第3話 新たな狩場
「さて。本日お集まりいただいた理由は二つあります」
卓上で両手を組み合わせながら、【
「一つは、先日の〈
「────」
イブキは息を詰めた。
しかし、その場の面々は変わらず。
どちらかと言えば、関心がなさそうであった。
「アレが勝手をするのは、いつものことだろうよ」
ミオンが雑に言い放った。
盟主は頷く。
「そうですね。けれど、それでも彼が捕まることはなかった」
「言動はアレだが、中々に狡猾な奴だったしな」
「ええ。それが今回、捕まったのですよ。相当な重症だったそうです」
「へえ……?」
重症ね、と呟くミオン。
イブキは固唾を呑んで、会話の雲行きを探る。
「しくじって捕まったとは散々、報道されてたが……アイツをやったのは確か……」
「──
(………ッ)
あの事件のあと、報道では〈
その方が
ヒナタが〈
組織を裏切った形になるイブキにとっても都合がいいので、それについて文句を言うつもりは無論、ない。
けれど、こうした形で彼女に注目が集まってしまうのも、喜ばしいものではなかった。
「
「あいよ」
「くはは! 了解した!」
「…………」
イブキはクシナを見るが、ヒナタの
彼がそれに安堵しているとは知らず、盟主〈
「一つ目はそれだけです。──本題は、次」
彼女の言葉と共に、場の空気が引き締まる。
「
かねてより存在した問題。
何のことだろう、とイブキは周囲の表情を探る。
ユイカは唇をきゅっと結び──ゼナは微かに顔を上げ──クシナは片目を瞑り──ミオンは眉根を寄せ──ツクモはきょとんと首を傾げていた。
(いや、お前は分からんのかい)
内心ツッコむイブキ同様、〈
「第十支部と、その
盟主はそう言って、ツクモに概略を教え始める。
それは少しでも【
しかし第十支部に関しては話が変わってくる。
10年前、第十支部は
つまりイブキの前で品良く座っている〈
それによって新設されたのが現在の第十支部。
その建て直しにあたっては、莫大な資金が必要とされた。
とても国税だけでは賄えず、民間企業や
その結果、
「第十支部は外部勢力の介入を受けざるを得なくなったのです」
「おおっ、思い出したぞ! 年中あてこすり合っているという、あの話か! 仲間同士だと言うのに、実に間抜けな話だなっ!」
その瞬間、クシナとミオンがサッと目を逸らしたのを、イブキの目は見逃さなかった。
どうやら本人たちにも自覚はあるらしい。
「ともあれ、あちらの不和は
「ふむ。して、その策とは?」
「それが、”見学会”だと」
「……見学会?」
はい、と盟主は頷く。
「正義の使徒たる【
ついでに、そこに
劇的な改善は見込めないが手堅い一手のように、イブキには思えた。
「ふむ。つまり盟主殿はこう言いたいのだな?」
ツクモがしたり顔で頷く。
「
「いえ、違います」
「違うのか……」
ツクモはしょんぼりした。
「実は、これからどう動くかはもう決まっているのです」
「決まっているのか……」
ツクモはさらにしょんぼりした。
「その見学会に参加できる対象には、制限があるのですよ」
またしても
「それは13歳までの女児であること。あるいは──」
その微笑みが、イブキの方へと向けられた。
「──男性であること」
イブキの脳裏に閃きが走った。
「───その見学会には、男がたくさん来ますね……?」
クシナがしょんぼりした。