91話 見極めるっぽい
ごめんなさい!!
本当にごめんなさい!!
更新超遅くなりました!!
今回は前半と後半で温度差をつけたつもりです
強斎が勇志の返答を待っていると、突如、炎が強斎を包んだ。
「……ほう」
強斎は軽い足踏み一つでその炎をかき消すと、大地がメイスを振り下ろす瞬間が目に映る。
勇志を一瞥し、未だに返答がないことを確認してから、強斎は振り下ろされるメイスを片手で受け止めた。
「くっ!」
どれだけ押し込んでもビクともしない強斎に驚きを隠せない大地だったが、直ぐに逃げの体制に切り替え、大きく強斎と距離を取る。
「流石だな」
強斎は鈴と大地を交互に見て、ゆっくりと口を開く。
「さっきの鈴の炎、発動する瞬間まで魔力を感じられなかったな。それに、大地の不意打ちだって気配を完全に消したまま高威力の攻撃を相手に叩き込む。……強くなったな」
「……黙りなさいよ」
鈴は声を低くして、強斎の賞賛を蹴り飛ばす。
「あんたは……一体誰なの? 強斎の顔をして私達に近づいて……何が目的なの!?」
強斎は鈴の言葉を一瞬だけ疑った。
どうやら、鈴はこの場にいる強斎を偽物だと思っているらしい。
大地も確認するが、鈴と同じ敵意を向けていることから、確認する必要もない。
「あー……お前ら、何か勘違いしているぞ」
「何を勘違いしているって言うのよ。強斎はね、あんたみたいに簡単に人を殺したりしないわ」
「それを勘違いと言っているんだ」
「そんなことないわ。普通、本一冊で殺し合いをしようと思う? それを実行する為に人を殺そうと思う? 地球にいる人間だったらありえないわよ。絶対に」
「俺と勇志の会話、聞こえてるじゃねぇか……」
強斎はため息をつき、愚痴の一つでも言おうとするが――。
「鈴、そこにいるのは正真正銘、僕たちと一緒にいた『小鳥遊強斎』だよ」
遂に勇志が口を開いた。
だが、瞳には感情の色がない。
「それと、その本に書いてあることは全部事実だ。僕と強斎はどちらかが『魔王』でどちらかが『勇者』……そうだよね?」
勇志は剣の柄を握り直し、強斎に剣先を向ける。
「でもね。正直言って
次の瞬間、勇志は強斎の背後に回っていて、剣を振り下ろすところだった。
突如変化した勇志に大地と鈴は硬直していたが、強斎は小さく鼻で笑い、軽く避ける。
「二人共、話は後だ。今は遠くに行ってくれ」
大地と鈴にだけ聞こえるように囁いてから、二人を遠方へ吹き飛ばした。
「これでお前も存分に戦えるだろ。見せてみろよ。勇者の力ってやつを!」
勇志は本気で怒ると一人称が『俺』になる。
以前、レイアと戦った時にもそうなっていた。
そして、勇志がここまで怒ると身体能力を中心に様々な能力が劇的に向上する。
本来のステータス以上の動きをする……ある意味、特殊能力のひとつかもしれない。
だが、いくら身体能力が上がろうとも、到底今の強斎には敵わない。
「30秒だ。30秒だけ『回避』に徹してやるよ」
そして、強斎は『見極め』に徹している。
これから起こす戦争……『ラグナロク』で生き残る力があるか確かめるために。
………
……
…
「んっ……」
何もない、真っ白な空間でヴェレスはゆっくりと瞼を開ける。
二、三度瞬きをして、ようやく意識がはっきりとしてきた。
まず周りを見渡し、その後、自分の体が自由に動くことができるか軽く確認する。
そして――――。
「なんで私、下着なんですかぁぁぁぁ!?」
何もない空間で、盛大に叫んだ。
(ちょっと待って……ちょっと待ってくださいよ! キョウサイさん! なんで私服着てないんですか!? ご丁寧に服だけ剥ぐとか意図的な嫌がらせですよね!?)
必死に念じるが、勿論強斎の返事はない。
「ううぅ……ここが本当に神界だとしたら、私は……私は――――」
「あれ、ヴェレスのお嬢ちゃんじゃ――――」
「きゃああああああ!!」
「――――っ!!」
突然背後から男の声がしたので、ヴェレスは反射的に殴り、身を縮めて裸体を隠す。
暫くそうしていたが、一向に男の声がしないのでゆっくりと顔を上げて確認した。
「……ベルクさん?」
そう、そこには寝込んでいるはずのベルクがうずくまっていたのだ。
「あの……ベルクさんですよね?」
「あ……ああ……」
ベルクの顔を確認したヴェレスは、警戒を解く。
そして、首を傾げてベルクに問う。
「ベルクさん。なんでうずくまっているのですか?」
普通ならベルク程の男、不意打ちだろうがヴェレスの一発などものともしないはずだ。
だが、ベルクは苦しそうにうずくまっている。
そして、ベルクが苦し紛れに口を開いた。
「ドレットの、嬢ちゃん……。もし、もしもだけどよ……」
「は、はい」
「ユウシの野郎が……浮気でも、してたら……今みたいに、――を殴……れ……」
「え? え? どうしたんですか!?」
「へへっ、俺としたことが……。こんな……弱点があったなんてな……」
「ベルクさん!? ベルクさーーーん!!」
そのままベルクは気を失ってしまった。
傍から見れば、下着だけの美少女の前で股間を押さえながら気絶しているおっさんという、なんとも犯罪臭がする光景だった。
そして、その光景を……。
「「……」」
イザナギとイザナミに見られていた。
いや、本当に申し訳ないです……
夏休みに入ってようやくこっちも書けるぐらいに余裕ができました
以後、こんなに遅くなることは内容に最善の努力をします!