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49話 強斎が去った後っぽい

お久しぶりです!


感想でのご指摘により、結構書き換えました。

話の内容自体変わっています。

ご迷惑をおかけしました。

「はぁ、はぁ……くっ!」


 ここは、とある街のとある訓練場。


 そこに膝をついている者と、それを見下ろす者がいた。


 そして、見下ろす者が膝をつく者に語りかける。


「ドレット王国の勇者ってのは、こんなに軟弱なのか?」


 そして、その言葉をかけられた膝をつく者――――――ドレット王国勇者、鈴木勇志は剣を杖に立ち上がる。


 そんな姿を見て勇志を見下ろしていた者――――――シッカ王国ギルドマスター、ベルクは呆れながら言葉を続けた。


「いい加減諦めろ。お前は俺には勝てない」


「そんなの、最後まで闘わないとわからない……!」


「既にわかりきっているはずだ。『限界突破』まで使ったんだろ?それでもこの差だ。お前は俺に勝てない」


「はぁ、はぁ……なら、もう一度『限界突破』を使うまでだ!『限界突破』!!」


 その瞬間、勇志は薄く淡い光に包まれた。

 限界突破を発動した証拠だ。


「本当に馬鹿な男だ。1日で2回使うのすら辛いはずの限界突破を1回の戦闘で2回使うとは……。何故、そこまでショクオウの事が知りたい」


「なんでだろうね。具体的な理由は特にないかな」


 『限界突破』を使ったことにより勇志はHP、MP、疲労がある程度回復していた。


「国王に命令されたから……とは言わないのだな」


 勇志の答えに、少々疑問を感じたベルク。


「強いて言うなら、会わないといけない……そう僕の中で直感しているんだ」


「直感……ねぇ。だが、やはり教えるわけにはいかないな。教えて欲しければ――――――」

「あなたを倒す事……だったよね?覚悟してね、さっきのようにはいかないから」


「ふん、2回目の『限界突破』状態の奴がよく言うぜ」


 そうベルクが口にした瞬間、勇志が動き出した。




*




 強斎がドレット王国から出た数時間後、とある用事を終わらした仁・信喜を除く勇者一行はドレット王国に戻ってきた。


 しかし、戻ってきたドレット王国はいつものような騒がしい雰囲気ではなく、どこか暗い雰囲気であった。


「ユウシさん……何か、怖いです……」


 ヴェレスに至っては、この異常な変わり様に少し恐怖を感じているようだ。


 それ程なまでに、あの騒がしいドレット王国が静寂に包まれていたのだ。


「……勇志、早く王城に戻ろう。嫌な予感がする」


「そうだね。確かにこの雰囲気は異常だ……。僕たちがいなかったこの半日で何が起こったんだろうか?」


 大地の問に勇志は少し焦り気味に答えた。


「勇志、少し落ち着きなさい。焦る気持ちはわかるけど、あの二人なら大丈夫よ。……あれでも一応勇者なんだから」


「そう……だよな。ありがとう。鈴」


 勇志が焦っていた理由は、この王国にもしもの時のために置いてきた二人の安全。


 ホルスから、そろそろ魔族が動き出すという忠告を受けて、全員で王国を離れる事を少なくしていたのだ。


「よし、皆。急ごう」


 勇志がそう言って、動き始めた。


………

……


「王城も……か」


 大地が不意にそう呟く。

 その呟きに答えるかのように、緋凪は口を開いた。


「ねぇ、なんかおかしくない?王城までこんなに静かなんて……。魔族が来たならわかるけど……どこも荒れた形跡なんてないし……」


「確かに、緋凪の言う通りね。人の気配は……今のところしないね」


 澪は王城に入ってから気配を探っていたようだ。


「国民はちゃんといたけどね」


 鈴はもっと前から気配を探っていたようだが。



 少し歩いたところで、鈴と澪は同時にピクリと反応した。


「人がいたのかい?」


 勇志の問に二人は頷いた。


 そして、澪が口を開く。


「反応があったのは二人。二人共人間ではありえないぐらいの魔力だから、恐らく……」


「信喜と仁……か」


 澪は勇志答えに無言で頷く。


「とりあえず行ってみましょう」


 鈴はそう言って他の皆を案内するのであった。


………

……



「し、師匠!」


 信喜と仁がいたのは部屋ではなく、廊下であった。


 仁はフラフラと立ち上がりながら、勇志達に寄っていく。


「仁、信喜。一体何が……?」


 勇志たちは周りを見て、ここで戦いがあったのだと察した。


「実は……」


 仁は数瞬の間唇を噛み締め、その後に口を開いた。


「――――――魔族が来ました」


 その言葉に、若干の重みがあるのか、勇志は少しずつ焦り始める。


「やっぱりか……それで?その魔族は――――「勇志」」


 焦り始めていた勇志の言葉を、輪が遮った。


「少し落ち着きなさい。まずはその二人の回復が優先よ」


「そ、そうだね……すまない」


 鈴は落ち着いた勇志を見てため息をし、言葉を続ける。


「場所を変えましょ。ヴェレス、あの部屋を使っても大丈夫かしら?」


「え、あ、はい。大丈夫です」


 鈴は少し離れたところにある扉を指差して、そうヴェレスに言った。


 しかし……。


「ですが、どうしてあの部屋なのですか?」


 そう、部屋は他にもあるのだが、鈴は少し離れた部屋をわざわざ指名した。

 目の前にもあるのにも関わらずだ。


 その事を指摘すると、鈴は苦笑いする。


「えっと……まぁ、とりあえず移動してから話すわね」


 と言って、そそくさと部屋に向かってしまった。

 それに続いて、勇志達もその部屋に向かった。


 しかし、ヴェレスは立ち止まって心を落ち着かせ、冷静に周りを見る。



 窓ガラスは割れ、所々壁や床にヒビが入っている。


 少し離れた曲がり角の壁は、小さなクレーターがあった。


 置物であろう剣は床に深々と刺さって――――――。


「って、なんで剣が刺さってるんですか!?」

「「今更!?」」


 緋凪と澪が反射的に突っ込んでしまった。

 その隣で琴音は苦笑いしている。


 既にここには、ヴェレス、澪、緋凪、琴音しか場にいない。



「す、すみません……あまりにも周りが変貌していたので、些細な変化に気が付きませんでした……」


「些細って……ヴェレスちゃん、ここに住んでいたんでしょ……?」


 緋凪はジト目でヴェレスを見ながらそう言った。


「ええ、まぁ……」


 苦笑い気味に答えるヴェレスに何かを感じたのか、澪が真剣な眼差しでヴェレスを見て、恐る恐る口を開く。


「これが天然……!」


「澪ちゃんだけには言われたくないと思うよ?それと、天然とはちょっと違うかな?」


 澪はかなり頭のいい方なのだが、こういう知識に関してはやや浅いようである。


 緋凪はその事に関しては理解しているので、そこまで驚かない。


 だが……。


「……これが天然」


「…………え?」


 流石に琴音の発言に緋凪は驚いてしまった。


 琴音は少々無口に近いが、愛想は悪くなく、頭も顔も高めの部類に入る。

 緋凪はそんな琴音なら、常識的であると信じてきていた。


 しかし、その琴音が天然を理解していないとなると、自分が間違っているんじゃないかと思うのも事実。


 緋凪は一瞬の間でここまで思考を巡らせて、我に返った。


 余談だが、緋凪も中学の時強斎を襲おうとし|(未遂)、今でも罪悪感すら抱いていない状態なので、常識人だとはとても言えない。


「えっと……天然っていうのは――」

「ヒナギさん」


 緋凪が説明しようとしたところで、ヴェレスに声をかけられた。


(質問かな?まだ説明していないのに……?)


 と、緋凪がそこまで考えていたところで、ヴェレスが口を開く。




「早く行かないと、リンさんに怒られますよ?」





 その一言で、緋凪はビクッと体を震わせ、ゆっくりと動き出した。


 笑っているが、目だけが笑っていない。


 流石のヴェレスでも、怒っている事ぐらいはわかった。

 理由がわかっていないだけだ。


 そんな緋凪が、ゆっくりとヴェレスの方に近づいていく。


 そして、ヴェレスの前で立ち止まり……。


「ひ、ヒナギさん?一体どうし――」

「そぉい!!」

「わぁ!?」


 緋凪は手刀でヴェレスの脳天をチョップしようとするが、ヴェレスは紙一重で後ろに避けた。


 勿論、避けられることがわかっていての攻撃だったし、ヴェレスに当たっても大丈夫な力量だった。


「ちっ」


 しかし、避けられた事は素直に悔しいので、緋凪は舌打ちをする。


「ど、どうしたんですか!?いきなり攻撃してくるなんて!というより、なんで怒っているんですか!?」


「いや、鈴ちゃん凄いって思ったから」


「理由になってませんよ!?」


 と、ヴェレスと緋凪が言い合っているところに、琴音が止めに入ってきた。


「えっと、そろそろ行きましょうか。澪さんも、さっきから呆れて動いてませんし」


 ぴくっと緋凪が琴音の言葉に反応した。


「澪ちゃんが呆れて動いていない?そんな馬鹿な」


「最近、ヒナギさんが怖いです」


 ヴェレスの言葉は無視して、緋凪は澪の方を見る。


 確かに澪は動いていなかった。


 いや、唖然としていたのだ。


「……澪ちゃん?」


 緋凪は澪の驚き具合に驚いていた。


 数瞬、何に驚いているのか考えた緋凪だったが、澪の目線を追ってみるとそこには刺さった剣があるだけ。


 緋凪はその剣に何かがあると確信し、澪に問おうとする。


 だが、緋凪が喋る前に澪が口を開く。


「ねぇ、ヴェレス……。『超解析』って物にも使えるっぽいね」


「ええ、まぁ」


 ヴェレスは、いきなりそのような事を訊かれ、少し戸惑っていた。


「でさ、あの剣に『超解析』使ったんだけど……ちょっと気になる項目があるから質問していい?」


「いいですよ?というより、私が直接見た方が――――」

「同じように見えているとは限らないでしょ?」


「……そうですね」


 澪の謎の雰囲気に押され気味のヴェレス。

 緋凪や琴音も口を出せなかった。


 そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、澪はヴェレスにとある質問をした。



「『この解析レベルでは、表示できません』ってどういうこと?」


「!?」


 その言葉を聞いた瞬間、ヴェレスは顔を青くし自分も剣に対して、『超解析』を使った。


 すると、ヴェレスは震えながら、その剣から離れようと後ずさりをする。


「そ、そんな……そんな……」


 ヴェレスは剣から目を離し、澪に対して『超解析』を使う。


 そして――――――。


「……ミオさん。もしかして、『製作者』と『作品名』が『解析不可能』って見えていますか?」


「ええ、その通り。で、その下の説明に――――――」

「『この解析レベルでは、表示できません』ですよね?」


 何故かヴェレスは怯えているが、澪はその原因がこの質問の答えだと悟り、質問を続ける。


「解析レベルって、『超解析』のことだよね?武器にも『超解析』を超える『隠蔽』が存在するの?」


 すると、ヴェレスは恐る恐る口を開く。


「……順を追って説明します。まず、この『超解析』で解析できないものは基本的にありません。自分自身がわかっていない状態異常等でもわかるのですから。ですが、この『超解析』でも解析できないのが――」

「『超隠蔽』だったよね?」


 澪の答えに、頷くヴェレス。


 そして、ヴェレスは言葉を続ける。


「そうです。ルナさんみたいな感じです……ですが」


 そこで、ヴェレスは剣をじっと見て、冷汗を流す。


「武器に『超隠蔽』が付いているなんて、普通ありえません」


「なんで?」


 澪の問にヴェレスはしっかりと澪の目を見て答えた。


「武器に普通のスキルは付けられないからです」


「えっ……でも……」


「ええ、ミオさん達が所持している武器にはそれっぽいものがありますよね?ですが、違うのです。それは、普通のスキルではなく『付属スキル』といいます」


 そこで、ヴェレスは自分の武器(杖)を取り出して説明を始める。


「武器というのは、作成する人によって効果が違います。武器のステータスはSTR。付属スキルや効果はINTとMP。安定度や装備条件等はDEX。そして、それに補正をかけるのが武器生成スキルです。この杖は基本的なステータスこそ低いですが、消費MP減少に効果範囲拡大と非常に使い勝手がいいのです。ですから、URウルトラレアという高レア度になっています」


 と、そこで澪にとある疑問が浮かんだ。


「ちょっと待って。さっき聞いた内容だと別に不可能じゃないっぽいけど……」


 と澪が言うと、ヴェレスはゆっくりと口を開いた。


「武器に『付属スキル』スキルを付けるというのは、並大抵の武器職人では不可能です。MP・INTが共に高く、更に武器生成レベルが高くなければ無理です。そうですね……例えるなら、この武器(杖)を作った方は、INT250、MPが1500、武器生成レベルが15の超職人さんでした。これ以上の武器はダンジョンで造られた宝箱の中身ぐらいでしょうか」


 と、そこまでヴェレスが説明したところで、澪は刺さっている剣の恐ろしさを理解した。


 ヴェレスはその反応を見て、言葉を続ける。


「そうなのです。『超隠蔽』並の『付属スキル』を付けることは人間には不可能です。いえ、人間でなくても不可能に近いでしょう。そして、もう一つ言える事……それは……」



『不明※ (LGR)


STR2000以上で装備可能

全属性付属

LUK以外の自全ステータス1.5倍

MP消費超絶減少

魔術効果範囲超拡大

魔術威力超上昇

自動HP回復速度超上昇

自動MP回復速度超上昇

不死属性殺傷可能



歴代最強クラスのLGR武器。

LGRの中でも破格の性能を誇る。

製作者は不明※


※この解析レベルでは、表示できません』



 ヴェレスはこの剣を見て、途切れた言葉を続ける。


「この剣を作成できるのは、神に等しいかそれ以上の力を持っている人物ですね」


「……そっか」


「もう、神が作った武器と考えたほうが妥当ですね」


 と、そこまで言ったところで、ヴェレスはとある疑問を感じた。


「ところでミオさん」


「ん?何?」


「どうして泣きそうなのですか?」


「え……?」


 そう、澪の目元はちょっぴり赤く、目は潤んでいた。


 澪は目をこすり、苦笑いをする。


「な、なんでだろうね……。別に悲しくもないのにね……」


 しかし、澪の言葉は段々と涙声になっていく。


「あはは……。何か、勝手に涙が……。強斎に会うまで泣かないって決めてたのに……こんな……こんな武器で……」


 澪は目元を拭うが、少しするとまた涙が溢れてくる。


「ミオ……さん」


 ヴェレスが心配そうな顔で澪を見つめる。


「澪ちゃん?大丈夫?」


「澪さん……」


 今まで蚊帳の外だった緋凪と琴音も澪の心配をしている。


 そして、澪はゆっくりと口を開く。


「神様が作った武器ってあながち間違ってないかもね……」


「え?」


 突然先ほどの話に戻り、少々ヴェレスは混乱した。


 その答えを言うように、澪は言葉を続ける。


「だって、この剣から感じる魔力って、どこか懐かしくて、温かくて、安心できて、心強くって……まるで……」


 澪はそこまで言うと、拭う手を止め、微笑んだ。



「強斎みたいな剣だもん!」

前書きでも書きましたが、ここでも謝罪をさせていただきます。

わかりにくい部分があったのなら、遠慮なく書いていってください



強斎みたいな剣……だって、強斎が作ったんだもん!

さて、何故強斎は製作者は自分だと言うことを隠したんでしょうね?

作品名は恥ずかしいからという理由っぽいですが。


しかし、前半ではあのギルマスとの戦闘っぽい描写……

なんであんなことになったんでしょうね?


次回もお楽しみに!

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