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19.アレクセイ・バーレンス

日刊ランキングのお礼に前話を連続更新しております、まだの人はお気をつけください。


うっ......!

 

「ふぅ……」


  ひっきりなしにくる部下からの報告に対し命令を飛ばし続けさっきやっと落ち着いたところだ。


「お疲れじゃな? 」


「こうも混乱が大きければ仕方ありません」


  早期に詰め所に対する爆破は陽動だとわかったのは幸いだが、それによる市民の混乱の方が問題だった……。

  たった半月前に3桁に届く建物が被害に遭う大火災を経験したばかりなのに、そこに複数箇所同時爆破だ。むしろ市民の混乱を抑えるために手を多く取られた……。


「ふむ、まぁ陽動とわかったのだけ良しとしよう、して敵の本命はやはりここか? 」


「……おそらくは」


  明確に交戦があったのは、貴族街と下町を隔てる門が破られ内部に侵入者があってからだ。詰め所の方で何者かと戦闘行為をしたという報告は来ていない。

  敵は陽動と戦力の分散を狙って詰め所を爆破し、確実にここに迫ってきている。


「戦況の方はどうじゃ? 」


「……そちらも芳しくありません。差し向けた兵士はほぼ壊滅状態かと」


  最初は部下からの報告に耳を疑った。貴族街を守る兵士は下町の比じゃない、それこそ私自ら鍛え上げた軍隊だ。

  それがほぼ鎧袖一触でなぎ払われてるなど信じられるわけがない。


「ふむ、お主は出なくてよいのか? 」


「ご心配なく、ギルドに通じて冒険者達にも応援を頼みました。それにどうやら渡り人たちが自主的に前線に向かっているようです」


「そうか……」


  元々ジェノサイダーちゃん……だったか? 渡り人の間でそう呼ばれている指名手配犯も確か同じ渡り人という情報がある。もしそれが本当ならば当然とも言えるが、素直にありがたい。

  そうやってさらに父である領主と今後の対応を相談していると――――


「報告! 領軍、冒険者、渡り人共同戦線はほぼ崩壊しかかっております! 」


 ――――そう報告しに泣きそうな顔の部下がやってきた。

  まさか戦線が崩壊するとは……これは仕方あるまい、できれば父上の傍を離れたくはなかったが…………。


「……父上、出ます」


「そうじゃな、行ってくるがいい」


 ▼▼▼▼▼▼▼


  そうして駆け付けた現場は酷い有り様だった。お世辞にも人の街とは思えぬ惨状で見渡す限り人の死体で溢れていた……。


「……」


  少し目を見開き驚きの表情をしている目の前の女がこれを作り出したのだろう。たった今この俺の秘技を初見で躱し、あまつさえ反撃までして見せたことから、女だからとか、見た目で侮ることはない。

  第一街に悲劇を齎し、俺の部下を含め大多数の善良な人間を殺傷したのだ、今さら手心を加えるなどありえん! むしろ全力で以って屠ってやる!!


「……よく見たら領主の息子じゃないですか」


「? それがどうした…? 」


  なんだ? 領主の息子ならどうしたというのだ?

  その言葉を発したと同時に奴の表情が消え雰囲気も軽かったものが重くなる……。


「ならどうあれ殺さなくては……」


「っ! 」


 ――――――――速い!!??!?

  まだ相手を見くびっていたか、奴の評価を上方修正しながら首を狙った突きを最小の動きでもって躱し、カウンターで切り払う――――!!!


「シっ! 」


  それすら躱され、反撃される。奴が持つ短刀が執拗に首を狙い、それを避け、時に防ぎつつこちらも大剣を振るう。

  こちらの大上段の一撃を短刀の刃を当てながら逸らし、目潰しを狙ってくるがそれを裏拳で弾く。

  それによってバランスが崩れた相手を斜め下から斬り上げるが、奴は膝を曲げて回避しながらこちらにガラス片を投擲してくる。


「……思いの外やりづらい」


  すばしっこい動きでこちらの動きを躱し、短刀による攻撃に投擲を織り込んでくる……。

  短刀による攻撃が全て急所狙いなのはわかりやすくていいが、それ故に無視できない。そこに目潰しや行動阻害を目的にした投擲による攻撃…………ハマるとここまで厄介だとはな。

  この攻防で大きな怪我はないがいくつかのかすり傷を貰ってしまった……最後に血を流したのは何年前だったか………………。


「仕方ない、街中では使いたくなかったが……」


  すでにこの区画は廃墟になっている、今さらさらに破壊されたところで変わりはしないだろう。


「私に全力を出させるだけでなく、本気にさせたこと……後悔したまえ」


 ▼▼▼▼▼▼▼


  お偉いさんにそんなことを言われてしまいました、こちらも相手の防御が堅くて中々攻めきれてないのですがね?

  まぁ愚痴を言ったところで――――


「『身体強化・爆炎獅子』」


 ――――おや?


「『身体強化・羅刹金剛』」


 ――――これは?


「『ハイエンチャント・グローリープロミネンス』」


 ――――中々に?


「『宣誓・我が敵を討つための剣』」


 ――――まずいのでは?


「『宣誓・我が民を護るための盾』」


  全ての強化が終わったらしき偉い人は全身から青白い炎を吹き出し、顔は鬼の如く真っ赤な凶悪顔で、立っている周囲の石畳が融解しており、状態が――――


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 重要NPC

 名前:アレクセイ・バーレンスLv.55《+25》

 カルマ値:175《善》

 クラス:爆炎騎士 セカンドクラス:金剛騎士 サードクラス:火炎魔術師

 状態:

 爆炎獅子《STR上昇:特大・AGI上昇:特大》

 羅刹金剛《VIT上昇:特大・最大HP上昇:大》

 属性付与《攻撃に火炎属性:特大》

 宣誓:守護神《STR上昇:極大・VIT上昇:極大・常時HP減少:3%/1s》

 備考

 バーレンス辺境伯・長子

 バーレンス辺境伯領・騎士団長

 バーレンス辺境伯領の守護神


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 ……………………やはり強すぎなのでわー?????

通常こんな序盤に出張ってくるNPCではない(通常、プレイヤーのやらかしはプレイヤー同士の自治か衛兵の数の暴力で鎮圧されるため)

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