86:Lev
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
1000万PV目指して初投稿です。
目の前に広がっているのは大きな池があり、その周りは木々が生い茂っていて新設した温泉施設と以前からあったというボロい風車がポツンと一つあるだけの、殺風景……いや、言い方を変えれば自然に囲まれたのどかな光景である。
パリ近郊でもこんなに落ち着いた場所があるとはね。
この辺はあまり人が定住していない場所らしく、池の周囲には人工物はデコボコしている悪路の道路と先も述べたような温泉施設とボロボロの風車ぐらいしかない。
「ここが……温泉ですの?」
「そうだよ。無論、あのボロ風車じゃなくて真新しいレンガ作りの建物があるだろう?あれが新設した温泉施設だよ。この周辺にいる地元住民の人達の協力で建てられたんだ」
この温泉に関しては俺が去年10月に建設をするようにGOサインを出した。
なるべく地元住民の人達にも利用させたいと思った俺は、アンギャンの地元住民に温泉施設の建設を依頼したんだ。
俺直筆サイン入りでコミューンの村長さんに「可能であれば来年の6月ぐらいまでに図面で引いた温泉施設の建設をする予定ですが、地元住民の経済活性化の為に建設にご協力をよろしいでしょうか?」と、建設依頼書を送ったところ、速攻で返信が帰ってきた。
「喜んで!是非ともお願いいたします!」
この辺りを統治しているコンデ公にも筋を通しておいたので、温泉施設の建設は思った以上に早かった。
基本的なコンセプトとしては、一般庶民でも入りやすくて静養を兼ねた入浴療法を取得する場所として建設をしたんだ。
あまり豪華絢爛にしてしまうと、高級スパのようになってしまって一般庶民が立ち入りづらい場所になる。
史実のアンギャン・レ・バンは高級カジノや料理店が立ち並ぶフランス屈指のリゾート地となっているが、高級路線を突き進みすぎてしまうのも俺はどうかと思ったのだ。
というのも、そうなっては入浴を楽しむ機会が無くなってしまうと危惧した俺は、排水処理などを管理できるように排水管など複雑な工事は国が請け負って、アンギャンの人達には温泉施設の建設に協力してもらったんだ。
勿論、工事の費用や地元住民に支給するお給料は国が負担したんだ。
公共事業の一環でもあるし、何よりフランスで入浴という文化を広めるために必要な事だからね。
それに有名になれば外貨が獲得できるし観光資源としても活用できる。
デコボコが酷い悪路も整備された状態にして馬車の停留所などを設けたり、温泉療法として皮膚病などの疾患治療施設なども建設すれば、この場所は今後大いに栄えるし、温泉の成分を分析した上でフランス科学アカデミー公認で「科学的に見ても健康に良い温泉」と紹介できればいいかなと思っている。
「ま、確かに周囲は豪華絢爛というわけじゃないが、健康に良い温泉に入れるんだ。しかも出来上がったばかりの一番風呂に入れるんだよ!」
「一番風呂ですか?」
「そうだよ~!来月に施設として開業予定だけどね。でも俺たちが出来上がったばかりの温泉の一番風呂に入れるんだよ!それに俺たちだけで広いお風呂を独り占めできるんだ……これ程までに素晴らしい事はないよ!」
「そうですわね……一緒に広いお風呂に入れる事ができるのは良い事ですわ!」
アントワネットも納得してくれたようで、俺たち二人は温泉療法施設へと足を踏み入れる。
アンギャン・レ・バンに新設した温泉療法施設。
ちゃんと入り口に設置された大きい石にはフランス語でこう刻まれている。
『静養の湯 アンギャン・レ・バン 温泉療法施設(ルイ16世陛下公認)』
ちゃんと俺(ルイ16世)公認の文字がでかでかと彫られている。
温泉療法施設という事もあってか、ちゃんとフランス科学アカデミーのメンバーが温泉の成分などを分析したデータなどを入り口に飾っており、大きい貼り紙に分かりやすいように注意書きもしっかりと書き込まれている。
・当施設は静養を兼ねた温泉療法施設です。如何なる身分階級の方であれ、当施設内での喧嘩や性的乱交など風紀を乱す行為はおやめください。行為を発見した場合は速やかに国王陛下から承認された番頭が拘束致します。
・当施設の温泉は硫黄泉を主とする温泉です。硫黄独特の臭いがしますが、身体への安全は検証しております。もし、入浴中に具合が悪くなった場合は直ちに入浴を中止してください。入浴中に体調不良を起こした人を見かけたら番頭までお知らせください。
・当施設の温泉の効果は皮膚炎や腫瘍の沈静化などが確認されていますが、個人差があります。体質によっては効果が薄かったり効かない場合がございます。予めご了承ください。
・更衣室や浴槽内での飲食行為や、放尿・脱糞などは固く禁じております。食事は食堂で、お手洗いは当施設の入って右側にございます。ルールを守って心を清らかにして入浴をし、お身体を休めましょう。
ー静養の湯 アンギャン・レ・バン 温泉療法施設より
勿論、この時代の識字率を考えれば読めるのは教育を受けた市民か貴族・聖職者ぐらいだ。
女性でも文字が読めない人が多くいた時代でもある。
なので、最初はツアーを組む感じで入浴のルールなどを教える温泉ガイドを雇うことにしている。
温泉ガイドを行うのはアンギャンからこの施設で働きたいと希望した者達である。
男女ともに基本的な入浴作法やルールの説明などをお客さんにレクチャーして、それから入浴を行うという。
草津温泉とかでもそうしたレクチャーやっている場所もあるし、何より地元住民の雇用の場として提供できるならそれでもいいかなと思っている。
「それじゃあここで男女別の更衣室で入浴用の服に着替えよう」
「ええ!」
男女別の更衣室に入り、入浴用の質素な白服に着替えて、いよいよアンギャン・レ・バンのメインとしている露天風呂に向かうのであった。