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50話 仮面の魔族っぽい

お久しぶりです。


前話を大幅に修正しました。

話の内容自体変わっているので、そちらを読んでから読んでください。

本当にご迷惑をおかけしました。

「えっと……澪ちゃん。もう大丈夫?」


「うん、ありがとう。緋凪」


 澪が涙を流したのは数秒の間だったが、それでも心配してくれる仲間に澪は思わず笑みで返してしまう。


 その笑みを見て、安堵する一行。


 しかし、緋凪は直ぐにむすっとした顔になってしまった。


「で、説明してもらいましょうか」


「え?」


 緋凪の質問の意味がわかっておらず首を傾げる澪。


 なぜ今の流れで察することができないのか不思議に思う緋凪であったが、構わず説明しようとする・・・・・・



『!?』



 しかし緋凪が口を開く瞬間、心臓を鷲掴みにされたような威圧が全員に向けられた。


 緋凪は、背中から感じる圧倒的な威圧の正体を見極めようとするが、体がいうことをきかない。

 本能的に振り向くことを拒否しているのだ。


 唯一緋凪の後ろを見ることが出来るのは澪だが、何故か澪は冷汗を異常なほどまでに流して頬を引きつらしていた。


 そして、次の澪の一言で全てを察することができた。



「鈴……さん……?」



 そう、この威圧の正体はご機嫌斜めの鈴であったのだ。



………

……



 澪、ヴェレス、緋凪、琴音は只今正座中である。


「あの……鈴さん?そろそろ威圧を解いてくれないと――」

「却下」

「うぅ……」


 澪が鈴に対して威圧を解いてくれというが、鈴はそれをあっさり却下してしまった。


 ついでに、この中でまともに話せるのは澪だけである。

 ヴェレス、緋凪、琴音は小さくなって怯えている。もう少し威圧を強くすれば、半泣きになるであろう。


「信喜と仁の体調、状態異常、ステータスの変化やら確認している時に、私を置いて楽しくガールズトークとは……いい度胸ね?」


 ギロりと鈴は澪を睨む。


「ひぃぃぃ…………」


 澪はその視線から目をそらすように縮こまる。



「……はぁ」


 しかし、睨んだのも数秒で、更に威圧も解いた。


「今回はこれぐらいにしてあげるわ。……大体予想はつくし」


「よ、予想ですか?」


 鈴の最後の呟きに、ヴェレスが反応した。


「ええ、どうせあの剣・・・について戸惑っていたんでしょう?特に澪」

「ば、バレてる!?」


 澪のその反応に小さく鼻を鳴らした鈴は言葉を続ける。


「当たり前でしょ。何のためにこの部屋を指定したと思っているのよ」


 すると、その言葉に緋凪が質問する。


「えっと、鈴ちゃん?ちょっといいかな?」


「ん?どうしたの?」


 緋凪は数瞬間を置いて鈴の目をしっかりと見る。


 そして、ゆっくり口を開いた。


「……あの剣が強斎君みたいって、どういうこと?」

「っ!」


 緋凪の質問に、思わず息を詰まらせる鈴。


 鈴は目を逸らそうとするが、少し考えた結果諦めた。


「……わかったわ。その話も含めて、今から話し合いましょう」


………

……


「先に、信喜と仁の状態から説明するね」


 あの後、澪が信喜と仁の状態を確認し、その間に勇志達は剣の確認をしていた。


 そして、それぞれが一通り終わったところで話し合いが開始された。


「『超解析』で確認したところ特に異常があったわけでもない。一応、回復魔術を使ったし大丈夫だと思う」


「まぁ、それは私も確認したし心配はなかったわ」


 澪の報告に、鈴が答えた。

 そして、そのまま鈴は言葉を続ける。


「で、どうだった?魔族と闘った感想は?」


「「…………」」


 鈴は軽い気持ちで訊いたのだが、信喜と仁は悔しそうに俯いてしまった。

 それを見て、少なからず緊張が走る鈴。


「…………あれは闘いなんかじゃねぇ」


 信喜は俯いたまま小さく呟いた。


「闘いじゃない?どういうこと?」


 鈴が信喜に聞き返すが、信喜は黙ったままだった。

 代りに、仁が口を開く。


「圧倒的だったのだ……魔術も接近戦も……何もかもが通用しなかった……。直前で覚えた『限界突破』まで使ったのにだ……」


 仁は悔しそうに歯を強く食い縛る。


 しかし、仁の言葉にヴェレスは疑問を感じた。


「ちょっと待って下さい。互角に闘ったのではなく、圧倒的に負けてて見逃されたってことですか?」


 少々刺がある言い方だが、信喜と仁は気にせず頷いた。


 すると、ヴェレスは途端に深刻な顔になる。


「ヴェレス?どうしたんだ?」


 勇志が声をかけると、ヴェレスはゆっくりと口を開く。


「……魔族の中には人間に興味のない者がいると聞きます。その場合、攻撃しない限り、害はないとは言い切れませんが、ある程度大丈夫なのです。しかし……」


「人間に興味がない奴がここに来るはずない……か」


 大地の答えにしっかりとヴェレスは頷き、言葉を続ける。


「はい、その通りです。そして、魔族の中には実力を認めた者なら見逃す者もいますが……」


 ヴェレスは信喜と仁を一瞥して、再び口を開く。


「……圧倒的に負けたとなると、その可能性はほぼ皆無でしょう……」


「だったら、何故……」


 琴音がそう質問するが、ヴェレスは静かに首を振る。


「わかりません……」


 ヴェレスがそう言うと、皆無言になってしまった。


 しかし、それを破ったのは、意外にも黙っていた信喜であった。


「なぁ、ヴェレス。魔族ってのは全員仮面をつけているのか?」

「仮面をつけた魔族だったのですか!?」

「お、おう」


 質問で質問を返された信喜は戸惑い気味に答えた。


 しかし、そんな信喜を無視して、ヴェレスは目を見開いて口を震わせていた。


 少しするとヴェレスは脱力し、ブツブツと呟き始めた。


「そんな……まさか……いや、でも事実でしたら…………しかし……」


「えっと、ヴェレス?何があったんだい?」


 ヴェレスの異常ともいえる焦りっぷりに、勇志は少々戸惑い気味になっていた。


 しかし、ヴェレスの顔を見た途端、そんな戸惑いはなくなった。


「…………本当にどうしたんだ?」


 ヴェレスの顔はいつもの大人っぽい顔ではなく、ただの15歳が怯えているような顔になっていたからだ。


 ヴェレスは勇志の顔を確認すると、恐る恐る手を伸ばし、勇志の服を摘んだ。


「ヴェレス……?」


「ごめんなさい、ユウシさん……。少し……少しでいいですから、こうさせてください」


「……ああ」


 勇志は無言でヴェレスを抱き寄せ、頭を優しく撫でた。


「…………この方が落ち着くでしょ?」


「はい……ありがとうございます……」









「よく堂々といちゃつけるわね。見てるこっちが恥ずかしいんだけど」


「鈴ちゃん。あれがカップルだよ、生暖かい目で見守ろうよ」


「緋凪、今すっごく深刻な話してたよね?そんな見守っていて大丈夫か?」


「大丈夫だ、問題ない」


「そ、そう?それより、琴音から何かオーラを感じるんだけど。これって嫉妬――――」「それ以上いけない」


「…………そうね。ありがとう」


「いえいえ」



 外野では、鈴と緋凪が言い合っていた。



………

……


「お恥ずかしいところをお見せしました……」


 ようやく落ち着いたヴェレスの顔は、もう真っ赤であった。


 人前で抱き合ったのだから、それもしょうがないだろう。


 勇志も、誰とも目を合わそうとしない。


「で、ヴェレスはどうして、あそこまで怯えていたの?」


 鈴がそう言うと、ヴェレスの顔は真剣そのものになり、さっきまでの真っ赤な顔が嘘のようになった。


「皆さん、ここからは真剣に聞いて下さい」


 勇志も元に戻り、全員が一斉に頷いた。


 ヴェレスは深呼吸をし、ゆっくりと口を開く。


率直そっちょくに言います。もうじき魔神が復活するかもしれません」


『!?』


 ヴェレスの告白に、全員驚きを隠せないようだ。


 ヴェレスはそのまま言葉を続ける。


「仮面の魔族はその予兆でしょう。遥か昔、魔王と同レベルの実力を持った魔族が魔神の直属の配下にいたと言われています。それが、仮面の魔族です。仮面の魔族でしたら、戦争時以外は滅多に人間を殺さないと記録に残っていますので……。シキさん、ジンさん、仮面の魔族は何か言っていましたか?」


「あ、ああ。魔王は一人じゃないとか、あの剣を装備できるまで強くなれとか……」


 突然話を振られ戸惑った信喜と仁だが、信喜がしっかりと答えた。


「……そうですか」


「何かわかったの?」


「いえ、全くわかりません」


 澪の質問に答えになっていない答えを出したヴェレスは、深呼吸をしてゆっくりと口を開いた。


「…………ショクオウさんを仲間に誘いに行きましょう」


 その言葉に先ほどまでではないが、全員が驚いた。


 ヴェレスは以前、ショクオウを仲間に入れることに反対をしていたからだ。


 しかし、その答えをヴェレスは自分で言った。


「勿論、ショクオウさんを仲間に入れる予定だということは、お父様に黙っておいてください。戦争しかねませんから」


 そう言うと、ヴェレスは何もない場所を睨んだ。

 恐らく、どこかにいるホルスを睨んだのであろう。


 ついでに、ホルスや他の皆の場所は、信喜と仁が伝えてある。


「ええ、わかったわ。私たちも戦争には反対だし」


 鈴はそう言うと、全員が頷く。


 鈴は全員が頷いたのを確認すると、言葉を続けた。


「さて、最後は…………あの剣についてね」


「やっとだね。鈴ちゃん、あの剣が強斎君みたいってどういうこと?」


 剣の話になると、緋凪が食いついた。


 しかし、鈴は表情を変えずに、その答えを言う。


「わからないわ」


「え?」


 あれだけ引張いておいて、答えが答えなだけに唖然とする緋凪。


 そんな緋凪に鈴は言葉を続ける。


「本当にわからないのよ。でも、あの剣の魔力を感じた時、真っ先に思い浮かんだのは強斎だった。それだけは言える」


 未だに魔力を感じ取ることができない緋凪からしたら、どんな気持ちなのか見当もつかないが、恐らく澪に訊いても同じだろうと思った。


「さて、あの剣で色々試したい事があるわ。皆、外に出てきて」


 鈴は不自然にそう言うと、そそくさと外に出てしまった。


 その不自然さは緋凪以外にはわからなかったらしく、皆鈴に続いて外に出て行く。


 そんな中、一人緋凪は思ったのであった。



(逃げられた!?)

あの時仮面をつけていたせいで、とんでもないことに…!

さて、あの剣で試したい事とは一体何でしょうね?


次回もお楽しみに!


終盤に近づくと走ってしまう癖をなんとかしたいです。


最近、バイトしたいなーって思う様になりました。

自分は本屋でバイトしたいですね!

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