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54.第一回公式イベント・三日目その2

前回のあらすじ: レーナさん変態に襲われる


短刀を抜き去りながら毒針を投擲し、相手に接近します。


「ぬん! 」


「ふっ! 」


毒針を迎撃するための拳の振り下ろしでこちらにまで衝撃が来ますが、それを少しばかり体勢を変えることで受け流し、歩みを止めることなく相手に近づき短刀で首を狙います。


「はんっ! 」


それを鼻から抜けるような嬌声を発しながら首を反らすことで躱され、下からの振り上げが迫りますが、これを後方へと一回転することで避けます。


「ぬっ! 」


その時に膝の皿へと毒針を数本刺しておき、着地すると同時に再度駆け出します。短刀の柄で毒針を打って深く刺しこみ、怯んだ相手の喉仏を殴り付け人中を穿ち、回し蹴りを股間に放ちます。


「っ?!?!! 」


相手がくしゃくしゃに表情を歪めますが……そんなわかりやすく弱点を晒しているからですよ。私だって嫌なんですから…………。


「フッ! 」


見たくないのを我慢して首を狙って短刀を振るいますが、その手首を掴まれ握り潰されながら反対側の地面に叩き付けられます。また反対側へと叩き付けられる前に逆の手に持ち替えた短刀で相手の手首を切り落とそうとしますが、直前に手を離され失敗。そのまま投げ飛ばされるのを空中で回転して体勢を整えて着地します。


「し、紳士の股間を狙うなど…………」


「磨り潰して豚の餌にしてあげますよ」


そもそもそんなわかりやすく弱点を晒してるのが悪いと思うのですが……そもそも防御力どうなっているんでしょう? 武器を装備しない方が拳打の威力が上がるのと同じで防具を装備しない方が良いというスキルでもあるのでしょうかね? まぁ、変態さんの考察は於いて……そろそろアレを切り取りましょ―――――――


「――――――見つけたわよジェノサイダァァァァァァァァ!!!!!!! 」


また新手ですか、そういえば大きい反応は二つでしたね? 正直もう色物は勘弁してもらいたいのですが…………変態さんに対する攻撃をキャンセルして、相手が振るう大鎌の一撃をバックステップで躱します。周囲の木々ごと薙ぎ払われたその一撃によってちょっとした広場が出来上がり、ダメージから回復した変態さんと共に三つ巴の様相となります。


「やっと見つけたわよ! 私はあなたを倒して――――きゃっ?! な、なんて格好してるのよ?!! 」


「ぬ? 吾輩のことですかな? 」


「アンタ以外に誰がいるのよこの変態!! 」


「変態とは手厳しい! できれば変態紳士とお呼びください」


「何が違うってのよ?! 」


よくわからない彼なりの拘りがあるのでしょう…………多分。それはそうと彼女を観察します。武器は大鎌であり取り回しが難しそうですが、先ほどの周囲の物ごと薙ぎ払う攻撃を見る限りそんな隙は無さそうです。格好はゴスロリでよく似合ってますね。


「大分違いますぞ! 私は変態ではなく変態紳士! ただの変態に成り下がらないよう常に自分を紳士道で諌めておるのです」


「あっそう……」


彼女の薄い反応と同じく私もあまり興味ないので攻撃します。投擲した毒針はそれぞれ弾かれてしまいましたが、大鎌の彼女には爆薬付きですので目くらましができます。


「っ! もう鬱陶しい! 」


そのまま変態さんの懐に潜り込み短刀を心臓へ、わかりやすい弱点へと膝蹴りを――――――


「――――――紳士道5箇条そのいぃぃいちぃぃぃい!!! 」


――――――喰らわせようとしましたが上からスキルのエフェクトを纏った振り下ろしが来たのですぐさま後方へと退避、さっきまで居た場所に大穴が開きます。


「常に自身の正しさを疑うこと! 」


「…………なんか急に語りだしたんだけどこの変態」


それほどただの変態扱いされるのが不服だったのでしょうか? まぁ、関係ないので攻撃しますけど。話しながらも大鎌の袈裟斬りを横に跳んで躱し、そのまま引くようにして追撃されるのを防ぎつつ、三角飛びの要領で首へと短刀を突き込みますが、変態さんの拳に邪魔されます。


「紳士道5箇条その2! ……信じることは美徳だが怠慢である」


彼のジャブを左右のステップで躱しつつ時折腕を切りつけますが、《硬化》でも使っているのでしょう、傷が浅いです。


「……まさか全部言う気ですかね? 」


「知らないわよ! いいからあなたはさっさと殺られなさい!! 」


「普通に嫌ですね」


そんなところに横から大鎌の薙ぎ払いが来てその状態から脱します。彼女は石突で変態さんの顎を打ちつけて怯ませ、そのままこちらに連撃を放ってきます。大振りの袈裟斬りを敢えて前進して躱し、誘いに乗った彼女が自身に大鎌を引き寄せるようにして追撃してくるのを跳躍して刃の上に乗ることで躱しつつさらに接近、鼻っ柱を殴り折ります。


「ぶぅっ?! 」


「レディの扱いがなっていませんな?! 紳士道5箇条その3! この世に普遍的正義など存在しない!! 」


そのまま首を落とそうとしましたが、復帰した変態さんの飛び膝蹴りが来たのですぐさま跳躍して回避します。…………思いの外、この三竦みの状態はやりづらいですね? 外から他のプレイヤーも見ているでしょうし、あまり手札は晒したくないのですがね…………。


「ええぃ! この変態は五月蝿いし、私は目立てないし最悪じゃない! 死ね! 」


「おっと?! ……危ないですな? 紳士道5箇条その4、無知は傲慢、博識は謙虚、ですぞ? 」


「知るわけないでしょ?! 」


……………………いやぁ、彼らキャラ濃ゆいですねぇ……こんな時でも目立ちたがる大鎌の彼女に、自身の持論を展開し続ける変態の彼。眺める分には面白いですけど関わりたくはない人種の方々ですね。


「ふふん、そして紳士道5箇条その5!! 己を抑圧するべからず!! 自身を曝け出しなさい!!! 」


「…………本当に最後まで言い切ったわね? 」


「えぇ、勿論ですとも! そして今条件は整いましたぞ! 」


「は? 」


なにやら条件を満たすためでもあったようですね? 少し警戒をしましょ—————


「『宣誓・我は己の在り方を否定する者を打ち砕く者である』」


「っ! 」


これは予想外ですね、というか私は未だに『宣誓』スキル無しなのでしょうか? これの習得方法がわからないのですが、彼は獲得していたようです。


「『宣誓・我は己の在り方を肯定する者を決して裏切らぬ者である』」


どうやってか知りませんがただのプレイヤーではないようですね、変態だと侮っていた部分があったというのにこれは思いの外楽しめそうですね?


「ふん! 『宣誓・私はあらゆる輝きを貶める者』」


「…………貴女もですか」


「『宣誓・私は常に輝き続ける者』」


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種族:鬼人

名前:変態紳士Lv.48《+10》

カルマ値:112《善》

クラス:拳闘士 セカンドクラス:武闘家 サードクラス:露出狂

状態: 露出《露出面積が大きいほど防御力上昇:大》

宣誓: 紳士道《STR上昇:極大・VIT上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》


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種族:魚人

名前:ブロッサムLv.51《+10》

カルマ値:-111《悪》

クラス:大鎌師 セカンドクラス:舞踏家 サードクラス:アイドル

状態:短気《気に入らない事を素直に罵倒するほど攻撃力上昇:大》

宣誓:私が一番《STR上昇:極大・DEX上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》


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強化が終わったお二人が戦意を滾らせそれぞれ構えます。どうやら発動するのにも条件が必要らしいですが、それも不明でしたね。変態さんは自分の素晴らしさを説くことですかね? 彼女はまったく解りません、なぜ発動出来たのでしょう? 習得方法は? まぁ、どのみち教えてくれるはずもないですね…………それよりも如何にして手札をなるべく晒さずこの二人を倒すのか………………これが俗に言う『縛りプレイ』という『遊び方』ですか…………………………いいじゃないですか!!!


「吾輩の素晴らしさ、その身に刻みつけましょうや! 」


「目立つのは私だけで充分よ! 」


「ふふっ、楽しいですね? 」


三竦みの状態で互いに睨み合い、そして同時に中央へと駆け出す――――


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宣誓スキルは超特殊な条件が習得にも発動にも必要であり、個人によってその条件も異なるいわばユニークスキルです。

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