27話 魔神VS強斎っぽい
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魔神ちゃんの名前候補が結構来ててびっくりしました……!
「どうする?ここで戦う?」
魔神と呼ばれていた虚無の精霊の女性は強斎の奴隷を見て、強斎に問う。
「いや、ここじゃ草原が大変なことになる。場所を移そう」
「当てはあるの?」
「あそこに地下への入口があるだろう?あれは迷宮だ。あの中で戦おう」
「そんな広い空間あるのかしら?」
「無くてもお前だったら簡単にできるだろう?魔神さんよ」
「それもそうね」
そうして、強斎達は奴隷を連れて迷宮に向かった。
「その子達も連れてくの?」
「ああ、いくら強くても気絶してたら危ないだろ」
「奴隷に親切なのね」
「仲間だからな」
………
……
…
強斎と魔神は問題なく迷宮の最下層にたどり着いた。
「全く、下級魔物じゃ準備運動にすらならないじゃない」
「流石は魔神様だな」
「あなたこそ、見ただけで殺すとか何者よ。もしかしたら私より強いんじゃない?」
「それはどうかな?それより、この最下層を改造するぞ。ここはまだ発展途中だ。後、一つ上の階層の安全エリアにこいつらを置いていく」
「素直に私に頼みなさいよ」
「はいはい。俺はこいつらを安全エリアに監禁するから、その間広い部屋を作っておいてくれ」
「りょーかい。でも、迷宮ってすごいわね。何かの結界かしら?」
「どういう事だ?」
「どれだけ下に行っても、どれだけ横に広げても終わりが見えないのよ。上は別だけど」
「そうか。なら、うんと広い空間を作ってくれ」
「ふふ、楽しみにしてなさい。オールアトリビュートどうしの戦いだもの。人間界ぐらいの面積にしてあげるわ」
「そこまでしなくていい。街一つぐらいの大きさで十分だ」
「そんなの一瞬じゃない」
「それでいい」
「むー」
魔神は可愛らしく頬を膨らませた。
(……見た目じゃ全く魔神に見えんな)
そう思って、強斎は一つ上の階層に向かった。
………
……
…
「作るのはえーよ」
強斎が奴隷達を安全な場所に
「だから言ったでしょ?一瞬だって。あなたの様子を見る暇もあったわ。わざわざ、中から出れない様にしなくてもいいんじゃない?」
「言ったろ?仲間だって」
「ふーん。私と互角以上に戦える自信があるわけ?」
その問いに強斎は静かに首を振った。
「いや、ワンサイドゲームだろうな」
「わんさいどげーむ?」
「流石にわかんないか。一方的な戦いになるってことだ」
「へー……わかってるじゃない。降参するなら今のうちよ?」
「何を言っている。お前が一方的に負けるんだよ」
「私が?言っておくけど、私。どの精霊王よりも強いのよ?そして、力は神にも等しい……その私が一方的に負けるとでも?」
若干苛立ちが見えてきた魔神。
「ああ、そうだ。お前は俺に一方的に負ける。なんなら俺に全力で殴ってこいよ。魔術でもいいぜ?」
すると、魔神は不敵に笑い出した。
「ふふふ……この私相手にここまで余裕なんてね……。いいわ、その言葉……後悔しなさい!」
そう言うと、魔神はふわりと浮き出した。
「属性『世界を破壊する者』発動!!」
すると、魔神の周りを透明なモヤが覆った。
しかし、それだけでは終わらなかった。
「『限界突破』発動!『超越者』発動!!『覇者』発動!!!『終焉』と『虚空』を合成!」
不可視のオーラと言うべき物が魔神を覆っていた。
手には白に近い球体と、闇よりも深い、宇宙の様な色をした球体が混ざり合っていた。
その不思議な光景に強斎が見とれていると、魔神が口を開いた。
「ふふふ……何事かと思っているわね……。いいわ、説明してあげる。属性『世界を破壊する者』はSTRとINTを5倍にする属性よ。そして、『限界突破』はLUK以外の全ステータスを2倍。『超越者』はLUK以外のステータスを3倍。『覇者』はLUK以外のどれかを10倍にするスキルよ……」
そして、魔神は強斎を見下ろしながら話を続けた。
「そして、今発動している魔術は、虚無属性以外で造った属性の神級虚無魔術と、虚無属性で造った神級虚無魔術……。そうね、『
そして、その『混沌』を強斎に向ける。
「私をナメた事を後悔することね」
「おいおい、俺を消し飛ばしていいのか?俺が欲しいんだろ?」
「大丈夫よ、消し飛んだ瞬間に治してあげるから」
「あっそ……。まぁ、その程度の魔術じゃ俺には効かないがな」
「へ、へぇ……まだ余裕でいられるの?言っとくけど、私のINT元の300倍よ?精霊王のINTの300倍よ?魔術の元である精霊の王の中でも、最強の私の全力の300倍よ?わかってる?」
「いいから撃ってこいよ。その程度、魔力弾で黙殺できるわ」
そう言って強斎は手に魔力を込める。
魔力弾とはMPさえあれば、属性がなくても使える初歩の初歩魔術である。
「ここまでナメきってるなんてね……いいわ、消し飛びなさい!」
そう言って魔神は『混沌』を強斎に放った。
空間が歪み、地形や空気の流れが一瞬変わる。
そのような威力が強斎に放たれた。
しかし……。
「ふっ」
強斎は鼻を鳴らし、余裕の表情で魔力弾をぶつける。
そして――――――。
「え?」
『混沌』がいとも簡単に消し飛ばされ、更に、威力を殺さないまま、魔力弾は魔神の右頬の真横を通った。
その一連の出来事に魔神の思考はフリーズした。
しかし、それを気にもせず強斎は口を開いた。
「初めて魔力弾を使ってみたが……本気出さなくてよかったな。これ、本気出したらヤバくないか?」
そして、魔神のフリーズした思考に、鈍器で殴られたような衝撃が走った。
――――本気ではない。
強斎はこう言っていた。
「う……そ…………あの威力の魔力弾が本気じゃない……?なんなのよあなた……。……本当に生物?人外や化物なんてレベルじゃないわよ…………!神より全然強いじゃない……!」
魔神は強斎の規格外さに恐れ始めてきてしまった。
冷汗を流し、小刻みに体が震えている。
若干目元に涙を溜めていた。
何も知らない人がその光景を見たら、全裸の超美女が目の前の男に犯されそうになり、恐怖で震えているようだ。確実に通報ものである。
その魔神とは思えない雰囲気を出している魔神に、強斎は近寄る。
「おい、この程度なのか?」
「ひぃっ!」
何とも可愛らしい声で、小さな悲鳴をあげる魔神。
そして、この姿を見て、強斎はとある事を思っていた。
(やべぇ……超楽しい……)
サディスト強斎の誕生である。
「この程度なのかと言っている!」
大声をあげた強斎にびくりと怯える魔神。
小刻みではなく完全に震えている。
「あ……あ……あ……」
「あ!?なんて言ったんだ!?」
「ひぃっ!!」
強斎が声を出すたびにびくりと反応する魔神。
遂に丸まってしまった。
「おい、さっきの余裕はどこに行ったんだ?いいから立てよ、そして続けようぜ?戦いをよ」
その時、魔神は強斎の顔を見て、完全に恐怖を感じた。
まるで、悪魔の様ににやりと笑っていたのだ。
強斎はただ、魔神の反応が面白くてにやけているだけなのだが、魔神にとっては、たまったもんじゃない。
そして、その顔を見てから魔神は狂った様に声をあげた。
「うああぁぁぁぁぁ!!!」
ガバッと起き上がり、強斎に殴りかかった。
その不意に強斎は驚き、無防備の体に拳が当たる。
空間が歪むほどの攻撃力。
その拳を、無防備な体に当てられても全く痛みを感じていないような人間。……いや、化物。
それを魔神が一番実感していた。
「っ!っ!!」
何発も殴るが強斎にダメージは与えられない。
悪魔の様ににやけているだけだ。
強斎は半泣きで殴る超美女に、罪悪感で苦笑いをしていただけだが。
「なんでっ!なんで!!」
一点集中の身体強化で殴る。
至近距離での『混沌』を発動する。
あらゆる方向から、あらゆる神級魔術を当てる。
――――その全てが強斎には無駄だった。
「そんな……そんな……!」
何をしても無駄だとわかった魔神は、その場でへたり込む。
そして、その魔神に強斎は止めの一言を言った。
「言っとくが、俺は攻撃型だ。防御より攻撃の方が圧倒的に高い」
魔神にはこう聞こえてしまった。
『俺は防御力より攻撃力の方が高い。だから、お前など簡単に消し飛ばせる』
と。
その瞬間、魔神の涙腺は崩壊し、戦意を喪失した。
「ひぐっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「え?あ、ああ」
戦意を喪失したといえ、先ほどの強気の女性とは全く思えない。まるで子供のようだった。
「私の……負けです……ひぐっ……だから……なんでもしますから……殺すのは……やめて下さい……ぐすっ……もう……一人は嫌なんです……」
そして、強斎は大きな罪悪感に浸かった。
この女性は、ただ構って欲しかっただけだったのだ。
実体がある時は、圧倒的な力のせいで必然的に一人。
そして、一人のまま消されてしまった。
それから幾年もの間、一人で虚無の属性を使える者を、無限と思える時間待たされ続けた。
そこまで考えてから、強斎は胸が痛くなった。
(ったく!何やってんだ俺は!!)
ただ楽しいから。そんな理由でこの女性をからかっていた。
そう、魔神とはいえ女性だ。
その事実が更に強斎を苦しめる。
強斎はもう一度、泣いている女性を見る。
(全く……どうしてこう……同じようなことが起きるのかね……)
ふと思い出したのはこの世界のどこかにいる、一番最初の親友。
(この姿を見ていると、あの時の澪を思い出すな……)
そこで大きなため息をついた。
そして――――。
「おい」
強斎はその女性に声をかけた。
未だにビクビクしている。
「負けを認めろ。そして、俺について来い。俺がお前を孤独から守ってやる」
「え?」
突然の強斎の言葉により戸惑う女性。
「お前は今まで孤独だったんだろ?じゃあ、俺がお前の仲間になってやる。一番最初のな」
段々と意味を理解してきた女性。
そして、その女性は口を開いた。
「……はい。私の負けです」
その時、女性の体を光が包み込む。
その出来事に、強斎は驚きを隠せなかった。
「……これは?」
「精霊契約で、私があなたの……いえ、主人の配下になった時の現象です」
「これが……」
「はい、それでは主人。私に名前を下さい」
「名前か……そうだな……」
そして、強斎は虚無の精霊王にて魔神の女性に名前をさずけた。
その名前は…………。
「――――――お前の名前は『ゼロ・ヴァニタス』だ。これからよろしくな。ゼロ」
「はい、主人」
「それと敬語はやめろ。さっきまで敬語じゃないのにいきなり敬語とか。お前も嫌だろう……?」
レイアの場合はどうなるんだと誰かが突っ込んだだろう。
「そうだな、ちょいと敬語は疲れる。心が弱くなると自然と敬語になってしまうのだな?」
「それは知らん」
「だが、ありがとう。これから私は『ゼロ・ヴァニタス』……ゼロとして生きるわ。よろしくね、主人」
「ああ」
こうして、最強の仲間を手に入れた強斎であった。
色々な名前を募集しています。
今回のゼロ・ヴァニタスの意味ですが
ゼロはお馴染みの、無、全ての元、と言う意味で使わせていただきました!
で、ヴァニタスですが、ラテン語で虚無や空虚と言う意味らしいので……
虚無の元と言う感じで決めました!
たくさんの名前、本当にありがとうございます!
次回は閑話の澪ルートか勇者視点を考えています。
もしかしたら、普通に進めるかもしれませんがw
では、感想待ってます!