51.第一回公式イベント・一日目その2
新キャラ登場!
「ふんっ! 」
「がぁっ?! 」
んん〜、これで粗方片付きましたかな? いきなり他のパーティーと出くわした時は思わず飛び膝蹴りを喰らわせてしまいました、これでは紳士失格ですね…………。
「この変態強すぎ…………」
最後の一人もその一言を最後にリスポーンしていきましたな?
「ふむぅ……秩序一位である吾輩はどれほどの間隔でマップに表示されるのか……それによって取れる戦略も変わってきますな? 」
そう独りごちていると、なにやらマップに反応があるようですな? 最初の全プレイヤーの居場所が表示されてからまだ一時間と経過されていないはずですが?
「これは……なるほど、彼女でしたか」
そこに表示されていたのは一際大きく色の濃ゆい印でした。彼女……おそらく、ジェノサイダーと呼ばれプレイヤーたちから畏怖される、レーナというカルマ値極悪のプレイヤーでしょうな…………。
「一時間も経たずに表示されるとは…………少しばかり同情しますな」
彼女は一人だけカルマ値が飛び抜けており、それ相応にポイントも高い……秩序一位の吾輩のポイント2倍と彼女のポイント等倍はほぼ同額、それこそ同じ陣営にも狙われるだろうほどの高さ。他の陣営など2倍になるのだから、報酬が欲しければ積極的に狙ってもおかしくはない相手でありますな。
「そして見たところによると吾輩が今いるエリアにほど近いですな…………」
これはもはや天啓でありましょうや、彼女とは初めてヤリ合いますがどれほど通じるのか? そして秩序のトップとして後続にその勇姿を見せつけねばなりますまい!
「ぬふっ! 彼女とヤリ合うと思うと吾輩の筋肉も脈動するというもの!! …………ぬん? 」
大胸筋をプルプル震わせていると、また新たなパーティーが目の前に現れましたな?
「げぇ?! へ、変態紳士?!! 」
「ぬっふふふふふ」
この今から楽しみ過ぎて溢れ出るパッションを晴らすには丁度いい相手でありましょう。すぐ様にポージングを取りながら急速接近、前衛の一人である剣士の頭を自慢の拳でもって爆砕し、回し蹴りを神官に放って吹き飛ばす。
「じ、陣形を立て直せ! 」
リーダーが指示を飛ばすが……少しばかり遅いですな?
「ハンッ! 」
鼻から息を出しながら槌に見立てた拳を振り下ろし、もう一人の剣士を釘のように地面にめり込ませる。
「冗談だろ?! 」
驚く魔術師の男性を標的に変え、地面に埋まった剣士の頭を足場にして跳躍。空中で一回転して踵落としを喰らわせる……その衝撃で、近くにいた軽装の弓使いも爆発四散してしまいましたな?
「つ、ツイてねぇ…………」
「おや? ここはツイておるようですぞ? 」
「っ?!?!! 」
埋まった剣士の頭をサッカーボールのように蹴飛ばし、ボヤくリーダーである彼の股間を握る。
「お、俺はノンケだが……? 」
「大丈夫です、私はバイであり初めての方を導くのも慣れています……」
「や、優しく……な? 」
「えぇ、もちろんですとも…………ふんっ! 」
その会話を最後に彼の股間を握り潰して終わりです。
「あぁ……彼女とはどれほど楽しい蜜月が送れるのでしょう? 」
吾輩は筋肉が激しく脈動するのを止められませんでした。
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まったく腹立たしいわ! なによジェノサイダーちゃんって!! ベータ版の時から数少ない混沌勢力を引っ張ってきたのはこの私ブロッサムなんだから!!
「なんなのよあの女!! 」
「お、俺らに聞かれても…………」
「うるさい! 」
私に口答えした生き残りを大鎌の石突で首を叩き折る。
「弱いくせに口答えしてんじゃないわよ! 」
あ〜、もう! イライラするぅ!! これも全部あの女のせいだわ! 少し可愛くて目立ったからって調子に乗っちゃって!!
「混沌のカリスマは私だけで……あら? 」
マップに表示? まだ一時間も経っていないけれど…………これは、へぇ〜?
「幸先がいいじゃない? 」
見ればすぐ近くに向かっているようだし、イベント開始直後に私がアイツをキルすればみんな誰が本物なのか自然と理解するでしょう。
「ふん! 精々束の間の夢を見ることね! 」
どんな風に殺してやろうかしら? その自慢の顔を台無しにしてから? 装備を剥いで下着姿の写真を撮る? 全裸はさすがにできないけどそれくらいならできないこともないし?
「ふふっ、ふふふふふふ」
愉悦の笑みを抑えることもなく、私はあの女がいる方角へと走り出した。
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「おや? 」
最初の全プレイヤー一斉表示から二時間近くしてようやく私以外のプレイヤーがマップに表示されましたね?
「……割と近いですね」
マップを見ると、今向かっている森林エリアの反対側に二つほど大きく濃ゆい反応がゆっくりと近づいています。この距離と速度なら初日からぶつかることはないでしょうが、どうやら秩序の一位と混沌の二位の方たちのようです。なぜ高ポイントが近い場所に集まってるのかは完全ランダムなようなので気にしないことにしますが…………プレイヤーがたくさん寄ってきそうですね?
「これはポイントがよく稼げそうです」
相手にも私のことは気付かれているでしょう。これまでに私だけ二回もマップに表示されましたから、所在を知るのは容易でしょう。
「…………とりあえず目立ちますか」
まず特大の火薬玉を用意し、それを投岩スキルなどで思いっ切り空に打ち上げ即席の花火とします。
「……わかってましたけど綺麗ではありませんね」
激しい轟音と共に巨大な爆発が空を彩ります。これで私の居場所は遠くからでもわかるでしょう。
「さて、行きましょうか」
たまに空に打ち上げながら森林エリアを目指して移動します。
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「……見事にたくさん釣れましたね」
いち、にぃ、さぁん…………数十人はプレイヤーが追ってきていますね、そのまま森林エリアへと駆け抜けます。
「……看破で見る限り、同じ陣営の方にも狙われているようですね? 」
不思議なことに私だけカルマ値が低いですからね、運営のピンポイントな嫌がらせを疑ってしまいます。
狙われる理由としては、個人報酬目的と、他陣営に殺られてしまうぐらいなら自分たちの陣営のポイントとする方が良いという考えでしょう。
「まぁ、殺られるつもりはサラサラありませんが」
そのまま森林エリアへと突っ込み、木の幹を足場に壁キックの要領で駆け抜けながら油や発火性の高い薬品を撒いていきます。要所要所で《乾燥》の魔術も掛けておきましょう。
「お、追い付かねぇ! 」
「待ちやがれ! 」
「今さら逃げんじゃねぇよ! 」
「囲め! 数で押し切るぞ! 」
「今は陣営関係なく協力しろ! 」
ふむ? 水面下で取り決めでもあったのでしょうか? 倒すまで協力し合い、誰がトドメを刺しても文句なし……というような。
「まぁ、関係ありませんけどね」
いつの間にかざっと見て三桁ぐらいに増えたプレイヤーを尻目に《突風》と一緒に一気に跳躍、そのまま《空蹴》スキルで駆け抜け遥か上空から《熱線》と《微風》を放ち、よく乾燥した薪などをばら撒きます。
「うわっ! 」
「こいつ森で火を着けやがったぞ! 」
「何考えてんだよ! 街じゃねぇんだぞ?! 」
慌てて消火しようとする魔術師を投擲で上空から狙いやすい頭をぶち抜いて殺し、退避しようとする先へと鉄球を砲弾のようにして投げ飛ばして妨害すると共に火の手を広げ、鉄球に仕込んでいた毒気を撒き散らします。
「煙で前が見えん! 」
「くそっ! どこ行った?! 」
「やべっ死ぬ! 」
騒ぐ彼らを尻目にそのまま火の手が広がりきる前に火災範囲から抜け出し、さらに燃料を撒き散らしながら森林エリアから抜け出します。
「こんなものですかね? 」
獲得ポイントの項目を見ると結構増えていますね……おや? 倒した人数もカウントされているのですか。それによると100人は一気に焼き殺したようですね、幸先が良いです。
「同じ手を使うのは悪手ですかね、次はどうやって殺しましょうか……」
次の『遊び方』を考えながら、私はマップに他のプレイヤーが表示されるのを待ちます。
森は燃やすもの。
そして忍べよ、『隠れ鬼ごっこ』だぞ!