<< 前へ次へ >>  更新
23/127

20話 3ヶ月後っぽい

必殺!

~後!

「あれ?ショクオウさん?クエストじゃないのですか?」


 冒険者ギルドの犬耳受付嬢が、いつもの違う強斎を見て、少し不思議に思った。


「ああ、今日からクエストは受けない」


「え……」


 強斎の突然の告白により、少々戸惑っている。


「ちょっとギルマスに通してくれるか?」


「は、はい!」


 こうして、受付嬢はパタパタと奥に入っていった。


(食王……か……)


 このあだ名を付けられたのは、いつ頃からだろうと思う強斎。


 今では『キョウサイ』というより、『ショクオウ』として呼ばれている。


(もう、3ヶ月か……)


 強斎がこの城下町に着いてから3ヶ月は経っていた。


(初めは1週間のつもりだったんだが……ここの街の食べ物、美味すぎたんだよな……)


 こんな理由で3ヶ月も居座っていたのである。


 そのような事を考えていると、受付嬢が戻ってきた。


「大丈夫だそうです。というより、ギルドマスターは基本的に暇なので、わかっていましたが」


 少し呆れた顔で説明する受付嬢。


「そうだったな、あいつは基本的に暇だもんな」


「ええ、早く仕事を終わらせすぎなんですよ」


「いいことじゃないか」


 そう言って、奥の部屋に向かう強斎。


「ショクオウさん」


 それを、受付嬢が止めた。


「どうした?」


「……」


「?」


「いえ、なんでもありません。すみません、止めてしまって……」


「……そうか」


 この受付嬢はわかっていた。


 今日で、強斎がこの街から出て行くという事を。


 何故か、わかってしまっていたのだ。


「じゃあ、行ってくる」


「……はい」


 受付嬢は何も言えずに立ったままだった。










「よう、何の用だ?暴食にして最強の冒険者」


「やめい、長ったらしい。……それに、わかってるんだろ?」


 そう言って、強斎は椅子に座る。


 座った後、少しの間を置いて、男が口を開いた。


「……考えを改めないか?」


 真剣な顔つきになる30代後半の男。


 このシッカ王国城下町でのギルドマスターにして、元シッカ王国最強の冒険者。ベルクだ。


 このベルク。実はエルフである。


「ああ、俺はこの街を出て行く。やることがあるしな」


「お前の目的は、何かわからんことを調べることだろ?この王国じゃダメなのか?」


「ああ、ダメだ」


「お前の目的は何だ?それさえわかれば俺だって――――」

「いや、これは俺の問題だ」


「……」


「それに、俺はこの街が好きだ。でもな、それでも出て行かなくちゃならない」


「……お前程の奴を動かす、その理由は何だ?」


「さぁな……俺にもわからん」


 そう言って、強斎は天井を見る。


「なぁ、ベルク。俺たちが初めて会った時のこと覚えているか?」


「どうしたんだ、いきなり」


 強斎は目線をベルクに戻し、「ふっ」っと笑った。


「俺は、お前に会って良かったと思ってるぜ」


「ふん、俺は久しぶりに恐怖を感じたね。下級とはいえ竜。その大群を一瞬でひれ伏せさせるなんて、竜王かと思ったな」


「……そんなこと思っていたのか」


「まぁ、そのおかげで助かったのも事実だ。俺も、この街も」


「そのせいで、ランクは急激に上がって英雄扱い。まぁ、金には困らなくなったからいいんだが」


 そうして、強斎は約2ヶ月前を思い出す。


………

……


「ここの飯、超うめぇー……」


「まだ食べられるのですか?」


「ホント、ご主人様は物凄く食べますね」


「いや、だって美味いもん」


「でも、この料理……」


「ご主人様が作った方が美味しくなりますよね?」


「言ってやるな。まぁ、レシピ覚えたから、ここより上手く作れるかもな」


 そう言ったところで、どこからか声が聞こえた。


『この街にいる冒険者に告ぐ!今すぐ大広場に集合してくれ!』


「何かあるのか?」


「どうします、キョウサイ様?」


「んー……とりあえず、お前たちは新しい宿探してきてくれ」


「「わかりました」」


(さて、じゃあ行ってみるか)

















 強斎が大広場に着くと、そこは冒険者で埋め尽くされていた。


(うわー……人がゴミのようだ……)


 実際に強斎が力を振るえば、ゴミのように蹴散らされるが。



 ふと、強斎が上を見ると何かが降ってきた。


(あれはー……紙か?)


 上から降る紙を1枚取り、そこに書いてある内容を読む。


(竜……ね。面白そうじゃん)


 こうして、ワンサイドゲームが開幕した。












(さて、ここからはただスキルを奪うだけの単純作業だ)


 強斎は人目につかなく、竜の大群がいる場所に移動し、単純作業を開始しようとしていた。


(あ、その前に殴られてみよう)


 強斎は1匹の竜の前に出て、尻尾で殴られた。


 だが、強斎はビクとも動いていない。


(STR5000ってこんなもんか……。全然痛くねぇ……お、こいつら竜の威圧波動持ってやがる)


 一方的にスキルを奪う強斎。


 奪ったら殺し、奪ったら殺しを続けた。


「まぁ、こんなもんだろ」


 と、一息ついたところで、近くに大量の竜の気配があった。


「…………よし、試してみるか」


 こうして、強斎はその大群にピクニック気分で向かった。














(おー……いるいる)


 強斎は今までに無い竜の大群を見て、驚いていた。



(よし、ちょっくらやってみるか!)


 強斎は一瞬で範囲を指定し魔術を使った。


(アースペネトレイター!)


 地面から大量の槍が生えてきて次々と竜を串刺しにする。


(うわ……エグ……)


 第一感想がこれだった。


 そして、強斎はそそくさと立ち去ったのである。













(今日は異常に竜が多いな……)


 強斎の前に立ち塞がる下級竜。


 そして、何となく強斎は竜の威圧波動を使った。


(おー……全員がひれ伏してる)


 そこで、強斎はふと竜以外の気配を感じた。


「誰だ」


「!!?」


 少し離れたところに脚を怪我した男がいた。


「まさか、見たのか?」


「っ!」


 そして、強斎は未だに威圧をかけていたことに気がつき、威圧を解除した。


「はぁ……はぁ……」


「今の……見たのか?」


「あ、ああ」


 これが、強斎とベルクの出会いであった。


………

……


(あの後、色々と脅迫したっけなぁ……)


 その事を思い出し、嫌な笑みを浮かべる強斎。


「で、ショクオウ。お前は何が言いたいんだ?」


「いや、最後に釘を刺そうと思ってな」


「いや、お前の規格外さはこの街では結構広まってるぞ?なんせ、この俺をボッコボコにしやがったからな」


「そうだっけか?」


「ああ、そうだ」


「そうか」


「……」


「……」


 こうして、暫く沈黙が続いた。



 そして、沈黙を破ったのは強斎が立ち上がった音だった。


「……もう、行くのか?」


「ああ」


「そうか……達者でな」


「ふっ、俺はお前みたいに長生きはできんぞ?」


「そう言えば人間だったな」


「何を今更」


「……また、いつでもいいから戻って来い。歓迎してやる」


「……ああ、楽しみにしておく」


 こうして、強斎は部屋から出た。













「あ、ショクオウさん……」


 強斎が部屋を出ると、先ほどの犬耳受付嬢がいた。


「よう」


「……」


「……俺は今日でこの街を出て行く。手続きを頼む」


「わ……私!」


「ん?」


 受付嬢は一歩踏み出し、強斎に近づく。


「私!アイルと言います!」


 急に名前を教えた受付嬢に強斎は驚く。


「どうしたんだ?このギルドは、基本的に名前を教えないんじゃないのか?」


「いいんです!今日だけは!」


 そして、アイルは少し下がってから、ガバッっと頭を下げた。


「ショクオウさん!本当にありがとうございました!」


「は?」


 強斎が呆気に取られたところ、アイルは素早く頭を上げ、強斎に近づいた。





 ――――――そして、強斎の頬にキスをした。




「なっ!?」


「で、では!ショクオウさん!また来てください!」


 そう言ってサササッと逃げていった。


 そして、強斎は思った。


 何故、キスをされたのか?


 そして――。


(手続きやってもらってねぇ……)


 仕方なく、別の受付でやってもらうことにした。


………

……


「待たせたな二人共」


「女の匂いがします」


「ご主人様、何ヤってきたんですか」


「すげぇなお前ら!」


「「で、なにしてきたんですか?」」


「あ、いや……ちょっとキスされた……」


「レイア、この建物潰すのに何秒必要だと思う?」


「そうだな……5秒ぐらいで終わるんじゃないか?」


「何の相談だよ!?」


 そして、必死に説明する強斎であった。

色々な名前募集しております

中二な名前だと比較的やりやすいです


今回はちょっとした伏線です


感想待ってます


あ、ツイッターやってます!やり方難しい!

<< 前へ次へ >>目次  更新