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76.第一王女のお忍び

歳下主人×歳上従者の百合いいゾ〜これ


「……どこに行かれるのですかフェーラ殿下」


「っ!?」


城下町へと出るべくこっそりと廊下を進んでいたら背後からいきなり声をかけられ驚く。


「あ、アナベラ……これはね? その、違うのよ?」


「……陛下から外出を控えるよう通達があったはずですが?」


ぐぬぬ、確かにそうだけれども兄は二人ともどこかに出かけられてるじゃない、私だけなんてズルいわ!


「……お願いよ、少しだけなの! ほんの少し楽しんだらすぐに帰るから!」


「そうおっしゃられても、侍女の私には判断ができませんので……」


「本当に頭が固いわね……」


「さぁ戻りますよ!」


「ごめんなさいごめんなさい!!」


もう、すぐに怒るんだから! ちょっとした冗談じゃない!


「はぁ……仕方ないですね、私の監視と定期的に陛下に連絡するという条件付きですよ」


「やった! ありがとうアナベラ!」


さぁ、そうと決まったら早速行くわよ!


▼▼▼▼▼▼▼


「うわぁ……人がいっぱいね!」


久しぶりの城下町はやはり人が多かった、いつ見てもお父様の統治が素晴らしいものだと実感できて嬉しくなってしまう。


「さぁ、アナベラあっちに行きましょ!」


「殿下、少し落ち着いてください……」


「そ、そうね!」


いけないわ、ついはしゃいでしまった……これでは淑女からほど遠いし、お父様から怒られてしまうわ。


「おっほん! ではアナベラ、あちらに行きますよ」


「ふふ、かしこまりました」


なんだか微笑ましい目で見られてる気がするけれど……今は気分が良いからいいわ! 許してあげましょう!


「おじさん、これくださいな!」


「あいよ嬢ちゃん! ちょっと待ってな!」


いつもなら侍女長から怒られるような串焼きを屋台で購入する……ふふ、なんだか悪いことしてるみたいでドキドキするわ!


「殿下……あまり食べ過ぎないようにしてくださいね」


「わかってるわよ」


夕食が入らなくなっちゃったらそれこそ侍女長に叱られてしまうわ、そんなヘマを私がするわけないじゃない。


「ほらできたよ」


「ありがとう! ……んん〜! この安っぽい味がたまらないわ!」


「ハハッ、そうかい!」


「おじさん、ありがとう! 機会があったらまた来るわ!」


「おう、待ってるぜ!」


やっぱりこういう安っぽいのがたまに食べたくなるわね、お城のお料理も悪くないけど毎日は少し詰まらないわ。


「むむ、あっちから甘い匂いがするわ!」


「殿下……」


「わかってるわよ、ちゃんと夕食は食べられるわ!」


もう、アナベラは心配性ね! 本当に仕方ないんだから!


「ねぇ、それはなんていうお菓子なのかしら!」


「これかい? これはアイスクリームだよ」


「じゃあそれをくださいな!」


「はい、どうぞ」


「おばさんありがとう!」


……すごく白いし冷たいわね? お城では見たことないけどどういう味がするのかしら?


「…………っ!? 〜〜〜〜甘いわ! 冷たいわ! すぐに溶けたわ!」


これは革命よ! 王族の私が革命とか縁起悪いけどそう言うしかないわ!


「はい! アナベラも食べてみて?」


「……殿下、はしたないですよ」


「アナベラだからいいのよ! ほら早く!」


「…………はむ」


「どうかしら?!」


「…………冷たくて甘いです」


「そうでしょ!」


いつも無表情なアナベラが頬を緩めるくらいだから相当気に入ったのね! ……料理長に定期的に出すように帰ったら言わなくちゃ!


「殿下、それを食べ終わりましたらそろそろ帰りますよ」


「えぇ! もう終わりなの?」


本当になにがあったのかしら? いつもよりお城もピリピリしてるし、お兄様二人はさらに仲が悪くなってるし…………。


「…………アナベラ、なにかあったのね?」


「…………」


「いいわ、言わなくても……まだ10歳の私には教える必要はないとでも……そうね、二番目のお兄様にでも命令されたのかしら?」


「…………申し訳ございません」


「いいわ、いつものことよ」


本当にあのお兄様には困ったものだわ! アナベラは私の侍女なのに! 確かに継承権はそちらの方が上だからアナベラは逆らえないのはわかるけど気分が悪いわ!


「アナベラは私の侍女だから許してあげる!」


「…………ふふ、そうですね、ありがとうございます」


「さ、食べながら帰るわよ!」


アナベラと二人で微笑み合いながら帰る。それにしてもこのアイスクリームは美味しいわ、いくらでも食べられそ——


「——おっと」


「きゃっ?!」


「殿下?!」


痛いわ、曲がり角で人とぶつかってしまったわ……。


「あぁ! 私のアイスクリーム!」


「……あぁ、すみません?」


私のアイスクリームが知らない人の足に……誰よ! 私のアイスクリームを食べた足の持ち主は!


「——」


顔を見ようと上を見上げるとびっくりしてしまうくらい綺麗な顔があって思わず黙ってしまう……。


「レーナさんは大丈夫ですか?」


「私は大丈夫ですよ……そちらのお嬢さん、アイスクリームを台無しにしてしまい申し訳ございません」


「あ、あぁ……い、いいのよ!」


「一条さん、このハンカチ使ってください」


よく見ると連れがいて二人ともすごく徳が高そうな人たちだ……秩序陣営のすごい人たちなのかな? 綺麗な女性は聖女みたいな可愛らしい人にハンカチで足を拭かれてる……ちょっと聖女みたいな人の鼻息が荒い気がするけど私の勘違いだろう。


「…………良かったらアイスクリームを弁償しますので王都を案内してくれませんか?」


「! いいわよ!」


「でん……お嬢様!」


「いいじゃない! 連れの二人からすごく清浄な気配がするし悪い人たちではないわ……それにもう少し遊びたいし、ダメ?」


「…………少しだけですよ」


「ありがとう! アナベラ大好きよ!」


「っ! …………はい」


ふふ、アナベラはいつもなんだかんだ優しいから大好きだわ!


「……やばい、年の差と身分差が百合に合わさり最強に見える」


なにやら男の子の方が意味のわからないことを言っているけど今はこの人達を案内しなきゃね!


「まずはアイスクリーム屋さんね、こっちよ!」


ついでに色んなことを下々の民から聞くのも王族の務めよ、案内する代わりに色々聞いちゃいましょう!


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知り合い: 王女の名前が卑猥


作者: キレそう

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