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40.クレブスクルム解放戦線・破軍その3

普段あまり返信しない作者さんから感想の返信貰うと嬉しくないですか?私は嬉しすぎて十数秒フリーズした後ふふってなりました。(気持ち悪い)

 

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「早くソイツを始末せんか!! 」


  焦りを滲ませて、私は必死に声を張り上げ情けない部下を罵倒する。


「無茶言いなさんな、領主様」


「そうだ、相手はあのロノウェだ。街中で全力を出せないコイツを俺とヤンの二人がかりで攻め、周りを衛兵で囲んでなんとか持っている状態、むしろ善戦しているくらいだ」


「そんなことはわかっておる! それをなんとかするのが貴様らじゃろう?! 」


  くそっ! 反乱した奴隷を見せしめにするからと、もうしばらくはないだろうと高を括っていたか!

  油断していたところを街の至る所で一斉反乱、ワシに至っては隠し通路も逃げ道もないところに追い詰められてしまった。


「くそっ! どこにこんな数の武装した奴隷共が潜んでいた?! 」


  ありえんじゃろう?! それこそ地下に潜っていたとしても信じるしかあるまい! しかも襲撃があってすぐにどこからか街中に響いたあの演説!! 女の声だったが、それにより街のほぼ全ての奴隷共が奮い立たせられ蜂起しよった、忌々しい!!


「……ふん、随分と余裕がないな? 」


「ぬかせ! そちらも攻めきれてないではないか! 今に残りの二人も駆け付けてくる、その時が貴様の最期じゃ! 」


  あの二人も遅いではないか?! 広場で見せしめをしていただけだろう? 何を遊んでおるのか、また彼奴の悪い癖が出たのか? こんな時に……。


「……さて、来るかどうか」


「……何が言いたいのかねぇ? 」


「ふん、裏切り者に語ることなどもはや何もない」


「そうかい」


「あぁ、妹をそこのブ男に売り渡した罪……清算してもらう」


  まだあのことを恨んでおるのか?! 器の小さい男め!! ちゃんと骨は返したではないか?! 少し遊び過ぎただけだ!!


「お前こそ僕の愛しの――――」


「ヤン、お前もお喋りをやめろ、そろそろコイツを殺す。そしてアイツはお前じゃなくてロノウェを選んだのは事実だ」


「ウェナン……チッ、わかったよ! 」


「そうだ! 早くケリをつけろ! 」


  ちんたらしてたらいつここに穢らわしい奴隷共がなだれ込んでくるか……想像しただけで怖気が走るッ!!


「悪く思うなよロノウェ、今こそここでお前を――――」


「――――まだ終わってなかったのですか? 」


 ――――ゴロンッ


  …………………………は? 今何が起きた? なぜヤンの首がない? この私の足元に転がってきたものはなんだ?


「随分速かったな……」


「ノロマとお喋りしか居ませんでしたので」


  なんだこの女は? この女がヤンを? それよりいつから入り込んでいた?


「っ! え、衛兵! その女を捕らえろ! 捕まえた者は好きにしていい! 」


「だ、そうだが? 」


「別に問題ありませんので、あなたは最後の一人をどうぞ」


「……これはまずいな」


  最後の? ノロマとお喋りとはまさか……?!


「はい、いーち、にぃーい、さーん、」


 ゴトン、ゴトンッ!、ゴロンッ!


  ………………なんだあの女は、なぜ仕留めきれない? 美しい顔をしてなぜあのように顔色を変えずに淡々と首を落とせる?


「……ロノウェ、あの化け物はなんだ? 」


「こっちが聞きたいくらいだ、それよりも覚悟はいいな? 」


「……俺も終わりか、サシでお前に勝てるわけがない」


「そうだな、だから……死んどけ」


  そうしてウェナンまでロノウェの拳によって頭を爆砕され死んでしまった…………終わりなのか? 私の栄華は……いや、命すら危ういぞ!!


「こっちも終わった――――何をしている? 」


「…………暇だったので新薬の実験ですが? 」


  …………おぞましい物を見た、女が手足を切り落とした衛兵に白色透明の液体をかけると煙を上げ、そ奴の顔がなくなっていた…………あまつさえそれが実験? 顔色も変えずに? 今も答えながら別の液体を別の衛兵にかけ、その者の口がくっ付いたところだった。


「うーん、こっちは効力が弱そうですね? せいぜいが表面を溶かす程度です」


「……やめろ、もういいはずだ」


「? あぁ、そうですね、そっちももう終わりましたもんね、あとは領主だけですか」


「そういう…………いや、いい。そうだ、今は領主だ」


  っ?! こ、こちらに来る! あの悪魔が!!


「ま、待ってくれ! 助けてくれ! 金でも地位でもなんでもやる! だからどうか!! 」


  私は恥も外聞も投げ捨てて命乞いをする。誰だって躊躇なく数を数えながら首を落とし、生き残りを達磨にして薬品の実験にする様を目の前で見せられたらそうするだろう、私だけではないはずだ…………!!


「この期に及んで……」


「た、頼む! どうか……!! 」


  ワシはまだ死にたくないし、死ぬとしても人として原型を留めて死にたいのだ!!


「……貴方の大切な物をくれたら、いいですよ? 」


「おい、何を勝手なことを……! 」


「どうせ領主は直ぐには殺せないんでしょう? だったらいいではないですか」


「それはそうだが…………」


「ほ、本当か?! 」


  奇跡が起きた! あの悪魔が命乞いを聞いてくれるという、この際金などいくらでもくれてやる、命あっての物種だ。


「金か? 地位か? なんでもやろう、その前に保証が欲しい! 」


  人が要求する物などたかが知れておる、此奴の気分が変わる前に私は《契約》のスクロールを取り出す。


「これは? 」


「これに契約内容を書き、サインすればその者は中立神、《無色透明の空神》の御力によって違反することはできなくなる」


「へぇ〜、便利な物があるんですね? 」


  そう言って女は内容を確認した後に躊躇なくサインする。やった! やってやった! 馬鹿め!! 命さえあればどうとでもなる! それこそ復讐の機会を窺う事もできよう!


「それで? そなたの欲しい物はなんだ? 」


「そうですね、まず広場にてこの印が左頬にある人たちに――――」


  なんだ? 金でもバラ撒けと? 今まで虐げてきたことに対する謝罪と賠償を求めるのか?

  そんなことは負けた時点ですることは決まっているようなもの、道具共に頭を下げるなど……屈辱の極みだがこの際この程度で命が救われるのなら安いというもの――――


「――――全裸で土下座して謝罪してください。あなたの人間としての尊厳が欲しいです」


  ――――は? この女は今なんと言ったのだ?


「あぁ、もちろん人間としての尊厳を差し出すのだから、謝罪は人語なんていう高尚な物は使わないでくださいね? 」


  もちろんとはなんだ? お前は何を言っている? 私は思考することを拒否する頭を必死に働かせこの悪魔から逃れる方法を探すが――――


「おや? 効果を発揮する時は結構派手ですね? 」


 ――――視界の隅で《契約》のスクロールが発動した光を確認し、絶望で目の前が真っ暗になったのだった………………。


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レーナさん前話から飛ばし過ぎて酷い......

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