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9:赤ちゃんは何処からやって来るのか?

※注意:作中でルイ16世の先天的性不能に関する話題がありますが、これはあくまでも通説に基づく話となります。

また、小説家になろうのR-15ガイドラインに従った表現となっておりますのでご了承ください。

目が覚めたばかりのアントワネットから優しく声を掛けられた。


「お、おはようございますオーギュスト様……」

「おはようアントワネット。よく寝れたかい?」

「はい、オーギュスト様のおかげでよく眠れましたわ……ハッ?!」


アントワネットは何かを思い出したかのように目が覚めるとすぐに飛び起きた。

キョロキョロと周囲を見渡すと、アントワネットは申し訳なさそうに俺に尋ねた。


「そ、その……昨夜は……た、た、大変失礼いたしました……」

「……?大丈夫だよ。昨日はフランスについて話し合い、そしてそのまま眠りについていただけだよ」


どうやらアントワネットは俺の事を気遣っているらしい。

昨夜、俺はアントワネットに未来のフランスを作ることを語り、アントワネットはそれに同調してくれたのだ。

問題ない。

むしろアントワネットが俺を信頼してくれたのだ。

その時、俺は心の底からすごく嬉しかった。


アントワネットは通説で言われていたような悪女ではない。

もっと純粋な……少女として、人として、彼女の側面を見ることができたからだ。

だが、様子を伺うとアントワネットは顔を赤くして身体をもじもじとしながら呟く。


「そ、その……ご、ご、ご、ご同衾どうきんで……」

「ん?」

「お、お、お、オーギュスト様とご、ご同衾をして……わ、わたくしだけその、先に眠ってしまって……しょ、初夜ができずに……も、ももも、申し訳ございません!!!」


どうやら()()を迎えなかったことを謝っているようだ。

いやいや、だからまだ初夜は早いって!!!

朝を迎えたけど、俺とアントワネットはキスより先の事はしていない。

初夜というのは夫婦間における初めての夜の営みという意味だ。


早い話が二つの肉体が初夜によって一つに繋がるという事。

コウノトリが赤ん坊を運んでくるわけじゃない。

そうした性教育が通用するのは小学生までなのだ。

なので、俺はすかさずアントワネットにフォローを入れた。


「大丈夫だよアントワネット、そう結婚してすぐに初夜を迎える必要はないんだよ」

「で、ですが外にいる人達になんといえばいいか……」

「外にいる人達も初夜を求めてはいないさ。むしろ二人の仲がどんな感じか気になっているだけだよ」

「私達の仲……ですか?」


結婚して早々に仲が悪くて喧嘩にでも発展したらマズイことになる。

王室関係なく新郎新婦が寝室でいきなり怒鳴っていたり喧嘩していたら不安になるよね。

そう考えれば俺たちの関係はかなり出だしの良いスタートを切れたものだ。

男女関係における段階をしっかりと踏むべきだ。

それに互いの事をもっと知る必要があるだろう。


「うん、初夜を迎えるのはもっと先になると思う。それまでに互いの事を知る必要があると思うんだ」

「互いを知る……」


アントワネットは14歳、んでもって俺は16歳だ……。

現代日本でその歳でSNS上で初夜報告でもした暁には掲示板に晒されて、住所特定と学校・職場・近隣住民に対して嫌がらせ行為が始まるだろう。

この時代では14歳で大人という認識だったので14歳で結婚して即初夜でも問題なかったようだ。

なので今の18世紀では貴族は勿論、庶民の間でも比較的珍しくもない光景だったらしい。


いくらこの時代で合法だといっても問題がある。

まず一つ目はアントワネットの年齢だ。

現代日本の法律では民法731条において男性は18歳、女性は16歳にならないと結婚できないとされている。

早い話が最低でも16歳以上から子供を産むのに適している年齢と言えるからだ。

それよりも若いと健康的に不安視されるうえに、未熟児が産まれるリスクが上がるのだ。


特にアントワネットは14歳だ。

14歳といえばまだ少女という枠組みに分類される。

当然ながら思春期真っ盛りの少女は色々と精神面で不安定になりがちだ。

思春期特有の心理的なストレスで母体や胎児にダメージが蓄積し、それが原因で流産や死産をしてしまえばアントワネットは深く悲しむだろう。

そんな光景見たくないし……。

俺個人としては心身ともに整った18歳ぐらいで子供を授かるべきかなと思っている。


そして二つ目の問題なのだが。

これはルイ16世こと、俺に起こっている問題で割と深刻なものだ。

一個人では恥ずかしい話題で済むかもしれないが、王族となれば後継者に関わる重大な問題になってしまう。


というのも、俺は来週に()()()()()()の手術をする予定だ。

なのでどの道初夜はしばらく出来ません。

まぁ、決してやましくなく医学的な意味合いを言えばだ……。


性器の先端にちょっと問題を抱えていたのだ。


最大角度で起立しても皮が覆いかぶさっている状態なのだ。

そう、転生して一番たまげたのは自分の身体であったんだ。

このままでは女性との間で子作りをする上で、衛生的に問題アリな状態だった。

皮が性器の先端を完全に覆い被っているのでかなり支障があるのだ。


医学に関しては素人の俺からみても分かるぐらいに性器の先端が深刻なレベルで手術が必要なほどだった。

これが原因で史実では結婚してもルイ16世とアントワネットは7年もの間、夫婦間における夜の営みをしていなかったと言われているのだ。


たしか産まれた時に割礼したはずなんだが、どうも上手くいかなかったらしい。

デリケートな部分だし表沙汰にならなかった理由の一つなのかもしれない。

資料によっては生まれた時に割礼したとか、実際はそうした手術をしていないとかまちまちで長年の疑問だったんだ。


通説は事実だったが、夜の営みに支障をきたすレベルだったとは思いもしなかった。

いざ当事者になった時の、この辛さは想像以上だ……。

というわけで転生して6日後に見回りの主治医に先天的性不能手術をお願いしてもらい、来週に手術をする予定なのだ。

男は度胸、手術をする際も思い切ってしてみるもんさ。


「……しばらくは夜、二人でこうして色々と語り合ったりしていこう。もし不満とかがあれば遠慮なく言ってほしい」

「分かりました、オーギュスト様……」

「失礼いたします。王太子様、王太子妃様、お目覚めのお時間でございます」


召使い長さんのノックの音で会話は遮断される。

モーニングコールは割と早い。

だってまだ朝の7時30分やぞ!!!

もうちょっとだけ二人で寝かせてほしいと思いつつも、俺とアントワネットは起床したのであった。

今後の更新ですが、正午と午後6時………

どちらで更新したほうがいいでしょうか?

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