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第13話「都市国家-4」

「これで全部か」

「ああ、全部だ」

 全てのゴブリンが始末された後、ラスラーさんたちは死んだ妖魔が変化する石を手際よく回収しておく。

 と言うわけで、私もラスラーさんたちに倣って、自分で仕留めた二匹のゴブリンの石は回収しておく。

 しておくのだが……うん、正直何に使うのか分からないこんな石よりも、ゴブリンを一撃で仕留めたあの魔法の方が気になる。


「……ん?」

「ああ、どうやら彼女は君の魔法が気になるらしいね。教えてあげられる事は教えておいてあげてもいいんじゃないかな。ストータス」

「はぁ……貴方がそう仰るなら、私は別に構いませんが」

 と、私が送っている視線に気づいたのか、アスクレオさんの言葉を受けて、杖を持った男性……ストータスさんが私の事を手招きする。

 うん、ありがたい。


「ソフィアだったか。魔法について教えて欲しいのか?」

「是非」

「分かった」

 敵に回すにしても、私が使えるか判断するにしても、最低限の情報すら無ければ一切の判断が出来ないのだから。

 今の内に聞けることは聞いておくべきだろう。

 まあ最悪、魔法が使えるヒトを生きたまま丸呑みにして、記憶を奪うと言う手段もあるけど……魔法がどこまでやれるのかが分からない現状だと、その方法は最終手段かな。

 腹の中から殺されるとか勘弁だし。


「始めに言っておくが、魔法の詳細については門外不出の技術だ。だから、私が教えるのは一般……あー、都市国家に住む普通の人間でも知っている範囲に限らせてもらうぞ」

「十分です」

 むしろ、今の状況で一から十まで教わったら、そっちの方が色々と面倒な事態に巻き込まれそうだしね。


「まず魔法と言うのは、魔石……あー、お前の反応からしてそこからみたいだな。妖魔を殺した後に残る石の事を魔石と言うんだが、この魔石に特殊な加工を施した上に、私のように特殊な訓練を積んだ者の一部……魔法使いにしか使えないものだ」

「ふむふむ」

 ストータスさんの説明は実に分かり易い物だった。

 で、ストータスさんの説明をまとめるとだ。


・妖魔が死んで、死体が消えた後に残される石を魔石と言う

・魔法は魔石に特殊な加工を施し、特殊な訓練を積んだ者が揃って初めて使える

・魔法には様々な種類が存在し、石の塊を飛ばすような物以外にも、火の玉を飛ばすもの、明かりを生み出すものなど、実に様々なものが有る

・魔法使いには流派と言うものがあり、流派毎に使われる魔法は違う

・魔石の加工法や修練の方法などは機密中の機密情報の為、各流派は非常に仲が悪い


 との事だった。


「ちなみに、私が先程使った魔法は(ストーン)(バレット)と言って、私の所属する流派『大地の探究者』で使われている魔法の中では最も基本的な物になる」

「えと……」

 で、先程の魔法の名前と、ストータスさんの所属する流派の名前も教えて貰ったのだが……そこまで教えてもらってしまっても大丈夫なの?

 これで強制的に『大地の探究者』に所属することになったりとかは……


「心配しなくても、『大地の探究者』の名はマダレム・ダーイではよく知られているし、石弾の魔法についてもその名と効果だけは知られている。だから心配は知らないよ」

「あ、そうなんですか。なら安心しました」

 しないらしい。

 よかったぁ……特定の団体に所属するとか、私の正体がバレる可能性が一気に高まるに決まっているし、本当に良かった。


「ただ不思議な事に、私よりも修行を積んでいるのに石弾を……」

「ストータス」

「っつ、すみません」

「?」

 と、ストータスさんがさらに何かを言おうとするが、その言葉はアスクレオさんの言葉で遮られる。

 んー、心なしかストータスさんの顔色が悪いような?


「あー、そうだ。興味があったならば、マダレム・ダーイに来た際にでも、『大地の探究者』の本拠地に来てくれ。正式な団員にしか教えられない知識もある」

「えと、考えておきます」

 とりあえず、所属するかどうかは誤魔化しておく。

 まず間違いなく所属しないけど。


「それともう一つ、折角だから魔石についても基本的な知識を教えておこう」

「と言いますと?」

 そう言うと、ストータスさんは近くに落ちている石を一つ拾い、ラスラーさんに声を掛けて魔石と思しき石も一つ手に取る。


「魔石は外見上はただの石と変わらない。よって、見ただけで魔石とただの石を見極める事は不可能と言っていい」

 二つの石はよく似ている。

 ストータスさんの言うように、外見でこの二つの石の内、どちらが魔石なのかを判別する事はまず無理だろう。


「だが……両手を出してみろ」

「はい」

 ストータスさんが私の両手の上に一つずつ石を乗せる。

 そしてすぐに気付く。


「今感じ取ってもらった通り、明らかに魔石の方からは何かしらの力のような物が出ている」

 右手の上に乗せられた石の方から、微かではあるが、妙な気配のようなものを感じ取れる事に。


「この力は強力な妖魔が残した魔石の方が強いらしい。そして、強力な妖魔が残した魔石ほど、強力な魔法を発動できる可能性が高い。と、言われているな」

「へー……」

 なるほど、強い妖魔が残す魔石ほど、強い魔法が使えるのか。

 いずれにしても、魔石を加工してヒトが魔法が使うのであるならば、魔石の元になる妖魔が魔法を使う事は……


「私から話せるのはこれぐらいだ。分かったか?」

「はい、ありがとうございます」

 不可能では無いかもしれない。

魔石についての説明でした

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