92.善悪攻守逆転その6
諦めなければ道は拓ける……!
「「《
艶やかで幼い笑顔を浮かべる一条さんを見据えながら織田と二人で切り札を切る……一条さんの短刀からの振り下ろしによる妨害を杖で弾きながら、詠唱を続けていく。
「「《
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種族:人間
名前:マリアLv.61《+30》
カルマ値:156《善》
クラス:赫灼司祭 セカンドクラス:杖聖 サードクラス:聖母
状態:献身《特定の相手に尽くす毎にHP継続回復:最大2%/5s》
火天《STR上昇:特大・INT上昇:特大・攻撃に火炎属性:極大・火炎属性の与ダメージ上昇:極大》
理想女性《INT上昇:特大・DEX上昇:特大・攻撃に光輝属性:極大・光輝属性の与ダメージ上昇:極大》
杖身一体《STR上昇:特大・INT上昇:特大・攻撃時ランダムで魔術発動・魔術の与ダメージ上昇:極大》
慈母献身《全ステータス上昇:少・強化効率上昇:大・継続回復:中》
神敵討滅《全ステータス上昇:小・カルマ値:悪の敵に対する与ダメージ上昇:大・継続回復:中》
属性付与《攻撃に火炎属性:極大・攻撃に火炎属性:特大・攻撃に火炎属性:大・攻撃に火炎属性中・攻撃に火炎属性:小・攻撃に火炎属性:極小》
属性付与《攻撃に光輝属性:極大・攻撃に光輝属性:特大・攻撃に光輝属性:大・攻撃に光輝属性:中・攻撃に光輝属性:小・攻撃に光輝属性:極小》
炎熱攻勢《攻撃に火炎属性:中・攻撃力上昇:中》
炎熱守護《火炎耐性上昇:中・防御力上昇:中》
神聖攻勢《攻撃に光輝属性:中・攻撃力上昇:中》
神聖守護《光輝耐性上昇:中・防御力上昇:中》
強化付与《STR上昇:特大・VIT上昇:特大・AGI上昇:特大・INT上昇:特大・DEX上昇:特大》
強化付与《切断強化:大・打撃強化:大・命中率上昇:大・回避率上昇:大》
宣誓:愛屋及烏《STR上昇:極大・INT上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》
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もうこれで後には引けない……ここで全力で一条さんを屠って王女様を助ける! ……後ついでに傀儡領主も倒す! それが一条さんが最も楽しめることだと信じて!
「《次回をお楽しみに》!」
「《赫灼杖》!」
織田の次の攻撃の威力がランダムで等倍から七倍に膨れ上がる支援を貰ってから攻撃スキルを発動しながら突撃する……こちらへ迫り来る糸を燃やし尽くして迎撃し、一条さんへと杖を回転させてから石突で下から突き上げる。
「ふふ、楽しいですね?」
それを短刀の柄で横から殴られることで逸らされてから踏み込まれ、手首の返しで短刀を振り下ろされるのを杖を引き寄せガードする……あぁ、無邪気に笑う一条さん素敵です!
「そうですね! 織田もそう思うでしょ?!」
「ははは、そうだね……ビックリするぐらい楽しいよ! 《先輩呼ぶから》!」
後ろの織田へと大声で問い掛けると元気な声で同意してくれながら魔術によって強面の学ラン着た……や、ヤンキー? の人が現れて一条さんへと殴りかかる。
「相変わらずユウさんはビックリ人間ですね?」
「いやぁ、それほどでも……」
「織田は後で締める」
「なんでよ?!」
だって鼻の下伸ばしてたし! 一条さんに褒められて伸ばしてたし! そんなアホな会話を合間に挟みながら、一条さんが投げてくる先輩の遺体を遠くへ弾き飛ばし、短刀の突きをバックステップで回避して、投擲される毒針を杖で弾いてから《業火連弾》で前方を全て爆撃する。
「っ?!」
しかしながら爆煙が収まりきる前に鉄球が空気を破裂させながら飛び込んでくる。それを《爆轟》で迎撃するが予想通り中からヤバい色の粘液と煙が噴き出す。
「《空気清浄機》! 《大掃除》!」
「ナイス織田!」
織田が即座に毒ガスと毒粘液の無効化をしてくれたのを幸いに再度一条さんへと突撃する。
「本当に楽しませてくれますね?」
「楽しませているんです!」
接敵する直前に杖を床に立てて棒高跳びのように跳躍し一条さんの背後に着地、そのまま腰へと石突を突き込むがまるで見えているかのように右足を軸に時計回りに半回転して躱されると共に短刀を横薙ぎに振るわれるのを首を反らして躱す。
「くぅっ?!」
急ぎ手元に杖を引き戻そうとするが足で踏まれて前のめりになったところで顎を蹴り上げられ、腕を掴まれて握り潰されながら背負い投げを受ける。
「ふっ!」
上から頭を踏み砕かんと迫る蹴りを急いで起き上がり、そのまま前転することで避けながら距離を取る。
「はぁはぁ……織田、MPはまだ大丈夫?」
「……そろそろ切れる」
「私も」
まさかHPよりも先にMPが切れそうになるとはね……まぁ一条さんを相手するのに回復や支援は必須だし、特に織田の支援は無かったらもう既に詰んでたレベルだし……おかしいな、こっちの方がレベルもバフの量も多いはずなのに。
「ということで一条さん、残念ながら次で最後です」
「それは残念ですが構いません、充分に楽しめました」
「僕は疲れましたけどね……」
織田の弱気な発言はいつものことなので無視するとして、相手は一条さんだし本気出しても王女様は守ってくれるでしょう。
「……これが最後の支援だよ《税金投入》《押し付け》」
「ありがと」
毎度お馴染み名前ではどんな効果なのかわからないけど、自身のステータスを任意の数値で譲り渡す魔術と自分にかかっている強化や付与を相手へと移す魔術を発動してから織田は近くの壁へと寄りかかる。
「さて、一条さんいきますよ!」
「えぇ、遠慮なくどうぞ」
織田の支援によって今自身ができる最高以上の攻撃を放つべく、詠唱を開始する──
「『
「ぐぇっ?!」
──が糸に首を締め上げられ、キャンセルさせられてしまう。
「いや、さすがに王女様が死んでしまいますのでね?……まぁ楽しかったですよ?」
えぇ、それはないですよ一条さん……そんなことを思い、織田のカエルの潰れたような呻き声をBGMにリスポーンする。
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「「……」」
負けてしまった、マリアと二人で頑張ったけどレーナさんには勝てなかった……しかも最後の方はなんとも締まらない幕切れだった。
「……負けちゃったね」
「そうだね……」
『始まりの街』の神殿跡地で二人して大の字になって寝転がり、空を眺めて同時に溜め息を吐く。
「フラグを乱立したんだけどなぁ……」
「……建造し過ぎて互いに補強しあったんじゃない?」
「あー……かも知れないね?」
乱立したフラグは折れるけど、補強しあったんじゃ仕方ないかなと思う。
「でもさ……」
「……うん?」
不意に彼女が声を落としてこちらへ振り向く……どうしたのかと顔を横に倒して、マリアのガワだけは可愛い顔を眺める。
「……楽しかったよね!」
「……そうだね楽しかったね」
負けたのは悔しいし、結局王女様も助けられなかったし、傀儡領主は倒せなかった……けれどマリアと協力してレーナさんに立ち向かうのは小さい頃まだ難しかったゲームのボスに挑むみたいで楽しかった。
「一条さん楽しんでくれたかな?」
「めっちゃ楽しんでたじゃん」
わかってるくせに……すごく嬉しそうに言ってるくせに……まぁしょうがないな、だってマリアだし? 打たれ弱いくせにすぐに調子に乗るし? それに今は気分がいいし?
「……また『遊ぼう』ね?」
「……そうだね、レーナさんとマリアと僕と……『遊ぼう』ね」
お互いに顔を見合わせ笑い合う……とても悔しくて楽しかった余韻に浸りながら──
「……なんかめっちゃ爆発音が聞こえるんだけど」
「奇遇だね、僕もだよ……」
──大気を震わせ、こちらの身体を打ち付けるかのような爆発音が街中に響く……レーナさん、今度はなにをしでかしたのさ……そんなことを思いながらマリアと笑い合う。
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フラグは折れなかったようだけど、レーナさんはツヤツヤしてますよ。