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81:植民地?そんなものは殆ど無い

「では、三つ出された問題について解決策……もしくはそれに準ずる方法を考えてみよう。一応解決策として植民地支配している場所や隣国からの食料輸送なども考えているかもしれないが、今回はそうした植民地や周辺国には頼らずに自国内だけで解決するという条件縛り付きだ。思いついたのを言ってくれ」


問題を挙げるのは容易いが、解決策を見出すのには少々時間が足りないかもしれない。

実際問題、そうした際に植民地から食料を分捕ってくるという方法などがあるが……。

あまりそうした方法を取るのは差し控えたい。

あくまでも国内限定だ。

火山災害であれば周辺国にも同様の被害が生じているだろう。


周辺国に頭を下げても食料の余力がないと言われるだろう。

もしくは凄まじい倍以上の値段を吹っ掛けられる可能性のほうが高い。

他国や植民地を頼らずに解決する方法を探るんだ。

植民地に頼るのはナンセンス……。

というか、植民地殆ど無いけどな!!!


フランスなら植民地沢山あったんじゃないかと思ったよ。

ワンチャン食糧不足解決の為に使えるんじゃないかと思い、フランスって植民地かなりあった筈だから植民地から食料貰っていけばいいのではないかと考えた時期がありました。


でもね……。

無かったの植民地が!!!

植民地時代と言われるぐらいに各国で植民地争奪戦を繰り広げていた時代であるにも関わらず、フランスには大きな植民地はありませんでした……。


というのも、ルイ15世の統治下で行われた七年戦争で敗北した結果、インド大陸・カリブ諸島・北アメリカ大陸で有していたフランスの植民地はほぼ全部イギリスとスペインに取られちゃったんだよね……。

よりによってインドと北アメリカ大陸の植民地喪失はデカい。

結果的にフランスは人的資源・地下資源のある場所の大部分を失っているんだよ。


フランスが沢山植民地を持っていたのは19世紀から第二次世界大戦終結後ぐらいまでで、持っていたとしてもアフリカ大陸で”そこ持っていても意味あるのか?”というような微妙な土地だけだった。

インドシナ領ではベトナムが独立戦争を仕掛けてフランスだけでなく、アメリカと戦って見事勝利したベトナム戦争が有名だしね。


何かと第二次世界大戦では勝者(ドイツにフランス本土を占領されて事実上降伏したにもかかわらず)であったフランスはその後、ズルズルと植民地の大部分を手放して、現代では南米やカリブ海の一部地域のみに海外県が存在する程度だ。

というわけで植民地禁止縛り条件付きで解決策を見出すというわけだ。

無論、100点満点の解決策なんて存在しない。

俺が重視するのは、現状の国力や技術面で実現可能かどうかだ。


化学肥料とか、機械化農業とか、缶詰とか……。

そういったあと半世紀か100年後に実現できそうな技術を使うというのも無しだ。

俺が転生者だからそういったチート能力使えると思ったか?!

残念!転生者オーギュストが使えるのは歴史の年表と簡単な料理ぐらいだコンチクショー!


何でもかんでも魔法やチート能力で解決できていたら苦労なんてしないよ!!!

と、内心で叫んでいたらベズー氏が挙手をしていた。

何かアイデアが浮かんだようだ。


「ベズー氏、どうぞ」

「あの……陛下、一つ私から解決策を提示したいのですがよろしいでしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ。自由に発言をしてください。どんな解決策であれ、アイデアを出すのはいい事です。ささっ、言ってください」

「はい、では述べさせて頂きます。食料の安定供給の為に小麦だけのレパートリーではなく、大麦やライ麦などの寒さや乾燥に強い作物の栽培を行うのはどうでしょうか?」

「大麦やライ麦かい?」

「ええ、ロシアなどでは寒さに強い大麦を栽培しております。小麦に比べたら味は落ちるかもしれませんが、気候変動で寒冷化した場合でもある程度は収穫が見込めるかと思います」


ベズー氏は寒さに強い大麦やライ麦を栽培するのはどうかという解決策を提示してきた。

確かに、安定した食料の供給にはジャガイモと並んで欠かせないだろう。

小麦は麺やパンを作るのに適しているらしいが、大麦やライ麦でも作れない事はないようだ。

オーストリアとかではライ麦が生産されているみたいだし、寒さに強ければ気候変動が起こっても大丈夫だろう。


ただし、大麦を原料にパンを作ると中に穴が開きやすくなり、小麦に比べたら形は悪くなり中の断面もスカスカした感じになるという。

味に関しても硬さや風味などが劣ってしまうので、小麦を食べるのを重視しているのだとか。

だが、確かに大麦やライ麦の栽培は大事だな!


(小麦から作るパンが無ければ、大麦やライ麦から作ったパンを食べればいいじゃない!)


アイディアが閃く。

それと同時に、そのセリフは隣にいるアントワネットに言わせたい衝動に駆られてしまう。

元々そんなセリフは言っていないし、むしろ創作であったにも関わらず広がってしまったのは大変残念な事だ。

気を取り直して、解決策の中に寒冷化などに強い作物の導入を書きこむ。


「小麦ではなく大麦、ライ麦などの災害に強い作物の導入か……うん、確かに小麦が主力として生産されているのが現状だね。それを見直して生産を推薦させるように農業従事者の人達に協力を仰ぐのも一つの手だね。よし、書き込んでおこう。他には?」

「はい、私に一つ考えが……」

「アントワネットか、何か思いついたかい?」

「コンフィや燻製といった保存食を長期間保管する施設を全国に作るのはどうでしょうか?飢饉が発生した際に在庫を放出するのであれば、食料は行き届くと思います」

「保存食か……確かに通常出される食事も大事だけど保存食も重要だね!」


保存食……。

現代人なら保存食と聞いて真っ先に思い付くのが乾パンや缶詰だろう。

だけどまだ現状そうした発明品はないのでフランスではコンフィと呼ばれる保存食が食されている。

アントワネットはそうした保存食を貯蔵できる施設を作り、飢餓が発生した時に放出するという案を述べてくれた。


施設の整備には建設費や貯蔵を管理する人達の人件費が掛かってしまうが、それでもないよりはいいだろう。

非常食があれば飢餓で苦しむ人々も飢えずに済むだろう。

予め人数などを把握した上で、都市部には複数箇所、農村部でも村に一か所は作った方が無難かもしれない。


あるいは缶詰、ないし瓶詰のような砂糖や塩で果物や肉を漬けて長期間保存可能な発明品が生まれるために研究を依頼した方がいいかもしれないね。

そうした発明品があれば食料貯蔵施設を建設した際に、燻製品に比べたらかさばらないし瓶や缶詰の規格を統一していれば貯蔵も楽になるだろう。

おお、いい感じにまとまってきたじゃないか!

よし、そろそろ55分だ。

解決策は話し合いの末、ベズー氏とアントワネットの案を発表することにした。


・小麦以外の大麦、ライ麦など寒さに強い作物の導入。


・コンフィ・燻製などの長期保存可能な食料を備蓄する施設を全国に作って災害時に備える。


いい感じにまとまったな!

最後に各グループが対策案を発表してまとめを行う。そのまとめが終わればディスカッションが終了する。後は皆がどんな意見が出るのか楽しみだな。

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