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第31話 決戦に向けての訓練開始!

御子神(みこがみ)生徒! お前、銃が苦手とは言っていられないぞ。なんでも使いこなせなければ、アヤちゃんは守れない!」


「はい、オカダ教官!」


 フチナダCEOとの面会後、俺は新たに訓練を開始した。

 魔法に頼ったばかりの戦い方の俺では、長期戦は難しい。

 いちいち雑魚相手に魔法を使わずに、かつ遠距離で戦う必要がある。


「御子神が使っているのはサブマシンガンの名機、MP5だ。拳銃弾を使うから威力はそこまででは無いが、雑魚相手を一掃するのは向いている。ちゃんと使いこなせ!」


「はい!」


 俺は新たに支給された愛銃、|H&K《ヘッケラー&コッホ》 MP5K型の銃把(じゅうは)をしっかり握り、銃口をターゲットに向ける。

 そして撃鉄をそっと引き、一発ずつターゲットに当てていく。


 この銃、個人防衛火器(PDW)としても採用されている折畳式ストック付きコンパクトタイプ。

 少なくとも片手は開けていたい魔法使いの俺にとっては、アサルトカービンよりも取り回しが良く使いやすい。


 今までは錫杖をメイン武器に使っていたが、ダンジョン内で接近戦は望ましくない。

 今後はサブマシンガンをメイン武器、錫杖はサブにするつもりだ、


「コンパクトモデルだから片手でも撃てるが、基本は両手射撃。今まで使っていたアサルトカービンとそう大きくは変わらんから、落ち着いて扱えよ。児山生徒、お前の場合は銃が大きくなっている。取り扱いが難しくなっているが、その分威力は高いぞ!」


 マサアキさんも、新たな銃を使って訓練をしている。

 なんでもロシアの有名アサルトライフル(AK-47)と同じ弾を使うイスラエル製の新型銃(ガリル・エース)コンパクトタイプだとか。


 ……弾丸数がそこまで減らずに一発の威力が高い銃を選んだみたいだな。長期戦の場合、ストッピングパワー。一発の威力が高い方が無駄弾も減るし、迷宮内なら戦闘距離も短いからコンパクトでも問題無いし。


 今までもイスラエル製アサルトカービンを使っていた関係で、傾向が似ている上に、オプションでグレネードランチャー(M203)も付けられるのが良いらしい。


「うふふ。わたし、絶好調!」


 更に向こうでは、消音機(サプレッサー)付き軽機関銃(XM250)による指切り射撃でターゲットを一瞬で吹っ飛ばしているナナコさんがいる。

 覚醒能力により俺よりも膂力(りょりょく)があるから、小柄なはずなのに一切銃口がぶれないのは見事としか言いようがない。


 ……拳銃弾を使っている俺の方が銃口ぶれるのは、修行不足だなぁ。


「お前らの訓練はみっちりするように校長からも頼まれている。この後、休憩を挟んでナイフ格闘の訓練もするぞ!」


「はい!」


 俺は、アヤの笑顔を心の中に浮かべターゲットの真ん中に穴を開ける事に集中した。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「ふぅ、疲れたよぉ。ハルトきゅん、抱っこさせてぇ」


「ちょ、ナナコさん。破廉恥な行為は冗談でも勘弁してください」


「ははは、ナナコさんに取ってはハルトくんは、嗜好品(しこうひん)なのかな」


 笑いあいながら休憩室で談笑する俺たち。

 この仲間でならダンジョン攻略も怖くない。

 そう、俺にも思えた。


「そういえば、CEOが言ってましたが、どんな支援をして下さるのですか? 訓練内容については随分と都合付けてくれてますが?」


「僕が聞いた話だと、島に行く移動手段はもちろんの事。実戦部隊が三個歩兵分隊(二十四人)ほど、他にも支援や物資輸送合わせて歩兵二個小隊クラスの人員が付いてきてくれるみたいだよ」


 マサアキさんが言うに、俺たちは基本ダンジョンのフロアーボス及び途中に出てくるランダムエンカウントのモンスターと戦う。

 支援部隊は俺たちの後方に待機し、俺たちが背後から奇襲をうけないよう、かつ使い込んだ弾薬の補充などを受け持ってくれるらしい。


 ……ボスクリアーしたときに全力を使うだろうから、帰りは支援部隊が俺たちを守ってくれるそうだ。


「かなり至れり付くせりだけど、それだけ敵は強いの?」


「偵察部隊が最深部のボスフロアーまで行った観測結果だと、こんな感じだって」


 マサアキさん、携帯端末で俺やナナコさんに敵の情報を提示してくれる。


「フェイズ1、最下層は推定十層目。やや敵数が多いものの一般的な敵配置ですか」


 数カ月前に発見された瀬戸内ダンジョン。

 まだ小規模ながら無人島に出来てしまった関係で、狩りがほとんど行われておらず、通常のフェイズ1ダンジョンよりもモンスター数が多い。

 また通常はボスとは別に存在しているはずのダンジョン・コアが十層目フロアーボスと一体化しているとの事だ。


「それでね、僕たちがボス戦をしなきゃならなくなったんだよ」


 コアとボスが別であれば、俺たちがコアだけ破壊をしていれば良いのだが、ボスとコアが一体化している以上、俺たちがボスを倒すしかない。


 ……まだ雑魚敵の相手を別にしてくれるし、退路を確保してくれるだけでもありがたい話ではあるか。


「第五層のフロアーボスは、リザードマンロードと複数のリザードマン達。リザードマン・シャーマンの存在も確認されているって話だね。ハルトくん」


「魔法使いがいるの? でも、ハルトきゅんとアヤちゃんがいるなら、大丈夫だよね」


 ……正直、第五層ならお手伝い部隊に片付けてもらっても構わないんだけどな。ただ、第十層のボスが……。


「で、問題の第十層フロアーボス、ダンジョン・コアと一体化しているモンスターが、ハイドラの一種らしいとまでは確認しているんだよ。固体名(コードネーム)、ヤマタノオロチ」


 俺たちが対決するモンスター、その情報を更に知らないといけない。

 敵を知らなければ、勝つ事は難しいからだ。

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