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43話 強斎VS仁っぽい

今回はかなり短いです


(威圧に魔力を込めて、威圧を強化……か。そんな方法もあったんだな)


 仁の魔力を込めた威圧を受けながら、強斎はそんなことを考えていた。

 そして、強斎は仮面の中でにやりと笑っていた。


(しかも、雰囲気もガラリと変わっている。それに、あの短時間で、新スキルを取得するか……あいつは中々の奴かもな)


 仁が取得した新スキル。




 それは――――――。




「『限界突破』!」


 LUK以外の全ステータスを2倍にする、レアスキルである。


(だが、覚えたスキルを直ぐに使うってのは、ちょっと残念だな。効果、わかってんのか?)


 強斎は行き着く先を見たくなり、仁の行動を観察する。


 すると、仁は尋常じゃない速度で距離を詰めた。


「ほう……」


 普通の人間が見たら一瞬で強斎の懐に入った仁を、興味ありげに強斎は見た。

 仁はそれを戸惑いと見たのか、迷わず抜刀する。


 しかし、強斎はそれを翼で防いだ。


「なっ……!」


 今まで全く動かなかった翼が、今の仁でさえ目で追えない速度で動いたため、仁は思わず声を上げた。


 しかし、強斎は少し不満そうだった。


(やっぱ、翼は中々使いこなせないな……。少し練習が必要だな)


 そう思いながら、いつの間にか距離をとった仁を見る。

 そして、口を開いた。


「さっきのでわかっただろう。お前達は絶対に俺には敵わない」


 しかし、仁はそんな強斎の言葉にも耳を傾けず、攻撃を仕掛けた。

 強斎はその攻撃を全て紙一重で避ける。


 仁は攻撃速度を上げて攻撃するが、強斎にはそんなもの関係なかった。


「くそっ……!」


 それでも攻撃速度を上げる仁に、強斎は少々失望しかけていた。


(さっきの奴は、俺に敵わないとわかったら他の攻撃をしてきたが……。こいつは『限界突破』のせいか、冷静さが無くなっている。期待した俺が間違っていたか?)


 暫く避け続けていると、見てわかるように仁は疲れきっていた。


 その姿を見て、強斎は仁に語りかける。


「『限界突破』も、もう切れかけているんだろう。いい加減諦めろ」


「はぁ……はぁ……くっ!」


 仁は、ようやく強斎から離れた。

 そして、魔術の詠唱を始めた。


「……諦めろと言ったはずだが?」


 だが、仁は強斎の言葉など気にせずに魔術を放った。


 仁が放ったのは風の刃。カマイタチだ。


(見えない刃なら当てられると思ったのか……?しかも、不完全かよ)


 強斎は小さなため息をして、仁を見て口を開いた。


「スキルもそうだが、ある程度扱えるようになってから使ったほうがいい。無駄に魔力を消費するだけだ」


 強斎はそう言って、仁のカマイタチを素手で弾く。

 それと同時に仁は膝をついてしまった。


「時間切れだな」


 強斎はそうポツリと呟いて、仁に歩み寄る。


「おらぁ!!」


 強斎が数歩歩いたところで、信喜が走ってきた。


 信喜は膝をついている仁を追い抜き、強斎に斬りかかった。

 強斎はそれを軽く避け、信喜を転ばした。


 そして、強斎は信喜に対してとある事を訊いた。


「お前、怖くなかったのか?」


 そう、信喜は先ほど、強斎に粉砕骨折等、大怪我を負わされている。


 それなのに、信喜は迷いなく強斎に斬りかかったのだ。


 強斎の疑問に対して、信喜は起き上がりながらこう答えた。


「はっ、あんなもの恐怖でもなんでもないね!」


 そう言って、信喜はまた強斎に斬りかかる。


 そして、強斎は信喜の斬撃を避けた後、とある事をした。


「「……っ!?」」


 すると、仁は膝だけでなく手まで使って体を支えるようになり、信喜も同じように膝をつき、何とか体を支えていた。


「な、なに……を……」


 信喜が必死に声を出して、強斎に問う。


「俺はただ、この服の能力を解除しただけだ」


 信喜と仁は、強斎の言っている意味がわかっていなかった。


 このロングコートの効果は、『使用者の漏れる魔力を吸収し、防御力と自動再生に変換する』という効果だ。


 そう、強斎は自ら漏れる魔力だけで、勇者であるこの二人を制圧したのだ。



「この服のことはどうでもいい。それより本当に、ここに勇者はいないんだな?」


 ここでいう『勇者』は勇志達ドレット王国勇者の事を表している事が、二人にはわかっていた。


「……ああ」


 信喜は渋々そう答えた。


「そうか」


 そう言って、強斎はゆっくりと立ち上がった。


 二人は殺されると思っているのか、目を瞑っている。


 しかし、そんな二人に強斎はこう言った。


「勇者達に伝えておいてくれ。魔王は1体ではない。とな」


「「え?」」


 強斎は自ら漏れる魔力を完全に抑えて、信喜と仁を解放した。


 そして、強斎はアイテムボックスから1本の剣を取り出した。


「これは俺からのプレゼントだ。これぐらい装備出来ないと、魔王討伐など無理だと思え」


 そう言って、強斎はその剣を地面に突き刺した。


 すると、突風が発生し、信喜と仁は反射的に目を瞑ってしまった。


 二人が目を開けた時、強斎の姿は無かった。




「……あいつは何しに来たんだ?」


「……わからぬ」




*



「キョウサイ様について?」


 強斎がドレット王国に向かった直後、ゼロがいきなり言った問に、ミーシャが思わず聞き返す。


「ええ、そうよ。ちょっと、主人についてあなた達に言っておきたいことがあるの」


「ご主人がいる時じゃ、言えないことなのか?」


 レイアの質問はもっともなことであった。


「そんな事ないわ。だけど、主人がいない方が話易いだけ」


 そこまで言うと、レイアは「そうか」とだけ言って下がった。


「とりあえず、みんなに言っておきたいことがあるの。実は……」


 ゼロは一つ間を置いて、強烈な一言を放った。














「――――――私、妊娠したの」


『えっ』


 見事に声が揃った瞬間だった。

続きが気になる書き方って、こんな感じですかね?(ニヤニヤ


VS仁が思ってたより早く終わってしまいましたorz

こ、こんなはずじゃなかったのに!

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