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97:兄妹の会話

ブックマーク数9000人を超えましたので初投稿です

たまにコメントしてくれると凄く嬉しいです。

…。


オーギュスト様との会談が終わり、私は1年ぶりに兄とお話する機会が与えられました。

オーギュスト様は兄と有意義な話し合いをすることが出来たと喜んでおりました。

さらに、明日の夕方まで兄はヴェルサイユ宮殿に滞在する上、それまでは兄妹と過ごす時間を取ったほうが良いと言われたのでお言葉に甘えてヨーゼフお兄様とお話をする事にしましたの。


「おひさしぶりでございますヨーゼフお兄様」

「ああ、こうして兄妹として接するのも一年ぶりだな」

「そうですわね…皆は元気にやっておりますか?」

「まぁまぁだ。相変わらず母上の小言がうるさいぐらいだ…至って平穏だよ」

「そうですか、母上らしいですわね…」


ヨーゼフお兄様は会談を終えた後らしく、オーギュスト様と長い間会談をなさっておりました。

きっと喉が渇いている事でしょう。

私は使用人を呼んである飲み物を持ってくるように指示を出しましたわ。


「アイスティーを2つ、用意してもらえるかしら?」

「かしこまりました。砂糖はお付け致しますか?」

「勿論、お願いね」


ヴェルサイユ宮殿の地下に作らせた氷を応用して作った冷やした紅茶。

これから夏になってくると氷は非常に有り難い存在となります。

地下深くの涼しい場所に、冬場凍らせた氷を使って出来上がった冷えた紅茶は贅沢品でもありますの。

オーギュスト様はこのアイスティーに粉末状に砕いた砂糖を”サーッ!”と呟きながら淹れるのが好きだと語っておりましたの。


「お待たせしました。アイスティーでございます」

「これがアイスティーか……四角い氷が入っていて……ほう、タンブラーグラスに淹れているのか」

「はい、冷たくて美味しいですよ。砂糖なしで飲むのもいいですけど、疲れた時には砂糖を入れて飲むのが美味しいのだそうです」

「成程なぁ……では、有難く頂くぞ」


ヨーゼフお兄様はアイスティーをゆっくりと飲み始めました。

あまり冷たすぎると、虫歯の人には痛みで凍みてくるそうです。

冷水は虫歯発見の検査でも使われるそうです。

グラスの半分ほどを一気に飲んだヨーゼフお兄様は、グラスを置いてから私とオーギュスト様との関係について話しをしました。


「婿殿と話をしたのだがね……思っていた以上に彼はやり手だ。話をしたから分かったよ……あそこまで国の事を一歩、いや二歩先を考えて行動している人間は初めてだ」

「オーギュスト様は不思議な御方であるのは間違いありませんわ。常に国民に寄り添うような政策を取っていて、それでいて私にも色々と優しく接してくれますの」

「お前は一番お転婆だったからな。それでも婿殿は嬉しそうにお前の事を語っていたぞ。お前との時間をもっと過ごしていたいとも言っていたからな」

「まぁ……嬉しいですわ……」


オーギュスト様はヨーゼフお兄様に私と一緒にいたいと語っていたそうです。

嬉しさと恥ずかしさが混じってしまいますが、それでも嬉しい気持ちで一杯です。

いつもベッドの上で抱きしめてくれているオーギュスト様ですが、それ以上の事はまだ時期尚早ということでしていないのですが、その事についてもヨーゼフお兄様から質問がされたそうです。


「母上もお前と婿殿との間に出来た子供が見てみたいと言っていたのだがな。婿殿は改革が落ち着く3年後までは子作りをすることはしないそうだ。その事はお前も承知しているのか?」

「ええ、3年後までは性行為をしないと仰っておりましたわ。ヨーゼフお兄様、もしや私と子作りをするようにオーギュスト様へ迫ったのですか?」

「あー……迫ったのではない。伺ったのだよ……あまり子供が産むのが遅いと不仲ではないかと疑われてしまう事があるからな」


不仲?

子供が産むのが遅いのが不仲だという原因が分かりません。

なのでその真意を詳しく尋ねることにしてみました。


「それは、どういう意味です?」

「そうした行為をしていないというのは、世間一般では関係が良くないと思われるんだよ。特にお前はもうフランスの王妃なんだ。国の国家元首たる王の妃との間で子供がいない期間が長いと不仲だと疑われてしまうのさ」

「そんな……そんな事は決してありませんわ!オーギュスト様は……オーギュスト様と私は不仲ではございません。むしろその反対で毎晩抱き合って寝ておりますよ?」


その言葉を聞いたヨーゼフお兄様は豆鉄砲を喰らった顔をしておりましたわ。

実際に抱き合っているのは事実ですし、何よりもオーギュスト様は仕事を頑張り過ぎてしまうと甘えてくる傾向が強いのです。

抱き合って寝ていると言ってから数十秒ほど時間を空けてから、ヨーゼフお兄様は淡々とした口調で話を再開しました。


「そうか……では、まぁ……なんだ。兄である俺から言える事はあまりなさそうだな。ウン。婿殿はお前の事を非常に評価しているからな。ちゃんと婿殿を支えてやるんだぞ?」

「勿論ですよ、ヨーゼフお兄様も偶にはフランスにいらっしゃってください」

「ああ、そうするよ。その時に甥か姪の顔が見れたら楽しみだ。それじゃあ私はこれから大使と話し合いをするから席を外す。しっかりやれよアントワネット」

「ええ、お仕事頑張ってくださいヨーゼフお兄様……」


それからヨーゼフお兄様はオーストリア大使の方と話し合いを行うためにまた別室に向かいましたの。

今晩の晩餐会に参加するみたいですので、今度はオーギュスト様も交えてお話をするかもしれません。

晩餐会でどんな料理がでるのか楽しみにしながら私は寝室に戻って、一旦仮眠を取るのでした。

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