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61:先進

『注意』

作中で登場するルイーズ・マリー夫人なんですが、彼女が夫のフィリップ2世と離婚した場合は名前はどんな感じに変更されるのか分からないので暫定的にルイーズ・マリー夫人のままになっておりますがご了承ください。

あと300万PVありがとうございます。

………


時刻は午後1時を回ったところだ。

昼食に軽くサンドイッチを二つほど食べて直ぐに作業を再開しているのだが……。

ウォォン、疲れるぅぅぅ!!!

予想以上に作業が停滞している上に眠気までやってきたぜこん畜生!

今までにも何回かあったけど、やはりこうして同じ姿勢のまま文字ばかり見ていると眠くなるね。

文字があっちこっちに動きだしそうな感じがしてきている。

アカン、これ居眠りする予兆だわ。


「ヤベェ、ちょっと眠くなってきたな……コーヒー飲もうかな。誰か、コーヒーを淹れてくれるかい?」

「私が入れましょうか?」

「ありがたい。ではお願いするよ()()()

「はい、国王陛下!ただ今すぐに」


早速コーヒーを淹れるのを手伝ってくれているのはエルザさんことルイーズ・マリー夫人だ。

えっ、オルレアン家が断罪寸前の危機なのになんでここにいるかって?

そりゃアレだ。

ランバル公妃とは親戚関係だからね。

色々と事情が事情だけに一旦は実家のほうに匿ったんだけど、裁判で証言などをしなければならないので、国土管理局の保護の元でこちらで働くことになったというわけさ。


ルイーズ・マリー夫人の父親であるパンティエーヴル公の長男ルイ・アレクサンドルはランバル公妃の夫であったんだよね。

でもルイ・アレクサンドルは若くして病気を患って早世してしまった事でランバル公妃は未亡人状態だったんだ。

それでもランバル公妃とは関係を築けていたみたいだし、夫であるフィリップ2世への扱い方でアドバイスを行っていたらしい。


そんでもって金塊公爵事件が発生したことでルイーズ・マリーがオルレアン家所縁の人物から狙われるんじゃないかという噂が飛び交っているんだよね。

公爵を陥れたのは彼女じゃないかっていう噂だ。

悪質ないたずらの類だとは思うが、先の赤い雨事件の件もあるので警戒するようになっているんだ。


パンティエーヴル公は万が一に備えて最もセキュリティーが強固な国土管理局のオフィスにルイーズ・マリーを預けて欲しいとお願いしてきたんだ。

というのも、ランブイエ城で放火未遂事件が起こったんだ。


幸いボヤ騒ぎで済んだけど、その時に不審な男が城に侵入していたという報告が上がってきたので、ルイーズ・マリーが万が一暗殺でもされたら一大事。

そこで、ここ小トリアノン宮殿で裁判が終わるまでは匿うことになったというわけだ。


匿っている上で身分を明かしていたらマズイので、裁判が終わるまでは髪の毛の形を変えた上で『エルザ・アントワーヌ』という偽名を使っている。

そして容姿や顔の似ている人が身代わりとなって現在ランブイエ城でルイーズ・マリー夫人として暮らしているというわけだ。

身代わりとはいえ、本人は身代わりになることを承諾している。

あまりこうした事は公には出来ないので、公文書として記録には残せない。

把握しているのは国土管理局の上層部と国王である俺、それ以外は知らされてすらいないんだ。


と、ルイーズ・マリー夫人がコーヒーを淹れてくれた。

出来立てほやほやの熱々のコーヒーだ。

砕けたコーヒー豆の香りが鼻に染みるぜ。


「お待たせしました。コーヒーでございます。ミルクと砂糖はお付けいたしますか?」

「いや、大丈夫だ。俺はブラックで飲むのが好きでね。たまーにテイストを変えたい時だけミルクを入れるのさ。アントワネットと一緒に飲む時はミルク入りだけどね」

「まぁ!そうなのですね!アントワネット王妃もミルクコーヒーを飲むのですか?」

「いや、どうもコーヒーの苦みがダメみたいでね。だからアントワネットは大好きなショコラとミルクと砂糖を入れて飲むんだ」

「ショコラですか。なるほど……では、またお飲み物が欲しかったら申してください」

「ありがとう」


本当は専属の人がいるんだけどねー。

何かと国土管理局は組織の性質上機密情報を多く取り扱っているので、専属の水汲み係や食事係を疑う訳じゃないが情報漏洩を防ぐために、飲食物は自分たちで作る仕組みを作っているんだ。

現代だとアメリカ合衆国の国防総省ペンタゴンでは、施設内に持ち込まれる売店の飲食物のチェックも念入りに行っているぐらいだ。

というのも、売店にいるのは民間の委託業者が行うが飲食物に混じって盗聴器やスパイウェアを仕込んだUSBなどを持ちこむのを防ぐためだ。

実際にロシアや中国のスパイが民間人に混じって諜報活動を行っているという話は有名だしね。


というわけで、小トリアノン宮殿では基本的にセルフサービス式で飲食物を取ることになっている。

それは国王である俺も例外ではない。

この小トリアノン宮殿の近くに現在建造中の王立農園実験場で現在先行し、栽培実験の際に収穫したジャガイモやニンジンといった野菜を使った料理なんかも作っている。


それでも書類と睨めっこをするのには慣れているが、長時間座りながら文字を見続けるのはけっこう疲れやすい。

転生前にパソコンと睨めっこしながら事務会計の仕事をこなしていたとはいえ、パソコンには計算ツールや図形グラフの作成ソフトとかがてんこ盛りだったから資料としては視覚化されていたんだよね。


でも、この時代にそんな便利なものは無い。

結果報告書は手書きで図形もなしだ。

その為に集計したデータを計算して円グラフにし直すという作業をやっているんだが……これはこれで気力を使う。


コンパスで円を書き、さらにそこに結果を円グラフに当てはまるように移す作業をしているんだ。

なぜそんな面倒くさい事しているかって?

国民に分かりやすく説明するためだ。

いやはや……識字率があんまりよろしくない事が分かってしまったんだよ。


この時代はだいたい3人に1人ぐらい文字が読めれば良いとされてきた時代だ。

文字?そんなもん読めなくても言葉が通じればオッケー!!!とされてきたってわけ。

先進国が識字率が9割を超えるようになったのは20世紀初頭ともいわれているので、この時代では文字だけでなく視覚的にも分かるようにしなければならないんだ!!!


多分意識調査結果も、人から人に伝わっていくうちに内容も拡大解釈したりしてしまっている可能性が高い。

なので国民向けに意識調査の集計結果を公示しなければならない。


手っ取り早いのはイラスト付きでやるのが良いのよ。

イラストであれば分かりやすいからね。

文字が読めなくてもイラストを見ればだいたいは理解できる。

あとは統計結果を公示人がしっかりと伝えてくれてくれたら国民も分かるだろう。

そして、俺は円グラフのついでに国民にも円グラフ以外にも分かりやすいイラスト付きのほうがいいよねーとノリで書き始めてしまったことにより、さらに時間を消費してしまうのであった。

そしてお昼なので初投稿です。

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