50.第一回公式イベント・一日目
開幕ジェノサイド
真っ白な視界が開けるとそこは草原であり――
「げぇっ?! ジェノサイダー!! 」
――二組のパーティーが居ましたね、ランダムとは言え初っ端から三組が会敵するとは幸先が良いですね。
「おい、そっちの! ここは共闘――」
敵の数を確認すると共に片方のリーダーだと思われる男性の頭を鉄片を投擲することで貫きキルし、そのまま足元に『火炎魔術』の《噴射》により安定した加速によってパーティーのド真ん中に躍り出ます。
「リーダー?! 」
未だにこちらに反応し切れていない彼らを尻目にその推進力を殺すこと無くパーティーのヒーラーと思わしき男性の首を後ろ回し蹴りによって折り砕く。
「がぺぇっ?!! 」
「っ?! 」
その時の悲鳴によってやっとこちらを向いた魔術師の女性の首を片手で締め上げながら再度《噴射》によって加速し反対のパーティーへと突っ込み、手に持っていた女性を振り回して前衛と後衛を分断します。その後は女性に火薬玉と毒煙玉を仕込んで前衛に投擲し、背後を確認せずに後衛に突撃、詠唱していた魔術師の首を鉄片の投擲によって貫いて殺し、ヒーラーの足を引っ掛けて転ばしながらもう一人の魔術師の首を落として足元に転がったヒーラーの女性の首を踏み折り殺します。
「て、撤退だ!! 」
撤退の指示を出すのは片方のリーダーであり、その掛け声に残ったもの同士で臨時のパーティーを再編成して逃げようとします。が、その先へと鉄球を砲弾のようにして投擲、剣士の頭をぶち抜き巻き込みながら地面に着弾し盛大に爆発炎上、毒煙まで噴き出します。
「しまっ?! 」
出端をくじかれ一瞬硬直した彼らの隙を見逃さず、すぐ様に鉄片と毒針を投擲しながら突貫。槍使いが投擲によって頭を貫かれたのを横目に確認しながら、短剣使いの顎から頭頂部まで短刀で貫き、即席の盾として最後の魔術師からの攻撃を防ぎつつ、突っ込んできた槌使いの振り下ろしを半身になって躱してからその鼻っ柱へと右ストレートを叩き込みます。
「ぶべらっ??! 」
後頭部から地面に倒れ込んだ彼の頭を踏み割り即死させ、残った剣士の心臓をただの長針の投擲によって貫通させ殺します。
「嘘でしょ……」
最後に一人だけ残った魔術師へと短剣使いが持っていた短剣を頭へと投擲して終わりです。
「こんなものですかね…………」
最初ですから仕方ありませんが、物足りませんね………………。
「宣戦布告の彼をただ待つのも退屈ですし、当初の予定通り『遊び』ましょう」
その場を後にしつつこの広大な草原地帯を見回し、見事に何も無いことに溜め息が漏れました。
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「そろそろか? 」
「えぇ、多分ね」
たった今襲撃してきたパーティーを殲滅したところだが、そろそろ30分が経ちマップに表示される頃だろう。
「おっ、出たぞ」
ケリンの呟きに反応しマップを確認すると…………。
「…………遠いな」
「そうね」
「僕は良かったと思うけどね? 」
俺らが居るこの岩山のフィールドとおそらくレーナが居るであろう草原のフィールドは大分離れてる。
「……急いで最終日間近ってところか? 」
「そのくらいだろうな」
俺の問にラインが答えてくれるが、これは急がないと不味いぞ…………。
「ジェノサイダーちゃんだけ目立ってるねぇ〜」
「…………色が濃ゆいし印が大きいですから一目でわかります」
早くレーナのところに行かねぇと! アイツに限ってそう簡単にやられるとは思わねぇが、ポイントや名声狙いの奴らに断続的に襲われれば精神的に疲れるはずだ。
「急ぐぞ! あの女をぶっ倒すのは俺だ! 」
「ふぅ、そうだな」
「仕方ないわね……」
俺の掛け声にラインとエレノアが半ば呆れながら同意してくれる。
「…………私も構いません、彼女には言いたいことがあります」
「奴を射抜くまでスッキリしない」
「マジかぁ〜、仕方ないけどさ、一つだけ訂正ね」
チェリーとミラはやはりレーナに思うところがあるようだ、多分まだ子どものことなどアイツのやり方に違和感があるんだろう。そしてケリンは…………。
「……なんだ? 」
「レーナちゃんをぶっ倒すのは俺じゃなくて、俺たちね? 僕だってあの子に恨みがないわけでも言いたいことが無いわけでもないんだからさ!」
「そうか、そうだな……! 」
そうだった、アイツをぶっ倒すのはみんなでだ! 俺たちはパーティーで、俺だけがアイツに苦汁を舐めさせられたわけじゃない!
「……ケリンの言いたいことってなんだ? あったのか? 」
ラインが疑問を呈するが、確かに他のメンバーはわかるがこいつはわからん。あの死に方が不満だったとかか?
「……いや、連絡先教えてほしいかなって? 」
……………………………………コイツッ?!!
「……そ、そうか」
「てめぇ……」
「はぁ……」
「……最低」
「あまりそういうのは感心しません」
こいつの美人好きは今に始まったことじゃねぇが、よりにもよってアイツかよ?!!
「いや、だって……可愛いのは事実だし? 」
確かにそうだがアイツはダメだ!! 憤慨する俺をラインが窘め、ケリンがケラケラ笑いながらレーナを目指して先へ進んでいく。
ハンネス君、レーナさんにときめいてしまったのは事実ですが恋愛感情や嫉妬からではなくガチでケリンの事を心配しています…………だってレーナさんだもんね、仕方ないよね。