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33話 強斎VS眷属っぽい

「はぁ……。やっぱりサードスキルもあったか……」


 強斎は一人でそう呟いていた。


 先ほど、頭の中にサードスキルが解放されたとの報告が来たのである。



(セカンドスキルは微妙だったんだよな……)


 そう、強斎は一度この感覚を味わっている。


 セカンドスキルの効果は、『眷属に与えられるスキルの量を調整出来る』という、何とも微妙な効果であった。


(サードスキルぐらい期待してもいいよな?)


 そう少しだけ願ってメニューから効果を見る。



『眷属スキル:3rd


眷属の正確な現在地と、ステータスがわかる』



「…………」


 強斎は絶句した。


 もう、言葉も出ない様だ。


 そして、内心で叫んだ。



(どこのヤンデレストーカーだよ!?)


 もっともである。



………

……



「ルナ、ちょっといいか?」


「どうしました?」


 強斎はあの後直ぐに立ち直り、ルナにステータスを分け与えようと、ルナに会いに行った。スキルを使ったら、大迷宮だろうが一瞬でわかったのである。


「気絶するかもしれんが、我慢してくれ」


「え?」


 そう言って、強斎はルナに合ったステータスとスキルを配分する。


 すると、ルナに変化が起きた。


「主……様…………?なに……を……?」


 そこで、ルナの意識は途絶えた。



「やっぱり気絶しちゃったか……結構レベル上がってたから大丈夫だと思ったんだが……」


 気絶したルナを抱えて、部屋に向かう。



ルナ


配下数157


LV42


HP 378/6000378

MP 2039/10002309

STR 500088

DEX 500096

VIT 500125

INT 500139

AGI 500106

MND 500152

LUK 40


スキル

体術LV60

棒術LV60

弓術LV50

料理LV5

調教LV40

威圧LV70

隠蔽LV63

空間把握LV30

危機察知LV40

状態異常耐性LV70

火属性LV70

水属性LV70

土属性LV70

風属性LV70

闇属性LV70

光属性LV60

HP回復速度上昇LV70

MP回復速度上昇LV75

魔物召喚

意思疎通


属性

火・水・土・風・闇・光

召喚魔術(ユニーク)




(結構配分したな……。またスキル上げしないとな)



 この後、ルナが目を覚まして騒ぎになったことは言うまでもない。



………

……



「そろそろ、ここを出ようと思う」


 大体の階層の配置が終わり、力がある精霊に迷宮の指揮官を任せた次の日、強斎がそう言った。


 強斎の提案に全員賛成するが、強斎は言葉を続けた。


「その前に、お前たちと手合わせしたい」



 ――――場が凍りついた。



 皆一斉に顔を青ざめ、固まっている。

 ゼロは以前戦ったことを思い出したのか、汗を流していた。



「そこまで怖がらなくてもいいだろ。ちゃんとハンデもやるし」


「キョウサイ様と手合わせをするのに、怖がらない方がおかしいです。ハンデがあっても勝負になる気がしません」


 皆揃えて頷く。


「ハンデの内容を聞いてからにしような!?……ハンデは、まず4対1で手合わせをする。俺は視覚聴覚を遮断して、お前たちへの攻撃はしない。するとしたら、防御とか受け流しとかだな。それと魔術は一切使わないしスキルの威圧も、お前たちに向けない。勝利条件は俺に攻撃らしい攻撃を与える事。敗北条件は1時間の間に勝利条件を満たせなかった時。これぐらいでいいか?」


 すると、ゼロが強斎に質問した。


「主人、それは可能なの?私たちは漏れる魔力の完全遮断ができるのよ?勿論、ルナもね」


 そう、ルナも強斎から配分された時から、ゼロに教えてもらっていたのだ。


「まさか、気配察知と感覚だけで全部避けきるつもり?魔術だったら一瞬魔力の流れが出るから避けられると思うけど、物理は無理でしょ?」


 すると、強斎は小さく鼻を鳴らした。


「ようやく、やる気になってくれたか」


「やる気も何も、これじゃあ、勝負にならないじゃない」


「別にそれならそれでいい。で、やるのか?」


 すると、ゼロはニヤリと笑って。


「いいわ、手合わせしましょう」


「お前たちはどうする?」


 強斎は他の面々にも訊く。


「キョウサイ様を攻撃するのは気が乗りませんが……何か考えがあるのですね?」


「まぁな」


「でしたら、手合わせしましょう」


「私も、いいですよ」


「わ、私も……」


 レイア、ルナと続く。


「よし、だったらお前たちに『命令』だ、俺と手合わせしろ」


「「「「はい」」」」


………

……


「こんな感じでいいかな……ゼロ、確認してくれ」


 強斎は目元を闇属性の魔術で覆い、耳を風属性魔術で完全に聞こえなくした。


「うん、大丈夫みたい……ね!」


 ゼロは、強斎のハンデの確認をした瞬間に横腹に蹴りを入れた。





 ――――はずだった。





「なっ!?」


 しかし、その蹴りは強斎の腕で防御されてしまった。


「へ、へぇ……やるじゃない」


「いきなり不意打ちか?まぁいい、スタートだ!」


 こうして、4対1の手合わせが始まった。




………

……





「くっ……。主人……化け物すぎるでしょ……」


 試合開始から40分、眷属たちは、強斎に全く歯が立たなかった。


「本当ですね……キョウサイ様の視覚聴覚が遮断されているのか、疑うレベルです」


「ゼロ、本当に確認したの?」


 レイアがゼロに疑いをかける。


「ええ、完全に視覚聴覚を遮断してあったわ。……王級クラスのね」


 ゼロは苦笑いをする。


「もう驚きません」


 ルナはこの言葉を何回も言っているが、実行は中々難しいようだ。



 その頃、強斎だが……。


(このサードスキル……正確すぎるだろ……)


 ストーカースキルを使っていた。


(それにしても、ゼロって光速を圧倒的に超えてないか?AGI20を時速16だと考えて、光速は約時速10億8000万だから………………うわ、光速の約3垓7800京倍かよ……恐ろしいな)


 その相手をしながら計算する強斎も馬鹿げている。








「こうなったら、範囲魔術を使って攻撃を当てるしかないわね」


「ゼロ?それはちょっとズルくない?」


 ゼロの提案に、ミーシャは否定気味だ。


「だったら、それ以外に攻撃を当てられるの?私たちが全速力で攻撃を当てようとしても、主人は数歩しか動いていないのよ?」


「それは……」


「ミーシャ、諦めろ。ゼロの言う通りだ。ご主人に攻撃を当てるには、この方法以外ないかもしれん」


「レイアまで……」


「私もそう思います。でも、この方法でも避けられると思いますが……」


「ルナ、大丈夫よ。主人は魔術を使わない。使ったら負け、でも避けるには当たるしかないからそれでも負け。ちょっとズルいけど、これがいいのよ」


「……わかったわ」


 ようやくミーシャが了承した。


 そこで、ルナがゼロに作戦内容を訊いた。


「何の魔術を使うのですか?」


全属性オールアトリビュートよ」


「全属性って火・水・土・風・闇・光の6属性ですか?」


「それに、私の属性『虚無』が合わさって全属性オールアトリビュートよ」


「「「??」」」


「あれ?聞いたことない?」


「初耳だな、虚無属性っていう属性か?」


 レイアの言葉に皆頷く。


「私も虚無属性なんて属性聞いたことありませんね。ユニーク属性ですか?」


 ミーシャがゼロに質問する。


「基本属性よ」


「私の知る限りじゃ、そのような属性を持っている人なんて居ませんでしたね」


「私もだ」


「私もです」


 すると、ゼロはクスクスと笑って答えた。


「当たり前じゃない。だって、虚無属性の使い手はこの世界に、私と主人しか居ないもの」


 一同は絶句した。


「ゼロって凄かったのですね……キョウサイ様と同じ属性を持っていたなんて……」


「あ、私に驚いてたの……」





「ゼロさん、その虚無属性でどうするんです?」


「まず、虚無属性ってのは破壊特化の魔術なの。その魔術を全力でこのフロア全体に放つわ。勿論、私たちは隅に移動して、結界を張って魔術が当たらないようにするけど」


「でも、その一撃だけだと全属性じゃないですよね?」


「そう、だからこの規模の属性魔術を連続で使うわ、あなたたちならフロア全体に範囲魔術使えるでしょ?」


 こうして、眷属4人による対強斎魔術が開始された。


*


(……ん?あいつら、魔術を使う気か?まぁ、このフロア全体に魔術を連続で使うっていう、簡単な戦法だろうがな)


 そう、内心呟くと強斎はニヤリと笑った。


(じゃあ、全力ってのを使ってみますか……!)


 すると、強斎の頭上から、真横から、前方から、後方から、あらゆるところから、あらゆる魔術が放たれた。


*



「メテオストーム……64連!!」


 ミーシャは、神級に近い帝級魔術の火・土オリジナル合成魔術『メテオストーム』を64発連続で強斎に放った。


 メテオストームは、かなり強固な岩に超高温な炎を込めて、着地と同時に大爆発を起こすエグい技である。



「ダークネスドレインブレイク……64連!!」


 レイアは闇属性帝級魔術『ダークネスドレインブレイク』を放った。


 この技は元々威力も強いが、一定以下の衝撃を吸収して更に攻撃力に上乗せできる。


 ミーシャのメテオストームの余波を吸収して、さらに攻撃力も上がっている。



「コールド・ヘル……です!」


 ルナは水・風・光属性のオリジナル神級魔術『コールド・ヘル』を放った。


 この技は、氷の粒を竜巻に乗せて、氷の粒一つ一つからレーザーを出して攻撃する魔術だ。




「破滅ノ世界!!」


 最後にゼロはオリジナル虚無属性神級魔術『破滅ノ世界』を放った。


 強斎と考えた魔術で、『混沌』の様な玉が無数に降り注ぐが、その一つ一つの威力は『混沌』を凌駕している。


 しかし、魔力を膨大に使うため、ゼロですら連発は出来ない。



 そして、ちゃんと全て発動したことにゼロは微笑した。


「さすがの主人でも、魔術なしでこれを回避するのは無理でしょう……」


 『破滅ノ世界』を放ったあとは反動が来るため、膝をついている。


 その状態でゼロはその場を確認する。





 ――――なにかがおかしい。





 ゼロは、そう直感した。


 精霊は、生まれつき魔力の流れが見える。


 先ほどの魔術がまだ続いている為、濃密な魔力が充満している。


 しかし、その中で見たことのない何かが留まっていたのだ。


 他の魔力と色が違う。だが、ミーシャ達に確認しても何も見えていないようだから、魔力であることは確か。


 そこで、魔術の連鎖が終わった。


 だんだんと魔力の流れがなくなっていく中、その何かだけは何も変わらなかった。


 ゼロは不思議に思いそれをよく見た。……見てしまった。


 そして、それを理解した瞬間、全身に鳥肌が一瞬で立つ。



「はは……ははは…………そうね……そうよね……」


 突然乾いた笑いをするゼロに、3人は疑問に思った。


「どうしたの?」


 ミーシャが心配して声をかけるが、応答はない。


(ホント……主人が戦闘狂でなくてよかったわ……。そして、主人に勝負を挑んだあの頃の私を、本気で殴りたい……無謀だって)


 そう、ゼロが思った瞬間、砂煙やら色々なものが晴れた来た。


 ゼロを除く3人は、その砂煙を見て不思議に思った。


 とある場所だけ、何かがユラユラとなっているのだ。


 そして、全員そこに誰が居るのか理解した瞬間、砂煙は完全に晴れた。



「……やはり、キョウサイ様は無傷でしたか……。それにしてもあれはなんでしょう?」


 そう、強斎は無傷だった。


 その代わり、強斎を中心とした半径2m程の半円が、未だに揺れているのだ。


 その疑問に答えたのは、ゼロだった。


「……あれは魔力の流れよ」


「魔力の流れ?それはありえません。魔力の流れはあなたたち精霊と、一部のエルフ以外は見えないはずですよ?」


 そうミーシャは完全否定した。


「そう、普通の魔力だったらね……でも、あれは違う。……見たことない?主人が魔術を使う時、一瞬空間が歪んだ気がする時があるでしょ?」


「あれは錯覚じゃなかったのですか?」


「違うわ。強すぎる魔力は空間が歪んで見える。更に強い魔力は目に見える。もっと強い魔力は空間に穴を開ける。……でも、あれはそれを軽く超えている……空間に穴を開けることすら許さない『威圧』……時空間さえひれ伏すなんて、最高神でも不可能よ……」


 その言葉を聞いたとき、他の面々もその恐ろしさを理解して小さく震えた。


 そして、ゼロは言葉を続けた。


「あの中には絶対に入っちゃダメ。多分、私たちに対して効果は極小になってると思うけど……それでも大変な事になるわ」


「えっと……例えばどんなことになるんですか?」


 ルナが恐る恐る訊く。


 それに対して、ゼロは苦笑い気味に答える。


「ひれ伏す事以外は許されないと強制的に思わせられるわ。そして、勝手に体がひれ伏すのよ。死ぬことも、気絶することも、息をすることも、心臓の鼓動すら動かす事も許されない……ひれ伏す以外の事は出来なくなるんじゃないかしら?」


 その後、「私たちじゃない場合も聞きたい?」とゼロが提案したが、ルナは全力で断った。


 すると、ゼロはスっと立ち上がり背伸びをした。


「ごめん、私、主人のこと甘く見てたみたい……。これだけのハンデがあれば勝てると思ってた……」


「私は、最初からキョウサイ様に勝てると思っていませんでしたから」


「あれだけの威圧を見ても、微動だにしないのね」


「キョウサイ様ですから」


「ご主人だから」


「主様ですから」


 その言葉にゼロは苦笑いをする。


「そうね、主人だもんね」


 そこで、強斎が動き出した。


 強斎の視覚聴覚は遮断されていない。


 そして、4人の前まで来てこう言った。



「俺の勝ちみたいだな」



 こうして、強斎と眷属の戦いは、強斎の勝利で幕を閉じた。

今回はバトルっぽい!


そろそろ勇者達を書こうと思います。


それでは感想待ってます!

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