42話 強斎VS信喜っぽい
お久しぶりです。
実はこの1週間、特に忙しかったわけではないのです。
すみません、溜まりに溜まってたアニメを観てました。
(やべぇ……超楽しい……!)
強斎は只今飛行中である。
しかも、魔術は使っていない。
属性『竜の王』で漆黒の翼をロングコートから生やし、それを使って飛行しているのだ。
飛び立つ瞬間は魔術を使ったが、飛んでからは使っていない。
速度は音速程度だ。
強斎にとって翼で飛行するというのは中々の新鮮を味わっているため、テンションが異常なまでに高い。
(今、俺は風になってるぜ!)
風どころか光さえも軽く超えられるのだが、今の強斎にそんな冷静さはない。
そんな状態で魔物に遭遇したらどうなるか?
「前方に巨鳥発見!レベルは80程度!直ちに抹殺する!」
勿論、ただの
もう一度言おう、強斎は異常なまでにテンションが高い。
そう、忘れがちだが強斎は想像豊かな高校生だ。
そんな自称人間がスーパーハイテンションになった場合、どうなるのか?
「抹殺される哀れな鳥には、俺の技の実験にでもなってもらおう!」
…………ちょっと痛い子になるのである。
………
……
…
「お、見えてきた」
暫く飛んでいると、ドレット王国の領域に入った。
強斎は自然と口元が緩む。
しかし、それと同時に不安にもなる。
(あれから5ヶ月……。あいつら、元気にやってるかな?……そもそも、俺はあいつらに会っていいのか?)
様々な思考が強斎の中で回っていた。
(……そうだな、今日は伝えることだけ伝えて、さっさと戻ろう。それがいい)
とある仮定を思い浮かべてしまった強斎は、さらに速度を上げてその仮定を振り払う。
しかし、そう簡単には振り払うことなど出来なかった。
「くそっ……!」
一旦悪い方向に考えてしまったら、中々切り返しが難しい。
強斎はその状況に陥っている。
(あー……そうこう考えている間に、目の前まで来ちゃったよ……。そろそろ着地しないと――)
と、そこで強斎はとあることに気がつく。
――――――着地方法を知らない。
「え、あれ?これどうやって着地する――」
そこまで言ったところで、強斎の言葉は遮られた。
そう、窓に突っ込んでしまったのである。
直前までネガティブ思考だったせいでもあるが……。
(うわー……何か人が集まってきた……。面倒くせぇ……)
メニューで周辺を確認して、ため息をする。
そして、強斎はアイテムボックスに何故かある、厳つい仮面を被った。
顔がバレたら面倒なことになるかもしれないという考えだ。
しかし、この行為がさらに面倒なことになると、強斎は知らなかったのである。
数秒すると、強斎に声がかけられた。
「誰だてめぇ!」
声をかけられた時、強斎は内心驚いていた。
振り向くと、二人の男が立っていたのである。
しかし、強斎が驚いたのはそこではない。
(この二人……人間にしては異常な速さででここまで来たな……)
強斎は少し興味を持ち、その二人のステータスを覗いた。
#
シキ・ホカリ
LV72
HP 5395/5395
MP 3023/3023
STR 536
DEX 369
VIT 525
INT 377
AGI 360
MND 487
LUK 80
スキル
言葉理解
体術LV9
剣術LV11
大槌LV8
盾LV8
威圧LV5
状態異常耐性LV8
土属性LV11
風属性LV11
HP自動回復速度上昇LV8
属性
土・風
#
#
ジン・ササキ
LV74
HP 5014/5014
MP 4762/4762
STR 401
DEX 398
VIT 411
INT 424
AGI 531
MND 601
LUK 100
スキル
言葉理解
剣術LV15
刀LV13
威圧LV6
状態異常耐性LV10
風属性LV7
闇属性LV9
隠蔽LV15
HP自動回復速度上昇LV8
MP自動回復速度上昇LV8
属性
風・闇
#
(うわ……こいつら本当に人間か?)
眷属たちが聞いていたら、必ずつっこんだであろう。
なんてことを考えていると、ガタイのいい男から声がかかった。
「てめぇ!無視してんじゃねぇ!」
「信喜、少し落ち着け」
もう一人の男が信喜という男を止めに入る。
「ちっ……ってもよ仁。こいつ、見るからに怪しいじゃねぇか。羽生えてるし、何か悪魔の――まさか!?」
信喜は戦闘態勢のまま、強斎をさらに強く睨む。
強斎は、そこで羽を出したままだと気がついた。
すると、仁と呼ばれた男が口を開いた。
「ああ、恐らく魔族だろう」
(はぁ!?)
二人を観察していた強斎だが、流石にその言葉は聞き捨てならなかった。
しかし、強斎が何か言おうとする前に、話はどんどん進んでいく。
「師匠たちが出かけている間に仕掛けてくるか……。信喜、急いでこの辺にいる人たちを避難させろ。その間、俺が時間を稼ぐ」
仁は集まってきた兵士を見て、信喜に指示をする。
「はっ、嫌だね」
「信喜!今はふざけている場合じゃないぞ!」
「ふざけているのは仁。てめぇだ」
ビシッと信喜は仁を指差す。
そして、信喜は言葉を続ける。
「自分のステータスをよく見ろ。明らかに俺のほうが時間稼ぎに向いているだろう」
「それは……」
「いいから、てめぇはさっさと避難誘導しろ。そして、直ぐに戻って来い……いいな?」
仁は何も言い返せなかった。
正論を言われたという事もあるが、何より信喜の目が決意の目であったのだ。
それを潰すことなど、仁はできなかった。
「……絶対に戻ってくる」
「当たり前だ」
こうして、仁は全力で走っていった。
(うわぁ……)
強斎は内心苦笑いしか出来なかった。
そんな強斎に、信喜は一歩近づいて話しかけた。
「……なんの目的でここに来た」
強斎はその問いに普通に答えようとした。
しかし、先ほどのテンションが少し残っていたのである。
「ふっ、お前には用はない。俺が用があるのは勇者だ」
「勇者……ねぇ。残念ながら俺も勇者だ」
「なんだと?」
(まさか、また勇者召喚でもしたのか?)
強斎が少し考える素振りをすると、信喜は強斎に斬りかかった。
しかし、強斎はそれを軽く避ける。
「くそっ!」
嫌な顔を隠さず強斎に向ける。
「遅いな。その程度で勇者だ?笑わせるな」
信喜は強斎から大きく離れ、魔術を放つ。
大岩がありえない速度で強斎に直撃した。
――――しかし。
「魔術もこの程度。よくこれで俺に勝負を仕掛けたもんだな」
やはり強斎は、全くのノーダメージだ。
しかし、信喜は屈せず身体強化をして、強斎に斬りかかる。
強斎は、それをわざと受けた。
「なっ……!?」
さすがの信喜も驚きを隠せなかった。
何せ、斬った方が弾き飛ばされたのだから。
直ぐに信喜は体勢を立て直し、何度も何度も斬りつける。
しかし、強斎には全然ダメージを与えられない。
いい加減面倒になった強斎は、
そもそも、魔力の壁は普通に使ったら精々、息が苦しくなる程度だ。
強くても、小さな衝撃になる程度。
しかし、強斎が加減を間違えた魔力の壁はそんなものではなかった。
「がはぁっ!!?」
撫でるように当てたはずだが、信喜は弾丸のように地面と平行に吹っ飛んでいった。
それを見た強斎は、冷や汗を止められなかった。
(対人戦なんて久しぶりだからな……以前の感覚は捨てたほうが良さそうだな……)
そこまで考えたところで、遠くで大きな音が聞こえた。
信喜が壁に激突した音だ。
(しかし、あいつもすげぇな。あれでも死んでないぞ)
死んではいないが、粉砕骨折等大変なことになっている。
「信喜!!」
強斎が様子を見に行こうとしたところで、仁という男が返ってきた。
仁は遠くにいる強斎に注意しながら、信喜の元に向かう。
「信喜!しっかりしろ!」
「仁……か?」
「ああ、そうだ。少し待ってろ、ルナさんに貰ったポーションがある」
勿論、強斎とかなり離れているため、強斎には聞こえていない。
聞こうと思えば聞こえるが。
ポーションを飲んだ信喜は、普通に喋ることが出来る程度には回復した。
「一体何があったんだ」
仁は真剣な顔つきで信喜に問う。
その問いに、信喜はこう答えた。
「お前は逃げろ」
「……どういうことだ?」
信喜の答えにイラつきを隠さない仁。
そんな仁を無視して、信喜は語りだす。
「今の俺たちじゃ、あいつには絶対に勝てない。勇志がいても同じだろうな。ルナってやつじゃないと対等以上に戦えないだろう」
信喜はその場から動かない強斎を強く睨む。
「俺が飛ばされた時だって、何されたか全くわからなかった。魔術を使った動作もしなかったし、俺に触れる事もなかった……」
そう言って、粉砕骨折した左腕を見る。
「実力の差ってのを思い知ったぜ」
そう言って、信喜は仁に自分の剣を渡す。
「……なんのつもりだ」
「お前ならわかってるんだろ?愛用の剣を渡すっていう行為の意味が」
そう言って、信喜はゆっくりと立ち上がる。
「早く行け。数秒なら命に代えても稼いでやる」
そう言って、信喜はゆっくりと強斎に近づく。
だが、仁はそれを止めた。
――――――物理的に。
仁は問答無用で信喜を足払いし、転ばせてから信喜の剣を信喜の顔の真横に突き刺す。
信喜が何か言おうとするが、仁は魔力を使った威圧で黙らせた。
そして――――――。
「次は俺の番だ。お前だけ戦わせねぇよ」
仁の雰囲気が変わった。
なんと、勘違いされたまま戦うことになってしまった!
主人公の変なテンションはいつ終わるのか!?
そもそも、勇者はどこにいるのか!?
次回もお楽しみに!
最近、学園恋愛ものにはまっています。
いつか書いてみたいです。