6話 奴隷っぽい
後半、超カットしました
強斎はとある店――奴隷商店の前で立ち止まっていた。
(奴隷か……俺はこの世界に疎いし、奴隷を買って、色々訊くのもいいな……。奴隷だったら安心して色々質問できるし、これからの旅でも役立ちそうだ)
言い訳を唱えながら、奴隷商店に入っていくのであった
………
……
…
「はい、いらっしゃい」
「お前は……」
「おぉ! キョウサイ殿ではないですか!」
強斎を出迎えたのは先ほどあった男性。スピッツだった。
「早速来てくれたのですな!」
「ああ、この先旅をするからな。奴隷は必要だろう」
スピッツは頷きながら共感するもの、少々声のトーンを落として話を続ける。
「ですがキョウサイ殿。資金の方は……大丈夫なのですか? 私の差し上げた銀貨3枚じゃ、流石に買えませんよ?」
「その心配は無いと思う。盗賊の根城を潰してきて意外に収入が入ってきたからな」
あまりにも軽々しく口にした言葉に口を開けて驚愕するスピッツ。
だが、それも数秒のことだった。
「いや、失礼……。キョウサイ殿は強いと思っていましたが……流石にここまでとは……」
「そうか? それよりも見せてくれ」
「わかりました。性別は女で?」
「ああ。それと、戦闘ができて常識がある娘にしてくれ」
「わかりました。こちらへどうぞ」
強斎は一回だけ頷き、大人しくついていく。
見た感じ冷静だが、内心はそんなことなかった。
(うおぉぉぉぉ! 買うのか!? 俺!? 女奴隷買っちまうのか!? 遂に童貞卒業か!?)
全く冷静ではなかった。
「ここでお待ち下さい」
「ああ」
案内された部屋の椅子に腰掛ける強斎。
スピッツは奴隷を呼びに行ったのか、部屋から退出した。
(落ち着け……落ち着くんだ、俺。別に買ったからといって、ヤると決まったわけではない。たまたま読んだ小説にそういう描写が多かっただけだ……。この世界で奴隷とヤっていいとは限らんし……)
必死に自問自答をしている間に、スピッツが戻ってきた。
「キョウサイ殿」
「……」
「キョウサイ殿?」
「ん? あ、ああ。どうした?」
「いえ、キョウサイ殿は奴隷に関して説明がいるかと思いまして」
「ああ、そうだが……。どうしてそう思った?」
「記憶喪失なんでしょう?」
(記憶喪失? ……あ、思い出した)
「よく覚えていたな」
「命の恩人ですから。それで、説明を受けるんですね?」
「ああ、頼む」
スピッツは、強斎の向かいの席に座り淡々と説明を始めた。
「奴隷は基本物として扱われます。何をしても罪に問われませんが、奴隷が主人の命令で罪を犯した場合主人が罰せられます。奴隷には、主人の命令に対し絶対服従にするよう義務付けられています。質問はありますか?」
質問を振られてキョトンとする強斎だったが、直ぐに戻り、質問する。
「何をしても罪に問われないとは?」
「そのままの意味です。自分の奴隷には何をしてもいいと言うことです。魔物に食わすのもよし、人体実験に使ってよしと……。他には?」
「奴隷は物と言ったが、宿代とかはどうなるんだ?」
「それは一人分として数えられます」
「そうか」
「他にはありますか?」
「後は……その……。亜人とかとヤると……産まれるのか?」
その質問を待っていたかのように、スピッツはニヤリと笑う……。
「心配ありません。エルフや同種族以外との行為では、できませんから。それ以外にありますか?」
「いや、特に無い」
「そうですか。もうすぐ準備が終わると思いますので、少々お待ち下さい」
「ああ」
そう言い残して、またスピッツは出て行った。
(奴隷は物……か。衣食住を安定させない世界なんだな)
そう考えながら、机の上に紅茶が置かれていたことに気が付く。
一応解析をして、安全であることを確かめてから口に含んだ。
(これからどうするかな……。常時チートを振舞っていると目を付けられて面倒くさくなる。目を付けられても安全な地位を取ることを優先するか……。確かこういうのって、冒険者で高ランク取ればいいとかあったよな。まずはその辺を検討っと)
飲み終わった紅茶を、机の上に置く。
(それから、あいつらに逢いに行くか。どうやって逢うかは……これからじっくり考えるか。とりあえず、この世界に関して情報収集しながら安定した地位をとる。そのついでにあいつらと合流っと。こんなもんかな?)
そう考えたところで、ノックが聞こえた。
ドアが開き、スピッツが入ってきた。
「キョウサイ殿、準備が出来ましたのでこちらへ」
「ああ」
こうして、強斎はドキドキしながらスピッツの後に付いて行った。
………
……
…
「こちらです」
案内された場所は、地下室だった。
(やはり、予想と一致したな。猫耳や犬耳……亜人か。それに、見た感じ大した飯は食ってなさそうだ)
「じっくりと見させてもらうぞ」
「どうぞごゆっくり」
強斎は一人一人見ていった。
最初は容姿を見ていき、その中で気に入った子の中から、解析でステータスとスキルを見ていく。
その中に一人、気になる子がいた。
狼耳を持ち、髪は銀髪。目の色は青で胸は中々に有り、鈴には劣るが、澪には勝っているだろう。身長は160cm程度で、痩せているが、肉が付けばかなり上質な女性だった。
そして、ステータスだが……。
#
ミーシャ
LV26
HP 243/286
MP 162/162
STR 61
DEX 67
VIT 54
INT 50
AGI 76
MND 49
LUK 20
スキル
体術LV2
剣術LV2
短剣LV3
料理LV1
土属性LV0
属性
土
#
(土属性LV0?どういう事だ?)
「お、いい子に目をつけましたね」
解析でステータスを見ていると、スピッツに声をかけられた。
「その子、ミーシャと言うのですが、つい先ほど手に入ったばかりでね」
「それにしては、痩せていないか?」
「手に入ったと言っても、いきなりここにぶち込まれる訳ではありませんよ。色んな手続きをしてここまで来るのですから、時間が掛かってしまう訳です」
「そうか」
「で、どうするんです? 今逃したら、多分手に入りませんよ?」
「そうだな、じゃあこの娘と面会させてくれ」
「かしこまりました」
………
……
…
先程、強斎がいた部屋にスピッツ、強斎がいた。
いち早く口を出したのはスピッツだった。
「ミーシャはこの世界には疎くありませんし、体術剣術の他に短剣が使えます。一応ですが、料理スキルも所持しています。しかし、魔術の才能は無く、土属性の適性を持っているもの土魔術は使えないのです。ですが、見てわかるように容姿は良く美人の部類でありましょう。どうですか?」
「そうだな……。やはり面会をしてみないとどうにも言えないから、席を外してくれるか?」
「かしこまりました」
そうして、スピッツと入れ替わりに、ミーシャが入ってきた。
「ご指名……ありがとうございます」
「ああ。ところで訊きたいことがあるんだが……訊いてもいいか?」
「はい……」
「お前、土属性の適性があるはずなのに土属性が使えないって本当か?」
そう質問した時、青色の目が哀しみに染まった。
「……はい」
「なぜだかわかるか?」
「わかりません……」
「そうか」
(可愛いから買おう……)
こうして、ミーシャとの面会が終わった。
「どうですか?」
「値段にもよるな。確かに容姿は良いがあまり喋らないし、魔術が使えないのも痛いな」
「そうですか……。でしたら銀貨70枚でどうです?」
(安っ! 銀貨70枚って日本円で計算すると70万だろ!? 70万で一人分の人生とか……)
だが、強斎はあくまでも冷静でいた。
「わかった、それくらいなら出せる。俺は奴隷の適正価格なんてわからないからな。それくらいなんだろ?」
「いえ、本来でしたら金貨1枚ぐらいですね。ですがキョウサイ殿は命の恩人ですし、先ほど指摘を受けた所も痛い部分もあります」
(金貨1枚でも、一人分の人生としては安いな……)
「そうか、なら言葉に甘えさせてもらおう」
「お買い上げありがとうございます」
頭を下げるスピッツに、強斎は質問する。
「奴隷って契約解除とかできるのか?」
スピッツは頭を上げて、その質問に答えた。
「できますけど、普通はしませんね。奴隷契約解除には金貨1枚かかりますから、それをするぐらいなら奴隷を殺す事が多いです」
「そうか」
こうして、強斎は奴隷を買ったのであった。
………
……
…
ミーシャに奴隷契約をして、奴隷商店を出た。
「よし、じゃぁ、飯でも食うか」
「はい、ご主人様」
こうして飲食店を探し、20分ほどで見つけた店に入るのであった。
店の中に入って席につくと、犬耳お姉さんが注文を訊きに来たので、犬耳お姉さんのおすすめを、二人分頼む。
犬が食べられるなら、狼も食べられるだろうと安直な考え方だ。
「で、なんで俺の足元に座るんだ?」
「すみません、邪魔ですよね……。それよりも、ご主人様は沢山お食べになるのですね」
強斎から少し離れて、地面に座り直すミーシャ。
「はぁ……。お前、何か勘違いしてないか?」
そう言われ、ミーシャは耳をペタンとさせる。
「すみません……。ご主人様のおこぼれを頂けると思いまして…」
「それが勘違いと言っている」
「え?」
キョトンとするミーシャに、強斎は優しく微笑みかけた。
「ちゃんと席に座れ。腹、減ってるんだろ?」
「ですが、ご主人様と同じ席に座るなど……」
「はぁ……。じゃぁ、初命令だ。席に座って、腹いっぱい食べろ」
「ご主人様……!?」
「これが終わったら、お前の服や靴。俺たちの住む宿も探すからな」
「ふ、服を買っていただけるのですか!?」
ミーシャは目を見開き驚愕している。
「ああ。他の奴らがどうかわからんが、少なくとも俺はお前を物扱いにはしない。服や靴を買うのは当たり前だ」
珍しく、強斎がまともに伝えることができたのであった。
「あ、ありがとうございます! ご主人様!」
ガバッと頭を下げるミーシャ。
当然、店内でそのような行動は目立つわけで……かなりの注目を集めていた。
「いいから座れ」
強斎は冷静だが、恥ずかしかった。
「はい!」
ミーシャが座ったところで、料理が運ばれる。
運ばれたのは分厚いステーキだった。
(あの犬耳お姉さん……肉好きか!)
ふと、ミーシャを見ると強斎がステーキを食べるのを待っている感じだったので、強斎はステーキを食べ始めた。
ミーシャは早々と食べ終わり、強斎が「おかわりするか?」と訊くと目をキラキラさせて「いいんですか!?」と逆に訊かれてしまった。
強斎は快く承諾し、ステーキを食べさせてからミーシャを観察する。
(随分と明るくなったもんだ)
生き生きとステーキを食べるミーシャに、強斎はもう一度微笑んだ。
………
……
…
会計は銅貨15枚だった。あのステーキ1枚で銅貨5枚は安いと思った強斎である。
ついでに、あの犬耳お姉さんの名前はロコンと言う名前らしい。
………
……
…
それから、強斎達は服屋に行きミーシャ用と強斎用に服と下着を数着買い、ワンピースがあったので、それも買っといた。
「それは?」
「これはお前用に」
「え!? そんな高価な……」
「いいから、いいから」
こんな調子で靴も買っていき、宿を見つける頃には夕方だった。
「いらっしゃいませ。泊まりですか?」
優しそうな20歳ぐらいの男性が受付にいた。
「ああ、一部屋頼む」
すると、男性は強斎とミーシャを見てニッコリ笑った。
「はい、わかりました。お体を拭く用のお湯はいりますか?」
この世界に風呂は存在するが、中々高価なものなのだ。
「ああ、頼む」
「かしこまりました。では、この宿の説明をさせていただきますがよろしいでしょうか?」
「ああ」
「この宿は、朝と夜に食事を取ることができます。昼も頼まれればおつくりしますが、その場合は別料金となります。よろしいですね?」
「ああ」
「では、何泊お泊りに?」
「二週間で」
「わかりました。560Eになります」
この世界では銅貨1枚で1Eである。
強斎は銀貨5枚と銅貨60枚を支払い、指定された部屋に入った。
「えっと……ご主人様」
「なんだ?」
「私! 覚悟できてますから!」
唐突に宣言された事に戸惑ったが、なんのことか直ぐに思い当たった。
(まぁ、そりゃぁ……奴隷を買って、異性と同じ部屋で寝るなんて……。そういう考えになるか……。まぁ、相手も受け入れてくれるみたいだし、しっかりと応じてやるか)
「覚悟しておけよ」
「は、はい」
「それより、飯を食い行くぞ」
「はい!」
その後、夕飯を食べ終わった強斎達は部屋に戻った。
「よし、体拭くか」
「は、はい!」
強斎は平然としているようだが、内心はものすごく緊張していた。
(な、難易度が高い! 童貞には難易度が高いが……やってやる!)
ミーシャに服を脱いでもらい、その生まれたままの姿を見て強斎は言葉を失っていた。
少々痩せているが肌は白く、胸も服の上とは違い大きく形も整っていた。腰は少し小さくて尻尾がついている。足もスラリとしていて、地球にもこれだけの美人はそうそういないであろう。
「あ、あの……恥ずかしいです」
「す、すまん」
まさか見とれていたとは言えず、強斎はミーシャの体をタオルで拭いていった。
その後、強斎はミーシャに体を拭いてもらい今日買った寝巻きに着替え、ベッドに腰掛けた。
「はい、これ」
「これは……水ですか?」
「ああ、そうだ。とりあえず全部飲んでおけ」
「結構な量ですが……わかりました」
強斎はミーシャに500mlぐらいの水を飲ませてから、話を始めた。
「なぁ」
「なんでしょう?」
「今度から、お前の事をミーシャって呼んでいいか?」
「!!……はい! ありがとうございます!」
「変な奴だな……それよりもミーシャ」
「はい」
「なんで奴隷になった?」
「……」
「話せないなら話さなくていい」
「いえ……いいのです。私は親に売られました」
「そうか」
強斎はそれ以降何も言わず、ミーシャも何も言わなかった。
スキル名、ユニーク属性名、