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25:元FPSゲーマーの俺に勝てるもんか!!!

人生初のFPSゲームは何でしたか?

私は「敵の潜水艦を発見!」というセリフが有名なゲームが初めてだったので初投稿です

何故ドアが開いたんだ?

部屋に灯されている蝋燭ロウソクの補充はまだ早い。

時間は……午後10時過ぎか……。

それでもいつもに比べて30分も早いな……。


やって来たのは黒い服を着ている蝋燭交換の人だ。

外で見張っている守衛が開けたという事は問題ないという事か?

ただ怖い黒い魔女の話を思い出していた最中なので少々不安だ。

ちょっとばかり聞いてみようか。


「ご苦労、蝋燭の交換にしては少し早いのではないかな?」

「……っ?!」


入ってきた相手から何も言葉が返ってこない。

むしろ驚いているような感じだ。

一体どうしたんだこの人は……?

何か相手の身体震えているし、風邪でも移してしまったのだろうか?

だったら謝らないといけないな。


「俺のせいで迷惑をかける。ただ貴方のせいではない。全ての責任はこの俺にある……すまなかった」

「あ、ああ……」


ペコリと相手に頭を下げる。

すると相手は大いに動揺してしまっている。

手が震えて何かが床に落ちた。


―ガチャン!!!


金属音のような音だったぞ?

この人……本当に蝋燭を交換する人なのだろうか?

薄暗い部屋の床をよーく見てみると、そこに落ちていたのはダガーであった。


「ちょ、ちょっと君……このダガーは一体どういうことかね?」

「……」

「じ、自衛用の武器にしては嫌に物騒な物を持っているじゃないか……この宮殿で使う機会のない物をなぜ持ち込んできたんだい?」


最初の部分で思わず噛んでしまった。

いや、噛むでしょ。

だって蝋燭じゃなくてダガーを持っていれば誰だって驚くわ。

ダガーを落とした人は、慌ててダガーを拾う。

拾ったダガーをこちらに向けてきた。

ガチャリとダガーが俺に狙いを定める音が鳴る。


「王太子様、お許しください……!!!」

「うわぁっ?!」


いきなり俺にダガーを持って俺に襲いかかってきた。

先制攻撃をされたが、右手に持っていた君主論の本を咄嗟に前に出した。

君主論の本にダガーが突き刺さり、手のひらにダガーの先端が擦って軽い痛みが襲う。

だけど致命傷じゃない。

幸運にもそれ以上深く刺さることはなかった。


おまけにダガーの進入角度がいけなかったのか、持ち手の部分でパキンと音を立てて折れてしまった。

やったぞ、ダガーを無力化してやったぜ!

本当に君主論の本が無かったら胸をズブリと刺されていたわ……。

「危ない……君主論が無ければ即死だった……これで君はダガーは使えなくなったわけだ」

「いえ、次で確実にトドメを刺しますわ」


相手は俺を突き出してから、別のダガーを取り出してきた。

それも2本だ!!

2本のダガーを腰から取り出してきたぞ!!!

一本ですらきついのに、2本は反則だぞ!俺にも一本寄こして欲しい!

予備用として装備していたのかな?

準備に抜かりなくて困ったぞ……。


「なっ、まだ持っていたんか!!」


この人……もしかして刺客じゃね?

いや、絶対そうだ!!!

よく見たら女みたいだ……。

顔つきも中々美人だと思う……。

女の刺客(おまけに美人)とかドラマか映画か?

距離を一旦とってから俺はベッドのシーツを掴んだ。


「でも俺はここでは死ねないのでな……元FPSゲーマーの俺に勝てるもんか!!!」

「王太子様!!!お覚悟を!!!」


FPSゲーマーという言葉に突っ込まれなかった事よりも相手は覚悟を決めて俺を殺そうとしている。

だが、生憎な事に俺はまだ死ぬわけにはいかないのでな。

アントワネットと幸せに暮らすまでは死ねない。

なので俺は生き延びてやる。


まだ自動拳銃が開発されていなくて本当に良かったよ。

もし近代だったら確実に拳銃で撃ち殺されていたな俺は……。

この時代はまだ弾込めをしてから点火するまでに数十秒かかる火縄銃式の拳銃しかないからな。

構えの姿勢を取って心の中タイミングを見計らう。

ステンバーイ……ステンバーイ……今だ!!!


「そぉい!!!」

「!!??」


タイミングを見計らってから掛け声と共に左手で掴んでいたシーツをダガーを持って襲い掛かってくる女に投げつける。

シーツを被ったことで身動きが大きく制限される。

突然シーツを投げつけられた女は混乱している!


「えっ……あっ……み、見えない!」

「これでも喰らえ!!!」


その隙を見逃さずに俺は思いっきりタックルをかましてやった。

某大学で問題になったタックルのように、横から腰にダイレクトに俺は飛びかかった。

女が右手に持っていたダガーは、タックルを受けた際の衝撃で部屋の隅に転がっていく。

両手を押さえつけて女の身動きを封じ込めた。


「きゃぁっ!!!」

「大人しくろ!!!守衛!!!守衛!!!!早く来てくれ!!!賊が入ったぞ!!!」

「王太子様!!!」


すぐに外で見張りをしていた守衛たちが駆けつけて一緒に女を取り押される。

人数比では3対1だ。

大人3人に勝てるわけないだろう。

女性と男性とでは力の差は歴然だ。

ぞろぞろと騒ぎを聞きつけた人々が集まってくる。

守衛の一人が、捕まえた女の顔を見ると驚いた様子で叫んだ。


「お前は……アデライード様の取り巻きの……!!!」

「何だって?!」

「王太子様、この女はアデライード様の取り巻きで有名な女です!!!」


オイオイオイ……。

マジかよ……。

アデライードは舞踏会で大いにやらかしたけどさ、何も俺を殺す事はないだろうが。

というか確実に超えてはならない一線を超えてしまったな。

縄で縛りあげた女はアデライードの取り巻きであった。

確かに、舞踏会でもアデライードの傍にいた女だ。


これでアデライードの運命は決した。

王太子である俺を襲ったんだ。

アデライードは良くて廃れた城か要塞で幽閉、悪ければそのまま流刑か非公開の処刑だな。

アデライードの取り巻きが起こしたとなればさすがの国王陛下も許さないだろう。

ただ、取り巻きの女が口にした言葉で事態はより一層マズイ事態に陥っている事が明らかになる。


「もう終わりよ!!!貴方も国王陛下も……!!!アデライード様は完全に正気を失ってしまったわ!!!もう彼女を止める手立ては無いのよ!!!」

「……それはどういう意味だ?」

「そのままよ!!!もうじき国王陛下が崩御なさいますわ!!!」


国王陛下崩御だと?!

それってつまり、本命は国王陛下ってことかよ!!!

マズイ、このままじゃ国王陛下が殺されてしまう!!!


「!!!!急いで国王陛下の元に向かうぞ!!!この付近にいる警備の者と廊下にいる守衛を全部かき集めろ!!!」

「はい!!!」

「……と、その前にアントワネットの所に直ぐに行って安否を確認するぞ!!!彼女の所にも刺客が送られたら厄介だ!!!そこの守衛、名前は?」

「はっ、ダニエル伍長であります!」

「よしダニエル伍長、君は大急ぎで国王の寝室に向かってくれ!!!”王太子が襲撃された!!”と大声で叫びながら国王陛下の寝室まで走って行ってくれ!!!君の行動に国王陛下の命運が掛かっている。すぐに国王陛下にも今起こった事をありのまま伝えてくれ!!」

「はっ!!!王太子殿下のご命令、ただちにお伝えいたします!!!」

「この女を牢に連行しろ!残りの者は私に続け!!!」

「「「はい!!!」」」


やべぇよやべぇよ……。

完全に叔母上が狂ってしまったようだ。

甘く見過ぎていたわ……。

こんなことをしでかしてしまうなんてな……。

想定外だ。

俺は着替えもしないまま、大急ぎでアントワネットの所に走っていった。

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