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第三十三話 結婚式

 「幸せにしろね……」

 まさかそんなことを言われるとは。


 意外だな。

 おかげで後味が悪い。


 まさかこれを狙ったのか?

 そうだとしたらやっぱりこいつは性格が悪い。


 「終わったね。兄さん」

 「ああ」

 「これからどうする?」

 「どうしようか。取り敢えず結婚だけど」

 「どっちにせよ僕たちはアルムスさんについて行きます」


 三人は口ぐちに言う。


 「ところでだけど、近衛を全部倒したのは僕だけど。一番活躍したのは僕だよね?」

 「何言ってやがる!!」

 「大体お前は狡いんだよ!!」


 三人が喧嘩をし始める。

 全く……


 俺はフェルム王の首を切り取り、槍に突き刺す。


 後ろを振り返る。

 かなり戦場から離れてしまっているな。


 急いで戻らないと。


 俺は首を掲げながら戦場に再び突撃する。


 「フェルム王を討ち取った!! 戦争は終わりだ!! 我々の勝利だぞ!!」

 俺がそう叫びながら首を掲げると、敵兵士たちは次々と武器を捨てる。

 悔しそうに泣くもの、嬉しそうに笑うもの。二種類居る。


 笑うモノが多いのが何とも言えないな。


 俺は仲間たちの様子を見る。

 乱戦になってしまったため、心配だったが……

 どうやら死者は居ないらしい。本当に運がいい。


 ただ所々怪我をしている奴は大勢いる。

 早く治療してやらないと破傷風で死ぬかもしれない。


 「アルムス様!!」

 そう言って駆けてきたのはボロスだ。


 「さすがです。アルムス様! これで、ようやくラゴウ様の無念を晴らせた」


 ボロスは泣きながらそう言った。

 俺は黙ってハンカチを渡す。


 「アルムス様!」

 今度はイアルだ。


 「申し訳ありません。戦況は?」

 「見れば分かるだろ」

 俺は槍を見せる。

 イアルは少し目を見開いてから、頭を下げてお疲れ様ですと言った。


 「おお、お前さん。フェルム王を討ち取ったのか。これで決定的だな。今度、酒を奢ってくれ。あと今は俺が預かっておくよ」

 そう言ってバルトロは俺から槍をむしり取り、親指で後ろを指した。


 そこにはテトラが居た。


 「アルムス……」

 テトラは俺に抱き付いてきた。


 「テトラ……」

 俺はテトラを強く抱きしめ返した。


____________



 「はあ、緊張するな」

 俺は部屋を回る。

 これで三百周目。


 「兄さん、主役なんだから……」

 呆れ顔でロンは言った。


 ここはフェルム王の宮殿。

 今は結婚式の準備中。


 あと数十分で始まる。


 「これが終わったら論功行賞が待ってるんだよ? ロサイス王や他の豪族も来てるんだ。しっかりしてくれよ」

 ロズワードがあきれ顔で言う。


 他の豪族って言っても会ったことないぞ?

 そんな奴に祝福されてもね。


 「準備出来たよ。早く来て」

 ソヨンに促され、俺は外に出る。


 太陽が輝いている。

 結婚式日和だ。


 目の前にはロサイス王やロサイス王所属の豪族たちが俺を値踏みするように見ている。

 俺は彼らに一礼し、今回の結婚式に来てくれた礼を言う。


 テトラと一緒に考えた内容だから完璧なはずだ。


 俺のスピーチが終わると、テトラが出てきた。


 テトラは青を基調とする結婚衣装を着ていた。

 顔の半分を薄いベールで隠している。

 キリシア人から仕入れた非常に高価な衣装だ。


 「綺麗だよ」


 思わず俺の口から洩れる。

 テトラは少し顔を赤くして微笑んだ。


 テトラはロサイス王や豪族たちに向き直る。

 そして今回の戦争の礼を言う。


 俺はその間、ずっとテトラを見ていた。

 いつまでも見ていられるほど綺麗だ。


 ロサイス王とか豪族とかどうでもいいよ。

 お前らどっかに行ってろ。


 ……といいたいところだがそうも行かないからな。


 テトラは一礼する。

 ようやくスピーチが終わった。


 壇上にユリアが上がってきた。

 結婚式には呪術的意味がある。


 そうユリアが言っていたな。


 「二人ともおめでとう」

 ユリアは微笑んだ。


 「ありがとう」

 テトラは微笑み返す。


 俺は……何も答えられなかった。


 ユリアは特に気にしてないという表情で口を開く。


 「あなたたち二人は、これから永遠に、如何なる時も助け合い、愛し合うことを誓いますか?」

 「「誓う」」


 俺たちはそろって答える。


 「天、海、大地の神々よ。この世が混沌の渦であった頃から我らを見守り、助け、導いてくださった神々よ。この者たちの結婚に祝福を」


 そこでユリアは言葉を一度切る。


 「あなた方の愛に妖精の御加護を。願わくばその愛が永遠に続くことを……」


 ユリアは俺の方を見て少し笑い、言う。


 「では契約を」


 分かってるよ。

 何度も聞かされた。


 俺はテトラのベールを上げる。

 そこには熱っぽい瞳で俺を見つめるテトラの顔。


 俺はそんなテトラの唇に自分の唇を押し付ける。


 拍手が巻き起こった。



_________________



 この後、宴会が行われた。


 豪族から祝辞を述べられ、祝いの品を大量に貰った。


 そしてこれからよろしく(・・・・)と言われた。

 全く、結婚式だというのに政治の話をするとはね。


 マナーがなってない。


 まあロンとロズワードが酔っぱらって喧嘩したり、リアが摘み出されかけるというトラブルがあったが、大したことではない。


 唯一特筆すべきことは……

 宴会が終わった後、帰る時のユリアの瞳が潤んでいたことだけだ。

というわけで一章は終了となります

一週間、書き溜めをしてから二章に移りたいと考えています

二章の始まりは次の日曜辺りになります


あと一日から四日に掛けて旅行に行くので感想を返すことが出来ません

そうだ、京都に行こう


あと一応間章という主人公が出ない話が四話くらいあります

取り敢えず暫くはこれで茶を濁そうかな……と考えてます


まあ間章詰まんねえとはよく聞きますが……

どっちにせよ二章の書き溜めで一週間は更新できないし良いかな? みたいな……


一応、二章以降から登場するキャラの紹介と今後の展開への伏線というか布石みたいな意味合いがあります


さて話は変わりますが……

この世界ではグリフォン様のお言葉から分かるように転移現象はマレに起こります。でも転生は起こらない……でもアルムスは転生した……

その理由はあります。でもしょうもない理由です。物語の根幹に関わったりとかはしません。だから作中で明記するつもりはありませんが……

一応、一章で十分に推理可能なレベルの情報を開示してあります

ちょっと考えてみてください

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