36話 勇者と兎族の少女っぽい
えっと、読者の皆様。
主人公のせいで、勇者が弱く見えた方が多いのではないのでしょうか?
ここで、勇者がどれだけチートなのか説明したいと思います。
それと、勇者は人間限定で最強なだけであって(強斎は除く)亜人などは含まれておりません。
ここでは一番強い勇志に例えましょう。
まず、握力ですが2トンはあります。
パンチングマシーンで殴った場合、7500キロは超えます。
時速120km超の大型トラックに潰されても死にません。怪我は負うと思いますが。
数百メートル離れた林檎の芯を鉛筆投擲で砕けます。
全力で走ると、時速850kmぐらいで走ります。
それをご理解した上でどうぞ
追記 こう考えると、この世界の魔物ってかなり恐ろしいですよね
「大丈夫ですか?どこかお怪我とかは……」
突然勇者の前に現れた青髪の兎少女は、先ほどの魔術がさも当然だと言わんばかりに、全く疲労を見せていなかった。
鈴は色々な事に唖然とし、声が出なかった。
その、行為に兎族の少女は不安気になる。
「えっと……人族ですよね?言葉は通じているはずですが……」
その少女の顔を見た鈴はハッと我に返る。
「あ……。う、うん。私は大丈夫。でも、仲間が怪我をしていて……」
返事が返ってきたことに一安心した少女は、一瞬安堵の表情を見せ、直ぐに顔をしかめた。
「わかりました。直ぐにお仲間を集めてください。何人程ですか?」
「私を含めて9人……です」
「9人……わかりました。直ぐに戻ってきますので、この中にお仲間を」
少女は少し空いているスペースに、土魔術で簡易な小屋を造った。
勿論、9人は余裕で入るし、かなり頑丈だ。
ただそれだけのことなのだが、鈴の口は塞がらなかった。
(嘘……でしょ……?これだけの大きさ、頑丈さがある小屋を造るのに、ノータイムで魔術を使うなんて……この子、何者なの!?)
鈴は気になってその少女のステータスを除く。
しかし、ここでも鈴は驚愕した。
(そ、そんな……何で……)
鈴が見たステータスはこうであった。
#
ルナ
LV10
HP 80/80
MP 150/150
STR 20
DEX 18
VIT 23
INT 21
AGI 26
MND 28
LUK 40
スキル
体術LV2
水属性LV1
土属性LV1
属性
水・土
#
鈴は直感した。
確実に、このステータスは本物ではないと。
そもそも、MP自体全く減っていない。
さっきの魔術は第三者が……という疑惑も一瞬脳内を
魔術に長けている鈴だからこそわかる。
この少女からは魔力がほんの少ししか漏れていない。
本来の魔術師なら、嘲笑うだろう。
しかし、鈴はそう思うことは出来なかった。
漏れる魔力が完全に一定なのだ。
明らかに調整しているとしか思えない程に一定だ。
大魔術を使った時だけ、一瞬でありえないほどに大きくなり、直ぐに一定になる。
そこまで考えた時、鈴は恐ろしくなった。
雰囲気から敵ではない事がわかる。
しかし、この少女の実力が全くわからないのだ。
今までは超解析のおかげで相手のステータスを把握することが出来た。
しかし、それが通用しないのだ。
未知への恐怖。
まさに、それだった。
「大丈夫ですか?」
急に声をかけられ、声を上げそうになるが、鈴は何とか堪えた。
「え、ええ」
「?では、私は少し行ってくるので、お仲間をそこの小屋によろしくお願いします」
「わかったわ」
鈴は一度後ろを向き、もう一度その少女を見ようと向き直るのだが……。
「……本当に何者なの?」
そこには誰も居なかった。
………
……
…
「これで、全員ね」
少女が造った小屋に全員が集まり、頷いた。
しっかりと、全員座れるスペースもある。
そこで、澪が最初に口を開いた。
「ねぇ、鈴。やっぱりこの小屋を造ったのって……」
「ええ、私たちを助けてくれた人よ」
「その人は一体……」
「その質問の前に、ヴェレスに質問があるわ」
「何でしょう?」
「兎族って、戦闘種族なの?」
「いえ、違いますよ。私たち人間族より非戦闘種族です。ですが、何故そのような…………ま、まさか……」
「ええ、私たちを助けた恩人が兎族の少女なのよ……」
「そ、そんな!何かの間違いでは……!あれ程の大魔術……エルフや精霊様でないと……」
ヴェレスが先ほどの魔術を思い出しながら、鈴に問う。
しかし、鈴は首を横に振った。
「確かに兎族だったわ……。それと、驚くところはそこだけじゃないのよ」
すると、鈴は一度全員を見てこう言った。
「私は、あの子の本当のステータスを見ることが出来なかった」
その言葉に、ヴェレスとドレット王国勇者が驚愕する。
ライズ王国勇者はイマイチ理解していないようだ。
「鈴。どういうことだい?」
勇志が少し動揺しながら鈴に訊く。
「そのままの意味よ。あの子のステータスは、あまりにも一般的過ぎた」
大半の者がその意味を理解できた様だ。
しかし、理解できていない者もいた。
「それなら、それが普通なんじゃねぇのか?」
――信喜だ。
信喜の言葉に若干鈴がイラつく。
「ほんっと馬鹿ね」
「なに!?」
「じゃあ、今からこの小屋の壁を壊してみなさいよ。言っておくけど、この壁は全くのノータイムで造られた壁だから」
すると、信喜はにやりと笑う。
「いいだろう。やってやるよ」
ちらりと緋凪を見て、信喜はスっと立ち上がった。
(全くのノータイムってことは、せいぜい初級か下級程度だろう……見てろよ緋凪、今日こそお前を振り向かせてやる!)
そう言って、信喜はUR級のメイスを取り出し、そこにあるだけの魔力で強化して、思いっきり叩いた。
――――しかし。
「なっ!?」
その壁にはヒビひとつ入らなかった。
「これでわかった?一般的なステータスを持つ子が、こんな異常な壁を造るのよ?それが異常だって言ってるの」
鈴は一つ溜息をして、話をヴェレスにふった。
「ねぇ、ヴェレス。何かわかる?」
この中でこの世界に一番詳しいヴェレスに訊いた。
「……恐らく、『超解析』と対のスキル『超隠蔽』だと思われます……しかし……」
歯切れの悪い回答に、勇者達は疑問に思った。
そして、ヴェレスは言葉を続けた。
「『超解析』は『超隠蔽』に対してステータスだけは、見えるはずです……。ですが、ステータスすら見えないとなると……考えられるのは3つですね」
一拍置いてから、ヴェレスは自分の考えを話した。
「まず一つ目は、ユウシ様の様なレアスキルのレベルアップであること。二つ目は、『超隠蔽』と『隠蔽』を両方所持していること。最後は……絶対の確率で有り得ませんが、伝説のユニークスキル所持者だということ……このくらいですね」
「2番目が一番有り得るな」
大地の言葉に皆頷く。
「でも、そのユニークスキルって?」
澪が気になってヴェレスに訊いたその時……。
「皆さん、お待たせしました」
兎族の少女が帰ってきたのである。
そして、鈴以外の全員がやはり驚いた。
最初に口を開いたのは澪である。
「あ、あなたが私たちを助けてくれたの?」
「食材を探していたら、魔物の群れに襲われていたので……勝手なことをして、すみませんでした……」
ペコリと少女は頭を下げた。
その姿を見て、澪は急いで誤解を解く。
「いやいやいや!謝らないでくださいよ!こっちは物凄く感謝しているんですから」
すると、少女は顔を上げ、ニコッと笑った。
「そう言っていただけると幸いです」
一同は何故か押し黙ってしまった。
しかし、勇志はその空気を崩そうと、その少女に声をかける。
「君は小さいのに、しっかりとしてるんだな」
「私、17歳ですよ?」
『え?』
全員の声が一致した。
その完全一致に少女は頬を膨らませる。
「いいですよ。どうせ私は、そこの人のように胸もありませんから……。子供に見えてもしょうがないです」
「あ、いや……すまないね……」
勇志もこれは失礼だと感じて、罪悪感が出てくる。
しかし、その少女は直ぐに機嫌を戻した。
「もう慣れてますから、お気になさらずにです。それと、皆さん怪我をしてますよね?よかったら……これを」
そう言って、少女は何もない空間からポーションを取り出す。
アイテムボックス持ちだとすぐにわかったが、超解析持ちは違う意味も理解した。
そう、この少女はアイテムボックスのスキルを所持していない。
それだけで十分だった。
「えっと、アイテムボックスはそんなに珍しくないはずですが……」
「あ、いや。すまない。続けてくれ」
「続けるもなにも、このポーションを皆様に差し上げます。1本で十分ですが、もう1本差し上げますね。あ、毒は入っておりませんから」
そう言って、その少女は全員に見せるように1本飲む。
そして、全員にポーションを配った時、少女は場の変化に気がついた。
「どうしましたか?」
ヴェレス、勇志、大地、鈴、澪が皆冷汗を流していたのだ。
最初に口を開いたのはヴェレスだった。
「ま、まさか……このポーション……特級ですか?しかも万能の……?」
「あ、よくわかりましたね。そうです、皆様にお配りしたポーションは全て万能ポーションの特級ですよ。ですので、安心して飲んでください」
安心とかの問題じゃないと誰かが内心で叫んだ。
ひとまず、勇者一同はそのポーションを飲んでみた。
「……これが、特級……」
ポツリと鈴が呟く。
皆、その効果に驚きを隠すことができなかった。
「本当に凄い……HPやMPだけじゃなくて、疲労まで全回復するなんて……」
緋凪が自分の手を開いたり閉じたりしている。
そこで、少女が声を出した。
「そう言えば、皆様はなんでこの森へ?」
その疑問に答えたのは勇志だ。
「ちょっと、レベル上げにこの森に来たんだ。ランク10前後の魔物を狩るつもりだったんだけど……。何故かランク10以上の魔物に囲まれてしまってね。本当に助かったよ」
すると、その少女は少し目を逸らして苦笑いをしていた。
「そ、それは大変でしたね……!それよりレベル上げですか……ここであったのも何かの縁です、手伝いましょう!」
急に話題を変えられた事に少し不審に思ったが、この少女の提案が魅力的だったので、そこまで深追いはしなかった。
「いいのかい?食材を探しているんじゃ……」
「大丈夫ですよ、もう大体集まりましたから」
すると、その少女はスっと手を出した。
「私の名前はルナ。今日一日よろしくね」
勇志は躊躇いなく握手をした。
「ああ、僕の名前は勇志。今日一日お世話になるよ、ルナさん」
こうして、勇者のレベル上げが始まった。
「じゃあ、早速魔界行こっか」
「え!?」
ルナが魔界行きの提案をしてしまったので、魔界でのレベル上げだ。
なんと、兎族の少女の正体は強斎の奴隷であるルナでしたー(棒
この先、強斎と勇者は再開するのか?
それとも、すれ違ってしまうのか?
感想待ってます!