66:パリにいくお!
作者からのお詫び
どうしても主人公にパリ市内を観光し、リラックスして欲しいので4~5話ほどパリの日常などを交えた話になります故、ご了承ください。
☆ ☆ ☆
さて、休みを取ることにしたわけだが。
国土管理局での仕事はひとまずは片付けることが出来ている。
休める土壌を作って行かないといけないね。
働き方改革を推し進めておいて自分が働き倒れでもしたら一大事だ。
そこで、緊急の用事がない限りは休息を設けることを通達した。
「……というわけだ。流石に同盟国の国家元首を心配させてはいけないからね。今日と明日は休みにするよ」
「わかりました。では、本日はそのように致しましょう」
ハウザー氏やランバル公妃も休むように進言していたわけだから、休んでくれることに安堵しているようであった。
そして、アントワネットと共にパリ市内に休息がてら街の中を視察すると申し出ると、ハウザー氏は条件付きで承諾してくれた。
「それで今日はパリ市内に観光を行おうと思うのだが……どう思う?」
「観光は大いによろしいと思いますよ!ただ、まだ反改革派の貴族や聖職者が国王陛下に対して危害を加えてくるやもしれません。大々的に国王であると触れ回るのは危険かと……」
「そっか……じゃあ目立たない格好で普通の馬車に乗って、あらかじめ決められた場所だけに行くのはどうかな?いわゆるお忍びってやつ。そのほうが安全だと思うけど」
「そうですな……現状ではそれが一番安全でしょう。馬車はどれを使う予定ですか?」
「うーんあまり豪華絢爛なやつよりも、シンプルなデザインのでいいんじゃないかな?俺としては金ぴか以外なら何でもいいよ」
「かしこまりました。では1時間以内に馬車を用意いたしますのでこちらも随伴する護衛の者を招集致します」
国王だから何をやるにも大変だ。
外出したいからといって”ちょっとコンビニ行ってくる”という感覚で一人で歩くには危険らしいね(国のトップなら当たり前だけど)
反改革派もそうだが、割とパリ市内には強盗や窃盗犯が多いらしい。
故に、決められた場所……警護しやすい施設や店に立ち寄るという事にしたんだ。
こればっかりはしょうがないね。
アントワネットにもその事を伝えると承諾してくれた。
「……というわけだアントワネット、予め決められた場所を見て回ったりする程度だけど、それでもいいかい?」
「ええ!勿論いいですわ!どんな場所でも一緒に行きましょう!」
「ありがとう、俺自身もあまりパリ市内には行ったことが無いからね。どんな様子か見てみようか」
実際に改革の効果によって人々の意識が変わって来ていると言われているけど、転生してからずーっとヴェルサイユ宮殿から一歩も出ていないんだ。
ヴェルサイユ宮殿と小トリアノン宮殿とその周囲の芝生ぐらいにしか出歩いていない。
18世紀にして引きこもり生活をしているというね。
でも宮殿の中だけで色々と出来てしまうので特に不自由は無かった。
なので外出しようという気にはあまりならなかったというわけだ。
そろそろこの時代のパリ市内がどうなっているか見る必要もあるな。
百聞は一見に如かず!
自分の目で見て、回ることも必要だな!
勿論、休息という意味合いだから仕事は無しだぜ。
「陛下、護衛の者ですが警備班8名を手配致しました。それと、お手数ですがお忍びを行う上でこちらが用意した服装で大丈夫でしょうか?」
「うん、勿論お願いするよ。あまり目立たない服と言われてもピンとこないからね。パリ市内に入っても目立ちにくい服装でよろしくね」
「かしこまりました。直ぐにお洋服をご用意いたします」
安全面を考えて随伴員は国土管理局所属の警備班数名が護衛についてくれるようだ。
兵士の中でも格闘戦や射撃に優れている者を集めているので、事実上国土管理局の所有している人員の中でも選りすぐりの人材を寄こしてくれるそうだ。
戦場に行くわけじゃないが、それでも用心に越したことはない。
万全を期して向かうのがいいだろう。
で、受け取った服で着替えをしているわけだが、やっぱりアントワネットはどんな衣装を身につけていても似合うね。
俺は普通の感じで、黒色をベースにした服装だけど、アントワネットはベージュ色の大人びたドレスで決めてきたのだ。
「アントワネット、そっちは着替えは終わったかい?」
「ええ!お手伝いもお借りしてドレスを身に纏いましたの!如何でしょうか?」
「ベージュ色のドレスだね!これは外出用かい?」
「はい!外出用として購入したものですよ!似合ってますでしょうか?」
「とってもいいね!最高だよ!」
「まぁ、ありがとうございます!」
「国王陛下、馬車のご用意が整いました。」
さて、馬車も準備できたようだ。
俺もアントワネットも外出用の着替えを済ませている。
今回俺たちと一緒にパリ市内に向かうのはランバル公妃だ。
というのも、ランバル公妃はパリ市内にいる開明派貴族と仲が良く、休日には何度かパリに出向いているそうだ。
恐らくパリの流行事情とかには一段と詳しいだろう。
ランバル公妃に事情を説明すると、快諾してくれた。
「私で宜しければ国王陛下と王妃様と一緒にお供致します!」
「ありがとう、是非ともパリ市内で有名なお店とかに案内をよろしくお願いいたします」
「はい!お任せください!」
というわけで、馬車の車列を連ねてパリ市内へと向かう。
何気に車列ってすごいよね。
国家元首クラスとなると俺とアントワネット、そしてランバル公妃が乗車している馬車を取り囲むように他の馬車がエスコートを行う。
馬車は全部で3台。
目立たないように黒塗りで塗装されており、豪華すぎず、それでいて華やかさも醸し出している。
これが現代なら防弾ガラス入りの高級車になりそうだ。
前方、後方にそれぞれ1台ずつがフォーメーションを組んで最初の目的地へと向かうのであった。