37話 勇者の自信と弱点っぽい
書いてたら、PCが勝手に再起動しやがりました
「ここら辺で休憩をとりましょう」
ルナと、魔界の死の森でレベル上げを手伝ってもらって、少し経った頃。
疲労が見える者が出てきたので、ルナは休憩を取り入れた。
ルナは一人木にもたれながら座り、考え事をしていた。
(やっぱり、少しおかしいですね……死の草原では、なんの変化も無かったけど、この森と転移門付近の森だけ、異常に魔物が活発かつ複数いますね……。まぁ、大体は予想がついていますが……)
そう言って、ルナは深い溜息を出す。
(……主様の存在しか有り得ませんね……。主様、草原には何の手も加えていませんでしたから、そこに弱い魔物が集まり、残った強い魔物は、何とかして生き延びようと集団で生息するようになった……こんなもんでしょう)
そこまで考えたところで、澪がルナの隣に来て腰を下ろした。
「ルナさん、何か悩み事ですか?溜息してましたけど……」
疲労を見せない澪がルナに言葉をかける。
「いえ、もう解決しましたから……。それと、ミオさん……でしたよね?」
「あ、はい……って、自己紹介しましたっけ?」
「いえ、お仲間がそう呼んでいたので」
「凄いんですね、ルナさんって」
「それほどでもありませんよ。……そう言えばミオさん」
「はい」
「ミオさんって……いえ、他のヴェレスさん、ユウシさん、ダイチさん、リンさんって『超解析』のスキル持っていますよね?」
「!?」
「その反応で十分です」
ルナはその場でスっと立ち上がった。
澪は固まったままだったが、何とか声を絞り出した。
「な、なんで……もしかして、最初から……」
「いえ、私も最初からわかった訳ではありません。一緒にレベル上げをしてるうちにわかったんですよ……。私が魔物に攻撃した時、異常に驚いていましたから。……それに――――」
………
……
…
澪がルナと話している間、ヴェレス、勇志、大地、鈴は話し合っていた。
お題は、勿論ルナについてだ。
「私、ちょっと魔術師として自信を失ったんだけど……」
早速鈴が愚痴らしき言葉を発した。
「俺も重戦士としての自信を失ったな……」
珍しく、大地も凹んでいた。
「僕も聖騎士として、魔術剣士としての自信が……」
勇志が一番凹んでいるようだ。
そして、この中で一番まともなヴェレスが、話題を変えようとする。
「皆さん!今は落ち込んでいる場合ではありません!」
「って、言ってもね……数十匹のランク12以上の魔物を、数瞬でHP1桁になるよう加減して、気絶までさせてから、私たちにラストアタックを取らせる化物よ?しかも、その化物が私たちと同い年で、非戦闘種族なんだもん……。そりゃ、自信もなくすでしょ?」
そこで、また大きく溜息をつく3人。
だが、大地は直ぐにそこから立ち直り、本題に入った。
「素早さ、防御力、攻撃力、魔術、剣術、その何もかもが群を抜いている……やはり、加えるべきじゃないか?」
そう、ルナを仲間に加えようと思っているのだ。
「そうだね……僕もそう思うよ。さすがに魔神討伐って言ったら、頭おかしいと思われると思うから、ルナさんには魔王討伐として仲間に入ってもらおう」
勇志のその提案に、反論は無かった。
魔神を討伐するためにレベル上げしていると言ったら、普通に心配される。
この世界で魔神とは、架空の存在に近いのだから。
だったら、自分たちが勇者だと話して、魔王を討伐すると言ったほうがいいだろう。という決断だ。
「ん?澪が戻ってきたみたいだぞ」
結論が出た数秒後に、ルナのことを少しでもわかろうと出撃した澪が、戻ってきた。
しかし、トボトボと歩きながら戻ってくるところから、大した成果はないだろうと4人は推測する。
そして、澪が4人の前で止まった時。
予想外の言葉を発したのである。
「…………ルナさんが化物すぎる」
そう言って、ガクッと膝をついてから、手を地面につけた。
「え……澪!?何があったの!?」
鈴は澪の肩を揺らすが、しばらくは反応しなかった。
………
……
…
「あいつら、何やってんだ?」
澪が放心状態になっている時、ライズ王国勇者は普通に休憩をしていた。
疲労を見せた者たちだ。
信喜は澪と鈴が、コントをやっているように見えたらしい。
それに答えたのは琴音だった。
「多分、澪さんがルナさんに話しかけて、何か言われた……。そんな感じじゃないかしら?」
「ふぅ」と小さく息を吐きながら琴音は立ち上がった。
「それにしても、ルナさん凄かったわね……」
その言葉に誰もが共感した。
「ほんとにあのルナって奴は17歳の非戦闘種族なのか?」
「おい、信喜。『さん』をつけろ『さん』を『様』でもいいんだぞ」
仁が信喜に注意をする。
「お前は、慕い過ぎだ」
「当たり前だ。師匠を圧倒的に超える方だぞ」
「あー、はいはい。そーですねー」
この後信喜は、仁の力説をスルーし続けた。
………
……
…
「そんな……『超解析』がバレていたなんて……」
澪が復帰し、一番最初にこの事を伝えた。
鈴は先程の言葉と同時に足元がふらつく。
「鈴……大丈夫?」
弱々しい声で鈴を心配する澪。
「ええ、大丈夫よ……ちょっと、チートって意味がわからなくなっただけ」
「それは俺も同感だ。あれだけのスペックにここまで頭がきれるとは……俺たちがチートだとしたら、ルナさんはバグの部類に入るな」
大地が苦笑い気味に言う。
それに続くように、澪が話し出す。
「ルナさん、本当に凄かったの……私たちの弱点とか、色々と教えてもらった……」
「「「「弱点?」」」」
「うん、弱点」
「ルナさんはなんて言ってたの?」
鈴が若干不思議に思いながら、話を聞く。
この勇者チームはバランスが取れていて、連携も取れている。
弱点など、そうそうないはずだった。
「えっと……それはね……」
「じれったいわね。早く言いなさいよ……」
「うん……えっとね、ヴェレスを含む私たち5人の弱点は……」
澪はしっかりと、鈴を見てこう言った。
「鈴……あなただって」
5人はしばらく黙っていた。
連携とか戦術とかではなく、個人がそのグループの弱点だと指摘されたのだ。
しかし、鈴はどこか吹っ切れたようだった。
「そっか……やっぱり私だったか……」
「どういう事だ?鈴?」
大地が不思議に思い声をかける。
「私、最近自覚し始めたことがあってね……。私、精密に魔術を放つ事が苦手みたい……」
そう、鈴はいつも広範囲魔術を使っていたのだ。
精密重視の魔術が苦手だとわかってから余計に……。
「多分、このせいだと思う……」
「それもありますが、もっと基本的なところから見直してみましょう」
鈴が苦笑いをした時、澪の後ろからひょこっとルナが出てきてそう言った。
しかし、全員驚くことは無かった。
普通に近づいて来るのが見えたからだ。
そして、ルナは言葉を続けた。
「リンさんは物凄く魔術に長けております。ですが、その強力さのせいで、無駄な消費をしている事にお気づきでしたか?」
「え?」
「やはり、気がついていなかったのですね。リンさんが魔術を使う時、魔力が全て魔術に使われていないのですよ。そのせいで、思ったような魔術が完成せず、精密度を中心に劣化しているのです」
「えっと……もう少しわかりやすく……」
「そうですね……」
ルナは両方の手のひらを鈴に見せるようにした。
そして、その手から二つの火玉が出てきた。
「魔術の同時発動……」
そこに居た魔術師3人はここでも驚くことになった。
しかし、ルナはそのようなことを気にも止めず、話を続けた。
「リンさん、この二つの火玉のうち、弱い方はどちらかわかりますか?」
鈴はその二つの火玉を見比べる。
右の方は安定した形を保っているが、左は右よりほんの少し小さく、球にブレがある。
「えっと……左」
「はい、正解です。ですが、この火玉、同じ量の魔力を使っているのですよ?」
「え……?じゃあ、まさか……」
「そうです、リンさんが放とうとしている魔術は右の魔術。ですが、実際に出てくるのは左の魔術。こういう事です」
ルナはスっと火玉を引っ込めて、話を続けた。
「ですので、リンさんにはまず魔力の操作から練習した方がいいと思いますよ?」
ニッコリとルナはそう言った。
「あ、あの……ありがとうございます……」
ちょっと恥ずかしかったが、鈴ははっきりと、そう言った。
「いえ、ここで会ったのも何かの縁ですから。さて、レベル上げを始めましょう」
こうして、レベル上げが始まった。
………
……
…
「今日はありがとうございました」
すっかり暗くなった頃には、全員転移門付近の森にいた。
「いえ、こちらも楽しかったですし」
勇志の言葉にこう返すルナ。
そこで、勇志が何かを決心したような顔になった。
その変化にルナは気づき、何事かと思う。
「どうしました?」
「えっと……実は、ルナさんに僕たちの仲間になって欲しいんだ」
「仲間ですか?」
「はい。実は、僕たちは人族の勇者でして……」
「確かに、普通の方と比べて、かなり破格の強さでしたね」
ここで、ほとんどの人が内心で突っ込んだ。
「それで、僕たちと一緒に魔王を討伐しませんか?ルナさんの様な方がいてくれれば、かなり心強いのですが……」
勇志は恐らく承諾してくれるであろうと思っていた。
しかし、現実は違った。
ルナが困ったような顔をしてこう言ったのである。
「それは、私では決めかねます……主様に訊かないと……」
『え?』
そう、ルナは確かに『主様』と言ったのだ。
「え、えっと……主様とは……?この森の精霊様とか、何か?」
勇志は若干焦り気味に言った。
「いえ、違いますよ。私たち、少し前からこの森に居候してるんですよ。で、主様は私の主様で、私は主様の奴隷なんです」
『奴隷!?』
全員、物凄く驚いた。
そうだろう、何故ここまでの力を持ちながら奴隷なのか。
その質問を、この中で最も適任者でない奴が訊いてしまった。
信喜だ。
「なんでそこまでの力があるのに、奴隷なんだ?その主様って奴に騙されたってか?だったら、その主様って奴はクズや――」
そこまで信喜が言ったところで、信喜は何も言えなくなった。
いつの間にか尻餅をついていたが、気にもならなかった。
ルナの目が殺気に満ちていたのである。
そして、それが勘違いでないことが、ルナの次の言葉で確信になった。
「それ以上主様を侮辱するなら、殺しますよ?」
ルナは威圧すら使っていない。
ただの殺気でこの場を支配したのだ。
しかし、その殺気も少し収まり、ルナは言葉を続ける。
「主様は気になさらないと思いますが、私
そう言い終わる頃には、既に殺気は消えていた。
しかし、一同は喋ることは出来なかった。
「では、私はこれで……また機会があったらもっとお話しましょう」
そう言って、ルナは暗闇の森の中に消えてしまった。
ルナが消えた後も、勇者達は動くことが出来なかった。
なんと主人公の話題が一切出ずに別れてしまいました。
さて、ルナに殺気を向けられた勇者達はこれからどうするのでしょうか?
次回もお楽しみに!
えっと、少し質問なのですが。
自分の小説の書き方ってどうですか?
個人の意見でいいので、どこがダメで、どこがいいとか、簡単にでもお願いします。
勿論、言わなくても結構ですよ。
それでは、感想待ってます!
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