第34話 新メンバーを加えての作戦会議
「ふはは! オレにかかればハイドラなんか、怖くないぞー!」
ご機嫌にターゲットを穴だらけにする御曹司。
俺にパーティに加わる事を許可されたのが、余程嬉しいみたいだ。
「もー、ハルトきゅん。甘いんだからなー」
「僕も甘いとは思うけど、そこがハルトくんの良いところだね。僕の提案も受け入れてくれたし」
射撃訓練をしながら、仲間たちの愚痴を聞く俺。
確かに少々甘いとは自分でも思うが、今はアヤと一緒にダンジョン攻略をしなくてはならない。
その為の戦力を得られるのなら、過去のいきさつなどは関係ない。
……まあ、裏切りはまず考えられないしね。そんな事をダンジョン内でしたら死ぬのは確定だし。
「ハルおにーちゃんが優し―のは、昔からだもん! アヤは気にしないよ」
「アヤちゃんが良いのなら、仕方ないか。まー、強い敵が味方になるのは美味しいシチュエーションだしね」
今日は、アヤも拳銃訓練を俺たちと一緒にこなしている。
俺よりも銃に関してはカンが良いのか、アヤはパシパシとターゲットへ器用に弾を当てている。
「もう少ししたら、僕が雇ったコントラクターたちも来るから作戦会議しようね」
「はい、マサアキさん」
俺たちは御曹司、そしてマサアキさんが雇ったコントラクター三人を加えた八人で瀬戸内ダンジョンに立ち向かう事になった。
◆ ◇ ◆ ◇
「あの時は仕事とはいえ、すまんかった」
「アタシ、アンタらの事は嫌いじゃないよ。良い腕じゃないか?」
「マイちゃん! 少しは言葉を選んでよ。この人たちは雇い主で恩人なんだから……」
俺たちの前に三人のコントラクターが、すまなそうな顔で座っている。
大きなテーブルに座った俺たちは、ダンジョン攻略を前にして作戦会議を始めた。
……まー、一度は殺し合いをした関係だから、お互いに気まずいのもあるはな。
「俺たちは児山どのに救って貰った。一度は殺し合ったが、入院費を支払って貰った上に仕事まで斡旋してくれた。この恩は、一生忘れん」
「ふん。メガコーポのお情けなんか、アタシはありがたがらないよ。アタシを切り倒したボーヤには興味あるけどね」
「もー。マイちゃんってば。すいません、ウチの馬鹿娘がこんなので……」
普段は関西弁を話すであろう大男、ジャックは俺たちに深く頭を下げた。
マイと名乗るサイボーグ少女は、俺に向かって挑戦的な目を向ける。
そんな困った子の頭を無理やり下げさせている魔法使いのお姉さんがアンナさんだ。
……三人とも、こうやって見たら日本人じゃないな。流れ流れてコントラクターみたいな荒事についているのかな?
「マサアキくん。わたしが知らない間に何やってたの? そういえば入院後もしばらく何かコソコソしてたけど?」
「ごめんね、ナナコさん。僕にも色々事情があってね」
マサアキさんが語るに、俺とマサアキさんを襲ったコントラクターたち。
全員、警察病院送りにしたそうだが、その中でも使える上に元々チームだった三人分の入院費を支払い、彼らをマサアキさんが警察から引き取った。
……残る重役に直接雇われた雑魚たちは警察から出してあげたけど使い物にならんから、入院費を支払わせるためにフチナダ関連の水産会社の遠洋漁業へ放り込んだんだとさ。彼らもフチナダ内部の政争に巻き込まれた馬鹿だから、お情けはあげたんだそうな。
「入試の後に、そんなことがあったのか。マスダのヤツ、ダンジョンでの事以外で御子神らに迷惑をかけていたとは……。すまん、オレがもっとしっかりしていたら」
「御曹司、もう過ぎた事は良いですって。後、俺の事は名前で呼んでください。俺も貴方の事を名前、タダシさんって呼ぶので」
まだすまなそうにしている御曹司、タダシさんに対し俺は笑って許した。
もう、彼は俺の仲間なのだから。
「では、作戦会議と参りましょう。お互いの使える技術をまず提示しあいましょう。まず、僕からですが……」
マサアキさんが会議を仕切る形で話し合いを開始した。
「敵」を既に知った。
次は「己」、仲間達の実力を把握する必要がある。
「最後に俺だが、使う術は真言密教系。治癒系も少々なら使える」
「そこは動画で見せてもらっている。俺らが勝てない訳だ」
「アタシ、今度は負けないぞ!」
「もー、マイちゃん。少しはわたし達の立場をかんがえてよぉ」
全員のスキルなどが提示された。
ここから作戦を組み上げていく。
こと、ボス戦ではお互いの動きを知らないと大変な事になりかねない。
「では、俺から提案です。ジャックさんには前衛をお願いします。貴方ならタンク系の戦いが出来ますよね」
「ああ、任せておけ!」
……重装甲でガタイの良いジャックさんなら、ナナコさんと共にタンクが出来るな。
「続いてマイさん。貴方にはマサアキさんと共に斥候と遊撃を頼みます」
「あいよ。坊や、アタシと再戦をしてくれるんなら、何でも手伝うよ」
……好戦的なマイさん。彼女のスピードは加速呪ありの俺と同クラスだから、雑魚相手なら負けは無いな。
「はいはい、命を懸けない試合ならいくらでもお相手しますよ、マイさん。それで構わないですよね」
「ああ、アタシは良いぜ。殺し合いじゃなければ何回でも戦えるからね」
「もー、マイちゃんったら。で、わたしは後方から魔法支援ですね。わたしは西洋近代魔術を学んでいます。攻撃魔法はあまりありませんが、支援魔法は多く使えます」
「ええ、アヤの横で補助をお願いしますね」
魔法使い女性のアンナさん。
彼女の話では、イギリスに存在した魔術師秘密結社「黄金の夜明け団」の流れを組む魔法を使えるそうだ。
……なんでも薔薇十字騎士団に繋がる組織らしいな。マナが活性化して儀式魔術以外にも使えるようになったから、残党組織が活性化したらしいけど。
「こんな感じですか、マサアキさん?」
「ええ、後は僕たちですね。御曹司、いやタダシさんは魔法使いさん達の護衛を頼みます。アヤちゃんとナナコさんはいつも通り。僕は斥候で頑張りますね」
「アヤ、頑張るの!」
「ああ、一緒に頑張ろうね」
俺はアヤの頭を軽く撫でた。
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