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42.√甲

12月忙しくなりそうなのに新しい小説のネタが降ってきたので速攻でメモした。いつか形にして投稿したい。

 

 ――――ウオォォォオオォォォオオオ!!!!!!!


  広場にて勝鬨の声が上がる、それを聞き眺めながら私は元領主だった物に促す。


「さぁ、約束通り命は助けますのでちゃんと謝罪を受け入れられるよう頑張ってくださいね? 」


「ぁあや、ぉぉおなぁ? 」


  《契約》のスクロールによって民衆――元奴隷たち――に謝罪が認められるまでまともに喋れなくなったコレを伴って私も広場に出る。


「っ! 戦乙女様だ! 」

「領主のクソ野郎もいるぞ! 」


  ……………戦乙女ってもしかして私のことですか? 演説の効果ですかね? ジェノサイダーといい戦乙女といい……もはや諦めましょう、人からどう呼ばれようが関係ありませんからね。


「皆さん」


  そう私が一声かけると、途端にシンと静まり返る広場に少したじろぐ。


「元領主が今までのことを謝罪したいようです、どうか聞いてあげてください」


  そう言って領主を台に導いたあとは下がる。


「今さらっ……! 」

「でも戦乙女様が言うなら……」

「聞くだけだしな……」


  そう言って憤怒や恨みの表情を浮かべながら広場の人々が注目する中で領主は服を全て脱ぎ捨て土下座の体勢を取る…………中々にキツイものがありますね…………。


「うっ! あぉうぇ? おっおっ!! 」


  一瞬にして静まり返る広場、さっきの私の比ではなく本当に……衣擦れの音すらせず、まるで時が止まったかのような錯覚を覚えます。


「ふ、ふざけるな!! 」

「てめぇ何考えてやがる!!? 」

「イヤァッ! 」

「女性の方は下がって! 」

「……そんな、領主様? 」


  一拍置いて広場に溢れる怒号と悲鳴。ほとんど全員が視線だけで人を殺せそうなほどに怒り心頭に発しており、中には領主のシンパだった者の絶望の呟きまで聞こえてくる始末です。これでは『謝罪を受け入れられる』ことはなく、死ぬまでこのままでしょう。

  中々に良いオブジェができました。無口の方は無様ですがそれまでですし、お喋りな方は広場に着いた時にはもう民衆の手によって殴り殺されてましたからね。無様でしたがボコボコで綺麗ではありませんでした。


「……本当にこんなことをする必要があったのか」


「いえ、八割趣味です」


  ロノウェさんと、騒ぎを尻目に静かに話す。


「貴様……」


「まぁ、これでアレをこれ以上担ごうとする人も、支持する民衆もいなくなったでしょう? 」


「……」


  貴族……ましてや領主レベルになると、それはもう面子や威厳という目に見えないものが必須ですからね? 仮に形だけでも謝罪を受け入れられたとしても、領主どころか貴族としてすら復帰もできず、中央政府にも見捨てられるでしょう。

  なによりアレはもう人間ではありません。常に鳴き声を発するオブジェです。


「では、そろそろ行きましょうか? 」


「……」


  そろそろではないでしょうか? 革命も終わり、後は地味な戦後処理や今後の統治、中央政府へ議会を承認してもらう為の働きかけなど……大事ですが彼の仕事ではありませんし、なによりも―――


「―――私を殺したいんでしょう? 」


「………………お前は危険過ぎる」


「そうですか? そうかも知れませんね」


「なぜ、お前が協力したのかはわからない…………だがまともなことを考えてのことではないはずだ」


  まぁ、確かに私の嫌いな貴族という人種を貶め、それまで人としてすら見ていなかった格下に敗北し屈辱を味わわせるという『遊び』でしたから、真面目に人々を助けようと思ってやったことではありませんね。


「混沌に属し、まともな人間性を持ち合わせていないお前がこの解放運動の功労者であり、臨時政府に大きな発言力を手に入れることは受け入れられない」


「あら、それは残念です」


  別にそれなりに楽しかったのでやっぱり報酬無しと言われても構いませんけどね?


「やっと我らは解放されたのだ……それを貴様のような邪悪に内側から掻き乱されてはかなわん」


  あらあら、邪悪とまで言われてしまいましたね? そこまで酷いことをした記憶が無いのですが……………………??


「協力してもらっておいて厚顔無恥なのは理解している、なんなら俺を恨んでくれても――――――」


「あ、その話もう少し続きます? 結論から言えませんか? 」


  少し言い訳が長いです。確かに私は実際の功績も大きく排除することに多少の罪悪感があるのかも知れませんが、こっちは最初にあなたに会った時からお預けくらってるんですよ。


「私も―――あなたと『遊びたくて』さっきからソワソワしちゃってるんですよ」


「……」


  腕利きと言われていた四人は私を満足させるほどではありませんでしたし、領主舘の彼は街中だということで全力を出すことをセーブしている感じでしたしね? 楽しみで仕方ないんですよ。


「なので……あなたはどこでなら本気を出せますか? 」


「…………ついてこい」


  そう言って彼は私に背を向けて歩き出す。その方角は街の外であり海に近い場所です―――


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 クエストNo.番外

 ワールドクエスト:クレブスクルム解放戦線・√甲

 依頼者:ロン老師・ロノウェ

 依頼内容:クレブスクルム戦闘員が街の各地で混乱を起こしている間にロノウェと一緒に領主館へ強襲、領主の凄腕の用心棒を撃破し体制を崩せ。

 →後願の憂いを断つために全力のロノウェを撃破し生き残れ。


 《カルマ値が規定値より大幅に下回っているためルート分岐しました》


 報酬:5レベル分のスキル含む経験値・100万G・真なる海神クレブスクルムの加護


 注意:ワールドクエストはゲーム内のシナリオや今後に深く関わるクエストです。その成否に関わらず受け直すことも何度も受けることもできません。

 受注しますか? Yes / No


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 –––––––––––おや? …………なるほどルート分岐ですか……カルマ値はここでも作用してくるのですね。彼が初対面からあれほど敵愾心を顕にしていたのも、私のカルマ値が低かったためだったんですか。

  とりあえず『Yes』を押してロノウェさんのあとをついていきましょう。


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ルート分岐条件

√丁→解放運動失敗、奴隷への弾圧強化とプレイヤーの入街制限が始まる。

√丙→カルマ値が100以上あるとロノウェに素直に認められ、報酬もその場で貰える

√乙→カルマ値が中立であると、ロノウェに拳で人柄を見極めるために模擬戦を挑まれ、制限時間生き残れば報酬が1.5倍になり貰える。

√甲→カルマ値が-200以下の《極悪》であるとロノウェが全力で殺しに掛かってくる、負ければ報酬は一切貰えず、街にも入れなくなる。

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