39話 恋っぽい
眠いです
時間が欲しいですね
「はぁ……。あの顔は絶対何か悪巧みしている顔だわ……」
澪が先ほどの鈴の顔を思い出す。
ため息しか出なかった。
澪、緋凪、琴音は現在、鈴の部屋に向かっている途中である。
「私は、何となくわかるかなー……」
苦笑い気味に緋凪が言う。
「私も……何となくわかったような……」
琴音にも心当たりがあるようだ。
「えっ!?なんで!?私には全然心当たりなんて……」
「んー……まぁ、澪ちゃんだし、しょうがないかな?」
緋凪はそう苦笑いをする。
そうしているうちに、鈴の部屋までたどり着いた。
「はぁ……結局、なんのことかわからなかったな……」
澪は少し不満のようだ。
「その答えは、鈴ちゃんから聞けばいいじゃない。私の考えが合ってるかどうかわからないんだから」
緋凪はそう言いながら、部屋をノックする。
すると、中からツインテールの少女、鈴が出てきた。
「あら、案外早かったわね。まぁいいわ、どうぞ入って」
鈴は、3人を部屋に招き入れる。
4人が腰を下ろしたところで、鈴が喋りだした。
「さて、お題はもうわかっていると思うけど……あ、澪以外」
「なんで!?」
澪が図星を突かれたような動揺で、鈴に突っ込む。
「いや、実際わかってないでしょ?」
「うっ……。まぁ、そうなんだけど……」
「まぁ、そういうところが澪らしいんだけどね」
「私のことはいいから、答えを教えてよ」
「はいはい。……そこの二人はわかっていると思うけど、勇志とヴェレスについてよ」
すると、緋凪と琴音は同時に頷く。
「やっぱりわかるわよね」
鈴も満足気に頷く。
しかし、澪だけはイマイチ理解していないようだった。
「えっと……どういうこと?」
「……澪ってさ。よくそれで女子高生やってたね」
呆れた顔で、鈴がそう言った。
すると、澪は頬を膨らませる。
その光景に、一同は、思わず小さく笑ってしまう。
先ほどの暗い話など無かった様な雰囲気だ。
「ふふっ……ごめんごめん。ちゃんと澪にもわかるように説明するね」
「最初っからそうしてくれれば良かったのに。……鈴の意地悪」
「だから、ごめんって言ってるじゃん。っと、話を戻すわね」
鈴はそこまで言うと、先ほどと同じようにニヤリと笑った。
「ぶっちゃけ言いますと、ヴェレスと勇志をくっつけちゃうってことよ」
………
……
…
ここはドレット王国城内にある、広い庭。
その広い庭には人は少なく、今は二人しかいない。
その二人は椅子に座っていた。
ヴェレスと勇志だ。
「すみません、こんなところで……」
ヴェレスが申し訳なさそうに勇志に謝罪する。
「いや、とても素晴らしい場所だよ。……ところで、一体どうしたんだい?」
そう、ヴェレスはホルスのとある言葉により、食堂から逃げ出したのだ。
それを勇志が追い、ヴェレスを止めようとしたのだが、ヴェレスの涙により何も言えなくなってしまった。
そして、ヴェレスが場所を変えて話がしたいという要望に従い、ここまで来たのである。
「…………実は、このドレット王国とシッカ王国は長年、敵対関係……と言ってもこちらが一方的に思っているだけなんですが……。まぁ、そんな関係なんです。……ですから――――」
「ショクオウと言う冒険者を引き抜く理由も、それに関係している……と?」
「……はい」
すると、ヴェレスの目に潤みが見えてくる。
勇志はそれを見て、不思議に思った。
「……なぜだい?」
「……え?」
「なぜ、ヴェレスはそんなに悲しむんだい?」
「……」
「戦争が嫌いだからってだけじゃないよね?」
「……それは」
「それは?」
勇志はそこで、ヴェレスがポロポロと目から雫を落としていることに気がつく。
それを見て、謝ろうとするが、その前にヴェレスが喋りだした。
「私が……私が力不足のせいなんです……」
「え?」
勇志はの思考回路は一瞬止まってしまった。
なぜその言葉が出てきたのか理解が出来なかった為である。
しかし、ヴェレスは話し続けた。
「私は、自分が許せないのです……。いくら国の為といえども、勝手にこちらの世界に呼び出し、挙句の果てにお友達まで死に至らしめ、更にはこちらの勝手な事情にまで巻き込んで……それだけでも申し訳ないのに、その責任感に負け、私はお父様に当たってしまいました……。そんな自分が許せないのです……!」
ギリっとヴェレスから歯軋りの音が聞こえる。
それを見て、勇志はとある事を思った。
(……強斎だったら、こんな時どうするんだろう?)
そう今は亡き友人を思い出し、心が少し痛むが、勇志は行動に出た。
――――――ポンッ。
勇志はそっとヴェレスの頭の上に手を置き、撫で始める。
さっきまで全身に力を入れていたヴェレスの顔が、驚きに変わる。
「ユウシ……さん?」
ヴェレスの入れすぎた力は、完全に元通りになるが、次に、顔がドンドン赤く染まっていく。
そして、そのヴェレスに勇志はトドメを刺した。
「ヴェレスは本当にしっかりとしているよ……」
「あの……えっと……はぅ……」
ヴェレスの顔はもう真っ赤である。
しかし、ヴェレスは勇志から顔を逸している為、勇志は気がついていない。
そして、勇志は手を離してヴェレスに問いかけた。
「ヴェレスってさ、確か僕たちより2つ歳下だったよね?」
「はぃ……」
「だったらさ、まだそんなに責任感を背負わなくていいと思うんだ」
「ですが、私はこの王国の王女で……もうやめましたが……」
「王女だろうとなかろうと関係ないよ」
「え?」
その事に驚いたのか、ヴェレスは勇志と顔を合わせる。
思ったより至近距離だったようで、ヴェレスは少々動揺する。
しかし、勇志はそれに気づくこともなく優しく微笑んだ。
「王女でも王女じゃなくても関係ない。ヴェレスが15歳には変わりないから。だから、そんなに自分を責めなくていい。わがままの一つぐらい、親に反抗するぐらい、大丈夫だから」
すると、ヴェレスはポカンと口を開いたまま止まってしまった。
しかし、直ぐに元に戻りクスクスと笑い出した。
「ユウシさん、言っていることが滅茶苦茶ですよ?」
勇志は、それに苦笑いで答えるしかなかった。
「ですが、ありがとうございます。何か楽になった気がします」
「それは良かった」
すると、ヴェレスは椅子から立ち上がり、勇志の方を向いた。
「ところでユウシさん。私から一つ、わがままを言ってもいいでしょうか?」
「うん、僕でよければ」
そう言って、勇志も立ち上がる。
「では、言わせてもらいますね?」
ヴェレスは右手を握手をするかのように出した。
「ユウシさん」
「え?あ、うん」
勇志はその手を握った。
しかし、その瞬間勇志はグイっと引っ張られ――――――。
「――――――――好きです」
耳元で告白された。
………
……
…
「と、まぁ、こんな感じな訳よ」
鈴は勇志とヴェレスの関係について、澪にもわかるように説明していた。
「まとめると、ヴェレスは勇志の事が好き。勇志も少しながら好意を持っているってところかしらね?」
鈴はそこまで説明すると、小さくため息をした。
「鈴先生!」
「はい、澪君。なにかね?」
「私と強斎の関係と何が違うの?同じ恋なんだよね?」
「「「……」」」
一同は黙るしかなかった。
………
……
…
「えっと……ヴェレス?今のは……?」
勇志が先程の言葉の意味を訊くが、ヴェレスは顔を真っ赤にしてモジモジしていた。
「えっと、その……告白……です」
「そ、そう……」
そして、沈黙が流れる。
しかし、その沈黙も数秒だった。
「えっと……その、お返事は……」
ヴェレスがそう勇志に問う。
「あ、ああ。……僕は、嬉しいよ」
「え!?」
先ほどのモジモジから、喜びが伝わるようになってきた。
「うん、いいよ。僕もヴェレスの事気になってたし……。付き合おうか」
「本当ですか!?」
グイっとヴェレスは勇志に寄る。
「う、うん。でも、レベル上げとかは今まで通りやるよ?」
「大丈夫です!全っ然大丈夫です!」
それからヴェレスは、少しの間はしゃいだ。
年相応の少女のように。
………
……
…
「はぁ……はぁ……流石にここまで言えばわかったでしょ?」
「うん!要するに私たちの劣化版ね!」
「ちっがーう!!」
只今、鈴と澪は激闘を繰り広げていた。
澪の恋愛に関する知識が、おかしい事になっていたのである。
緋凪と琴音は諦めて指スマしていた。
「もー、何が違うの?」
「だから、澪と強斎は異常で、ヴェレスと勇志は一般的ってこと」
「私たちが異常なわけないよ?」
「いや、異常だから」
「どこが異常なのさ」
「まず、澪と強斎が異常。特に澪は危険」
「私が危険?」
「そう、もうヤバイ程危険。病気レベル」
「ひどいなー」
「……もういいわ。とにかく、そろそろ作戦会議を――――」
「鈴たち。そこに居るかい?」
鈴が言い終わる前に、扉越しに勇志の声が聞こえた。
「ありゃ、ご本人来ちゃったか……。いるわよー」
鈴は立ち上がり、扉を開ける。
「はいはい、何のご……よ……う?」
そこにいたのは、勇志だけではなかった。
ヴェレスもいたのだ。
それだけなら不思議等ない。
しかし、一つ不思議な事が起きていた。
「えっと、なんで手繋いでるの?」
そう、勇志とヴェレスは手を繋いでいたのである。
しかも、ヴェレスは今までにないほどニコニコしていた。
そして、鈴の質問に勇志が答えた。
「えっと……僕たち、付き合う事になったんだ」
「へ、へー」
もう鈴はそれしか言えなくなっていた。
「だけど、安心して。今まで通りレベル上げもするから。ただ、僕たちが付き合うことになっただけ。それ以外は変わらないよ」
「そうじゃないと困るわよ……」
鈴はちょっと苦笑い気味にため息をした。
「どうしたんだい?」
その器用なため息に疑問を持った勇志。
「なんでもないわよ。ただ、手間が省けたって思っただけ」
「?」
「ところで、他の面々にはもう言ったの?」
「ああ、説明したよ」
「じゃあ、あなたたちも部屋に入りなさい」
「いいのかい?こんな女の子だらけの……」
「いいからいいから。その代わり、澪に説明してやりなさい」
「?」
この後、勇志が大苦戦したのは言うまでもない。
しかし、勇志はなんとか勝利したのである。
これで勇者視点は終わりかな?
それと、1章的なのも終わりかな?
頭の中にサイドストーリーをいくつか考えています。
今、考えているサイドストーリーは
強斎&澪
強斎&大地
鈴&大地
です。
そういえば、新規小説作成ができないのですが……
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