8.地下墳墓探索その4
来いよベネット、武器なんか捨ててかかってこい!
「お、お前ぇぇぇぇえええ!!!! 」
俺は衝動のままに斧を振るう。少しでもこの激情を晴らさんと、この憎き相手に叩き付けるかのように上段――――身体を横に逸らし――――薙ぎ払い――――バックステップで――――振り上げ――――身体を後ろ斜め後ろに倒し――――袈裟斬り――――そのままバク転でどれも躱される。
狭い通路内だってのに冗談じゃねぇ!!
「この野郎ォ! 」
そのまま踏み込もうとして――――
ガキィン――――!!
――――投擲された短剣をラインの長剣が弾く。
「ハンネス! 落ち着け、俺たちと連携しろ! 」
「っ! あ、あぁそうだ、そのとおりだ」
くそっ! いきなり件の野郎に仲間2人が殺られて一気に沸騰しちまった……頭に血が上った状態で勝てる相手じゃねぇってのに……だが、この狭い通路内で仲間と連携すれば目がないわけじゃない。ベータ版からの特典で、上限のLv.15とスキルレベルの半分を引き継いでる俺たちはトップ組としての技量も矜恃もある――――!!!
「……ふーん」
段々と、ほんの少しずつだが相手を追い詰めんと連携して攻める!
ケリンの槍は執拗に足元を狙い踏み込みを躊躇させる、ラインの剣捌きは頭を狙い相手意識を奪い視線を遮る。そして動きが止まれば……いや、少しでも隙ができれば俺が斧を叩き込む――――!!!
「シっ! 」
「フッ! 」
「オラァ! 」
「……」
クソっ! 掠りもしてねぇ! これでもダメなのか?! 狭い通路内で3人がかりだぞ?!
ケリンの槍はダンスを踊るように躱され、むしろ時おり槍を踏みつけられバランスを崩したところに首を狙われる。ラインの剣閃は目線すら寄越さず首の動きのみで躱される。俺の大振りの斧は言うに及ばず…………。
「クソッタレ! 」
「化け物め……」
思わずラインと一緒に悪態をついちまう……でも仕方ねぇだろこればっかりはよ、いっそ面白いくらいに当たらねぇんだから!
だが俺たちもただ苦戦してるだけじゃねぇ、ジリジリと奴を誘導し――――
「――――っ! 」
ミラが矢を放つ。当たらないとは言っても奴は俺らに掛かりきりの状態、しかも矢は死角である後方からくる。距離的にミラのキルゾーンだ。そのまま後頭部から貫かれて即死だ、ざまぁみろ! 奴の死を半ば確信し――――
「……あっと、ありがとう存じます」
「――――は?」
その時だった、奴が何かに引っ張られるように後ろに倒れ矢は素通りし、そのままケリンの頭を貫く結果に終わる……ケリンがリスポーンしていくのをただ呆然と眺めながらひたすら考える。
――――なぜ回避できた?
――――奴は後ろに目でもついているのか?
そんな場合ではないと分かってはいるが、確実に決まったと確信していただけにショックは大きく、目を見開いて固まってしまった。
時間にして数秒程度だろうがその間に奴はミラに迫る。
「……くっ! 」
ミラは相手を近付けまいと矢を連射するが、全て短剣で弾かれる。
その音で我に返りラインと2人で駆け出すがもう遅い……正面から喉を貫かれてミラのHPは全損する…………。
「アァァァァァアァアアアァア!!!!!!!!!!!」
「ライン! 待て! 」
それを見て、今まで俺を窘めていたラインが破れかぶれの突撃を敢行する。
「クソッタレ! 」
それに続き俺も突っ込むが――――
「まぁ、はい……それなりに楽しかったですよ? 」
奴にそう微笑まれながら喉を貫かれてHPが全損する。リスポーンする前の刹那のその微笑みに、悔しいが見惚れてしまった……。
奴の微笑みを最後に視界は一時暗転し、再び目を開ける頃には神殿で、そこにはお通夜のような雰囲気のパーティーメンバーが居た…………やっぱり俺は断じて奴に見惚れてなんか居ねぇ! 認めるもんか!
次はない! 今度会ったら絶対に勝ってやる! 俺は誓いを新たに落ち込むパーティーメンバーに反省会を提案するのだった――――
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《レベルが上がりました》
《スキルポイントを獲得しました》
《カルマ値が下降しました》
《新しく暗視スキルを獲得しました》
《新しく隠密スキルを獲得しました》
《新しく消音行動スキルを獲得しました》
《新しく気配察知スキルを獲得しました》
《新しく危険感知スキルを獲得しました》
《新しく聞き耳スキルを獲得しました》
《既存のスキルのレベルが上がりました》
戦いが終わってレベルも上がり、暗視スキル含む新しいスキルも獲得しました、良いことですね。
「ふぅ……狭い通路内で囲まれても戦えるか試してみましたが大丈夫でしたね、特に麻布さんが早速活躍してくれましたね、花丸をあげちゃいます」
『……!(バッサバッサ! )』
「ふふっ、喜んでいるのですか? それは良かったです」
実際、最後の方の矢は麻布さんが居なければ反応が遅れてノーダメとはいかなかったでしょうね。しかしながらモンスターたちの魔術も使いませんでしたし、上々の結果ではないでしょうか?
「何も問題ないことがわかりましたし、目当てのモンスターをテイムしつつこのエリアの攻略をめざしますよ! 」
『––––! 』
『ヴゥ! 』
『……! (バッサバッサ! )』
ふふ、なんだか可愛く思えてきちゃいました。この調子でドンドン行きましょう。
主人公と遭遇してしまったのが運の尽き