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58話 『インヴァリデイション』っぽい

すいません、更新がかなり遅くなった上に短いです

(くそっ……イライラするな……)


 キャルビスは数歩後ろを歩く強斎を一瞥し、舌打ちする。


(何が『そうかもな』だ。なぜ私はあんなことを言ってしまったんだ……)


 キャルビスは強斎のやり取りを思い出そうとするが、急に恥ずかしくなり考えるのをやめた。


(普段の私だったら怪我人の心配なんて全くしないのによ……。無防備にあいつの前で寝たのもそうだ。どれだけ実力が離れていようとも、私はあんなことは絶対にしない……)


 そう、ここ数日のキャルビスの様子は少しおかしかった。

 自分自身がその変化を自覚できるようになった程に。


(いつから……いつからだ? 私が使者に任せずに、自分であいつに用事を告げに行ったのは……?)


 キャルビスは少しだけ後ろを向く。


「どうした?」


 強斎の返事には答えず、視線を前に戻した。


(やはり何かがおかしい……。本能的に目をそらしてしまった……)


 キャルビスはこの正体をひたすら考え続けた。


(精神関与系統魔術か? あいつならそれぐらい出来そうだが、なんか違う気がする……)


 いくら考えても答えの出ない感情に、キャルビスのイライラは増していく。


「おい貴様!」


 キャルビスは立ち止まり強斎の方を振り向く。


「貴様の名前はなんだ!」

「強斎だけど?」

「そうか! キョウサイか! 私はキャルビスだ!」

「知ってる」


 キャルビスはまた歩き出した。

 強斎は不思議そうにキャルビスについて行こうとするが……。


「私も知ってるわボケェェェェェェェ!!!」


 キャルビスのそんな声とともに拳が飛んできた。

 しかも、その拳には炎がまとっていた。


 その炎がパンチのスピードとパワーをブーストしており、強斎が避けてしまってはその後方が大変なことになる。

 その事を一瞬で理解した強斎はあることを実行した。


「『インヴァリデイション』」


 強斎がそう呟くと、キャルビスの拳から炎が消えた。


「え? え? え!?」


 炎のブーストがなくなり、キャルビスはバランスを崩してしまった。


「おっと」


 そして、そのまま強斎の胸に飛び込んでしまった。


「おいおい、大丈夫か? さっきからおかしいぞ?」


 キャルビスは即座に離れて強斎を睨んだ。


「貴様……さっき何をした?」

「さっき? ああ、『インヴァリデイション』のことか?」


 キャルビスは無言で頷く。


「あれは魔術を無効化する魔術だな」

「魔術を無効化だと!?」


 キャルビスは、今までの感情など吹っ飛ぶ勢いで驚いていた。


 魔術を無効化されては、魔術師の意味がなくなる。

 この世界での戦力は魔術だけではないにしろ、あるとなしでは断然に戦力が違う。


 この魔術を使うものが多数現れては世界のバランスが崩壊しかねなかった。


「まぁ、この魔術は魔術が完了・・するまでに使わないと意味がないけどな」


 その言葉にキャルビスは反応した。


「意味がないだと? さっきの魔術はちゃんと完成・・していたぞ?」


 そう、先ほどのキャルビスの魔術は既に完成していて、後は放つだけだった。


「完了と完成は違う。俺が言っているのは、術式を完成させて放つまでの段階のことだ」

「ついでに、身体強化とかはどうなる?」

「魔力で身体強化するなら無理だろう。だが、魔術で身体強化した場合はできるな」

「……嘘だろ」

「残念ながら嘘でも何でもない。真実だ」


 キャルビスはこの魔術の恐ろしさで胸がいっぱいだった。


 この魔術を使われてしまえば、魔術を身に纏わせるのも不可能になり、毒にも薬にもなる。

 唯一使える身体強化も効率が悪い魔力の方だった。


「だが、この魔術は結構な格下じゃないと発動しないんだよな……」

「……格下?」


 その単語にキャルビスは異常に反応してしまった。

 女とはいえキャルビスは魔王。しかも戦闘狂と言われる程の。


 格下と言われればプライドが許さない……だが。


「そうか……格下か……」


 キャルビスはどこか納得したように歩き始める。


(私のこの変な感じは、格上に対する逃避だったのかもな……)


 少し違うのだが、キャルビスはそれで納得してしまった。


 強斎がついてくるのを一瞥すると、キャルビスは再び口を開く。


「先ほどの魔術……『インヴァリデイション』と言ったか?」

「ああ」


「あれは普通に取得できる魔術なのか?」

「お前の言う普通はわからんが、少なくともお前は無理だな」

「ほう、言ってくれるな」


 キャルビスは不気味に笑う。


「悔しくないのか?」


 そんなキャルビスに、強斎は疑問符を浮かべた。


「悔しいかもな」

「……わからん奴だ」


 強斎はそう言ってため息をついた。


………

……


「おい、そろそろつくぞ」

「そうか」


 見ればわかるのだが、キャルビスは強斎に一応そう言った。

 そして、その現場にたどり着く。


「……これは酷いな」


 自らやったこととはいえ、苦笑いを隠すことは出来なかった。


「ああ、酷いだろ。これも全てお前がやったことなんだよ」

「へいへい」


 強斎はもう聞き飽きたといった感じだった。


「……できそうか?」

「まぁな」


 だが、空気は読める方なので、キャルビスの真剣な問にはしっかりと答える。


(土地は俺のよく知っているシッカ王国でいいか……だが、どれぐらいの時間がかかるか……)


 強斎は大穴を覗き込んだ。


(本当に底が見えんな……まぁ、あの魔術から推測すると大体10kmといったところだろ)


 適当な推測をして、キャルビスに下がるように指示する。


(想像魔術では土を作ることができないから、土魔術を使った後に想像魔術を使ってみるか……)


 強斎は全力で魔術を使おうと魔力を開放するが……。


「む? どうした?」


 キャルビスが見ているのでそれを躊躇った。


(別に俺の力がバレようと関係ないが……少し面倒になりそうだな)


 結局はここに行き着き、ある程度自重することになった。

2週間の間小説を書かなかったため(こっそりSS書いてましたが)少し違和感があったかもしれません。


えっと、どうしてこんなに遅れたのかといいますと……


はい、プライベートが大変でした。

更に風邪になってしまい、もう大変でした。

これを書いている今も風邪です。


次回からはなるべく早く更新したいと思います!

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