29話 ゼロと奴隷っぽい
「ゼロ、お前に聞きたい事がある」
「どうしたの?主人」
ゼロとの契約が終わって、奴隷達を監禁している部屋に戻る時に、強斎は今まで気になっていた事を訊いた。
今のゼロはちゃんと服を着ている。
……コート1枚だが。
「お前、何で『セオリー』って言葉知ってたんだ?」
ゼロは少し微笑し、からかおうと思ったが、強斎の真剣な顔を見てそれはやめておこうと思った。
「私が消える前に使われていたんだけど……今の時代じゃ、使われていないみたいだね」
「なに?それはいつ頃だ?」
「んー……私が消されたのは、いつだっけな……あんまり思い出したくない時間だから覚えてないや」
「そうか、それは悪かったな」
そう言ってゼロを見たが……。
「ちょっ、おま……!何やってんだ!?」
「いや、このコート着てると膝上が痒くて……」
「だからって脱ぐな!」
「えー」
「えーじゃない!」
ゼロはコートを脱いで全裸に戻っていた。
「ミーシャに許可取って服を貸してもらうから。それまで我慢しろ、な?」
「ちぇー……主人がそう言うならしょうがないか」
そう言ってゼロはコートを着直す。
そして、言葉を続けた。
「そう言えば主人の足元まであるコートは頑丈だよね?私の『混沌』を受けても消し飛ばないなんて……。どんなマジックアイテムなのよ?」
「いや、普通のロングコートだぞ?ただ、ちょっと俺から漏れる魔力を吸収して、防御力に変換してるだけの」
「あ、そのコートが魔力の遮断をしてたんだ。意図的にじゃなくて」
「ああ。意図的にもできるがな」
「ふーん……。まぁ、魔力が漏れてたら大体の強さはわかってたしね。でも、魔力を吸収して防御力に変換するコートって普通のロングコートじゃなくない?」
「やっと突っ込んだか」
「え?」
「いや、なんでもない。コートに魔力を流し込んだら、ある程度の属性設定ができるようになってな。それからずっとこの調子だ」
ついでにコートのステータスはこのようになっている。
#
使用者により名前とレア度が変化する。
使用者の漏れる魔力を吸収し、防御力と自動再生に変換する。
使用者が意図的に魔力を吸収させることも可能。
現在の状況
魔力:吸収中
VIT測定不可能
MND測定不可能
魔術耐性MAX
物理耐性MAX
#
「じゃあ、あの奴隷達から魔力を感じなかったのも……」
「ああ、このロングコートと同じだ」
「へー」
そう駄弁っている内に、奴隷達を監禁した場所にたどり着いた。
「うわ……どれだけ頑丈にしたのよ……。この頑丈さって、私のいた時代の魔王じゃ壊せる奴居ないわよ?」
「お前の時代の魔王って弱いんだな」
「主人が強すぎるのよ」
「でも、お前だったら壊せるだろ?」
「まぁ、そうだけど……中に影響が出ずに破壊するのは難しいかな?」
「そうか?」
そう言って、強斎は手をパーにして開けて、壁に向ける。
「主人?何を――」
「きゅっとして……」
強斎が何もないところで手をゆっくりと握り始めた。
すると、壁から淡い光が漏れて――。
「――ドカーン!」
そう強斎が完全に握り、お子様口調で言った途端に、光は強く輝き出し、バラバラと崩れだした。
ゼロは何が起きたのかわからず、フリーズしているようだった。
いや、何が起きているのかわかっているのだが、方法がありえないと思っていたのである。
「しゅ、主人……まさか――」
「キョウサイ様!!」
ゼロが何か言いかけたところで、ミーシャが飛び出してきた。
ミーシャに続きレイア、ルナと続く。
「ご主人様、一体何が?」
「主様、当たり前ですが、無事だったのですね」
口々に強斎に言うが、全員、隣の女性に気がつき一旦止めた。
ルナは「誰?」って思っていたが、ミーシャとレイアはそれどころではなかった。
一瞬で間をとり、戦闘態勢に入っている。
「へぇ……中々いい実力者じゃない。私の時代の魔王より強いわね」
「あなた、何者ですか?只者じゃありませんよね?」
ミーシャが落ち着いてゼロに問う。
「そうね、神を除けば元最強と言えばいいかしら?」
「なに?」
小さくレイアが疑問を口にする。
「まぁまぁ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。先輩?」
その言葉に驚く二人。
ルナはあわあわとしていた。
そこで、ようやく強斎が入ってきた。
「あー……説明するから。ミーシャ、レイア。こいつは大丈夫だから殺気を抑えろ」
「「わかりました」」
スっと警戒を薄める二人。
「よし。こいつは俺たちの新しい仲間、ゼロ・ヴァニタスだ」
「そゆこと、ゼロって呼んでね。あ、ついでに私は主人の配下で、奴隷じゃないからね」
手をひらひらさせて自己紹介をするゼロ。
すると、ミーシャが1歩前に出て、自己紹介を始めた。
「私はミーシャ。ちょっと腑に落ちないけど、よろしく」
すると、それにレイアとルナが続いた。
「レイア・アンジェリークだ」
「る、ルナと言います!」
「ふふ、よろしくね。ミーシャ、レイア、ルナ」
そう笑顔でゼロは答えた。
その笑顔でミーシャ達の警戒は完全に解けた。
「ゼロ、悪かったわね。今まで完全に警戒してたわ」
「それが普通よ?ミーシャ。ある程度の実力者になると、漏れてくる魔力で大体の実力がわかるのだから。敢えて魔力を漏らしていて正解だったわ」
すると、ゼロから何かがなくなったような、そんな雰囲気になった。
「ルナはまだわかっていないみたいね。主人?ミーシャとレイアに比べて、ルナの実力が離れすぎていない?何で?」
「まぁ……色々と事情があって……」
苦笑いをする強斎。
それに、レイアが言葉をかけた。
「そう言えばご主人様?さっきの壁は、やはりご主人様が造ったのですか?」
「そうだが?」
「やっぱりそうでしたか。さっきの部屋を出てみてわかったのですが、さっきの壁と部屋の外にある壁じゃ強度が全く違いましたからね……。通りで全力で殴っても壊れなかったわけです」
何かを納得したレイア。
すると、その言葉を聞いてゼロが驚愕した。
「まさか主人……。この部屋全てにこの強度の壁を……?」
「そうだが?」
「……はぁ。まさか、この壁を造った後で私と戦うなんてね……。しかも、さっきの破壊魔術……。魔術の適性も、MPの総量も私とは桁が違うってことね……」
「「「?」」」
奴隷達はよくわかっていなかった。
それに気がついたゼロは説明しようとするが、一度強斎に目線で許可を取った。
強斎は別にいいといった感じだったので、ゼロは言葉を続けた。
「いい?あれ程の強度の壁を造る魔術って神級を超えているの。ううん、神級すら弱っちく見えるわね。それをこの部屋全体に張るなんて……普通ありえないわよ?それにさっき壁を壊したでしょ?あれ、数千……いや、数万もの精霊級魔術を同時発動してたわ……無音でね」
もう、呆れた様子で強斎を一瞥するゼロ。
奴隷達の回答は……。
「キョウサイ様ですから当たり前です」
「ご主人様だからしょうがない」
「主様ですもんね。主様以外でしたら驚きますが、主様ですもんね」
やはり驚くのを諦めていたようだ。
「はぁ……私も慣れなくちゃいけないのか……精霊王の私が魔術で驚くなんてね……世界は広いわー」
「「「え?」」」
同時に固まる奴隷3人
一番最初に口を開いたのはミーシャだった。
「ぜ、ゼロ?あなた、なんて言ったの?」
「私も慣れなくちゃ?」
「その後」
「私が魔術で驚く?」
「その少し前」
「んー……なんて言ったっけ?」
「あなた、精霊王って言わなかった?」
すると、ゼロは一つ頷いた。
「言ったね。で、精霊王がどうしたの?」
「そ、それって本当なの?」
「あれ?あ、ここら辺は紹介してなかったか……。うん、本当だよ。私は基本属性最強……失われた虚無属性の精霊王。そして、あなたたちの言う魔神ね」
「「「魔神!!??」」」
この後、パニック状態になり、強斎が頑張った。
ゼロはニヤニヤしていただけである。
色々な名前を募集してます
感想待ってます
さて、キスクルしなければ……