませんもの。同腹の兄妹としてシャルロッテはヴィルフリートを支えてあげてちょうだいね」
……同腹の兄妹? 確かに、お兄様はお母様の子で間違いないのでしょうけれど……。
お母様と自分ではお兄様に対する距離感に差があることに初めて気付きました。わたくしの感覚では、同腹の兄弟はメルヒオールだけなのに、お母様にとってはわたくし達三人を同列に考えているようです。
……おばあ様に取り上げられ、ご自分で育てていなくてもお母様はお兄様を我が子と思えるのかしら?
ひどく不思議な気分です。洗礼式前に一緒に暮らしたことがないお兄様は、わたくしにとって養女のお姉様と同じ感じの親しい親族であって、家族の距離感からは一つ離れています。
それに、おばあ様のことで不愉快な思いをしてきたせいでしょうか。それとも、お兄様に勝って次期領主になるように、とわたくしが育てられてきたせいでしょうか。今でも何となく協力し合う同腹の兄妹というよりは、負けられない競争相手という認識が強いのです。
……このようなことを正直に言えば、三人とも同腹の兄妹と思っているお母様は傷つくかもしれませんね。
兄妹を区別していたおばあ様がいなくなり、養女としてもう一つ距離のあるお姉様が兄妹間に入ってきたことで、お兄様との仲は今のところ良好です。同腹の兄妹より距離があるなど、わざわざ言う必要はないでしょう。
「そうですね。お兄様は少々危なっかしいところがありますから……」
わたくしが本当に落ち着いたことがわかったのでしょう。お母様は席に戻り、側仕え達が置いていった道具でお茶を淹れかえてくださいます。わたくしは一口飲みました。懐かしい味がします。お母様の好むお茶で、昔はわたくしもずっとこのお茶を飲んでいました。
……懐かしいけれど、わたくしの好みとは少し違うのですよね。
お姉様が開発するお菓子に合わせたり、成長による好みの変化が出てきたりしているのでしょう。少しずつわたくしのお茶は、お母様のお茶から離れているようです。
「わたくし、次期領主は最も優秀な者がなるべき、と教育されてきました。ですから、本当は今でもお姉様が一番相応しいと思っています」
どのような領地にしたいのか……。お姉様には非常に明確な目標がありました。「エーレンフェストを発展させていく」という平凡な答えしか出せなかったわたくしとは全く違う視点で領地を見ているのです。
「お姉様が新しい事業を興し、お兄様が領主の立場で上手く補佐できればエーレンフェストは間違いなく発展するでしょう」
わたくしがそう言うと、お母様は驚いたように藍色の目を瞬かせました。
「……シャルロッテはフェルディナンド様と同じことを言うのですね」
「叔父様と?」
「えぇ。ローゼマインがヴィルフリートを支えるのではなく、ヴィルフリートがローゼマインの手綱を握れるようにならなければならない……と言っていたのです」
その際、お姉様が「わたくしは暴れ馬か何かですか!?」と憤慨していたという話を聞いて、わたくしは思わず笑いを零してしまいました。
「お姉様は、あの叔父様にそのようなことをおっしゃるのですか?」
「えぇ、怖いもの知らずでしょう? まるで喧嘩でもしているのかと思うようなやりとりですけれど、あの二人にはそれが普通のようですね。側で見ているわたくしの方が肝を冷やしました」
取りなした方が良いのかどうか、お母様は内心でとても困っていたようです。
「シャルロッテ」
笑いを収めて真面目な顔になったお母様につられて、わたくしも背筋を伸ばしました。
「新しいお菓子や料理の数々だけではなく、製紙業や印刷という新事業がこれからユルゲンシュミット中に周知されます。その影響力は計り知れません。エーレンフェストと繋がりを持とうとする領地は今以上に増えます」
わたくしはコクリと頷きました。お姉様に多くの婚姻話があったと聞きました。お姉様が婚約によって領地に留まることが決まれば、次に注目されるのはわたくしです。エーレンフェストとの繋がりを重視すれば、領主会議へ出席できる第一夫人として求められることは間違いありません。
「他領へ嫁ぐことを考えて、これからはヴィルフリートやローゼマインとの絆をできるだけ深めておきなさい。自領との繋がりの深さが、将来の貴女の身を守ることになります」
「自領との繋がりの深さ、ですか?」
次期領主になるための教育から、他領へ第一夫人として嫁ぐ娘に対する教育へ、お母様が意識を切り替えたことがわかりました。
「自領からの協力や援助によって、婚家での扱いは大きく変わります。夫の愛だけで何とかなるものではありません。代替わりした後を見据え、次期領主との繋がりを持っておくことは、他領へ嫁ぐ女性にとって何より大事なことなのですよ」
……第二夫人を持たないほどお父様に愛されているお母様でもそのように感じるのですか。
実家のフレーベルタークが政変の粛清に巻き込まれたことで、お母様への対応が色々と変化したのでしょう。その言葉には実感が籠もっています。わたくしもおばあ様の冷たい目を思い出してしまい、そっと溜息を吐きました。
「では、わたくしはできるだけお姉様との絆を深めていこうと思います」
「あら、ヴィルフリートではなく、ローゼマインと?」
お母様は目を丸くしました。普通の貴族は共に育った同母の兄弟との繋がりを何よりも大事にします。お母様やお父様はフレーベルタークと繋がりを深くしていることからも、わたくしの選択が理解できないのでしょう。
「お兄様よりお姉様の方が頼りになりますもの。だって、お姉様は数回しか顔を合わせてないわたくしを救うために、夜空へ飛び出してきてくださったでしょう?」
貴族達からは神殿育ちと陰口を叩かれていますが、わたくしは普通の貴族では持ち得ないお姉様の情の深さや、咄嗟の時の決断力などを好ましく思っています。再び危機が迫った時も、お姉様はきっとわたくしを助けてくださると信じることができます。
「恩返しのためにも、わたくし、お姉様のお役に立ちたいと思っているのです。もし、わたくしが殿方であれば、お兄様を押しのけてわたくしがお姉様と婚約できるように全力を尽くしましたもの。お姉様の補佐ならば、お兄様よりわたくしの方がきっと上手でしてよ」
「まぁ、シャルロッテったら……。兄弟でローゼマインを奪い合うようなことになったらエルヴィーラが嬉々として本の題材にするでしょうよ」
お母様は楽しそうに声を上げて笑い始めました。エルヴィーラの本の題材にされるのは困りますけれど、言ったことに嘘はありません。
「わたくしは本当に少しずつでも恩返ししていきたいと思っています。わたくしがお姉様の苦手な部分を補っていければ、と思うのです」
「では、しっかり学びなさい。貴族院入学前の貴女を印刷業へ参加させることについて、貴族達が何と言っているか知っているでしょう? 貴女を参加させるように後押ししてくれたのは、ローゼマインなのですよ」
わたくしはまだ貴族院に入学していないので、印刷業に関わろうとするなんて出しゃばりだとか、他領へ嫁ぐ娘を新事業に深入りさせるのは情報漏洩の観点から良くないとか貴族達に言われています。非常に悔しい思いをしていたのですが、今回もお姉様が助けてくださっていたようです。
「……知りませんでした」
「わたくしも先日ジルヴェスター様から聞いたところです。神々の寵愛がないと嘆いていましたが、貴女はローゼマインの寵愛を受けていますよ」
お母様の言葉を聞いて、わたくしは何だかひどく心強い気持ちになりました。顔を上げて「はい」と強く頷くと、お母様は笑って立ち上がり、隠し部屋の扉を開けます。
扉の近くに心配そうな顔の側近達が見えました。きっととても心配をかけているのでしょう。
エーレンフェストの次期領主ではなく、他領の第一夫人になるために。
わたくしは新しい一歩を踏み出しました。
第四部Ⅳの特典SSのはみ出し部分を再利用したSSです。