27.北の地下通路その3
月間ランキング1位を獲得致しました……もう怒涛の展開すぎて作者には何が起きてるのかわかっておりません。これも評価してくださる読者の皆さまのおかげでございます、本当にありがとうございます。
作者と同じ陰の者
「……はぁ〜」
思わず溜め息を洩らしてしまう……その原因である彼女はたった今襲ってきたサハギン三体の首を落として秒殺したところだ…………本当にどんなPSしてるんだろこの人……。
「? 大丈夫ですか? 」
「え、えぇ大丈夫です。気にしないでください」
三日前に曲がり角で遭遇してしまったのが運の尽きだった……同じ検証班のフレンドがリアルの急用で来れなくなったのだから、素直に一人で来るのを止めておけばよかったと後悔しても後の祭りですよね。
「そうですか、なにかあったら遠慮なく言ってくださいね」
「はい、ありがとうございます」
まぁ、しかしながらこの人ジェノサイダーさんは…………いや、レーナさんは噂やプレイスタイルとは違って意外と気配りしてくれる。
最初こそ強引に連れてこられたし、ふとした拍子に恐ろしくなるが本当に無理なことはさせなかった。
むしろ『あれはなんですか? 』『ではこれはどうなっているのですか? 』『あれはそういう意味だったのですか? 』と無邪気な子どものように知らないことを聞いてくる様は好感すら覚える。
僕自身も検証班として、語りたがりとしてそんな彼女に知識を披露するのは気持ち良かったし知らないと答えれば『そうですか、ではこれは――――』と素直に引き下がり別の質問をしてくる姿は本当に彼女があのジェノサイダーだとは思えない………………なにより可愛いし…………………………。
今だってそうだ、僕のレベルが低いために敵は彼女が全てこちらに来る前に倒してしまうし、ちょくちょく後ろを振り返っては気遣いを見せてくれる。
「……」
そんな彼女の後ろ姿を眺めながら考える……後ろ姿も綺麗だな、歩く度にお尻が、スラッとした脚が美味しそ――――って違う違う!! そうじゃなくて!! 僕が考え込んでいること、それはレーナというどこかリアルで聞いたことのある名前と、彼女の顔にどこか見覚えがあるのだが………………そのことが妙に気になって仕方がない。
「……僕みたいなオタクにこんな美少女な知り合いいるわけないし(ボソッ)」
本当にどこかで……? それこそリアルの学校で――――
「――――あっ! あぁーーー!! 」
「っ! いきなり叫んでどうしました? なにか見つけましたか? 」
「っ!! い、いえ! なんでもありません!! 」
――――そうだ! 同じクラスの一条玲奈さんだ!! 髪には白のメッシュが入ってるし、瞳の色もワインレッドだがそれだけだ、後はまったく変わってない。レーナという名前だって下の名前を少し文字っただけだ!!
「……そうですか? 」
「は、はい! ビックリさせてしまい申し訳ありません!! 」
危ない、今レーナさんは手に短刀を持っている。下手なことされたら殺される……ことはないけど怖い目には遭うだろう。
それよりもそのレーナさんだ! クラスではまったく喋らず友人どころかクラスメイトすら交流がまったくなく、静かで、けれどもそのお嬢様然とした佇まいと整った容姿からある種の偶像……アイドルと化してたあの人だ!!
学校どころかクラスでもあんまり喋らないし、先生とも連絡事項以外では会話せずクラスでいつも一人でじっとしてる大人しい印象しかなかったから全然ジェノサイダーと結びつかなかった…………これもう詐欺だよ。
「……遂に壊れましたかね? 」
なにやら貶されてる気がしないでもないけど僕は内心それどころじゃなかった……あの一条玲奈さんがジェノサイダーさんだった?! 嘘でしょ!!
まぁこの際それはいいとして、あの一条玲奈さんが手を伸ばせば触れられるほど近くにいるという事実が僕から冷静さを奪っていた…………ついさっきまで一条玲奈さんの顔がすぐ近くにあったんだ…………口に短刀突っ込まれてたけど………………。
「……ついに陰キャキモオタクの僕に春が?! 」
「…………頭大丈夫ですか? 」
「はっ! いえ! 本当になんでもないです!! 気にしないでください!! 」
舞い上がるな俺! そうやって何度裏切られてきた?! オタクは一生オタクのまま!! 嫁を裏切るんじゃない!! はいそこ! でも3ヶ月毎に嫁代わるじゃんとか言わない!!!
と・に・か・く! 俺たち陰の者はナメクジだ! 岩の裏のジメジメした所から出てはいけないんだ!! 陽の下に出てみろ! すぐさまあまりの眩しさに目を焼かれてから干からびて死んでしまうぞ!! だから俺は騙され――――
「そうですか、あまり無理をしてはいけませんよ? 」
「――――」
そう言って至近距離でこちらの顔を覗き込んでくる一条玲奈……いや、レーナさんによって俺の無けなしの理性は吹っ飛び、オタクとしての矜恃をかけた牙城は脆くも崩れ去っていったのだっ――――
「あんまりアレならサクッと首を落としてリスポーンさせてあげますからね? 」
――――――――知ってた。
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ちなみに作者の前期の嫁は血小板でした。