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72.辺境派遣軍

そら派遣されるわ


《レベルが上がりました》

《スキルポイントを獲得しました》

《カルマ値が下降しました》

《新しく対人戦闘術スキルを獲得しました》

《新しく格闘術スキルを獲得しました》

《新しく暗器術スキルを獲得しました》

《既存のスキルのレベルが上がりました》

《新しく称号:殺戮加速を獲得しました》

《新しく称号:人類平等・悪を獲得しました》

《従魔達のレベルが上がりました》


ユウさんとマリアさんのじゃれ合いを眺めていると遅れて先ほどの戦闘結果が通知されましたね。…………スキルは名前の通りとして、気になるのは称号の効果ですね。ただの記念でなんの効果のない称号もありますが名前からしてその可能性は低いでしょうし確認しましょう。


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殺戮加速: 短時間での大量殺戮を繰り返した者の証。一度の戦闘で殺人を繰り返す度にAGI上昇《最大75%》硬直軽減《中》ノックバック耐性《中》人類種に対する与ダメージ上昇《中》


人類平等・悪: 老若男女や善悪など関係なく無慈悲に殺戮を繰り返した者の証。人類種に対する与ダメージ上昇《大》カルマ値《善》の敵への与ダメージ上昇《大》全陣営への与ダメージ上昇《中》カルマ値《善》の敵からの被ダメージ上昇《大》全陣営からの被ダメージ上昇《中》


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…………うーん、そんなつもりは無いんですけど、ますます人類の敵って感じの称号ですね? とくにカルマ値が《善》寄りだったり、秩序の陣営とは知らないうちに明確に敵対してる感じですかね? 隠密や隠蔽などのスキルを発動していないとNPCたちがすごい表情しますし…………。


「……それはともかく、イベント報酬が結構役立ちましたね?」


5万ポイントもした『静謐の小太刀』がすごく強かったですし、実験に新しく『操糸』スキルと『二刀流』スキル、『仕込み』スキルを合計8000ポイントで習得し、鋼糸というジャンルの武器である『暗黒陰糸』を3万ポイントで入手、こちらを副武器や罠に使いましたが予想以上に良い仕事をしてくれました。


「山田さんたちも新しい武器や防具はお気に召したようですね」


『——! ——!』


他に防具やアクセサリーに合計22万ポイント、残りの1万ポイントを素材やSPに全額交換しましたが中々に良い選択をしたようです。


「……このくらいにしてやろう」


「はい、すみませんでした……」


「おや、終わりましたか?」


「っ!? ひ、ひゃい!」


……なぜかマリアさんは私が話しかける度に挙動不審になるんですよね、カルマ値がプレイヤーに影響するのは戦闘時などで普段は大丈夫なはずですから別の理由だとは思うんですが。


「……とりあえず先を進みますよ」


「わ、わかりました!」


「助かった……」


中々に愉快な方なんですけどね? ユウさんとも仲が良いみたいですし、しばらく様子を見ましょう。


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「おや、なにやら人集りができてますね?」


「本当ですね、なにかあったんでしょうか」


ユウさんの相槌を聞き流しつつ前方の集団を見据えます、なにやら騒いでもいますね。


「えぇい! 道を空けぬか!!」


「なぁ、これってクエスト? それともイベント?」


「知らんけど結構な規模の軍隊だな」


「おのれぇ! 渡り人と言えども容赦はせぬぞ!?」


「なぁ、怒ってるし退いた方がよくね?」


「つっても後ろがつっかえてるし……」


なるほど、おそらく軍隊が行進していたためにプレイヤーが興味を惹き付けられ集まり、それによって進軍が停止、さらに人が集まる結果になっていたようですね。さらにはこのゲームの渡り人、つまりプレイヤーは神々が呼び寄せたという設定だったはずです、それに対して容赦しないとまで居丈高に怒鳴るということはそれなりの身分の方が同行してそうですね。


「お偉いさんでもいるのかな?」


「うーん、多分いるんじゃないかな? 少なくとも伯爵以上じゃない?」


マリアさんとユウさんも同じよう予想をしていますし、可能性は高そうですね。


「この軍の総司令官は王太子殿下であられるぞ!?」


「マジかよ!」


「え、王太子?」


「やっぱこれイベントだって!!」


「イベントはこの前あったし、もしかしてワールドクエストかもよ?」


「なっ!? 貴様らなぜ先ほどよりも寄ってくる!!?」


これは予想以上の大物が来たようですね、この辺境地にそこまでの価値も事件もなかったように思いますが……クーデターだって、なにも王太子殿下が総司令官を務めるほどですかね? 他の将軍はいないのでしょうか?


「……NPC困惑してるじゃん」


「仕方ないね、だってゲームだもの……」


「NPC自体はゲームだっていう意識が皆無だから混乱するか……」


……まぁ、確かにNPC自体にここがゲーム世界だという意識はなく、自分たちはこの世界で生きる人間だと認識しているようですからね、それなのに王太子殿下がいると聞いてさらに突撃してくるプレイヤーたちにド肝を抜かれたんでしょうね。


「……とりあえず殺りますか」


「……なにをやるんですか?」


「え、ちょっと一条さん?」


離れたこの距離から先頭で騒いでいたおじさまを鉄片を投擲して頭を貫きましょう。


「貴様ら! いい加減に——」


「『……は?』」


怒鳴っていたおじさまの頭をぶち抜いたところで一瞬なにが起こったのか理解できていなかった周囲の人間が、おじさまが馬からずり落ちたところで正気に戻ります。


「だ、大隊長ー!?」


「何者であるか?!」


「下手人を突き止めよ!」


「渡り人たちよ、これが狙いか!?」


「は? ……え?」


「なに、イベントが進んだの?」


騒ぎが大きくなり混乱しだしたところで集団のド真ん中に爆薬を複数投げ込み、さらに混乱を煽るとともに煙で視界を悪くさせ駆けます。


「あ、ちょっとレーナさん!」


「えぇ? 一条さんっていつもこんな感じなの?」


邪魔なプレイヤーの首を駆け抜けざまに掻き切り、首を落とし、武器を奪っては中央付近へと投げ込み、爆薬をばら撒く。


「固まれ! 殿下を何者かからお護りしろ!」


「重装歩兵、前へ!」


……さすが軍隊ですね、混乱してもなお対応が早く、優先順位もわかっているようです。即座に前に出てくる重装歩兵へ向けてプレイヤー製の人間爆弾を複数投げつけ釘付けにしましょう。


「ぐぇっ……!!」


「何が起きてる?!」


「あれ、あいつジェノサイダーじゃね?!」


「マジかよ、巻き込まれるぞ!」


プレイヤーたちが私に気づき始めたところで罠を起動します。駆け抜けながら張り巡らせていた鋼糸を引っ張り一気にプレイヤー達をバラバラにしながら一本の太い槍のような形状に纏めます。


「おい……おいおいおい!!」


「やべぇって!!」


「身体がっ……?!」


防御力が高かったり回避したりで生き残りも多いですが構いません、鋼糸には毒や痺れ薬などが塗ってありますから、短時間ではありますが大多数のプレイヤーをこの時点で無力化します。


「ま、魔術大隊は結界を張れぇ!」


「重装歩兵は中央へ戻り固まれ!」


「弓兵! 矢を射掛けろ!」


させませんよ、重装歩兵の膝裏や脇下などの構造的に鎧で覆えない部分を鋼糸で切り裂いて毒を仕込み、弓兵が放つ矢を『暴風魔術』の《追い風》によって跳ね返し、魔術大隊が結界を張る前に、爆薬や毒薬、プレイヤーの肉片その他を一緒くたにした鋼糸の巨槍を軍の後方目掛けて『操糸』スキルの《衝撃伝達》と『投岩』スキルの《彗星》を用いて放つ!!


「わぁ〜……」


「つ、ついていかなきゃ……!」


「……無理しなくていいからね?」


「……はい」


二人の力の無い会話を聞き流しながら退路を絶った軍へ向けて突撃します。


「くそっ!」


「なにか向かってきます!」


「絶対に通すな!」


「軍に喧嘩売るとは……狂人め!」


即座に道を塞ぐ重装歩兵の大盾を足場に跳躍、爆散型の火薬玉をばら撒きながら兵士の頭を跳んでいきます。


「弓兵、やめ!」


味方への誤射を恐れて矢の雨が止まりましたのでさらに進みやすくなりましたね、そのまま重装歩兵のいた場所を抜け着地し、その背後に陣取っていた槍兵を薙ぎ倒していきましょう。


「こいつ速いっ!?」


「囲め!」


「数の力へぶぇっ?!」


鋼糸で槍兵の一人の足を巻き取り、それを振り回すことで牽制しながら鉄片の投擲で喉や目を貫いて数を減らし、突き込んでくる槍を掴みながら兵士の腕を切り落として奪い取り、棒高跳びの要領で包囲を脱し、空中にて逃げようとしている一際派手な馬車の車輪を火薬玉の投擲で破壊します。


「しまっ——」


すぐさま反転してきた護衛であろう騎兵の馬を毒針で貫き、爆薬で道を塞いで時間を稼ぎ、馬車の上へと着地します。


《レベルが上がりました》

《スキルポイントを獲得しました》

《カルマ値が大幅に下降しました》


「……武器を捨て、投降しなさい」


「貴様ァ!? 土足で登っていい場所ではないぞ!!」


「降りよ!」


…………まぁ、無理ですよねぇ、一応言ってみただけです。私はため息を吐きながらある物を取り出します。


「はぁ〜……ようく見ていてください? 」


「何を——」


取り出した特製の鉄球を近くの山へと投擲、一拍遅れて轟音とともに爆発、土砂崩れが起きます。


「……」


「……さて、どうします?」


これ見よがしに先ほどと同じ物を下の馬車へと向ける。


「貴様……」


こちらを親の仇でも見るような憤怒の形相で周りを兵士たちが取り囲みますがジリジリと距離を詰めるだけで手を出してきません。


「……よい、武器を下げよ」


「っ! 殿下!?」


おや、まさか本人が自ら馬車から降りるとは……何か目的でもあるのでしょうかね?


「そちらのお嬢さん、話を聞く代わりにこちらの質問に答えてもらってもよいかな?」


見た目は……アレクセイ騎士団長と同じくらいですかね、20代後半くらいです。こちらを油断なく見据えながら馬車へと手招きします。


「殿下、危険ですぞ!?」


「いいんだよ、おそらく彼女だから」


「まさかっ!?」


…………さて、どうしますかね?


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普通は軍隊を相手できる訳ないのに……むしろ楽になるっていうね……。

レーナさん対人の一対多に特化し過ぎである。


昨日クリスマスだっていうのに小説書く以外にやる事ないからスクワットを三十回くらいしたんですよ……筋肉痛になったんですよ……太もも痛い…………。

体重が45キロ程度しかないのに膝も痛くて……(クソ雑魚身体能力)

さすがに運動不足が過ぎるなって思いました。

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