第19話 原作☆ぶれいかー
お待たせして申し訳ありませんでした。告知通り本日から更新再開します!
更新状況については近況ノートでしておりますので、そちらをご確認いただけますと幸いですm(_ _ )m
「次の場所で午後の予定は最後になります〜」
相変わらずポワポワした
俺とヒナタちゃんは最後尾から少し離れてそれに続く。
二人で内緒話をするためだ。
「そうやって、わたしとルイちゃんは仲良くなったんですよ」
ヒナタちゃんから教えてもらったのは、彼女とルイの馴れ初め。
それを聞いた俺は思った。
──え、俺の影響デカくね……?
……いったん、軽く流れをまとめてみよう。
一つ、俺がヒナタちゃんに「友達になれ」と言った。
二つ、
三つ、俺が挟まりにいってる(ように見える)。
──え、手の込んだ自殺……?
呆然とする俺を見上げて、ヒナタちゃんがじとっとした視線を向けてきた。
「ぜんぜん覚えてないんですか……?」
「い、いやっ、『装飾品に目が眩まない子と仲良くしな』って言った記憶はある……んだけど、それが
「ルイちゃんってあの頃から美人で有名だったんですけど……本当にお兄さんらしいですね」
自分の興味あること以外には何も興味ないんですから、と残念な人でも見るような目を向けてくる妹分。
あれ……お兄さんの威厳が……。
「──ヒナ?」
パッと前を見れば、ツクモと一緒に歩いていたルイが俺たちを振り返っていた。
「なんでもないよ、今行く! ……じゃあお兄さん、ルイちゃんについての詳しい話は見学会が終わってから、また」
「うん、わかった。ありがとうね」
怪しまれる前に切り上げて、前の集団に追いつく。
女性陣は三人仲良く触れ合いだしたので、俺は一人黙って考え込むことにした。
いま考えるべきは原作での彼女たちの関係だ。
時系列順に並べると『わたゆめ』の進行はこうなる。
第一章。
この時点でヒナタちゃんは
章ラストで別の事件を追っている時に、ルイが連続殺人犯〈
戦闘の末、取り逃しそうになったところを遅れてきた
最後にルイが一言だけお礼を言って、小さくも確かな進展が描かれる。
ここまでが第一章にして、『わたゆめ』第一巻。
続く、第二章。
ここが二人の関係が大きく前に進む回で、話のメインはルイとヒナタちゃんが公私をともにして仲良くなっていく様子だ。
その中でルイの過去にも触れていく。
彼女の幼少期に関しては、記憶違いがない限り、この世界のルイとほぼ同じ。
唯一違うのは──小学校の時点で仲良くなっているか否か、だ。
『わたゆめ』では、小学校の描写は皆無だった。
当然、彼女たちが同じ小学校であることなど俺含む読者は知る由もない。
過去の二人に関しては、
二人はお互いの過去を明かした上で、仲を深めていく。
帰り道にスイーツ店に寄ったり、カラオケに行ってみたりという、普通の──年相応の娯楽。
ヒナタちゃんに振り回されるようにして、ルイはそれを覚えていく。
人生で初めて食べるクレープを黙々と、けれど目を輝かせながら食べるルイ。
人生初めてのカラオケで実は音楽が好きだと明かし、思わずヒナタちゃんが聞き惚れるような歌声を披露するルイ。
そうした日常風景とともにヒナタちゃんと読者に向けて語られるルイの過去があるからこそ、雨剣ルイという人間の息遣いが感じられた。
特に人間不信だったルイが見せる柔らかな笑顔は、とても胸に迫るものがあった。
そんなものを見せられて彼女に惚れ込まない方が難しい。
俺も、俺以外の読者も、全員が彼女の魅力にやられたはずだ。
第一回人気投票で第一位という輝かしい結果を残したことがそれを証明している。
そんな完璧ヒロインなルイとヒナタちゃんが協力して倒すのが、【
単独では倒せなかったはずの彼を二人で倒すことで、彼女達のは
この第二章が2、3巻だった。
「……うん、結構思い出してきた」
18年前に読んだのが最後にしては内容を覚えている方だったと思う。
だが、こうして整理し直してみると、忘れかけていた細かいことまで芋蔓式に記憶から引っ張り出されてきた。
逆に現時点で、原作と変わってしまっていることがいくつかある。
一つは、第二章最大の敵であるはずの〈
……俺のせいである。
次に、第一章で対峙するはずの〈
『わたゆめ』での時系列的には、おそらく一ヶ月ほど前。
俺とヒナタちゃんとルイの三人でショッピングモールに行くなどという天国のような地獄を味わった頃の周辺だったと思われる。
〈
彼女は自分が一番目立ちたいと思うタイプの悪役なので、〈
……となれば、やはり俺のせいである。
そして最後。
傍陽ヒナタと雨剣ルイ。
彼女たちの仲が進展どころか完成されていること。
──俺のせいである……ッ!
結論、全て俺のせいです。Q.E.D.
『わたゆめ』のシナリオを壊したくてやっているなら、諸葛孔明もびっくりの神算鬼謀である。──ぜんっぜん意図してませんでした。
「ひょっとして俺って馬鹿なのか……?」
頭の中でミニ・クシナとミニ・レオンが俺のことを呆れ果てた目で見ていた。
首を振って常識人どもを払いのける。
ぶっちゃけた話、これで何も問題が起こっていないならそれでもよかった。
ルイの殺意が高いのも、彼女とヒナタちゃんの仲が良すぎるのも、まあいいだろう。
だが、俺の原作改変でルイの笑顔が曇るのはダメだ。
推しの笑顔を奪っておいて何がオタクだろうか。
こうなったら「君たち二人の間に挟まりません」とか言ってる場合じゃない。
最優先は彼女の悩みを取り除くこと、それ以外にありえない。
……まあ、ついでにルイからの殺意もなくなれば万々歳ですよね。
「さて」
それじゃあ、推しの笑顔を取り戻すとしま──
「はぁーい、ここが【天空回廊】で〜す」
「わー、すごーい!!」
「きれー!」
ウワー!! スゴイーーー!!!
【天空回廊】だあああああ!!!!
キレーーー!!!
「……って、そうじゃないっ!」
いつのまにか再び湧いていたミニ・クシナとミニ・レオンが揃ってため息をついた。