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3話 宴会の事件っぽい

グロが入ります。ご注意を

 メイドに各部屋を案内され、少し経ってから強斎の部屋に集合することを提案した澪。


 そのことについて、廊下で討論が始まった。


「で、なんで俺の部屋なんだ?」

「どうせ呼んでも来ないでしょ? だから強斎の部屋」


 誇らしげにその豊富な胸を張る澪。


 確かに強斎は呼ばれても来ないつもりだった。

 面倒くさいというのもあるのだが、自分にできる事など無いと言うのもある。


 強斎はその事を告白すると、鈴に呆れられた。


「あんたさ、自分は私たちと違うと思ってるんでしょ? ほんっと馬鹿ね」

「お前より成績は良かったはずだが?」

「い、今はそんな事関係無いでしょ!」


 顔を真っ赤にして反論する鈴。

 だがそれも一瞬のことで、鈴は一息ついてから強斎の目を睨むように見る。


「さっき王女様に『俺はこれからどうすればいい?』って訊いた時、ここから出ていくつもりだったんでしょ?」


 強斎は否定も肯定もせず、無言だった。

 そのことは織り込み済みだったのか、鈴はそのまま言葉を続ける。


「言っておくけど、そんな事全員気が付いてたから。だから大地は確認するように王女様訊いたの。あそこで同じように扱わないって言ったら、私たちも出ていったわ」


 勇志、大地、澪は同時に頷く。

 だが、強斎はそれを見て眉を顰めて呆れていた。


「お前ら馬鹿だろ、成績云々じゃなくてな。何故俺が出て行ったらお前らも出て行くんだ? 優遇されるのに何故わざわざそれを蹴る? それに、お前らにとって足手纏いの俺には出ていってもらった方が色々良いと思うんだが?」

「そ、そんなこと!」


 澪が喋ろうとするのを、鈴が手で抑える。


「私たちが馬鹿だったら、あんたは正真正銘の大馬鹿ね。成績云々じゃなくてね」


 キッと強斎を睨む。


「少なくとも私は強斎・・に助けられているのよ? 気づいていないだろうけど。それなのにまともな恩返しすら出来てない。こんな大きな借り借りっぱなしじゃ嫌だから、返させなさいよ」


 話が少しだけズレている様な気がしたが、強斎にはこのような言い方に弱い。

 それに続いて、澪、大地、勇志が声を出す。


「私も、強斎に返しきれないぐらいの大きな借りがあるの! だから……その……私が強斎を守る!」


 顔を赤くしながら、半分叫ぶように言う澪。


「俺も強斎には大きな借りがある。だから、それ位返させろ」


 あくまでも冷静に言う大地。


「僕も強斎に借りっぱなしだからね。絶対に返すから、そのつもりで」


 にこやかに言いながらも、熱く言う勇志。


「これでわかった?」


 鈴はしっかりと強斎を見て確認を取る。


「ああ、お前らが優遇されるのに蹴る理由が何となくわかった……だが」


 強斎は全員をもう一度見渡す。


「何故俺にそこまで気を遣う? 俺はお前らにやった借りはしっかりと返させて貰ってるし、お前らは俺とは違う特別な存在だから――」

「「「「違う!!」」」」


 一斉に否定され、言葉を途中で止めてしまう。

 その瞬間、強斎は鈴に胸倉を掴まれた。


「あんた、ぜんっぜん理解してないわね! 冗談でもそんな事言わないでよ!」


 鈴とステータスも身長も大幅に離れている強斎は、鈴に掴まれてかなり苦しいはずなのだが、何も言わずに鈴の目を見ていた。

 その目は地球では感じたことのない怒りに満ち溢れていた。


 その横から、半泣きになっていた澪が声をあげた。


「そうだよ……! 強斎と違う特別な存在? なんで……! なんでそんな事言うの!?」


 澪は必死に強斎に問い詰める。

 大地と勇志は二人に任すといった感じだが、二人共何かを言いたげだった。


 少しすると鈴が強斎の胸倉を離した。


「同じ人間で、同じ地球人で、同じ日本人で、同じ学校で、同じ学年で、同じ友達じゃない! 私たちが特別なら、あんたも同じ特別よ!」


 少し咳き込む強斎にそう言い放った。

 そして、鈴の瞳にはほんの少し涙が浮かんでいることに強斎は気付く。


(全く……こいつらは……)


 強斎は悪い気分では無かった。


(俺は……こいつらと違うという事を、否定してもらいたかったのかもな)


 強斎は冷静を演じているが、少し不安もあった。

 チートをもらえなかった脇役の転移者は、酷い生活をしていたという話を小説でよく見かけている。

 その不安が無くなって和らいだ。そんな感じだったのだ。


「澪」


 全員に睨まれながら、澪の名前を指す。


「え?」


「お前が頼むなら部屋も貸してやるし、参加もしてやる」

「え? え?」


 澪だけでなく他も理解していないようで、呆気に取られている。

 強斎は小さくため息をして、その理由を話す。


「勘違いするな。弁当の借りを返すためだ」

「……強斎」

「勘違いするなと言っている」

「えへへ……うん、わかった! じゃぁ、強斎! ちゃんと参加しなさいよね!」

「……ああ」


 澪はさっきとは全く違って、見るからに喜んでいた。

 その雰囲気がこの場を包む。


 その時、鈴が少し大きめの音で手を叩いた。


「よし、じゃぁ暫くしてから強斎の部屋にしゅーごーね」

「提案したの私だよー?」

「あは、そうだった?」


 勇志と大地も顔を見合わせて苦笑いしている。


「ところで皆。学校指定のソーラーパネル付き腕時計ちゃんとつけてる?」


 そう言って、腕を出す鈴。


「メイドさんに聞いたところ、この世界には時計が無いらしいの。でも、時間は地球と同じ1日24時間。3時間毎に鐘が鳴るみたい。夜は鳴らないらしいけどね。それで、3時間刻みしか時間がわからないからこれを使って30分後に強斎の部屋に集合でいいわね?」


 そう確認取ってから、各部屋に戻る。


 この世界の時間は1日24時間で1週間は7日、1ヵ月は30日で1年は12ヵ月の360日。と地球に近いのだ。


 曜日は火・水・土・風・光・闇・無で、無の日が日本で言う日曜日だ。


………

……


 暫くして、強斎の部屋に全員集合した。


 初めに鈴が話し出す


「さて、私は色々な事を訊いてきたから、ちょっと聞いてね」

「流石だな、助かる」

「えへへ」


 大地に褒められたのがそこまで嬉しいのか、鈴は顔を緩めて照れくさそうに笑った。

 しかし、それも直ぐに終わる。


「こほん……えっと、まずは属性についてね。属性を持っている人は人口の三割以下らしいわ。そして、基本的に一人一つ。二つは珍しく、三つは全然いないらしいの。四つとユニーク属性はほんの一握りの数しかいないんだって。それから、ステータスなんだけど……ステータスは動くもの全てについているらしいわ。LUKは一生固定らしく、それ以外の20歳平均初期値は、計算上HPとMPが50~80でそれ以外は10前後だって。それでレベルについてだけど、レベルは経験値というのを手に入れて、それが一定まで達するとレベルアップするみたい。経験値はステータスを持っているものを倒すのが主な入手方法らしいけど、それ以外に訓練や運動等でも入るんだって」


 強斎以外は真剣に聞いている。

 強斎はステータスがあるならこの位当たり前だといった感じで聞いていた。


(それにしても、よくあんなに一気に喋れるなぁ……)


 余計な事も考えているようだ。


「鈴、ちょっと質問いい?」

「どうしたの? 澪」


 澪は疑問があったようで、鈴に質問していた。


「私たちは地球で運動とかしていたのに、どうしてLVが1なの?」

「それは私も訊いてみたけど、わからないって言われちゃった……」

「そっか……」


 強斎はこの疑問について、ある程度推測していた。


(恐らくだが、ステータスはこの世界独特な機能でこの世界で動くと認識された時にステータスが貰えるのだろうな。そして、俺達はさっきこの世界で動くと認識されたから、さっきステータスを貰った。本来、俺たちの歳になると、特例を除いてレベルアップはしているだろうから計算上なんだろう。QED証明終了っと)


 そして、その仮説はほぼ正解していた。


「スキルにも経験値があって、これは使えば使うほど上がるんだって。これは一気に上がる事もあるらしいし、どれだけ使っても上がらない事もあるらしい。それと、スキルは頑張れば取得できるものが殆どで、例外はレアスキル、属性スキル位らしいよ」


(これも王道だな)


 強斎がそんな事を考えていると、鈴の雰囲気が一気に変わった。


「今から戦闘について話すから、しっかりと聞いていて」


 流石の強斎も、こればかりは耳を傾ける。


「皆のステータスを見る限り。大地が盾で前衛、勇志が剣で中衛、私と澪が魔術で後衛になるわね。強斎はMPとMNDが高いから魔術師寄りなんだろうけど、適性属性がなしだから魔術は使えない……だから、私にはどこに配置すれば良いかわからないの……ごめんね」

「別にいい」


(なしじゃなくて未設定なんだが……見えていないっぽいな。まぁ、教える必要は無いだろう。それに……)


 強斎はもう一度全員のステータスを見る。


(やはり俺がいると効率が悪いな。機会を見計らって別れるか……。まぁ、その時まではこいつらに甘えるか)


 やはりひねくれている性格であった。


 この後、雰囲気も和み冒険者がどうたらから結婚は15歳からがどうたらの話になったので、強斎は散歩すると言って部屋を出た。

 結婚の話になった時に鈴と大地がチラチラお互いを見ていたが、不思議なことに一回も目が合わなかったのでイライラしていたのもある。


「大丈夫?迷子になったらダメだよ?」


 澪に本気で心配されてしまった。


「その辺を少し歩くだけだし、大丈夫だ」

(迷子になったら、人に訊くだけだしな)


「そ、そっか。じゃぁ、いってらっしゃい」

「ああ」


 結婚の話になった時の澪の目線には気がついていない強斎であった。



………

……





「迷った……」


 フラグ回収お疲れ様でした。




 強斎がフラフラと歩いていると、不意に声が聞こえた。

 その人に道を訊こうと思い、強斎は声の聞こえる方に向かう。


 しかし……。


「本当に勇者を召喚しやがって……これじゃあ、ドレット王国が有利になるじゃねぇか……」


(ん? あれは……ああ、あの時の兵士か)


 勇志の態度に怒鳴った、他の兵士とは違う兵士がそこにいた。


 様子がおかしいので強斎は暫く聞き耳を立てていると、とんでもない事を聴いてしまった。


「こうなったら、宴会で勇者を始末するか……。幸い、レベルはまだ低いはずだからな」


(おいおいおい! 始末ってなんかやばくないか!? ってか、あの兵士。王に一番忠誠誓ってる感じだったが、他国のスパイだったのか……?)


 こうして、強斎はそそくさと撤退するのであった。



………

……



 結局戻れたのは宴会直前で、澪に説教される事になったのである。


 強斎がいない間は恋愛トークになっていたらしいが、強斎には詳細を教えなかった。


 強斎もそれどころではなかったが。



………

……



「勇者様方、こちらの御勝手な都合により、お呼び出ししてしまった事を深くお詫び申し上げます。私の最大限のおもてなしを――」


 勇志達がヴェレスの演説を聞いている中、強斎はあの兵士にばれないように監視をしていた。


「――では、お楽しみ下さい」


 ヴェレスがそう言って礼をした時、あの兵士が懐から何かを取り出し勇志達に向けて投げた。


「危ない!」


 強斎は大声で叫ぶと同時に自分からその石に向って行き、勇志達とは離れている場所で当たった。


 そして――――。








 ――――――強斎は消えてしまった。









「え?」


 強斎の叫び声に気が付いて、皆、強斎が消える瞬間を見ていた。


「くそっ!」


 そう言って、逃げ出そうとする兵士をホルスは見逃さなかった。

 逃げ出さなければ見つからなかったが、兵士は見つかったと思ったのだろう。


「あいつだ! 捕えろ!」


 こうして、兵士は一瞬にして捕えられてしまった。






「強……斎? ……強斎!!」

「落ち着いて、澪」

「逆になんで鈴は落ち着いていられるの!? 強斎が消えちゃったんだよ!?」


 澪は我を失っていた。


「それはわかっている。ほら、犯人が捕らえられたから今から尋問が始まるわ」


 鈴も冷静ではないことがひと目でわかった。

 まさしく視線だけで殺せるような目で犯人を睨んでいる。


 勇志は気が付けなかったことを悔やんでいて、大地は兵士と一緒に犯人を押さえていた。


 そして、尋問が始まった。




「どうしてこんな事をした?」


 ホルスはかなりの威圧で、犯人に対して質問していた。


「ふんっ、どうせ失敗したから教えられる事だけ喋ってやるよ。俺は、ここにスパイとして潜り込んで、勇者の召喚を阻止しようと思ってたんだがな。見事召喚しやがって」


 心底嫌そうな顔をする犯人。


「お前は随分前から、我が王国の騎士団に居た筈だが?」

「ああそうさ。だが、俺は最初からこれを企んでいなかったな。いつからかは教えられない」


 随分とペラペラ喋る犯人である。


「では、最後に――」

「強斎をどこにやったの」


 ここで澪が割り込んできた。


「知らないね」

「ふざけないで!」

「ふざけてないさ、あれは転移石。そして、転移先を設定していない」


 ざわざわと騒がしくなる。


「……どういう意味?」

「ふっ、知らないみたいだから教えてやるよ。転移石は転移先を設定すれば設定した場所に行くが。設定してなければ……自分で考えゴフゥ!」


 犯人の腹を殴る鈴。


「答えろって言ってんだろうが」

「ごはっ……ふん、良い胸してんな嬢ちゃん」


 そして、犯人の顔に膝蹴りを入れる。

 その時に聞こえてはいけない様な音がしたが、それを気にする者はいない。


「いいから話せ。次は四肢を抉るぞ」


 完全にブチ切れた鈴がホルス以上の威圧を放つ。


「ガハッ……はぁ……はぁ……ふっ、いいだろう。転移先を設定していない場合は……完全にランダムで転移する」


「ランダム?」


「ああ、この世界のどこか・・・に転移された。そういえば、あいつは一般人だったな……。じゃぁ、もう助からねぇよ。この世界は普通に生活できる場所がかなり少ない。大半は海の底に転移するだろうな。そして溺れ死ぬ。陸地に転移できたとしても、人間が全然住んでいない砂漠か魔物の住処。魔界ってのもあるな。上手く人間が住んでいる土地に転移出来ても、盗賊に襲われボロ雑巾の様にこき使われるか、苦しめられて殺されるか。更に運よく街中に転移出来ても不法侵入で奴隷落ち。どう転んでもまともな人生は送れないな!」


 くつくつと笑いながら、喋り出す犯人。

 澪は強斎の運命を聞いて絶望し、気絶した。

 鈴も殆ど限界だった。


 そして、犯人が一層高笑いをして、「あいつには、死かそれ以上の苦しみしか待ってねぇぇ!」と言った時、鈴は崩れ落ち泣き始めた。


 そして鈴が泣き始めたと同時に、鈴の膝蹴りとは格が違う不気味な音と大量の血飛沫ちしぶきが舞う。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 勇志が犯人の右肩を手刀で切り落とし、大地が蹴りで犯人の左膝を砕いていた。


「僕をここまで怒らせたのは、お前が初めてだよ」


 ゴミ以下を見るような冷たい目で見る勇志。


「本気で人を殺したいと思ったのは、産まれて初めてだな」


 勇志と同じような目で大地も犯人を見る。


「はぁ……はぁ……。はっ、殺すならさっさと殺しやがれ」


 あまりの痛みで神経が麻痺しているのか、笑いながらそう言った。

 言われないでもやると言った感じで、構える二人。


 だが……。



「待ってくれ」


 それを止めたのはホルスだった。


「そいつの始末は我にやらせてくれ。勇者様方も初めて殺人をする相手が、そんなクズ以下の奴では嫌であろう」


 そうして、ホルスは剣を持って犯人の前に来た。


「最後に訊こう」

「なんだ」

「お前に命令したやつは誰だ」


 すると、犯人はニヤリと笑い。


「死んでも教えねぇ」

「そうか。それと、お前は密偵として完全に不適切だったようだな」

「へっ、そのようだな」


 そして、この男の首が飛んだ。

スキル名、ユニーク属性名、人名カタカナモンスター名、魔術名を常時募集してます。

説明をつけてくれるとやりやすいです。


主人公の口下手が不発だと!?

4000文字まで書いて、全て消えた時はorzみたいな感じになりましたねー


迷宮とかで別れると思った?残念!初日でした!


え?大地と勇志が怒っているように見えない?

あれです、ブチ切れ過ぎて返って冷静になってるあれです。

クリ○ンの事かぁぁぁぁ!!みたいな?

澪は怒りを外に出す前に気絶。

吐くシーンがありましたが、何か嫌だったんで訂正。

美女を吐かすなんて、書いていた自分に1発入れたい気持ちですね!

鈴は怒りと絶望が混ざってどうしたらいいのかわからない状況。

え?鈴って強斎が好きなんじゃね?だって?

それはどうなんでしょうねー?


さぁ、飛ばされてしまいましたねー

主人公の運命はどうなるんでしょうか

そして、いつチートをGETするのでしょうか!?

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