6:入浴という風習がフランスには無かった
マリー・アントワネットと一緒にお風呂入りたいと思ったので初投稿です
俺とマリー・アントワネットは祝賀会を一緒に抜けると、新たに用意された居室部屋にやってきてきた。
この居室は俺とアントワネットがこれからずっと暮らしていく部屋となる。
インテリアも充実しているし、なによりもこの部屋は日当たりも申し分ない。
部屋の前まで付き添ってやってきた使用人や侍女さん方も俺たちが部屋に到着するなり、部屋の外で待っているらしい。
どうやら向こうさん方は俺とアントワネットの初夜を期待しているんじゃないかな?
早い話が身体を密接に重ねた結果……やったね、オーギュストちゃん!家族が増えるよ!ってか?
……だが申し訳ないがまだ身体と密接に交わるのは早すぎる。
年齢を考えろ年齢を……。
現代日本なら犯罪行為に当たってしまうぞ。
そんなわけで俺はアントワネットと共にベッドに座って話を始めた。
最初に話を切り出したのはアントワネットだった。
「オーギュスト様、先程はありがとうございました。先程の手紙……あれは貴方がお書きになったのですか?」
「うん、ちょっと勢いで書いてしまったんだよ。アントワネットと会うのが待ちきれなくてね……迷惑だったらごめん」
「いえ、そんなことはありませんわ!未来への展望を語りたいだなんて、中々詩的にお書きになる人はあまりおりませんのよ?」
あの手紙を出して大正解のようだ。
アントワネットは俺を好意的に捉えているらしい。
第一印象はまず大丈夫だ。
見た目からして問題はないと思われる。
しかし、こうして近くでアントワネットを見てみると……。
ほんとフランス人形みたいだなーって思うぐらいには可愛い。
くるくるしてもっさりした髪は……実はカツラだったという衝撃的な事実がある。
転生してから理解したのだが、この時代は衛生環境はよろしくなかったので欧州ではカツラを付けて、それを貴族などの威厳を保たせるように行ったのが始まりらしい。
なのでアントワネットが頭の上に付けていたカツラを外すと、地毛である黄金色の髪が見えてきたのだ。
肖像画などでは白毛でソフトクリームみたいな髪の毛で描かれていたが、実際に見てみれば短くて綺麗に整えられた髪の毛をしていたのだ。
新発見!マリー・アントワネットの地毛は金髪だった!
それを見て俺は思わず呟いた。
「おぉ……綺麗だ」
「なっ、あ……ありがとうございます……」
綺麗だといったら顔を真っ赤にして照れているアントワネットが隣にいる。
うちの嫁可愛い(最重要)
ライトノベルやアニメなんかで、こんな美人の女性キャラクターがお嫁さんになればいいなーと思う事があるかもしれない。
そのぐらいにアントワネットの顔立ちはとっても美人だ。
つい言ってしまった。
反省はしていない。
「お、お、オーギュスト様も中々凛々しいお姿ですわ。すごく身体つきがいいですけど……何か運動などをやってらっしゃるのですか?」
「毎日体操とトレーニング……それからお風呂に入っているからだね」
「お、お風呂に毎日入っているのですか?!」
「うん、毎日だよ」
毎日入浴している事を告げたらどえらくアントワネットは驚いた様子だった。
そりゃそうだろう。
なんたって公衆衛生概念というものがないから入浴なんて半年に一度はザラであった。
だってこの時代の欧州では『水に入ると病気になる』という現代からしてみれば信じられないような事が信じられていた時代だ。
特にフランスでは群を抜いて風呂に入る習慣がなかった。
風呂に入らず香水付けて臭いを誤魔化していた時代なので、香水切れたら基本的に体臭が凄まじい人しかいないという地獄絵図だ。
シャワーが発明された19世紀後半になるまでは入浴という文化は普及していなかったのだ。
いやー、道理で体臭キツイ人が多いなと思ったよホント。
一応ヴェルサイユ宮殿にはルイ14世の時代にバスタブが作られていたので、そのバスタブを使って毎日入浴している。
月1ぐらいでしか水浴び程度しかしない彼らからしてみれば、転生してから王太子権限で毎日バスタブで30分間じっくりと風呂に浸かっている俺の行為はかなり奇行に見えたらしい。
でも王太子なので直接言ってこないのは幸いだな。
誰がなんと言おうとこれが日本流の入浴作法じゃい!
お陰で転生前にルイ・オーギュストの肌にこびりついていた垢は綺麗に洗浄されたのであった。
最初に風呂に浸かった際に垢が大量に浮き出たのは気持ち悪かった。
でも入浴をしっかりするようになってからは垢もほとんど出てこない上に、身体もポカポカと温まるので体調もすっかり良くなってきている。
アントワネットに風呂の良さを思わず言ってしまうほどであった。
「お風呂はいいぞアントワネット。特に東洋では体内で貯めている毒を吐き出す健康法としても有名だよ。温かいお湯で身体を肩まで浸かっていると疲れが出ていって気持ちがいいんだ」
「そ、そうなのですか……お、お風呂を毎日……」
「うん、お風呂に入るようになってから身体の調子がすこぶる元気になったんだ。良ければ明日使ってみなよ。きっと気に入ると思うよ」
「そ、そこまで入浴が素晴らしいのですか……で、ではオーギュスト様がそう仰るのであれば……明日早速バスタブを使わせて頂きますね」
史実だとアントワネットがお風呂好きだったからな。
あ、ちょっと待って。
そういえばオーストリアから嫁いできたアントワネットも結構な頻度で風呂入っていたよね?
オーストリアは入浴の習慣があったはずだが……。
でも数日に一回程度だったような。
おっと選択肢ミスった?
まぁ入浴の話はここまでにして、ちゃんと手紙にも書いてあった未来への展望について語らないと。
俺は顔を引き締めてアントワネットにこれからフランスで起こった事を伝えるべく、意を決して話の話題をディープなものに変えていくことにした。