<< 前へ次へ >>  更新
40/127

37話 勇者の自信と弱点っぽい

書いてたら、PCが勝手に再起動しやがりました



「ここら辺で休憩をとりましょう」


 ルナと、魔界の死の森でレベル上げを手伝ってもらって、少し経った頃。

 疲労が見える者が出てきたので、ルナは休憩を取り入れた。


 ルナは一人木にもたれながら座り、考え事をしていた。


(やっぱり、少しおかしいですね……死の草原では、なんの変化も無かったけど、この森と転移門付近の森だけ、異常に魔物が活発かつ複数いますね……。まぁ、大体は予想がついていますが……)


 そう言って、ルナは深い溜息を出す。


(……主様の存在しか有り得ませんね……。主様、草原には何の手も加えていませんでしたから、そこに弱い魔物が集まり、残った強い魔物は、何とかして生き延びようと集団で生息するようになった……こんなもんでしょう)


 そこまで考えたところで、澪がルナの隣に来て腰を下ろした。


「ルナさん、何か悩み事ですか?溜息してましたけど……」


 疲労を見せない澪がルナに言葉をかける。


「いえ、もう解決しましたから……。それと、ミオさん……でしたよね?」


「あ、はい……って、自己紹介しましたっけ?」


「いえ、お仲間がそう呼んでいたので」


「凄いんですね、ルナさんって」


「それほどでもありませんよ。……そう言えばミオさん」


「はい」


「ミオさんって……いえ、他のヴェレスさん、ユウシさん、ダイチさん、リンさんって『超解析』のスキル持っていますよね?」


「!?」


「その反応で十分です」


 ルナはその場でスっと立ち上がった。


 澪は固まったままだったが、何とか声を絞り出した。


「な、なんで……もしかして、最初から……」


「いえ、私も最初からわかった訳ではありません。一緒にレベル上げをしてるうちにわかったんですよ……。私が魔物に攻撃した時、異常に驚いていましたから。……それに――――」


………

……


 澪がルナと話している間、ヴェレス、勇志、大地、鈴は話し合っていた。


 お題は、勿論ルナについてだ。


「私、ちょっと魔術師として自信を失ったんだけど……」


 早速鈴が愚痴らしき言葉を発した。


「俺も重戦士としての自信を失ったな……」


 珍しく、大地も凹んでいた。


「僕も聖騎士として、魔術剣士としての自信が……」


 勇志が一番凹んでいるようだ。


 そして、この中で一番まともなヴェレスが、話題を変えようとする。


「皆さん!今は落ち込んでいる場合ではありません!」


「って、言ってもね……数十匹のランク12以上の魔物を、数瞬でHP1桁になるよう加減して、気絶までさせてから、私たちにラストアタックを取らせる化物よ?しかも、その化物が私たちと同い年で、非戦闘種族なんだもん……。そりゃ、自信もなくすでしょ?」


 そこで、また大きく溜息をつく3人。


 だが、大地は直ぐにそこから立ち直り、本題に入った。


「素早さ、防御力、攻撃力、魔術、剣術、その何もかもが群を抜いている……やはり、加えるべきじゃないか?」


 そう、ルナを仲間に加えようと思っているのだ。


「そうだね……僕もそう思うよ。さすがに魔神討伐って言ったら、頭おかしいと思われると思うから、ルナさんには魔王討伐として仲間に入ってもらおう」


 勇志のその提案に、反論は無かった。


 魔神を討伐するためにレベル上げしていると言ったら、普通に心配される。


 この世界で魔神とは、架空の存在に近いのだから。


 だったら、自分たちが勇者だと話して、魔王を討伐すると言ったほうがいいだろう。という決断だ。



「ん?澪が戻ってきたみたいだぞ」


 結論が出た数秒後に、ルナのことを少しでもわかろうと出撃した澪が、戻ってきた。


 しかし、トボトボと歩きながら戻ってくるところから、大した成果はないだろうと4人は推測する。


 そして、澪が4人の前で止まった時。


 予想外の言葉を発したのである。



「…………ルナさんが化物すぎる」



 そう言って、ガクッと膝をついてから、手を地面につけた。


「え……澪!?何があったの!?」


 鈴は澪の肩を揺らすが、しばらくは反応しなかった。


………

……


「あいつら、何やってんだ?」


 澪が放心状態になっている時、ライズ王国勇者は普通に休憩をしていた。


 疲労を見せた者たちだ。


 信喜は澪と鈴が、コントをやっているように見えたらしい。


 それに答えたのは琴音だった。


「多分、澪さんがルナさんに話しかけて、何か言われた……。そんな感じじゃないかしら?」


 「ふぅ」と小さく息を吐きながら琴音は立ち上がった。


「それにしても、ルナさん凄かったわね……」


 その言葉に誰もが共感した。


「ほんとにあのルナって奴は17歳の非戦闘種族なのか?」


「おい、信喜。『さん』をつけろ『さん』を『様』でもいいんだぞ」


 仁が信喜に注意をする。


「お前は、慕い過ぎだ」


「当たり前だ。師匠を圧倒的に超える方だぞ」


「あー、はいはい。そーですねー」


 この後信喜は、仁の力説をスルーし続けた。


………

……


「そんな……『超解析』がバレていたなんて……」


 澪が復帰し、一番最初にこの事を伝えた。

 鈴は先程の言葉と同時に足元がふらつく。


「鈴……大丈夫?」


 弱々しい声で鈴を心配する澪。


「ええ、大丈夫よ……ちょっと、チートって意味がわからなくなっただけ」


「それは俺も同感だ。あれだけのスペックにここまで頭がきれるとは……俺たちがチートだとしたら、ルナさんはバグの部類に入るな」


 大地が苦笑い気味に言う。


 それに続くように、澪が話し出す。


「ルナさん、本当に凄かったの……私たちの弱点とか、色々と教えてもらった……」


「「「「弱点?」」」」


「うん、弱点」


「ルナさんはなんて言ってたの?」


 鈴が若干不思議に思いながら、話を聞く。

 この勇者チームはバランスが取れていて、連携も取れている。


 弱点など、そうそうないはずだった。


「えっと……それはね……」


「じれったいわね。早く言いなさいよ……」


「うん……えっとね、ヴェレスを含む私たち5人の弱点は……」


 澪はしっかりと、鈴を見てこう言った。





「鈴……あなただって」





 5人はしばらく黙っていた。


 連携とか戦術とかではなく、個人がそのグループの弱点だと指摘されたのだ。


 しかし、鈴はどこか吹っ切れたようだった。


「そっか……やっぱり私だったか……」


「どういう事だ?鈴?」


 大地が不思議に思い声をかける。


「私、最近自覚し始めたことがあってね……。私、精密に魔術を放つ事が苦手みたい……」


 そう、鈴はいつも広範囲魔術を使っていたのだ。


 精密重視の魔術が苦手だとわかってから余計に……。


「多分、このせいだと思う……」


「それもありますが、もっと基本的なところから見直してみましょう」


 鈴が苦笑いをした時、澪の後ろからひょこっとルナが出てきてそう言った。


 しかし、全員驚くことは無かった。

 普通に近づいて来るのが見えたからだ。


 そして、ルナは言葉を続けた。


「リンさんは物凄く魔術に長けております。ですが、その強力さのせいで、無駄な消費をしている事にお気づきでしたか?」


「え?」


「やはり、気がついていなかったのですね。リンさんが魔術を使う時、魔力が全て魔術に使われていないのですよ。そのせいで、思ったような魔術が完成せず、精密度を中心に劣化しているのです」


「えっと……もう少しわかりやすく……」


「そうですね……」


 ルナは両方の手のひらを鈴に見せるようにした。


 そして、その手から二つの火玉が出てきた。


「魔術の同時発動……」


 そこに居た魔術師3人はここでも驚くことになった。


 しかし、ルナはそのようなことを気にも止めず、話を続けた。


「リンさん、この二つの火玉のうち、弱い方はどちらかわかりますか?」


 鈴はその二つの火玉を見比べる。


 右の方は安定した形を保っているが、左は右よりほんの少し小さく、球にブレがある。


「えっと……左」


「はい、正解です。ですが、この火玉、同じ量の魔力を使っているのですよ?」


「え……?じゃあ、まさか……」


「そうです、リンさんが放とうとしている魔術は右の魔術。ですが、実際に出てくるのは左の魔術。こういう事です」


 ルナはスっと火玉を引っ込めて、話を続けた。


「ですので、リンさんにはまず魔力の操作から練習した方がいいと思いますよ?」


 ニッコリとルナはそう言った。


「あ、あの……ありがとうございます……」


 ちょっと恥ずかしかったが、鈴ははっきりと、そう言った。


「いえ、ここで会ったのも何かの縁ですから。さて、レベル上げを始めましょう」


 こうして、レベル上げが始まった。


………

……



「今日はありがとうございました」


 すっかり暗くなった頃には、全員転移門付近の森にいた。


「いえ、こちらも楽しかったですし」


 勇志の言葉にこう返すルナ。


 そこで、勇志が何かを決心したような顔になった。


 その変化にルナは気づき、何事かと思う。


「どうしました?」


「えっと……実は、ルナさんに僕たちの仲間になって欲しいんだ」


「仲間ですか?」


「はい。実は、僕たちは人族の勇者でして……」


「確かに、普通の方と比べて、かなり破格の強さでしたね」


 ここで、ほとんどの人が内心で突っ込んだ。


「それで、僕たちと一緒に魔王を討伐しませんか?ルナさんの様な方がいてくれれば、かなり心強いのですが……」


 勇志は恐らく承諾してくれるであろうと思っていた。


 しかし、現実は違った。


 ルナが困ったような顔をしてこう言ったのである。


「それは、私では決めかねます……主様に訊かないと……」


『え?』


 そう、ルナは確かに『主様』と言ったのだ。


「え、えっと……主様とは……?この森の精霊様とか、何か?」


 勇志は若干焦り気味に言った。


「いえ、違いますよ。私たち、少し前からこの森に居候してるんですよ。で、主様は私の主様で、私は主様の奴隷なんです」


『奴隷!?』


 全員、物凄く驚いた。


 そうだろう、何故ここまでの力を持ちながら奴隷なのか。


 その質問を、この中で最も適任者でない奴が訊いてしまった。


 信喜だ。


「なんでそこまでの力があるのに、奴隷なんだ?その主様って奴に騙されたってか?だったら、その主様って奴はクズや――」


 そこまで信喜が言ったところで、信喜は何も言えなくなった。


 いつの間にか尻餅をついていたが、気にもならなかった。


 ルナの目が殺気に満ちていたのである。


 そして、それが勘違いでないことが、ルナの次の言葉で確信になった。



「それ以上主様を侮辱するなら、殺しますよ?」



 ルナは威圧すら使っていない。


 ただの殺気でこの場を支配したのだ。


 しかし、その殺気も少し収まり、ルナは言葉を続ける。


「主様は気になさらないと思いますが、私たち・・が許しませんからね。それと、お仲間のお誘いですが、やはり主様に訊かないとどうにもならないので……すみません」


 そう言い終わる頃には、既に殺気は消えていた。


 しかし、一同は喋ることは出来なかった。


「では、私はこれで……また機会があったらもっとお話しましょう」


 そう言って、ルナは暗闇の森の中に消えてしまった。


 ルナが消えた後も、勇者達は動くことが出来なかった。

なんと主人公の話題が一切出ずに別れてしまいました。


さて、ルナに殺気を向けられた勇者達はこれからどうするのでしょうか?


次回もお楽しみに!



えっと、少し質問なのですが。


自分の小説の書き方ってどうですか?

個人の意見でいいので、どこがダメで、どこがいいとか、簡単にでもお願いします。

勿論、言わなくても結構ですよ。


それでは、感想待ってます!


あ、Twitterやメッセージでの質問も受け付けております!

<< 前へ次へ >>目次  更新