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85:観光資源

大晦日ですが初投稿です。

明日もいつも通り18時に初投稿致します。

ヴェルサイユ宮殿から馬車で2時間の旅。

やはりコンクリートで舗装され、ゴムのタイヤで走る自動車が如何に快適な運転を実現していたのかを、身をもって知るいい機会だ。

相変わらず馬車の中は振動こそあるものの、既に馬車にサスペンションが取り付けられているので大きく揺れることは殆どない。


まだまだ自動車が誕生するのは先の話だが、温泉に入れるのはもうすぐだ。

そう、今日はアントワネットと一緒に温泉に入る日なんだ。

自然と身体がウキウキしてくる。

かれこれ1時間50分ほど馬車の中で揺れながらも、アントワネットと楽しく喋りながら過ごしていた。


「こうしてオーギュスト様と一緒に外出するのはいい事ですね」

「ああ、夫婦としても勤めを果たさないといけないからね。ちゃんと休む時に休むように心掛けているんだ」

「まぁ!嬉しいですわ!あっ、これランバル公妃と一緒に作ってきたサンドイッチです!良かったら先に軽食だけでも食べますか?」

「いいね!では有難く一個頂くよ」


アントワネットがランバル公妃と一緒に作ってきたというサンドイッチを1つ手に取って、早速頂く事にした。

もぐ……もぐ……。

……んふぅ!

これ美味い!


「これは、生ハムとドレッシングで味付けしたのを挟んだのかい?」

「ええ!オーギュスト様はハムがお好きだとお聞きしましたので生ハムをベースにあっさり風味のドレッシングで味付けしたサンドイッチですの!お味はどうですか?」

「毎日食べていたいほどに美味しいよ。ホント、ここまで絶妙なサンドイッチを作れるようになるとは……流石だアントワネット!!!」

「えへへ、まだまだありますよぉ~!たーんと召し上がってください!」


アントワネットとランバル公妃が作り上げたサンドイッチ。

籠一杯に詰め込んでくれたサンドイッチは見るからにおいしそうだ。

茹でた卵にサラダを包んだたまごサンドに……マスタードにウィンナーを刻んで包んだマスタードサンド等々、色とりどりで豪勢なサンドイッチたちが鎮座していたんだ。


アントワネットくん。

何時の間にこんなに沢山作っていたんだ……?!

パンと具材の防護要塞(サンド・フロント)が籠の中にぎっしりと詰まっている。

そのサンドイッチが1つ、2つ、3つ……あれ、結構作ってきたな。

というよりも……これ、食べきれるのだろうか?

全部食べれそうにない……。


「す、すごい量だね……見ただけでお腹いっぱいになりそうだ」

「ええ!飽きないように色んな種類のサンドイッチを作ってきましたの!あぁ、せっかくですからお昼の時にゆっくり食べましょうか?」

「是非ともそうしよう。アントワネットと一緒に食べたいからね」

「ふふふ、ありがとうございます!」


そう言ってアントワネットは籠を閉めてくれた。

セーフ……!

ひとまずサンドイッチの件については後で大丈夫だろう。

ゆっくり食べればいいか……この調子だと夕飯もサンドイッチになりそうです。

話を切り替えるように、アントワネットが話題を持ちかけてくる。


「オーギュスト様、今日赴くところは温泉が湧き出る所なのですか?」

「その通りだ。これだけパリに近かったにも関わらず、あまり注目されていなかった天然の温泉なんだ。ただ、前もって言ってはあると思うけど、この温泉は少々硫黄という刺激臭が強い独特な温泉なんだ。フランス科学アカデミーの人達が成分を調べたり、実験をした結果……身体に害はないみたいだから安心して欲しい」

「なるほど……行ってみてからのお楽しみという事ですね!」

「まぁ、そんなところだ」


馬車の中でアントワネットがそう尋ねた。

俺はその通りだと頷く。

そう、今日アントワネットと一緒に入る温泉はアンギャン・レ・バンという場所であり、パリのすぐ隣に位置する小さい地域でもある。


フランスに有名な温泉があったよなーと思って調べたところ、見事この場所がヒットしたのだ。

しかも、既にこの地域では温泉に関する研究が進められており、聞けばフランス科学アカデミーに所属している研究者の一人が発見して以来、この天然の温泉を利用して化学実験をしていたそうである。

つまり、科学的に立証されている科学アカデミーお墨付きの温泉というわけだ。


「科学アカデミーの人達も、この温泉で色々な実験をしていたみたいだからね。それだけ化学的に重要な場所でもあるというわけだ。化学で役立ち、さらに健康面でも役に立てるようなら一石二鳥だと思っているよ」

「その、アンギャン・レ・バンという温泉は健康にいいのですか?」

「科学アカデミーの人達に頼んだデータを見る限りでは安全だね。一応硫黄泉だから臭いがちょっとキツイかもしれないから、もし無理そうだったら遠慮なく言ってくれ」

「かしこまりました。では、水入らずで一緒に入りましょう!」

「お、おう」


とりあえず一緒にお風呂は入るけど、勿論の事ながら入浴専用の服を着た状態で入ることになる。

あくまでも温泉療法も兼ねているので、名目上は温泉兼医療施設でもある。

性産業施設じゃないよ!

ちゃんと()()()が起きないように施設では更衣室は男女別だし、入浴専用服の着用を義務付けする事にしている。

いかがわしい事をしていたら身分関係なくしょっ引かせる事も可能にする為、番頭を常駐させる。


俺たち二人が全裸でお風呂に入ると思ったか?

流石に夫婦といえど、露天状態の場所で裸をさらけ出す訳にはいかんのよ。


特に俺たち二人は王族だ。

裸で入っていたなんてスキャンダルにでもなれば一大事だ。

この温泉の最大のウリは露天風呂だからね。

やがて馬車が止まり、目的地に到着したようだ。


「お待たせいたしました。アンギャン・レ・バンに到着しました」


馬車の御者がそう告げてきた。

いよいよフランスの天然の温泉に浸かる時がやって来たのだ。

俺とアントワネットはウキウキした気分で馬車から降りたのであった。

来年もよろしくお願いします。

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