63話 鈴と精霊契約っぽい
rt数が20を超えてました……
もう締め切らせてもらいます!
1月はほぼ毎日更新になるなぁ…
そして、感想返しもかなり遅くなります。
感想はしっかりと読ませてもらってますから!
「はぁ……はぁ……くっ!」
鈴はドレット王国の王城から出て、人があまり通らない草原に走ってきた。
「おかしいよ……おかしいよ!」
鈴は近くにいた攻撃しなければ無害な魔物を、魔術で焼き払った。
「私を含めて……皆おかしい!」
跡形もなく消えた魔物の前に立った鈴は、自分の手のひらを見てから思いっきり握り締めた。
(澪だけじゃない……大地も勇志も私だって強斎がいないと精神が安定していない……!
先ほどの魔物の群れらしきものに囲まれた鈴は、広範囲魔術でその魔物を全滅させる。
今の鈴のステータスでこの程度の魔物だったら、自動回復するMPで全滅させることなど容易かった。
(そして皆バラバラになる。強斎の名前を知っている時点で、強斎は生きていた事は事実だと思うけど……でもあいつが死んだって決め付けるのは――――)
『ショクオウなら死んだよ』
「……え?」
鈴は咄嗟に思考を中止し、辺りを見回す。
だが、先ほど焼き払った鈴の周りには人どころか、魔物すらいない。
「気の……せい?」
遂に頭までおかしくなったのかと思ったところで、先ほどの声がまた聞こえた。
『気のせいなんかじゃない。私はちゃんとここにいる』
「え? え? ここって……どこ?」
『ふふっ、よかった。ちゃんと聞こえてる』
「あれ? 私、遂におかしくなっちゃった?」
そう呟いた瞬間、目の前が激しく光り思わず目を瞑ってしまった。
そして――――。
「えっと……誰?」
「こんにちは、リン」
目を開け、最初に見たものは少女だった。
体型は中学生ぐらいの少女だが、目を引くのはそこではなかった。
瞳の色と髪の色――――。
その二つが見とれる程に紅かったのだ。
「自己紹介したいところだけど、ごめんなさい。私には名前がないの」
「名前がない……? あなた、種族は……?」
「人間?」と言いかけたところでその言葉を呑み込む。
人間にここまで紅い髪と瞳を持つ人間など見たことなかったからだ。
「私の種族は精霊。名前がないのは階級が中級以下だから」
「……は?」
「だから、名前がないのは中級以下だから――――」
「それじゃない。あなた……今、精霊って……」
「あー……そっか。人間にとって精霊って拝められる存在なんだっけ? 私、そういうの嫌いだからなしの方向で」
「ちょっと待って。本当に精霊なの?」
「うん」
そう言って、精霊を名乗る少女は指を鳴らした。
その瞬間、鈴の背後で轟音が鳴り響く。
「無詠唱での精霊級魔術。これで信じてもらえた?」
「え、ええ」
鈴は戸惑いながらも精霊を名乗る少女のステータスを覗いていた。
#
???
LV5800
HP 53456/53456
MP 80000/80000
STR 6000
DEX 8433
VIT 5499
INT 9999
AGI 6821
MND 9999
LUK 100
スキル
状態異常耐性LV50
火属性LV75
HP自動回復速度上昇LV30
MP自動回復速度上昇LV50
精霊の威圧波動LV20
属性
火
火の精霊(???)
#
(精霊でもなければこんな化物じみている訳ないし、信じるしかないじゃない!)
鈴は精霊のステータスを見て、肝を冷やしていた。
「? どうしたの?」
「な、何でもないわ……。で、精霊さん? なんで私の前に?」
「簡単に言うと、私と契約して……かな?」
「ごめん、もうちょっと詳しく」
「あなた、さっきショクオウのこと考えてたでしょ?」
「……」
「ショクオウは確かに死んだよ」
「なんでわかるの?」
「精霊は嘘をつかない。とある精霊が言ってたの『ショクオウは死んだ。新しい主人は暗黒騎士』ってね」
「まさか……」
「ええ、話はある程度聞かせてもらってるから大体はわかるわ。暗黒騎士は恐らく仮面の魔人。そして、その強さの秘訣は……」
「精霊を使っている……から?」
精霊は無言で頷く。
「多分ね。しかも、かなりの数の精霊を使っているみたいよ? 私以外の中級以下の精霊は、皆そいつの配下になったみたい」
「あなたは無事だったの?」
「私はいつでも上級になれる能力値だからかな? 上級になれば名前とかもらえるけど、自由がなくなるからならないって決めてるのよ」
「おかしな精霊ね」
鈴は先ほどの混乱が嘘のように微笑んで精霊と会話していた。
「それで? なんで私なの?」
「理由は簡単。あの中であなたが一番火魔術に長けていたから」
「本当にそれだけ?」
「……あなたの熱い想いが伝わったから」
精霊は少しだけ恥ずかしそうに答えたが、鈴には何が恥ずかしいのか理解できなかった。
「と、とにかく! リンの気持ちを聞きたいわ」
「私の気持ち?」
途端に空気が変わった。
「……暗黒騎士をどうしたい?」
「殺したい」
「……即答ね。暗黒騎士を殺してもショクオウは生き返らないわよ?」
「暗黒騎士を殺して魔神も殺す。本来の目的は魔神を討伐して強斎を生き返らせることだったから、殺す相手が増えたところで何も変わらない」
「……例え魔神に戦う意思がなくても?」
「ええ。強斎が生き返るなら可愛そうだけど犠牲になってもらう。私は、そのためなら鬼にでも悪魔にでもなれる」
「やっぱり、リンのそういうとこいいわね」
「こんな質問をするってことは、あなたにはそれを達成出来るだけの力があるってこと?」
「ええ、あるわ」
「じゃあ、あなたと契約する」
「契約内容も聞いていないのによく即答できるわね」
「だからさっき言ったじゃない。私はあいつの為なら鬼にでも悪魔にでもなるって」
「見た感じダイチという男があなたの想い人と思っていたけど……違ったのかしら?」
「……正解よ。私は大地が好き。そして、強斎も好き。だけど……この好きは多分違う」
「違う?」
「うん。最近になってわかってきた。強斎に寄せている想いは恋路とは違う何か……。それを理解するためにも強斎にもう一度あわなくちゃいけない。だから」
「……人間って不思議ね……。わかったわ、今から精霊契約をするわよ?」
「ええ、お願い」
「契約内容は私がリンの眷属になり、力を貸すこと。リンは私の衣食住を保証してちょうだい」
「え? そんなんでいいの?」
精霊契約だからもっと大きい代償かと思っていた鈴は呆気にとられた。
「ええ、リンと一緒にいたら面白そうだしね」
「ふふっ、ありがと」
「いえいえ。これからもよろしくねリン」
「うん、よろしくファイ」
「ファイ?」
「あなたの名前。気に食わなかった?」
「……ううん。とっても嬉しい」
「……そっか」
鈴はそっとファイを抱きしめ、耳元で呟いた。
「多分、私は……私たちはこれから壊れていくと思う。だけど、その度にファイが元通りにしてね?」
「……任せなさい。リン」
ファイも震えている鈴をそっと抱き返して、耳元で呟いたのであった。
ファイちゃんはひんぬーです
精霊は嘘はつきませんが勘違いならします。
え?ゼロさんは例外ですよ精霊ですが