46話 賭け事っぽい
お待たせしました!
「こーひー?」
キャルビスは聞きなれない言葉に戸惑っているが、ルナは少し考え事をしていた。
そして――――。
「主様、誰のイタズラですか?」
今まで無視していた強斎だが、その一言にはびくりと反応してしまった。
「な、なんのことだ。俺はコーヒーが――――」
「それがおかしいと言っているのです」
ルナは強斎に寄って、目をしっかりと見た。
その時、強斎の目が泳いだ事をルナは逃さなかった。
(……あやしいです)
何かを感じたルナは、視線だけをとある方向に向ける。
そこには、口を押さえて笑いを堪えているゼロと、苦笑いのミーシャ、レイアが座っていた。
それだけで何かを直感したルナは、大きくため息をして、ジト目で強斎を見ながら口を開いた。
「主様、これはゼロさんの仕業ですね?」
「……」
強斎はシラを切る。
「いや、シラを切っても無駄ですよ?ゼロさんが笑ってる時点でバレてますから」
「なっ!?」
強斎はゼロの姿を見るなり、目元に手を当て盛大なため息をした。
(これじゃあ、罰ゲームにならねぇじゃねぇか。……まぁ、俺はそれでいいんだが)
強斎は当てていた手を元に戻し、ルナに向き直った。
「どうしてわかったんだ?」
「主様でしたから」
「……は?」
回答になっていない回答に、強斎は戸惑っていた。
「ですから、主様でしたからわかったのです。主様は、お飲み物一つをなくされたぐらいで、怒るなんてありえませんから」
「それに」とルナは言葉を続ける。
「相手は女性ですしね。尚更ありえません」
そんな褒め言葉混じりの説明に、強斎は苦笑いをするしかなかった。
「結構うまく騙せると思ったんだけどな」
そんな強斎の言葉に、ルナは強斎と同じように苦笑い気味に答える。
「最初は私も騙されていましたよ。理由を聞くまで、冷汗が止まりませんでした。どうやったらあんな雰囲気出せるんですか?」
「まぁ、色々事情があるんだよ」
ルナは、これ以上深追いは止そうと直感し、「そうですか」と一言返してゼロ達の方に歩んで行く。
ついでに、キャルビスはまだ悩んでいる。
そんなキャルビスに、強斎は一言。
「おい、キャルビス」
「む?なんだ?」
「さっきはすまなかったな」
「お?おう?」
キャルビスは、なんのことかわかっていない様子だった。
「お前、まさか馬鹿なのか?」
「な、なんだと!?」
「はぁ……、まぁいい。最初っから教えてやるよ」
………
……
…
「ゼロさん、どうして主様にあんなことを?」
ルナはゼロに寄ると、早速先ほどの説明を求めた。
ゼロはツボっていたのか、目元にあった涙を拭き取り、口を開いた。
「あれはね、主人が決めたルールなのよ」
「ルール?」
「そうね……最初から説明すると――――――」
*
「ルナ無双だな……」
強斎は目の前に起こっている出来事を苦笑いしながら呟いた。
「そりゃそうよ、やろうと思えば城ごと潰して終わらせることができる子なのよ?」
強斎の呟きにゼロがそう答えた。
「まるで反則級だな」
「「「どの口が言っているんでしょうか」」」
ミーシャ、レイアまでもが突っ込んだ。
「主人が何を基準に物事を見てるかわからないけど、主人から言われると皮肉にしか聞こえないわよ?」
「そりゃすまなかったな」
この様にいつも通り会話をしているのだが、第三者から見ればとてつもなくシュールである。
何故なら、ここは魔王が住んでいる城。
そして、ルナが
勿論、この4人も狙われる。
しかし、どんな攻撃も、避けたり弾いたり弄んだり……。
それを、先程のような会話をしながら行っているのだ。
「それにしても暇だな」
強斎はそう呟いて少し考え事をする。
眷属たちも同じ気持ちだったのか、強斎の発言に賛同していた。
考えがまとまったのか、強斎は再び口を開いた。
「よし、何か賭け事をしよう」
「却下ね」
「……ゼロ、理由を訊いてもいいか?」
そんな強斎の質問をゼロはため息混じりに答えた。
「賭け事って、私たちが一回でも勝てたことがあったかしら?」
「たまたま俺の運が良かっただけだ」
「そんなわけないで――――――いえ、しましょう。賭け事」
ゼロが急に否定から賛成になったことに、強斎は疑問を感じる。
ミーシャやレイアもそのようだ。
「ゼロ、どうしたの?」
ミーシャが先陣切って問う。
「まぁ、楽しみにしておきなさい」
「あまりキョウサイ様に迷惑はかけてはいけませんよ?」
「それは無理」
「おいおい……」
ゼロの無理発言に思わず突っ込む強斎。
「さぁ、そんなことどうでもいいわ。賭けの内容は……次、ルナが黙殺する魔術の属性を当てる。ってのでどう?」
「まぁ、いいだろう」
「えっと、私はやめておきます」
「私もだ」
ミーシャ、レイアはパスのようだ。
「主人と一騎打ちか……あ、主人は未来予知とか使っちゃダメよ?」
「使えねぇよ!?」
強斎の言葉にやや微妙な顔をする三人。
「キョウサイ様なら……」
「ご主人様だったら……」
「まぁ、主人だし……」
「「「ねぇ?」」」
そして、声を揃えて言ったのだ。
「お、お前ら……俺をなんだと思ってるんだ……」
「キョウサイ様」
「ご主人様」
「主人」
「答えになってねぇ!」
何度も説明するが、強斎たちは、八方向から様々な攻撃を仕掛けられている。
そのうえで、こんなコントみたいなことをやっているのだ。
「はぁ、とりあえず……ルナが次に仕掛けられる魔術の属性は、水属性だ」
「じゃあ、私は闇属性」
と、その数瞬後に、ルナに向かって大量の水が頭上から襲いかかった。
しかし、ルナは
「今回も俺の勝ちみたいだな」
強斎は不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
しかし――――。
「いえ、今回ばかりは主人の負けよ」
ゼロはニヤリと笑いながらそう言った。
「なんだと?」
「今回も主人は運が良かったわね。運良くハズレを引いた」
「……まさか」
「そう、そのまさかよ。今回の勝利条件は外し続けること。勝利条件を訊かなかった時点で、主人は負け決定なのよ」
「っ!……くそっ」
強斎は悔しそうに膝をつく、そこを狙って魔族たちは一斉に襲いかかるが、ミーシャとレイアに止められた。
そして、二人は一言ずつ……。
「なんて醜い勝ち方なのかしら」
「恥を知れ」
順にミーシャ、レイアだ。
「う、うるさいわね!こうでもしないと勝てないじゃない!」
二人に文句を言われ、半分やけくそに抗議するゼロ。
それを止めたのは強斎だった。
「いや、ここは俺の負けだ。勝利条件を訊かなかった俺のミスだ」
「キョウサイ様……」
「ご主人様……カッコイイです!」
二人はうっとりとした目で強斎を見ながら、魔族の持つ武器を破壊していく。
「って、ことで主人にばつげーむ?だっけ?それを実行しまーす」
「え?聞いてない」
「訊かないのが悪い」
そして、ゼロが強斎に下した罰ゲームとは――――――。
「ルナにバレないような演技で適当に因縁つけて、ルナと交代、そして魔王と戦って」
*
「と、まぁこんな感じだ」
強斎はキャルビスに、先ほどの出来事を簡潔に言葉にした。
「そういうことだったのか……」
キャルビスは納得したのか、うんうんと頷いている。
「で、どうするんだ?俺と戦うのか?」
「いや、遠慮しとく。私の負けだ」
キャルビスのあっけない降参に、強斎は少々戸惑っていた。
「何か意外だな。お前は戦闘大好きっ娘って感じがしたんだが」
強斎のその言葉に、キャルビスは小さく鼻を鳴らして答えた。
「確かに、私は戦いが好きだ。一部の奴らには戦闘狂と言われているほどにな。そして、私は強い者に挑むのも好きだ。いや、強い者と戦う為に戦闘を好んでいると言ったほうがいいだろうか」
「だったら、何故俺と戦わない?自分で言うのもなんだが、俺は強いぞ?」
キャルビスは、その言葉を待っていたと言わんばかりに微笑する。
「強い?お前はそんな言葉で収まる程度の実力じゃないだろ。私は強い者と戦うのは好きだが、ケタ違いの化物と戦うのはゴメンだね」
そう言って、キャルビスは降参の表しか、両手を挙げた。
「さぁ、さっさと私を殺せ」
「いや、殺さねぇよ?」
強斎の言葉にキョトンとするキャルビス。
「何故だ?お前は人間界から来た、勇者と名乗る奴らなんだろ?」
「勇者は俺じゃない」
「では、お前は人間にして魔王になりたいと願っているのか?」
「嫌だよ面倒くさい」
「じゃあ――――「俺は」……ん?」
強斎はキャルビスの言葉を遮り、不敵に微笑しながら、自らの目的を伝えた。
「俺は、この国を乗っ取りに来た」
キャルビスは数秒唖然としていた。
………
……
…
「ゼロさん、いくら主様に勝てないからって、そんな勝ち方は……」
「もう、いいわよ、わかってるわ……わかってるわよ……」
ゼロは何故か異様に落ち込んでいた。
魔王になることとこの国を乗っ取ること。
その違いとは?
この話を書いているときは、大変でした……
暑さでやる気を削がれたり……
左肘に違和感を感じたり……これ、今も続いているんですが、地味に痛いんですよね。
それと、友達に小説の書き方を教えていると、自分も成長したなーって実感できます!
自分、感覚派なので、まともに教えれていませんが!!
では、次回もお楽しみに!
あ、iPhoneですが、結局修理に出しました。
問い合わせたところ、どうやら本体に異常があったそうです。