19話 買い物っぽい
「お前らに話しておきたいことがある」
城下町につき、宿を借りたその日の夜。
強斎は唐突に話を切り出した。
「俺の目的だ」
その言葉に、真剣に耳を傾ける二人。
「俺の目的は魔界に行くことだ」
「そうですか」
「ご主人様。魔界なら、転移門を使って死の草原を越えれば魔界です」
「え?そ、そうか」
(意外に驚かないんだな……)
強斎は魔界に行くと言ったら、多少なりとも驚くと思っていたが、普通に受け入れられた。
「魔界って危険なんだよな?」
「当たり前じゃないですか」
「魔界行くための死の草原には、ランク10以上の魔物が。その後の森ではランク12以上がうようよ居ますね。物凄く危険です」
順にミーシャ、レイアである。
何を当然な事をと言わんばかりに強斎を見ている。
「そんなに危険なのか……」
「「何言ってるんですか」」
口を揃えて反論された。
「危ないと言うのは、普通の冒険者の基準です。というか、キョウサイ様にとって、この世に危ない場所等存在しません」
「死の草原とその後の森なら、私かミーシャ単独で制圧できますね。1日で」
「というより、キョウサイ様は何しに魔界へ?征服でもする気ですか?」
「え?征服なんてできるのか?」
「ご主人様がその気になれば、今からでも日が出てくるまでに、征服できますね。魔界は基本的に強者が上に立つと聞きますから。それに、恐らく魔王より、私たちの方がステータスが高いでしょう」
「そんなに低いのか……」
「「……」」
強斎の言葉に呆れる二人。
「キョウサイ様、キョウサイ様を基準に考えてはいけません。低いのではなく、私たちが高すぎるのです」
「私の知る限りでは、上級魔族でも5桁でしょうね。流石に魔王だと6桁かもしれませんが、あっても10万程度でしょう」
「マジかー……。じゃあ、俺の目的も直ぐに達成できそうだな」
「キョウサイ様は、魔界で何を?」
「調べたいことがある」
「「調べたいことですか?」」
「ああ、そのことに関してはいつか話すよ」
適当にはぐらかした強斎だが、色々と複雑だった。
(もうそろそろ、俺が異世界出身だって言ったほうがいいのか?いや、しかしな……)
強斎は迷っていた。
この世界にとって、異分子の扱いがどうなっているのかわからない。
簡単に奴隷になってしまうぐらいだから。
勇者達は保護されているとして、強斎は違う。
奴隷達に話したら、いつ情報が漏れるかわからない。
その結果、異分子と言う理由で食べ物すら与えられなくなっては、流石の強斎でも生きるのは困難だ。
(まだ……まだやめておこう)
こうして、何度目かの言い訳を述べるのであった。
………
……
…
「よし、今日はありったけの食料を買うぞ」
何故か意気込んでいる強斎であった。
「どうしたんですか?いきなり」
意味もなくやる気満々の強斎を見て、不思議に思うミーシャ。
「あ、いやね。この城下町は、食料の種類が最も多いらしいからな。いつ長旅に出るかわからんし、とりあえず3年は贅沢して喰える程の量を……」
「どれだけ買う気ですか……」
「はぁ……」とため息をつくミーシャ。
「ご主人様って結構食事に拘りますもんね。殆どご主人様が料理してましたし」
「お前に任せると、大変な結果になるからな。ミーシャはまだいいとして、何故レイアはできない?」
「え……それは……その……」
「まぁ、いい。それより買いに行くぞ」
「うー……ご主人様ぁ~」
「ふっ」
「ミーシャ!笑うな!」
「全く、女とあろうものが料理もできないなんて……惨めですね」
「うがー!ミーシャだって最初はできなかったくせに!」
「最初から出来る人なんていませんよ。私は練習しましたからね」
「~~~~~っ!!」
「お前ら何をしているんだ?」
「いえ。それより、早く買いに行きましょう」
「あ、ああ」
「な……ん……だと……!?」
「キョウサイ様、どうしたんですか?」
ミーシャが声をかけるが、強斎は気がついていない。
(これは……これは……!)
そう、強斎が目にしているものそれは……。
(米だ!この世界にも米があった!)
解析しても、日本にある白米と近い部類だった。
「おっちゃん!これを1トンくれ!」
「お前正気か?」
変な目で見られたが、強斎は気にしない。
「1トンもないのか?」
「いや、倉庫から出せばあるかもしれんが……1トンって言ったら銀貨50枚だぞ?」
「それぐらい大丈夫だ」
バンっと金貨をカウンターに置く。
「それと、そこにある肉とパンをこれで買えるだけくれ」
「お、お前……何者なんだ……」
「そうだな……食王とでも呼んでくれ……」
「ショクオウ……ふっ……お前ほど大胆に食材を買う奴は初めてだ」
「だろうな」
そう言って、米とパンと肉を準備するおっさん。
「かなりの量がある。持っていけるか?」
「ああ、俺はアイテムボックス持ちだ」
「ほう、それだったら安心だな」
アイテムボックスはレアスキルだが、持っている者は多いのだ。
「んじゃ、またどこかで会おうぜ。米のおっさん」
「よくわからんあだ名だな……まぁいい。また会おうショクオウ」
こうして、強斎はこの場を去った。
「私たち、完全に蚊帳の外だったな」
「そうですね」
その後をついていく奴隷二人であった。
(凄い……凄いぞ!卵とか塩とか売っている!お!砂糖もあるのか!あ、でも高いな……)
片っ端から食材を買っていく強斎。
それを何か諦めた目で見る奴隷二人。
それが終わったのは夕方だった。
「かなり買ったな……」
「ええ、ホント。物凄く買いましたね」
「ミーシャ、これは仕方ないことなのだよ」
ドヤ顔で決める強斎。
「ところでご主人様」
「どうした?」
そこにレイアが入ってきた。
「ずっと気になってたんですけど、何か冒険者多くないですか?」
「城下町だから、こんなもんじゃねぇのか?」
「そうでしょうか……?」
「んじゃ、ちょっと訊いてくるか。おい、そこのお前」
いきなり失礼なやつである。
「あ?なんだ?」
「急に止めて悪かったな。ところで、この冒険者の数はなんだ?これが普通なのか?」
「いや、今回は魔族が出たって噂があってな」
「魔族?」
「ああ、この近くに森があるだろ?」
「あるな」
「その森が、最近半壊したんだよ」
「「「……」」」
「それで、そこから少し離れたところで、無傷の動物が集団ショック死でな。魔物は全くいなかったらしいぜ」
「そ、そうか……それで、魔族か?」
「いや、それだけじゃねぇ。また少し離れたところには大量のクレーターがあったって噂だ。これはもう魔族しかねぇと皆が思ったってわけよ」
「そ、そうだったのか……ありがとう。それと引き止めて悪かったな」
「いや、第一印象は悪かったが、そこまで悪い奴じゃないみたいだしな。気にしてない」
「そう言ってもらえると、助かる」
「ああ、じゃあ。俺はもう行くわ」
「ああ」
こうして、通りすがりの冒険者は立ち去った。
「キョウサイ様」
「ああ」
「あれって、全部キョウサイ様がやったことですよね?」
「……ああ」
「森の半壊と集団ショック死は仕方ないとして、クレーターってなんですか。クレーターって」
「実は、魔術の練習を……」
「……もう、何も言いません」
「そうしてくれると助かる」
こうして、宿に戻る強斎一行であった。
色々な名前を募集しております!
実は今回は感想にあったとあるプレイを参考にして、書こうとしたんですが……
どう描写を書けばいいのかわからなかったです、はい
下半身に刺激を与えるように見えない鎖で縛って、街中を歩き回るという描写です
ね?難しいでしょ?
それと、遂にiPhone5sに変えました!
感想待ってます!