15話 竜の威圧波動っぽい
「うあぁぁぁ!!」
「「どうしました!?」」
急に叫びだし膝をついた強斎に、心配する目を向けるミーシャとレイア。
「まさか、ご主人様でも耐え切れなくなる程の状態異常ですか!?」
「お、落ち着きなさいレイア! キョウサイ様のMNDを覆す状態異常の使い手なんて、この世界にはいないはずです!」
「お、お前こそ落ち着け! このご主人の姿を見てみろ! 明らかに混乱か恐怖、そのどちらかにかかっている! とりあえず、状態異常を治すポーションを……」
「キョウサイ様でもこうなってしまう状態異常にHNの万能ポーションが効くとは思いませんが……。気休めにはなるでしょう!」
ミーシャはもしもの時のために渡されたHNの万能ポーションを取り出す。
アイテムにもレア度があり、このレア度に応じて効果が違う。
しかし、同じレア度でも適性がある。
たとえば毒状態の時、HNの毒消しポーションと万能ポーションでは毒消しポーションの方が効き易い。
しかし、万能ポーションは効果は弱いがどの状態異常にも効くので使い勝手がいい。
「ミーシャ! 早くするんだ! ご主人が頭を抱えて震えだした!」
「そ、そんな!! あのキョウサイ様のステータスで、ここまで抵抗なく状態異常にするなんて!」
ミーシャはポーションを頭からぶっかけた。
ポーションはかけるとスっと消えるので、服が濡れることはない。
しかし、強斎に変化は無かった。
「クソッ! あの時から症状は始まっていたのに……! 私は気がつけなかった!」
「レイア!? 心当たりが!?」
「さっき、ご主人が急に笑い出し光の槍を作って森を半壊させただろう!? 普段のご主人はそんなことはしない……」
レイアはガクッと膝をつき足元にポタポタと目元から出る雫を落とし始めた。
「私は……ご主人の変化に気が付けていなかった……一生愛すと決めていたのに……」
力いっぱい地を殴り、悔しさを最大限に表している。
すると、ミーシャは何かを思い立ったように苦悶の表情を浮かべた。
「レイア……あなたの責任ではありません……私もキョウサイ様に愛を誓いました……なのに、あの時に気がつけなかっ――あの時?」
すると、ミーシャは何か考え込むような仕草を一瞬して、怒りの表情に変える。
「もしかしたら犯人がわかったのかもしれません」
「……なんだと?」
レイアは目元を拭い、勢いよく立ち上がった。
「レイア、思い出してみなさい。キョウサイ様が本当におかしくなった時を」
「…………っ!! まさか!!」
「そう、あのクズに会ってからです。最初は何を言われても動じず、無償で逃した心の広い方で納得していましたが……」
「ああ、私もそれで納得していたが……確かにおかしいな」
「やはり聞いていたんですね」
「まぁ、な。本当に優しい方だよ、ご主人は」
「ええ、定期的に所持金の確認をして、頭を抱えるキョウサイ様を見て何度心が痛んだことか……」
「私も同感だ。本来なら奴隷である私たちはただの道具に過ぎないはずなのに、裕福な暮らしをさせてもらって……!」
「遠慮をすると『命令』まで使うぐらいで……しかも私たちの体調まで、しっかりと把握する程、気を使っていました……」
「ああ、しかも金銭のことを私たちに一度も愚痴をこぼしていない……。私を買った時、金貨5枚という大金を払って痛かったはずだ……」
二人の口からは本音しか出てきていない。
「確かに、それからキョウサイ様はいつもより依頼を多く受けるようになりました……レイアを買ってから1週間で街を出たのも、金銭的にきつかったのでしょうね」
「それを悟られないように武器を持っているのに、新たな武器まで買ってもらって……かなり厳しいはずだったのに」
「それなのに……」
「「あのクズから金銭を巻き上げないのはおかしい」」
「その後のキョウサイ様の行動もおかしかったです、急に戦いたい等言い出して……」
「やはり、あのクズが何かしたとしか考えられないか……」
「ええ、もしかしたらキョウサイ様の内部に何かを入れたのかもしれませんね」
二人共既に冷静な思考をしていなかった。
確かに外部からより、内部からの方が状態異常になり易いが、強斎のステータスではそれもであり得ない。
そう、なのに何故強斎がこうなってしまっているのかというと……。
(ステータスが! ステータスが何かおかしい!!)
自分のステータスに悩んでいた。
(なんだよ竜の威圧波動って! そんなスキル奪ってねぇよ! しかもレベルクソ高ぇ!!)
更に「うおぉぉぉぉ……」と呻く。
その言葉に二人は反応してしまった。
「っ! キョウサイ様……」
「ここまで弱っているご主人に何も出来ないなんて……」
ミーシャは強斎をやさしく包む。。
「すみません、私に出来ることはこのぐらいです。キョウサイ様が動かないならば、私は一生ここから動きません」
レイアもそれに続いた。
「ご主人様、私もここにいます。怖くなんてありません」
強斎はというと……。
(んー……この竜の威圧波動って、威圧とどんな違いがあるか気になるな……使ってみようかな? ってあれ?)
この状況にやっと気がついた様子である。
ついでに説明する、と二人の推理は間違っている部分がいくつかある。
強斎は基本的にお金が好きなのだ。
だから、定期的に自分の所持金を日本円で換算して、頭を抱えてニヤニヤしている。
次に、レイアを買って1週間で宿を出たのは、強斎に目的地がある為だ。
本来は直ぐに出て行くところ、ミーシャと連携を取れる用に1週間の期間を与えたのだ。
武器は全く無理して買っていない。その後に盗賊から取ってきた武器があったことを思い出して、少し勿体無いと感じたぐらいだ。
アルノを逃したのは単にめんどくさい事と、大してお金を持っていないだろうとの判断だ。
「お前ら、何やっているんだ?」
「キョウサイ様!!」「ご主人様!!」
今にも泣きそうな顔で二人は抱き締める。
「お帰りなさい! お帰りなさいませ! キョウサイ様!!」
「ご主人様! ご主人様ぁ!!」
「??」
よくわかっていない様子だが、とりあえず二人の頭を撫でて考える。
(ああー……ずっと考え事してたもんな……)
そして、言ってしまう。
「ああ、ただいま」
遂に二人は泣き出してしまった。
(えー……)
よくわかっていない強斎は、とりあえず二人をそのままにした。
少し経ってから、ミーシャが強斎に言葉をかけた。
「ぐすっ……キョウサイ様がこうなってしまった原因はやはり
強斎はなぜステータスの事を知っているか疑問だったが、地面に穴が(レイアが殴った)空いていることを確認すると、無意識に自分が殴ってしまっていたと勘違いし……。
「ああ、どうやらあれ(光槍)が原因みたいだ」
そこで、強斎は竜の威圧波動の効果を知りたくなり、静かに立ち上がり上空を飛んでいた鳥に使った。
二人には、あのクズに何かを向けているのだろうと思ったが……。
突如、二人にも異変が起こった。
「「!?」」
それはもう、大変だった。
竜の威圧波動は単独竜殺しに与えられるスキルであり、その竜と同等の威圧を出すことができる。
その威圧に比例して大抵のものは従ってしまうため、調教スキルも手に入るわけだが。
さて、強斎が出している竜の威圧波動は黒竜王を倒した時に手に入ったスキル。
黒竜王と同等の威圧を、ただの鳥に向けたのだ。
幸い、強斎は慣れていないのと遊び半分でやったため、1/200以下程度の効果しか発揮できていない。
しかし、1/200以下で十分であった。
そもそも威圧LVとは何か。
レベルが高ければ高いほど、威圧に効果が出るのは当たり前。
しかし、威圧LVだけではなくLUK以外の平均ステータスにも比例するのだ。
おわかりいただけたであろうか?
もう、大変である。
飛んでいた鳥は真下に落下し、その周りだけシンと静かになってしまった。
強斎の周りもその効果があるのか、虫一匹動けなくなっている。
ミーシャとレイアも強斎の仲間で信頼性も高く、高い好意を抱いているはずなのに、息をすることすら困難だ。
普通に気絶ものである。
1/200以下の余波でこの威力。
では、この威圧を受けた鳥は?
それは想像にお任せしよう。
「あ……あ……」
何とかレイアは少しだけ声を出せるようだが、全く動けない。
ミーシャは息をするだけで精一杯だ。
絶対的な存在。
無意識のうちに、膝をつき頭を下げてしまう。
どうやっても勝てないと認識させられる。
意識あるものは、意識を無くしてしまったら失礼と本能で理解させられる。
それ程の威圧であった。
そして、ミーシャとレイアは出来る限りの思考で考える。
あのクズは死んだと。
この世で、この方に勝てる存在などいないと。
この方に愛されている自分は幸せ者だと。
(うわー……あの鳥落ちちゃったよ……)
強斎は後ろの二人の様子に気がついていない。
(でも、鳥だからこんなもんか)
明らかにオーバーキルです。
実験が終了し、強斎が竜の威圧波動をやめた途端、ミーシャとレイアは両手両膝をつき、汗だくになっていた。
「お、お前らどうしたんだ!?」
「はぁ……はぁ……。きょ、キョウサイ様……」
ミーシャが強斎を見つめながら言う。
「ど、どうした?」
「私たちは……ご主人様に見合わないかもしれません……ですが」
次はレイアだ。
「「一生愛させて下さい」」
強斎はその言葉に驚くもの、しっかりと冷静に判断し、答えた。
「ああ、俺はお前らを守り、愛させてもらうよ」
色々な名前を募集しています!
特に魔物名と魔術名と武器防具名!
今の強斎が持っている好感
ミーシャ=レイア>勇者達>>>スピッツ>その他>>>>>>>アルノ
感想待ってます!