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3:朝の香りはたまらねぇぜ

西暦1770年5月16日


ヴェルサイユ宮殿周辺の天気は晴れ、結婚式をするのにはとってもいい日だ。

俺……もといルイ16世とマリー・アントワネットとの結婚式ですぞ!

いやー、歴史的にも有名人だもんねマリー・アントワネット。

すっごい記念日じゃんか!


小説とか舞台とかゲームとかでも登場するし、日本でも知らない人はいない程だ。

美しい美貌の持ち主で彼女のバストを型取りした器が現代でも現存しているぐらいにはおっぱいは大きかったらしい。

確かネットでみた記事ではバストが109センチあったみたいだし。

おおよそEからFカップ前後だったらしいので、そりゃもうバストがぷるんぷるん!!!!


男として妻になる女性の胸のサイズが気になるのは仕方ない。

そりゃ気になりますよ。

でも翌々聞いてみたらまだマリーアントワネットは14歳、あとちょっとで15歳になる時に嫁いできたそうだ。

という事は胸に関してもまだまだ成長途中かもしれないというわけだ。

うーむ、これ以上胸に関しては自重しよう。


というか本日フランス(こっち)に嫁いでくるので年齢的にみればかなり若い。

オイオイオイオイ、現代日本なら確実に結婚年齢達していないじゃんか!

……なのだが、昔では15歳前後で嫁ぐことは当たり前だったらしい。

実際にこの時代あたりでは成人は14歳以上だという。

つまり15~16歳ぐらいで出産するのは良くあったそうだ。


現代でもイスラム教の教えが強い中東諸国でも9歳ぐらいの少女が嫁ぐ事もあるし、この時代では出産できる適正年齢として見られているようだ。

まぁ、価値観の違いだよなぁ……。

倫理感とかも全然違うし、今ではNGな事がここではOKという感じに色々とマナーが異なっている。


「いよいよ今日か……」


そんなこんなでルイ16世に転生して一か月。

ひたすらにマナーとか貴族とかと接した後で礼儀作法などは一通りマスターできた。

とにかくだ、今日は結婚式だからシャキッとしないといけないね。

気合い入れていこうか!


―パン!パン!パン!


頬を叩いてしっかりと目を覚ます。

んでもって思いっきり窓を開けて息を吸い込むとヴェルサイユ宮殿周辺の茂みのにおいが鼻の中に入ってくる。

ヴェルサイユ宮殿の茂みの香り。

特と味わおう!

すぅぅ~っ!!!!


「う”う”う”ぇ”ぇ”ぇ”!!!く、臭い!!!」


()()()のかおりだー!!!!

いや、事実です。

うんこ……大便……排泄物の臭いが部屋に漂ってくるぅ~(怒)

朝の気持ちいい気分が台無しだよ!

どうしてくれんのホンマ。

文字通り糞尿の臭いが風に流れてくるのでうんざりする。

慌てて窓閉めましたわ。


それもそのはず……このヴェルサイユ宮殿にはトイレは王室や大貴族しか使用できないのだ!!!

宮殿の面積と比較してトイレが少なすぎるだろ!

つまり宮殿内にはトイレの数が限られている。

四角い箱で座るタイプのトイレだしね。


宮殿に仕えている中小貴族や使用人はどうしているか?

それはおまるを使用しているのだ。

おまる……糞尿を溜め込んでそれをヴェルサイユ宮殿周辺の茂みに捨てまくっているので臭いがしてくるのだ。


これでもヴェルサイユ宮殿内はまだマシなほうであり、パリ市内が一番酷いらしい。

窓から容器内に入れてあるうんこや小便を投げ捨てる行為が日常茶飯事。

なので傘やハイヒールを履かないと窓から投げつけられた糞尿が顔や身体に直撃という悲惨すぎる事が起きるという。

想像しただけで気持ち悪い。


というか、女性の身に着けるドレスが広がっているのも、おまるの中に用を済ませるために開発された賜物だという。

あとハイヒールもうんこを踏みつけないようにするためのものだったとか……。

道路上には人間の大便や小便が散乱した結果、伝染病は流行するしパリは悪臭の都と言われる始末。

その事もあってかパリでは水が汚染されていたので、パリっ子は酢で殺菌してから飲んでいたようだ。


……その話を聞いて、綺麗な水を飲める身分に転生してよかったと思う。

あと水道の蛇口を捻るだけで安全な水が飲めた日本はすごいなと身に染みて実感した。

下水道システムや糞尿買取システムを開発した江戸のほうが綺麗だと思う。

そのぐらい悲惨、もうパリはクソで満ちあふれている!クソだけに!

こんな衛生環境最悪なパリを本気で変えたいやつ、至急来て欲しい(切実)


というわけで国王であるルイ15世が死去したら真っ先に「衛生保健省」を国王の権限で作ろうと思う。

ほんと衛生環境が酷すぎるから人が病むんだよ。

革命起きたのもそうした劣悪な衛生環境のせいだって説もあるぐらいだ。

衛生環境が悪いと労働意欲が低下するし病気にもなりやすい。

そんでもって税収が減って社会の活力が低下していくからね。


つまり環境が悪くなればなるほど負のスパイラルに突入してしまうというわけだ。

というわけで環境を変える!

絶対にこんなウンコシティーなんて呼ばれないようにしていこう!

綺麗にして花の都に相応しい衛生環境を整えてやる!

モデルは勿論、この身体に転生する前にいた俺の祖国日本だ!


江戸の汚水処理システムをうまく持ちこめば大幅に衛生環境を変えることができるだろう。

そうなれば市民の不満も減るだろうし、何より交渉次第では日本との貿易も可能になる。

あと出島使っているオランダばっかり利益独占させねーぞ!

例えば横浜あたりはこの時代では小さな漁村みたいな場所だったからあの辺りを買い取ってフランス領にするのもいいかもしれない。

フランス領横浜……。


公用語がフランス語になり、フランスの自治領として香港みたいな感じになるのかな。

江戸に近い利点を生かして横浜開発……20世紀になる頃には貿易拠点として栄えそう。

でも神奈川県民が聞いたら怒りそうだけど別にいいか!

キリスト教の持ち込みはしない条件で入植すればいいかもしれん。


しかし日本はまだ鎖国政策しているからなぁ……交渉は難しそうだ。

医療とかこちらが有利にとっている技術の交換とかで何とかならないものか……。

いやいや、まだそんな事を考えるのは早すぎるのかもしれない。

捕らぬ狸の皮算用をするようなものだし、まだそれに関しては国王に即位した後で考えたほうがいいかな。


それよか結婚式が先だ!結婚式!

マリーアントワネットとの初面会まであと3時間。

それまでにリハーサル通りにスピーチを決めて祝賀会をささっとやってしまおうかな。

ついでにいえばマリー・アントワネットはルイ16世に対して初対面だったこともあったが、口下手な奴だったと思っていたらしいので、それなりに会話して彼女を安心させてあげよう。


なんだって俺は精神年齢は30歳そこそこのおっさんとはいえ肉体年齢は16歳だ。

年相応の振る舞いを弁えつつも、電子世界の海(インターネット)で鍛え上げた会話スキルを使って親密になるべきだな。

というわけでマリー・アントワネットのお姿しかと拝見してくるぜ!

ウキウキしながら俺は使用人の手伝いを受けてマリー宛の手紙を書き終えてから服装を整えるのであった。

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