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第15話 戦争イベント③ 立て直しさなかの奇襲

 「全体攻撃」という言葉が耳に入り、ツカサはとっさに【サークルエリア】で【郭公ほととぎすのさえずり】を使った。自身を含めてサークルの中にいる和泉達と他数人の周囲に五線譜が浮かんで彼らを包んだ。

 かけられたプレイヤーは、付与された【不吉の予感】がデバフのような単語だったのでぎょっとする。そのバフの説明を確認する前に、空の金属の壁からレーザー光線の攻撃を受けた。

 眩しい白い光に目を閉じる。「キョキョキョキョッ」という鳥の鳴き声とカキンッ! と何かを弾いた金属音が聞こえた。


(最近、部屋の近くでよく聞くホトトギスの声だ)


 光が消える。ツカサが目を開けると【サークルエリア】外のプレイヤー全員が瀕死のHPになっていた。

 誰もが唖然としている。そして各々文字ログのブラウザをスクロールし、ダメージ表示の羅列をチェックし始めた。


「ネクロ民、全員攻撃くらってる……。いや、あのさ……『NPC「パライソ・ホミロ・ゾディサイド」の怒りが、移籍先のネクロアイギス王国と移籍プレイヤーから消え去りました』ってアナウンスあったじゃん……? ログにも残ってるよ? ――アレ、なんのためのアナウンスだったんだ……?」

「と、とりあえず死人は出てないぞ……?」

「ってか、攻撃受けてない人いるんだけど……」


 無事だったツカサ達に視線が向けられた。

 和泉が注目にびっくりして後ずさったのだが、少しの動作で後方の木に飛ぶように激突し、一歩前に足を出しただけのチョコはすごい速さで勢いよく前の地面へと転がった。その拍子に手放したカワウソが猛スピードで空中を滑り、ワラ人形に激突する。

 ダメージ20を出して、ワラ人形が戦闘不能になって倒れた。


「!?」


 一瞬にしてシーンと静まりかえった。重い沈黙が流れる。

 チョコは気丈にもキリッと強気の表情で顔を上げたが、顔色を白くして小刻みに身体を震わせていた。

 それは【郭公のさえずり】を使ったツカサも同様で、惨状を目の当たりにした∞わんデンと雨月、そしてバフ付きの他プレイヤー達はバフが切れるまでじっと身動きをしないことを心に決める。HPバーの上に表示された鳥のアイコンから、『【不吉の予感】最初の攻撃を完全回避、パーティーメンバーの行動速度の上昇』と効果が知れたのでバフが切れるまで待つ。


「突然始まるダルマさんがこーろんだー……」

「わんデンさん、笑わせようとしないで下さい」


 ∞わんデンと雨月が涼しい顔でする会話を、近くで聞いたプレイヤーの1人が吹き出して顔を逸らせば、勢い余ってその場で高速一回転して転んだ。それを目撃した人達が「ヒエッ……」とビビる。

 ツカサは消え入りそうな声で「ご、ごめんなさい……」と謝った。周りのプレイヤーからは「気にしないで下さい」「大丈夫ですよ~」「おかげで無事だったので」と気遣いの言葉がツカサにかけられる。

 桜達が重い雰囲気を破った。勝手知ったるベータ仲間のチョコの所業に、ワラ人形へと群がる。ワラ人形のかたわらに桜が座り、泣くフリをし始めた。嶋乃は跪くとワラ人形の手首付近に触れる仕草をし、難しい顔で首を横に振った。


「残念ながら……」

「そんなっ、ついさっきまで団長は生きていたのに!」

「死因はわかっているよ」

「古書店主探偵……!!」

「犯人はフレンドリーファイアだよ。召喚獣には敵への攻撃当たり判定がある。彼も哀れなシステムの犠牲者さ」

「許さない……フレンドリーファイアー達め……!!」

「――とにかく早く復活させてくれんか?」


 表示されたカウントダウンの数字の減りに、たまらず死体のワラ人形が口を挟む。嶋乃がバッと古書店主を見た。


「ワラ人形さんには息があるぞ! 探偵さん、【復活魔法】を!! ……って弓術士の俺が医者役って配役ミス!」

「配役なら合っているよ。何故ならこの探偵、【復活魔法】を持ってない神鳥獣使いなんだ」

「えーっ!? ちょっ、本物の医者は! 先生っ!!」

「私は召魔術士なんだよね」

「ツール職人、何故ここで出張って!? 謙ケン先生じゃない方の先生、【復活魔法】をお願いします!!」


 突然、皆に視線を向けられてツカサは慌てる。急いで【復活魔法】のスキルを使おうとした瞬間、既に【復活魔法】が起動していた。


(早い!?)


 高速で【復活魔法】がかかったワラ人形も一瞬で起き上がった。その場に居た全員がハトが豆鉄砲を食らったような顔になる。



《【復活魔法】がLV4に上がりました》



「えっ、早……?!」

「ヘイスト? ヘイストかかってるの!?」

「使い勝手……その、何? あまり良さそうには……」


 ゆっくりとセルフスローで慎重に起き上がるチョコと和泉に憐憫の視線が注がれる。ざわめきが喧騒になる前に、ワラ人形がパンッと手を叩いて注目を集めた。


「【復活魔法】ありがとう、神鳥獣使い殿。ちょうど地図の点も大量に止まっているな。敵の動きがないうちに、神鳥獣使いの人はHPの減った他の人達も回復させて欲しい。

 ところで普段ヒーラーを連れぬから、すっかり確認が抜け落ちておったわ。【復活魔法】を使える神鳥獣使いは手を上げてくれ」


 バフ効果が消えたのを確認して、おずおずとツカサは手を上げる。ここにいる6人の神鳥獣使いで手を上げたのはツカサだけだった。

 他の神鳥獣使いは、困ったようにへらっと苦笑する。「スキルブックが高騰してるんで後回しに」とも付け加えて言う人もいた。

 頼みの綱のヒーラーの返答に、アタッカーは真顔になる。ワラ人形が遠い目をして空を仰ぐ。


「では、スキル回路ポイントが5ポイント余っている者は?」


 2人だけ手を上げた。


「覇王は持ってないんですか!?」


 七方出士の森人女性の問いに、答える声がない。

 雨月は無言だ。ツカサはどうして答えないのだろうと雨月の顔を見ると、雨月が口を開いた。


「バード協会さんの方では」

「あ!?」

「えっ! 俺ですか!? 【復活魔法】は持ってないですがっ」

「ここに覇王って2人いたの!?」


 質問者もびっくりしている。ツバメを肩に乗せた平人女性のバード協会9は、「俺は9人目ですがね」と謎の主張をして続ける。


「直前に【祈り】を取り直したんでポイントも無いんですよ。神鳥獣使いで参加しておいてヘボですみません」

「必要ないので取る気はない」


 バード協会9は申し訳なさそうに答え、雨月ははっきりと【復活魔法】取得を否定した。

 そこでワラ人形が提案する。


「ではポイントが余っていて【復活魔法】を取っても良いという神鳥獣使いには、一旦死んでもらおうか。それで【復活魔法】を受ければスキルが出現するはずだから取ってもらいたい」

「団長、物騒!」

「すみません。今はポイントがないんですが、出現だけさせてスキルリストに入れたいです。便乗いいでしょうか?」

「いいぞ。皆、死ねば楽になる」

「闇落ちの台詞っぽいですね、ワラ人形長官……」


 古書店主と『ゆゆか』、『ロイヤル聖女』の3人の神鳥獣使いがワラ人形にキルされて、ツカサが復活させた。

 おかげで【復活魔法】はLV7に上がる。上がりやすいスキルだと思っていたら、同じプレイヤーの蘇生が続くと上がらなくなるスキルだと、古書店主が教えてくれた。

 【復活魔法】を取得したのは、古書店主とロイヤル聖女。ゆゆかとロイヤル聖女は∞わんデンの視聴者だそうだ。

 特に白いハトを連れているロイヤル聖女というプレイヤーは、山人男性でシスターの衣装姿、インパクトのある見た目に反して優しくテノールボイスの腰の低い人だった。率先して【癒やしの歌声】を使う。


「全体回復は、今近くにいるメンバーだけですね。暗殺組織ギルドの方々のHPも減っているかもしれませんので、【復活魔法】を覚えたわたくしが拠点に戻りましょうか」

「助かりますー。ただ、暗殺組織ギルドは基本的に一般プレイヤーと敵対ロールプレイなので、まぁあまり真に受けず、付き合うのが面倒くさかったら放置でもいいですからね。あの人達も優しくされると立場的にロールプレイがしにくいので、それで大丈夫」


 桜の忠告に、ロイヤル聖女とプレイヤー達の何人かは顔を見合わせた。


「ギルド長に皆さん冷たいので、本当にあんな扱いでいいのかなと心配はしていたのですが……」

「ああ、正式版からのプレイヤーはまだ直にジョン達と遊んだこともないのか。最近あいつら野良パーティーには入ってこないしなぁ」

「復帰の初期勢な俺も知らないですよ?」


 バード協会9が肩をすくめた。嶋乃が「それなら」と話し出す。


「ジョンなら、総合掲示板にロールプレイ時にとる言動の証拠が残ってるぞ。正式版直前のパートいくらだったかは忘れたけど、それの聖人師弟の罵り合いがわかりやすい。煽りとキレ芸は、特にジョンのロールプレイの範疇なんだよ。ジョンはこっちが気遣うと、本気で困って無言になるからなぁ」

「世界観的にもシステム的にも運営視点からも、違反した一般プレイヤーを粛正するからプレイヤーの敵位置にいるのが暗殺組織ギルドだよ。そしてPKプレイヤーとは天敵同士の間柄と設定されているね」


 古書店主の補足に、ワラ人形が「だからきちんと天敵の言動をして話を落としただろう」と腕を組む。


「そもそもあの説得フェーズは不要。ジーク殿を斬った時点で、パライソ側を選んだ者はこの道を選ぶのでいいのか、最終確認の選択肢が本人の視界には出ていたはずなのだ。……暗殺組織ギルドは、隙あらばロールプレイに持ち込む厄介な連中である」

「え!?」


 驚いたツカサが雨月を見上げると、彼は静かに頷いた。巻き込まれたツカサは「そうだったんですか……」と少し呆けたように呟いた。

 ロイヤル聖女が踵を返して拠点へと走って行く。ワラ人形達一行も話しながら再び進み出した。


「なぁ、クロにゃんさんや。暗殺組織ギルドは正式版から内部情報の取り扱い規約変わったんかの? わしの友人がそれなりにギルドの情報を明かすようになってのう」

「さっきもジョンさんがギルド長にクエストがあるって情報を普通に話してましたねー。確かにウチのフレンドも、チャットでほんの少しだけギルドの話をするようになりましたよ。正直、引退するから暴露始めたのかと最初はビビりました」

「でも、さっきのはジョンだからうっかりポロリしたのか、話して良くなったのか、イベントだから無礼講なのかがわからない」


 嶋乃の発言直後、シュワンッ! と不意打ちのように音が鳴り、目の前に貴族の青年の立体映像が浮かんだ。全員、驚いて足を止める。

 青い銀色の長い髪をサイドにまとめている黒い詰め襟の軍服の青年は、優雅に白いマントをバサッとはためかせて右手を突き出した。



《『さて、今こそこれまでの非礼の言動を詫びてもらおう。

 「佐藤サン」、「ぽけ太」、「リリ♪リッパー」、「Air」、「カフェイン」、「猫丸」、「ルシファー」、「ミント」、「影原」、「田んぼのウシガエル」

 ――戦争の演習中に不慮の事故は起こるものだろう?』》



 彼が不敵に笑うと、10人のプレイヤーらしきキャラクターが立体映像に映し出され、10人の目の前には黒い壺が浮かぶ。



《【ブラックジュエリーボックス】》



 その詠唱後、黒い壺のフタが開き、10人が壺の中に吸い込まれるとフタが閉じられて《999999999!! 称号・スキル耐性全無効》のダメージ表示が出る。

 黒い壺は黒い粒子に変わって消滅した。青年が肩をすくめて笑う。

 そして青年の立体映像と空を覆っていた金属の壁が消える。再び薄暗い果樹林へと戻った。



《ルゲーティアス公国の主要NPC「パライソ・ホミロ・ゾディサイド」の激怒状態が終わりました!》



「う、うぜぇ……!」

「何だあのNPC……」

「あの人達って、どうなったんですか?」

「たぶん即死して戦闘不能の身体が残らないで、そのままイベント退場の鬼畜処置じゃないかな」

「パライソさぁ、犯行声明出さなきゃ気が済まないタイプなの?」

「ムービー中にカットイン無かったと思ったら、無駄に凝った新規演出かまして来やがって」

「アイツを倒したい」

「パライソ殴れるコンテンツ下さい」


 正気を取り戻したプレイヤー達から怨嗟の声が次々上がる。


「スキル封印イベントを経験済みの、デブリ新規移住者のヘイトを更に積む男・パライソ」

「正木はどこに力を入れてるんだよ」

「やり口が殺戮闘技場を開催した正木に似てる」

「正木がモデルのキャラなのでは……」

「でもゲームAIが崇拝してる正木を悪役キャラのモデルに使うかねぇ」

「そもそも正木は笑顔苦手なんでな。あの悪役ムーブは奴に無理」

「骨壺を宝石箱と呼ぶ、パライソのサイコセンスは嫌いじゃないです」

「晒された人達、あのNPCに何かやったの?」

「Airとカフェインと猫丸がいた辺り、ありゃ総合掲示板の書き込みが原因だわな」


 嶋乃が頭をかきながら嘆息する。

 それを聞いて、七方出士の平人男性が胸を撫で下ろした。


「そっかー。私、空気読んでパライソの書き込みに暴言吐かなくて良かったー」

「ケイ、やっぱり空気読んで絡まなかったのか」

「だってまともな書き込みしてた人らが軒並みスルーしてたじゃん」

「結構見てんな。元ネタのBBSにAIとハッカーが書き込むネタあったからなぁ……。俺も常々アレ絶対パライソ本人だろとは思ってた。隻狼がこのネタ黙って静観してたんでツッコまなかったけど」

「掲示板のパライソに悪口で絡むとイベントで晒されるんデスネ。ケイ覚えたヨ!」


 ツカサも落ち着いて一息つく。その近くでバード協会9が雨月に声をかけた。


「コウテイペンギンの人さんや。あのパライソに一言どうぞ」

「楽しそうだったな」

「結構パライソ好きなんだ? 俺もですわ。この間さ、傍を通ったらバードウォッチングの豆知識を語って去って行ってさ。フレと街中で腹抱えて笑ったよ」

「パライソなら神鳥獣使いにも詳しい」

「マ ジ で か……!!」


 古書店主も2人の会話を小耳に挟んで、「興味深い……。後で訪ねよう」と呟く。普通に話しかけられている雨月の姿は、ツカサにはとても新鮮だった。

 果樹林を歩きながら先ほどのことを話していると、空から騒がしい声が降ってくる。



『何カメあるのこれ!』

『カメラ、まさかプレイヤー人数分か?』

『ずっと暗殺組織ギルド長のカメラ見てるわ。よく喋るねこの人』

『1度切り替えると2度とこのカメラに戻ってこれない気がして替えられない。何を話してるのか教えてくれい』

『とっさに掲示板のノリで覇王と呼びかけたのを反省とか、リアルでは会社でも無口で他人と口喧嘩もしないからゲーム内で感情的にキレ散らかすのがストレス発散で脳汁出るほど楽しいとか? アラサー社会人らしいです』

『ジョンさんのドエムなリアル情報はいらないです』

『おもしれー男』

『ジョンさんはうかつドジっ子キャラだから……』

『誰得なの』

『挙がってた名前をプレイヤー検索してみたら、ホントにネクロ民1人もいなかったんで笑った』

『粛正対象がほぼルゲーティアス民ですね。次点でグランドスルト』

『ルゲーティアスってヤバい奴がマジで多いよな』

『そのイジリつらい。自分、初期国がルゲーティアスな現・ネクロアイギス民だよ』

『拙者、祖国はグランドスルトであります』

「あ。静かだと思ったら、ボイスチャットが切れてたのか」

「観戦組、おかえりー」

『おっ、繋がった? 聞こえてる?』

『ただいまでーす』

「パライソのスキルってボイスチャット切断出来るのか」

「本当に何なんだあのNPC……」


 不自然に木々が途切れ、ザーザーと雨が降るルゲーティアス公国の平原地帯が目の前に広がった。プレイヤー達は「平原……?」と首を捻る。何故なら平人の腰までの高さの雑草が繁り、種人だと姿がすっぽり隠れる藪のような場所だった。

 先頭のワラ人形が、果樹林と平原の線引きがされている場所ギリギリの地点で身を屈めて止まる。他のプレイヤー達もワラ人形に倣って、草に身体が隠れるように屈んだ。


「丁度良い。観戦者は他国がどうなっているのか、報告をしてくれ」

『最初の空からの即死攻撃でネクロ以外は半壊です!』

『詳しく言うとネクロアイギスだけ大ダメージ攻撃で、他2国は即死攻撃だったみたいです。【即死耐性】スキルを持ってないプレイヤーは即死だったんで、現在どこのヒーラーも復活と回復に大わらわで戦場に出てます。

 スキル持ってた人はネクロアイギスと同じくらいの大ダメージだけで済んでるみたいです。大体スキルを取ってなかった新規が全滅しているらしい?』

『あとルゲーティアスの拠点の方は映像がないのでわかりません! 配信やってる人達が大体攻撃に出ちゃった』

『拠点防衛だと画が変わらないからなぁ。配信者はどうしても動く』

『それに【復活魔法】のスキル上げしたいとかで、ルゲーティアスは予定数以上にヒーラーが勝手に拠点から出て行っちゃってる。カオス』

「……仕掛けるならグランドスルトとやり始めた頃に横からの予定だったが、今がチャンスか……? 確かに地図の点が少し前より減った。さて誰が拠点にいるのか」


 ワラ人形は皆にここで少し待つように指示し、1人だけで平原を隠れて進んだ。しかし、直ぐに戻って来る。


「よりにもよって、プラネのトップヒーラーが拠点に残っておる」

「げっ」

「ニキか。ニキなのか!」

「アリカニキ、固いんだよなぁ……。あの人1人でタンク2枚分は余裕であるよ」

「回復地蔵プレイ得意だからね。攻撃で回復詠唱中断させないスキル死ぬほど持ってるし、総攻撃しても落とすのに時間かかるよ」

「だが人が少ないのは今だけだ。近接が攻撃出来るギリギリまで潜伏で近付いて、気付かれる前にブラヴァレナ嬢をアタッカーで総攻撃する。彼女は星魔法士で柔らかい。タンクは適度に相手側のヒーラーを囲んで攻撃だ」

「アリカさん達は基本引きつけた状態で無視だね、OKです!」

「とにかく最初は気付かれな――」


 段取りを確認していたら、ルゲーティアス公国のフィールドから怒声が上がった。


「敵襲ーッ!!」

「ネクロアイギス、弓術士と神鳥獣使い!! 周囲警戒!!」


 桜達は「え!?」と目が点になる。この場にいるプレイヤーは誰も動いていないのだ。

 疑問に答えてくれたのは、ボイスチャットだった。


『ケンさん、あのレーテ君がやってくれましたぜぇ……』

「ああ……時限レアレイドの黒四天龍戦を……事前の話し合いを全無視して宝箱を開け続けられるレーテ君だからね……うん……」

「黒死天レイド全滅事件はトラウマなんですけどォッ!!」


 謙ケンと他数人のプレイヤーがその場に崩れ落ちた。

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