59:予算爆上げ
いつも見てくださってありがとうございます。
最近物語の構成に苦労していますが何とか頑張ろうとおもいます。
今回の章は主人公を中心に回っていくお話になります。
もし「こんな話が見たい!」というご要望がありましたらコメントでお願いいたします。
☆ ☆ ☆
1771年1月21日
小トリアノン宮殿 国土管理局内
いやー、新年はやるべき事が多すぎて殆ど休めなかったぜ。
というわけで新年あけましておめでとう。
フランス国王になってしまったルイ16世だ。
オーギュストから正式にルイ15世の跡を受け継いでルイ16世になったよ。
史実よりも4年も早い国王になってから、年末年始からずっと行っていた引継ぎ作業をやっと終わらせることが出来た。
まず大きく変わった点をいくつか紹介したほうがよさそうだ。
はじめにヴェルサイユ宮殿の勢力図かな。
俺が転生した直後はアデライード派、デュ・バリー夫人派の二大派閥が存在していたわけだけど、アデライードの失態とデュ・バリー夫人を殺害したことで、アデライード派に属していた人間の大部分が閑職や追放処分となり、デュ・バリー夫人派であった宮殿の官僚や職員は丸ごと王太子派に組み込むことに成功。
そして金塊公爵事件によって反改革派の貴族連中の大部分を一掃した事で国民の支持基盤は強固なものになりつつある。
まだ裁判は審議中ではあるが、公爵などは極刑になる可能性が高い。
それでも聖職者連中……特にキリスト教カトリック教会などが改革に反対や疑問を抱いているので、可能な限り説得はするが、それでも税制改革を止めるつもりはない。
史実でも第一身分階級(聖職者)、第二身分階級(貴族)への課税策に駄々をこねまくっていた連中だしね。
おまけにジャガイモをフランス全土で普及させようとしたらジャガイモの安全性が確認できないとかで荘園での栽培に反対姿勢を崩していないし。
農業学者にしてフランス国内でジャガイモを普及させようとパリ大学で研究をしているアントワーヌ・オーギュスタン・パルマンティエ氏が纏めてくれた科学的なデータを提示したり、実際にジャガイモ料理(俺が作ったフライドポテトチップスを含む)を食べさせようとしたけど「これは聖書に載っていない食べ物だし、梅毒を引き起こす可能性のある食べ物だから植えません!」とか真顔で言われたときは怒りを通り越して呆れましたわ……。
梅毒はまだこの時代は特効薬も無いが、性行為か戦闘中における血液感染ぐらいでしか感染しない病だ。
だけど、この時代ではジャガイモやトマト、トウモロコシなど新大陸から持ちこまれた野菜や果物を経由して病気まで持ち込んできたと信じられていた。
俺は史実のルイ16世よりは甘くはないからお覚悟を……!
彼らの運命のカウントダウンは刻一刻と迫っているぜ。
(まぁ梅毒に関してはコロンブス達が現地人と性行為を通じてヨーロッパにお持ち帰りした説が有力視されているからなぁ……でも何でもかんでも宗教と結びつけるのはよくねぇぞ)
聖職者の中でも改革派として参列している人達のところでジャガイモの栽培が開始されている。
主にカトリック系ではなくてプロテスタント系の人達ではあるがね。
でもカトリック系の中でも開明的な聖職者は進んで領地での栽培をやってくれるからありがたい。
宗派は違っても改革に賛同してくれる人達には、自ら進んで改革を手伝ってくれている。
そうした彼らの気持ちに報いるように努力をしていかないとね。
そしてだ……税制改革を推し進めるにあたって、財務長官としてジャック・ネッケル氏を起用しているが、俺が国王になった事により財務総監に昇格させました。
フランス王国初の第三身分階級出身者の大臣が誕生した事になる。
有能な人はどんな身分階級であれ重役として取り入れます。
それが俺のスタンスである。
何気に18世紀から19世紀のフランス人文学・数学・科学者は現代でも提唱された定理や方程式などが活用されるほど人類史に貢献した人間を沢山輩出しているんだ。
積分で活躍したシモン・ラプラス氏とかガスパール・モンジュ氏とかね。
いやもう本当に凄い事だよ。
この時代のフランスはある意味で科学チート補正があるぐらいに科学方面に力が優れている。
だから彼らをフランス科学アカデミーに招待しているし、国の基礎に関わる文学・数学・科学・農業・医学分野の研究費予算をそれぞれ倍以上に増してやったぜ。
研究費の倍プッシュ費用は国が接収したオルレアン家の資金から賄っております。
これであと15年ぐらいは研究費を賄うことができるでしょう。
ちゃんとお金は有効活用しないとね。
金を死蔵させちゃだめよ!
研究費を倍増することを宣言した1月17日の翌日18日に科学アカデミーに属している学者達がヴェルサイユ宮殿を訪れて、俺との謁見を望んできたんだ。
何事かと思ったら科学アカデミーの人達から泣いて感謝されたわけよ。
それまではルイ15世の統治下だとあまり予算貰えずに、軍事費などに割り振られるケースが多かったそうな。
「国王陛下は科学の重要性を分かってらっしゃる!」
「これで研究に必要な人員や資材を確保できます!」
「本当に、本当にありがとうございます!!!国王陛下!!!」
「いいってことよ。科学技術の発展は国の発展につながるからね。みんなも研究に勤しんで頑張ってね!」
「「「はい!!!ありがとうございます!!!」」」
……といって喜んでいたわ。
研究費をケチっていたら研究員も仕事しづらくなるだろう。
日本の財務省のような研究費削った挙句、基礎研究すら満足に資金配分しないようなアホなことはしないぜぇ~!
産業革命が既にスタートしているので乗り遅れてはいけない。
産業は科学技術が必須になってくるし、こうした技術を扱える人間が重宝されるようになる。
だからゆくゆくは産業を取りまとめる人達の育成をしなければならない。
その為に科学技術の基礎研究に莫大な予算を組み込んだってわけさ。
乗り遅れるな!この時代の移り変わりのビックウェーブに!
研究には金がかかるが、その分色んな研究をして学んでほしい。
研究は必ずしも成功するわけじゃないけど、失敗の積み重ねが成功への道筋なんだ。
一発で結果が出たら誰も苦労はしない。
だから沢山研究を行って欲しいと思っている。
その為の研究、あとその為の改革……。
ユダヤ人への寛容令や農奴制の廃止といった身分改革を行ったことで、国民の改革に対する理解も好意的だ。
今朝のフランスの大手新聞各社は見出しもかなり俺に対して称賛するようなコメントで溢れていた。
「国王陛下は例え第三身分階級の出であっても、有能であれば大臣として取り入れるというご意志である」
「パリ大学でも大勢の数学研究員を募集している。数学を扱える者は入試を勧める」
「改革を実感する、これこそがフランスが経済不況から脱却して成長期に突入する高鳴りの予兆である」
やはり新聞社もこうして国民の声を届けてくれるのはありがたい。
イギリスから輸入した蒸気機関もパリ大学で研究が行われている。
早ければ今年の半ばまでにはライセンス契約を取り付けて炭鉱などで試験運用が開始されるだろう。
そうなれば産業をもっと発展させることが出来る。
いい感じに改革が進んでいる中で、今日は国土管理局でフランス全土における各貴族・聖職者・第三身分階級者への意識調査の結果が集計される。
その集計結果を聞きに俺は訪れているのであった。